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最終更新日:2022/12/13

二世帯住宅の相続税対策に使える小規模宅地等の特例とは【節税効果はどれくらい?】

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

この記事でわかること

  • 二世帯住宅の敷地に小規模宅地等の特例を利用できることがわかる
  • 小規模宅地等の特例を利用するための要件を知ることができる
  • 小規模宅地等の特例を利用するとどれくらい節税になるかがわかる

相続税の課税対象となる財産には、自宅のように日常生活に使うものも含まれます。

そのため、相続税を納税する際には現金が足りないといったことも起こり得るのです。

そこで、大きな金額になる自宅の敷地について、小規模宅地等の特例を利用するとどれくらいの節税になるかを考えてみます。

二世帯住宅でも小規模宅地等の特例を利用できるため、これから自宅を新築する人は参考にしてください。

二世帯住宅の相続税対策は小規模宅地等の特例が有効

二世帯住宅は多くの場合、親世帯とその子ども世帯が1つの建物の中に別の世帯を構えるケースが多いでしょう。

そのうち土地の所有者は親であることが多く、親が亡くなればその土地は相続財産となるのです。

土地を相続すると、一般的にその評価額が高額になるため、相続税の額も高額になります。

しかし、相続人がその土地に住み続けるなど一定の要件を満たす場合には、小規模宅地等の特例の適用を受けられます。

小規模宅地等の特例の適用を受けると、土地の相続税評価額が最大で8割減額されます

相続財産が大幅に減額されると、相続税額が減少したり、税額そのものが発生しなかったりといったメリットを受けられるのです。

小規模宅地等の特例の適用要件

小規模宅地等の特例は、相続税の節税に非常に大きな効果を持つ制度です。

適用される人も多く、相続が発生した場合には真っ先に検討しなければならない特例の1つといえます。

ところで、この小規模宅地等の特例を利用するためには、どのような要件をクリアしなければならないのでしょうか。

ここでは、居住用の宅地について適用される小規模宅地等の特例について、その要件を確認していきます。

①亡くなった人の配偶者が自宅を相続する

亡くなった人の配偶者がその自宅の敷地を相続した場合、小規模宅地等の特例を適用することができます。

この場合、配偶者は同居していなければならないわけではありません。

特別な要件を満たすことなく、小規模宅地等の特例の適用を受けることができるのです。

ただ、配偶者が相続しても、その配偶者が亡くなった時には、再び相続が発生することとなります。

小規模宅地等の特例を適用するために配偶者が相続するのであれば、あまり意味はありません。

二世帯住宅の場合は、次の②に該当すると考えられるため、特別な事情がない限りは配偶者が相続することに意味はないでしょう。

②亡くなった人と同居していた親族が自宅を相続する

被相続人の配偶者以外の同居していた親族が自宅の敷地を相続した場合も、小規模宅地等の特例が適用されます。

ただ、この場合は単に相続すればそれで適用されるというわけではありません。

いくつかの要件をクリアしなければ、特例は適用されません。

要件の内容は以下のようになります。

  • 相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月を経過する日)までその敷地を保有し続ける
  • その敷地に建つ自宅建物に居住している

二世帯住宅でこの2つの要件を満たせば、子どもが相続しても小規模宅地等の特例の適用を受けられます。

しかしたとえば、相続開始から3か月で自宅の敷地を相続し、1か月で売却した場合は相続税の申告期限まで保有し続けていません。

そのため、小規模宅地等の特例の適用は受けられないのです。

③配偶者も同居していた親族もいない

被相続人に同居人がおらず、それまで同居していなかった人が相続した場合です。

この場合は、②の場合よりさらに厳しい要件が必要となります。

この場合の要件は、以下のようになっています。

  • 相続開始前3年以内に日本国内にある自身や配偶者名義の持ち家に住んだことがなく、相続開始前に住んでいた家屋を所有していたことがない
  • 相続税の申告期限までその敷地を保有し続ける

基本的に、相続した人が賃貸住宅に居住していてマイホームを保有していない場合に適用されます。

一方で、すでにマイホームを保有している相続人については、小規模宅地等の特例の適用は受けられません。

ただし、相続に合わせて一時的に賃貸住宅に住むような抜け道を防ぐため、要件が厳格に定められています。

二世帯住宅については、この要件に該当することはないため、それほど気にする必要はありません。

小規模宅地等の特例を二世帯住宅で活用した際の節税効果

それでは、実際に二世帯住宅について小規模宅地等の特例の適用を受けた場合には、どの程度の節税効果が得られるのでしょうか。

実際の金額を使って、その節税効果を検証してみましょう。

ケース(1)相続税の納税義務がなくなる場合

相続人は配偶者と子ども2人の計3人、二世帯住宅に子どものうち1人が住んでいるものとします。

そして、二世帯住宅の敷地5,000万円と現預金2,000万円の合計7,000万円の相続財産を保有しているとしましょう。

この場合、基礎控除の額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円ですから、相続財産の額の方が上回ります。

そのため、特例等の適用がなければ相続税額が発生します。

この場合、最大で225万円の相続税が発生することとなります。

しかし、二世帯住宅に住む子どもがその敷地を相続すれば、小規模宅地等の特例の適用が適用できます。

この場合、5,000万円×80%=4,000万円を相続財産の額から減額することができます。

そのため、相続財産の評価額は7,000万円-4,000万円=3,000万円となり、基礎控除4,800万円を下回るのです。

相続財産の額が基礎控除の額以下になれば、相続税の計算対象となる金額はないこととなります。

そのため、相続税の納税義務はなくなるのです。

なお、配偶者が相続しても小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

ただ、配偶者が相続すると、配偶者が亡くなった時の二次相続を考えなければなりません。

現状、子どもが小規模宅地等の特例の適用を受けることができるのであれば、そちらを優先して考えるべきといえます。

ケース(2)相続税が減額となる場合

先のケースと同じく相続人は配偶者と子ども2人の計3人、二世帯住宅に子どものうち1人が住んでいるものとします。

また、二世帯住宅の敷地が5,000万円あるほか、現預金が3,000万円、自宅以外の不動産が5,000万円あるものとします。

この場合、相続財産の合計額は1億3,000万円となり、基礎控除の額4,800万円を大きく上回っています。

そのため特例等の適用がなければ、最大で1,135万円の相続税が発生することとなります。

ここで二世帯住宅に住む子どもが自宅の敷地を相続し、小規模宅地等の特例を適用したとします。

すると、4,000万円の評価減が計算されるため、相続財産の合計額は9,000万円まで下がります。

ここから基礎控除4,800万円を引くと、課税対象となる財産の額は4,200万円となるのです。

この金額に対して発生する相続税の額は、3人合計で最大480万円となります。

この場合、小規模宅地等の特例を適用しなかった場合の相続税額1,135万円と比較すると、655万円の節税となっていることがわかります。

二世帯住宅で小規模宅地等の特例を活用するときの注意点

小規模宅地等の特例を適用することができれば、大きな相続税の節税となることがわかりました。

しかし一方で、その適用には細かい要件が定められており、誰でも適用できるわけではないのも事実です。

ここでは、小規模宅地等の特例を適用するために注意しなければならないポイントについて解説していきます。

相続税が発生しなくても申告は行う

小規模宅地等の特例を適用することによって、それまで発生すると思われていた相続税が1円も発生しなくなることがあります。

このことは、相続人にとっては大きなメリットとなるのですが、この時注意しなければならないことがあります。

それは、相続税を支払う必要はなくても、相続税の申告書は提出しなければならないことです。

子どもが小規模宅地等の特例を適用するためには、相続人と同居しているなどの要件があることは説明しました。

配偶者の場合は、そのような要件に関係なく適用できるとも説明しました。

ただ、どのような状況であっても相続税の申告書を提出することが、小規模宅地等の特例の適用を受けるためには必要です。

申告の際には、戸籍謄本や印鑑証明書などの添付書類も必要となるため、忘れずに添付しなければなりません。

特例を適用して相続税額がゼロとなったことに安心し、相続税の申告を忘れてしまうことのないようにしましょう。

区分所有家屋については適用できない

二世帯住宅については、以前は小規模宅地等の特例が適用できない構造のものも多くありました。

しかし、2015年の法改正により、それまで対象外とされていた建物内で行き来のできない構造のものも対象となっています。

そのため、親世帯との同居をしながら、小規模宅地等の特例が適用しやすい状況となっているのです。

しかし、二世帯住宅でも依然として小規模宅地等の特例が適用できないものがあります。

それが、区分所有家屋となっている建物です。

二世帯住宅の中には、1階部分と2階部分といった形で所有権を区分しているものがあります。

このような建物の場合、その敷地に対して小規模宅地等の特例が適用できないこととされているのです。

あらかじめ登記の状況について確認しておき、区分所有登記されている場合には合併登記を行うことも検討する必要があります。

まとめ

前述したように、以前は二世帯住宅に対して小規模宅地等の特例を適用することができないケースが多くありました。

しかし、2015年の法改正で、現在は多くの二世帯住宅で小規模宅地等の特例を適用することができます。

ただ、小規模宅地等の特例を適用するためには多くの要件があるため、事前にそれぞれの要件を確認しておく必要があります。

また、区分所有家屋となっている場合は適用できないため、あらかじめ別の対策をしておくことも考えておく必要があります。

対策を考える際、専門家の手助けが必要な場合には、相続に詳しい弁護士に相談することを検討しましょう。

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