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最終更新日:2022/12/14

【2021年最新】相続トラブルの目的物ランキング!5つの代表的な事例も紹介

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
相続問題は複雑なケースが多く、状況を慎重にお聞きし、相続人様のご要望の実現、相続人様に合ったよりよい解決法をアドバイスさせていただくようにしています。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

【2021年最新】相続トラブルの目的物ランキング!5つの代表的な事例も紹介

この記事でわかること

  • 遺産分割の争いとなった遺産ランキングがわかる
  • 遺産分割で裁判になった件数や相続放棄の件数の推移がわかる
  • 相続トラブルが起こりやすいケースがわかる

遺産分割や相続に関する争いが増えていると言われています。

しかし、身近に相続が発生することは多くないため、そのようなことを実感することはほとんどないのではないでしょうか。

相続トラブルは、多額の遺産がある場合や隠し子がいる場合など、特別なケースのみで起きるものではありません。

この記事では、相続財産の目的物ランキングや相続トラブルの元となった遺産金額ランキングを集計しました。

また、相続トラブルが起きやすいケースについてもまとめましたので、相続する遺産はないと思い込んでいる方もぜひチェックしてみてください。

相続財産の目的物ランキング

まずは令和元年度中に発生した相続における相続財産の種類と、相続財産全体に占める割合を確認していきます。

下の表は、国税庁が公表している相続財産種類別に見た相続税の申告状況です。

相続財産の中には、比較的分割が容易な現金や預貯金・上場会社の有価証券と、分割が難しい土地や家屋などの不動産があります。

相続財産に占める不動産の割合が大きいと、遺産分割の際に揉める可能性が高くなります。

目的物 被相続人の数(人) 価額(百万円) 相続財産に占める割合
1位 土地 102,230 5,760,979 34.38%
2位 現金・預貯金等 114,901 5,643,362 33.68%
3位 有価証券 78,640 2,546,034 15.19%
4位 その他の財産 99,677 1,819,771 10.86%
5位 家屋・構築物 97,232 879,267 5.24%
6位 事業用財産 12,276 77,695 0.46%
7位 家庭用財産 64,949 25,306 0.15%
合計 115,208 16,752,414

出典:国税庁ホームページ:令和元年度統計年報「2_直接税_相続税」

こうしてみると、遺産分割の際に揉める可能性の高いのは、土地の占める割合であることがわかります。

また、土地に次いで現金・預貯金等、有価証券の順に、その割合が高くなっていることがわかります。

価額を被相続人の数で割ると、被相続人1人あたりの平均額が求められます。

土地の被相続人1人あたりの平均額はおよそ5,200万円、現金・預貯金等はおよそ4,100万円、有価証券はおよそ2,800万円となっています。

分割しにくい土地の平均額が最も高くなっていることも、相続トラブルを引き起こしやすい要因となっています。

遺産分割の争いとなった遺産金額ランキング

次に見るのは、遺産分割事件となった相続の遺産価額です。

裁判所ホームページで公表されている司法統計から、令和元年度に認容・調停が成立した遺産分割事件の遺産価額ごとの件数は、以下のようになっています。

遺産総額 件数 割合
1位 5,000万円以下 3,097 42.87%
2位 1,000万円以下 2,448 33.88%
3位 1億円以下 780 10.80%
4位 5億円以下 490 6.78%
5位 5億円超 42 0.58%
算定不能・不詳 367 5.08%
総数 7,224

出典:裁判所ホームページ:司法統計年報家事事件編(令和元年度)

遺産分割の争いが生じるのは、多額の遺産がある場合だけであって、自分には関係ないと思っていませんか。

この統計を見ていただいてもわかるとおり、家庭裁判所で遺産分割事件として取り扱われた遺産分割事件のうち、遺産総額が5,000万円以下であるものが全体の4分の3以上となっています。

遺産が少ないからこそ、その遺産を相続人同士でどのように分割するかの意見がまとまらないということも考えられます。

また、少ない遺産の大半は自宅の土地であるために、自宅を相続しなかった人が不満に思うこともあるでしょう。

いずれにしても、遺産が少ないから問題は発生しないと考えるのは間違いです。

相続トラブルは誰の身近にも起こり得る問題と認識しておきましょう。

相続に関するデータ1|遺産分割事件の件数の推移

遺産分割事件の総数を過去10年にさかのぼって、その推移を見てみましょう。

裁判所ホームページから、毎年の遺産分割事件数を集計したものとなります。

年度 件数
平成21年 10,741
平成22年 10,849
平成23年 10,793
平成24年 11,737
平成25年 12,263
平成26年 12,577
平成27年 12,615
平成28年 12,179
平成29年 12,166
平成30年 13,040
令和元年 12,785

出典:裁判所ホームページ:司法統計年報家事事件編(令和元年度)ほか

前年より減少している年もありますが、全体的にはこの10年間、おおむね増加傾向にあるといえます。

その結果、令和元年の12,785件は、平成21年の10,741件に対して約2,044件(約19%)の増加となっています。

さらにさかのぼると、平成13年は9,004件、平成12年は8,889件というデータもあります。

平成12年から令和元年の20年間で3,896件も増加したこととなります。

相続に関するデータ2|相続放棄の件数の推移

相続放棄は、被相続人のすべての財産を引き継がないために行われる手続きです。

単に相続しないのとは異なり、相続放棄は財産や債務に関するすべての権利と義務から免れることができます。

相続放棄するためには、家庭裁判所で相続放棄の申述を行う必要があります。

裁判所ホームページでは、相続放棄の申述を受理した件数が公表されています。

年度ごとの推移は以下のようになっています。

年度 件数
平成21年 156,419
平成22年 160,293
平成23年 166,463
平成24年 169,300
平成25年 172,936
平成26年 182,082
平成27年 189,296
平成28年 197,656
平成29年 205,909
平成30年 215,320
令和元年 225,415

出典:裁判所ホームページ:家事審判新受事件の事件別件数(令和元年) 【家庭裁判所】ほか

遺産分割や相続に関するトラブルを避けるうえで、相続放棄が選択肢の1つになるケースがあります。

借入金などマイナスの財産を有していた被相続人が亡くなった場合、相続人の誰かがそのマイナスの財産を返済しなければなりませんが、相続放棄した人はその支払いから逃れることができます。

また、利用価値のない土地や家屋を相続すると、その後の維持・管理費用の負担に苦しむケースもあるため、相続放棄した方がいいこともあります。

相続は単に財産を引き継いでプラスになるだけではなく、マイナスになることもあるため、相続放棄すべき場合があることは、覚えておく必要があります。

相続に関するデータ3|遺産分割の審理の期間

実際に相続トラブルに発展して家庭裁判所での調停や審判が行われた場合、終結するまでにどのくらいの期間がかかるのでしょうか。

裁判所ホームページから、令和元年中に終結した遺産分割事件のデータを確認してみます。

審理期間 件数 割合
1月以内 293 2.29%
3月以内 1,255 9.82%
6月以内 2,813 22.00%
1年以内 4,333 33.89%
2年以内 3,034 23.73%
3年以内 748 5.85%
3年超 309 2.41%

出典:裁判所ホームページ:第45表 遺産分割事件数―終局区分別審理期間及び実施期日回数別―全家庭裁判所(令和元年度)

1年以内に家庭裁判所での審理を終えた件数は、全体のおよそ70%です。

全体の30%については、審理の期間だけでも1年を超えています。

また、実際には家庭裁判所に調停を申し立てるまでの期間はこのデータではわかりませんが、相当の期間が経過していると思われるため、相続が発生してからの期間はさらに長くなります。

相続税の申告をする場合、申告期限は相続開始から10か月とされており、この間に申告を行わないと、相続税額が減額される特例が適用できません。

調停や審判を行った場合、相続発生からの期間が1年を超えることも珍しくないため、特例を適用することができず、多額の相続税を負担せざるを得ないケースが相当数あるのです。

相続に関するデータ4|遺産分割の審理の回数

家庭裁判所で調停や審判を行った場合、どれくらいの審理が行われるのでしょうか。

裁判所ホームページから、令和元年中に終結した遺産分割事件のデータを確認します。

実施回数 件数 割合
0回 767 5.99%
1回 1,489 11.65%
2回 1,842 14.41%
3回 1,599 12.51%
4回 1,319 10.30%
5回 1,090 8.53%
6~10回 3,045 23.81%
11~15回 1,011 7.91%
16~20回 353 2.76%
21回以上 270 2.11%

出典:裁判所ホームページ:第49表 遺産分割事件数―実施期日回数別審理期間別―全家庭裁判所(令和元年)

1、2回の審理で終結したケースもある一方で、6回以上審理を重ねたケースが全体の3分の1を上回っています。

事案が複雑になるほど審理の回数が増え、審理の実施回数が増えるほど審理期間も長期化する傾向にあります。

相続トラブルが起こりやすい5つのケース

相続トラブルが起こりやすい5つのケース

ここまで見てわかるように、相続が発生した際にトラブルになって家庭裁判所での調停や審判にまで発展するケースは、決して珍しくありません。

また、トラブルに発展するかどうかは、遺産の額に左右されるものでもありません。

相続トラブルが発生するのにはいくつかの理由があります。

理由を知ったうえで生前から対策を行っていれば、相続や遺産分割に関する争いをかなり減らすことができます。

ケース1:相続遺産の大半が不動産である

遺産の大半が不動産である場合、2つの点で問題になります。

1つ目の問題は、不動産を複数の相続人で分割するのが難しいことです。

すべての相続人が、同じくらいの不動産を相続することができれば問題にはなりませんが、それだけの不動産を保有していることは多くありません。

また、1つの不動産を相続人で共有するのは、問題を先送りしているだけで、争いの火種は残ったままです。

根本的な解決をするためには、不動産を分筆するか売却してお金に換えるなどしなければ均等に相続することができません。

2つ目の問題は、遺産の多くが不動産である場合、相続税の納税が困難となることです。

相続税を納税する際には、お金ではなく不動産などのものを納付する物納という制度もありますが、条件があるため誰でも利用できるわけではありません。

また、不動産を売却して現金化する方法もありますが、相続税の納税期限に間に合わせるために売り急ぐと、通常より安い金額でしか売ることができない可能性があります。

                                                                                                                                                                                                                                       
このようなトラブルを避けるためには、

  • ①被相続人の自宅については誰が相続するか遺言書に記載しておく
  • ②不動産を相続できない人のために生命保険を活用する
  • ③自宅以外の活用されていない不動産については売却をする

といったことを進めていく必要があります。

不動産の場合、売却するためには時間がかかるため、生きている間に将来発生する相続を見据えた対策を行っておく必要があります。

ケース2:相続人の関係が複雑

相続が発生した際にまず相続人となるのは、被相続人の配偶者や子供です。

実の親子や兄弟が相続人になった場合でも、争いになることは珍しくないのですが、この相続人の関係がより複雑になると、ますますトラブルになる可能性が高くなります。

例えば

  • ①被相続人に離婚歴があり前妻との間に子供がいるが、普段連絡をとっていない
  • ②隠し子がおりその子供を認知している
  • ③実子以外に養子縁組して親子関係が発生した子供がいる

といった場合、被相続人と一緒に生活している子供とそれ以外の子供との間に交流がないケースも少なくありません。

そうすると、相続人全員で遺産分割協議を行うことは難しくなり、相続に関する手続きを進めることができなくなります。

そもそも、被相続人と一緒に生活し面倒をみてきた配偶者や子供と、被相続人と一緒に生活することができなかったと考える子供とが話し合いを行うこと自体が困難なうえ、仮に話し合いを行ったとしてもお互いの立場を理解しあうことはできないかもしれません。

特に前妻の子供や隠し子がいる場合は揉める可能性が高いため、そのような子供がいる場合には、早めにそのことを家族に伝えておくとともに、トラブルを防ぐために遺言書を作成するようにしましょう。

ケース3:子供以外の人が相続する

先ほどのケースとは逆に、被相続人に子供がいない場合もトラブルの原因となる可能性があります。

配偶者の有無にかかわらず子どもがいない場合、まずは被相続人の父母が相続人となります。

しかし、亡くなった人が高齢であれば、その父母もすでに亡くなっていることが多く、この場合、相続権は父母から被相続人の兄弟姉妹に移ります。

また、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子ども(被相続人の甥や姪)が相続人となります。

被相続人の兄弟姉妹にとってはタナボタのような相続となります。

一方、被相続人に配偶者がいる場合、その配偶者にとって普段関わりの少ない被相続人の兄弟と遺産分割協議を行うことは、決して望ましいものではありません。

ましてや、被相続人の甥や姪とはほとんど面識がないケースもあり、遺産分割協議を行う際は揉める可能性が高くなってしまいます。

また、被相続人が借入金など多額の債務を有していた場合は、相続放棄をしないと兄弟姉妹や甥・姪までその債務を引き継ぐこととなってしまいます。

親が亡くなった場合と違い、遺産の内容を知らないことが多いため、配偶者など他の相続人と連絡をとっていないと思わぬ負担を迫られることもあるのです。

子供がいない兄弟姉妹がいることは、亡くなる前からわかっていることです。

お互いに元気なうちから、亡くなった後の財産の行方や財産・債務の状況について話をする機会を作るようにしましょう。

ケース4:寄与分を主張する人がいる

被相続人が亡くなるまでの間、病気により看護が必要な状態であったり、認知症によって介護が必要な状態であったりした場合、その人の面倒をみてきた人がいるはずです。

相続人全員で分担していればトラブルになることはありませんが、たいていは一緒に住んでいた人や近くに住んでいた人にその負担が集中してしまいます。

また、長男の妻など法定相続人でない人が面倒をみてきた場合もあります。

被相続人のために力を尽くしてきた人からすれば、少しでも多く遺産を相続したいと考えるのが普通です。

相続の際には、被相続人の財産の維持や増加に貢献のあった相続人について、寄与分を主張することが認められます。

また、法定相続人でない人でも、特別の寄与の制度により遺産の一部をもらうことができるようになったため、今後は他の相続人に対して寄与分を主張するケースが増えることが予想されます。

寄与分を主張する人がいると、その貢献の有無や金額の算定方法をめぐって争いになるケースが多く、トラブルに発展してしまうことも少なくありません。

周りの人に看護や介護をしてもらっている人は、面倒をみてくれた人に対して、金銭や財産を多めに相続してもらえるような遺言書を作成しておくことが対策の1つとなります。

ただし、認知症の人が作成した遺言書については、その有効性が問題になる可能性もあるため注意が必要です。

ケース5:遺産について詳しく知っている人がいない

配偶者や子供が相続人となる場合でも、被相続人が保有する遺産について詳しく知らないケースは少なくありません。

相続が発生した後に初めて遺産の内容を知り、そこから遺産分割について話し合いをするのでは、揉める可能性が高くなるばかりでなく、その後の相続の手続きがスムーズに進まない可能性も出てきます。

特に、遺産の中に多額の債務がある場合や保有し続けることがリスクになる不動産がある場合、相続放棄したいと考える人が出てきます。

しかし、相続放棄ができるのは相続発生を知ってから3か月以内とされているため、遺産の内容を調べるのに時間がかかってしまうと、その期限を過ぎて相続放棄できなくなってしまうことがあります。

相続人となる人は、財産を持っている人が元気なうちから、その内容について確認しておくと、相続が発生した時にもスムーズに手続きを進めることができます。

できれば、将来的に被相続人・相続人となる人すべてがそろった状態で、将来発生する相続について話し合いをしておくといいでしょう。

まとめ

相続トラブルは決して特別な人だけに起こるものではありません。

裁判所にその争いが持ち込まれなくても、何らかのトラブルや揉め事となっている相続は数多くあります。

相続遺産の大半が不動産の場合や、離婚歴があり前妻との間に子供がいる場合、子供がいない兄弟姉妹がいるなど、相続の際にもめる可能性が高いと考えられる場合は、相続が発生する前に何らかの対策を行っておきましょう。

事前に遺言書を作成したり、亡くなった後の財産について話し合う機会を持つことで、トラブルを回避でき、深刻な問題に発展しないようにすることができます。

避けては通れない相続や遺産分割の問題について、家族や親族全員で話し合い、情報を共有することが一番の対策になるはずです。

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