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未払い残業代を請求されたときの会社側の対処法!リスクや判例も紹介

この記事でわかること

  • 未払い残業代を請求されたときに会社がとる適切な対応
  • 会社側が反論できるケースと根拠、会社側の勝訴判例
  • 未払い残業代を発生させない会社側の対策

従業員からの未払い残業代の請求は、企業にとってよくあるトラブルのひとつです。
たとえ毎月残業代を支給していても、突然高額な請求を受けるケースも珍しくありません。

しかし、請求内容を鵜呑みにし、あるいは無視して放置すると、不要なトラブルの発生や本来支払い義務のない金銭まで支払う可能性もあります。
会社にも反論できるケースがあるため、適切な知識で冷静に対応しましょう。

この記事では、未払い残業代を請求された際の会社側の対応方法や、反論できるケースなどを解説します。
また、請求額が減額された判例や、未払い残業代を発生させない対策も紹介しているため、会社のトラブル予防に役立つ内容です。

未払い残業代を請求されたときの会社側の対応方法

未払い残業代の請求は、次のような方法でされます。

  • 従業員からの直接請求
  • 労働組合を通じての請求
  • 労働基準監督署(労基署)の調査

ここでは、それぞれの方法について、会社側の対応方法を解説します。

従業員からの直接請求

従業員から直接未払い残業代を請求されるケースには、内容証明郵便の送付や、弁護士を通じた請求などが一般的です。
しかし、会社が請求内容にそのまま応じるのは適切ではありません。
従業員が主張する未払い残業代の金額に、計算ミスや証拠の不備など、会社に支払い義務のない残業代まで含まれている可能性があるためです。

まずはタイムカードや賃金台帳、就業規則などの社内資料をもとに、請求内容の正当性についての確認が必要です。
請求内容に間違いがあった場合は、証拠を提示した上で従業員に丁寧に説明し、解決時は合意書を作成するなど、記録を残しましょう。

話し合いでの解決が困難な場合は、労働審判や訴訟に発展する可能性があります。
この場合、法的な主張や証拠提出に、高度な専門性が求められるため、弁護士への相談を検討しましょう。

労働組合を通じての請求

未払い残業代は、労働組合を通じて請求されるケースがあります。
企業内労働組合がなくても、個人で加入可能な合同労働組合(ユニオン)を通じて、団体交渉を申し込まれる場合もあるため、注意しましょう。

会社は、団体交渉の申し入れを正当な理由なく拒否できません(労働組合法7条2号)。
応じなければ不当労働行為と判断され、労働委員会へ救済申し立てがされる場合や、損害賠償請求といった法的リスクを負う恐れがあります。
しかし、労働組合の要求する内容に必ずしも従う必要はありません。
まずはタイムカードや賃金台帳などの証拠をもとに、請求された残業代の正当性を確認しましょう。

また、労働組合との交渉は、法的な知識に基づいた難易度の高い交渉になる場面もあるため、弁護士への早めの相談がおすすめです。

労働基準監督署(労基署)の調査

従業員が未払い残業代について労基署に通報した場合、会社に調査(臨検)が入る可能性があります。
調査では、以下のことが行われます。

  • 賃金台帳や出勤簿、雇用契約書、就業規則などの関連書類の確認
  • 経営者や労務担当者、従業員へのヒアリング

調査の結果、未払い残業代が認められた場合は是正勧告書が交付され、会社は期日までに改善措置を講じ、是正報告書を提出しなければなりません。

是正勧告を無視した場合や、適切に対応しなかった場合は、会社名が公表される恐れがあります。
また、未払い残業代は、労基法に基づく罰則の対象です(労基法119条)。
会社側の対応が悪質と判断されれば、6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため、是正勧告には必ず従いましょう。

未払い残業代に対して会社側が反論できるケース

未払い残業代について、会社側が反論できる代表的なケースには、以下のようなものがあります。

  • 残業代請求の時効が成立している
  • 請求人が管理監督者である
  • みなし労働時間制が適用されている
  • 残業時間が過大に計算されている
  • 残業が禁止・許可制である
  • 固定残業代として既に支払っていた

ここでは、それぞれのケースについて詳細を解説します。

残業代請求の時効が成立している

残業代の請求には時効があるため、既に時効が成立している期間については、時効を理由に支払いの拒否が可能です。
具体的な時効期間は、発生した時期によって、次のように異なります。

  • 2020年3月31日以前に発生した残業代…2年
  • 2020年4月1日以降に発生した残業代…3年

時効は、残業代の支給日の翌日を起算日としてカウントします。
そのため、まずは請求対象となっている残業代の発生日と支給日を確認し、時効期間が経過していないかを確認しましょう。

請求人が管理監督者である

労基法に定められる「管理監督者」に該当する従業員は、労働時間、休憩、休日に関する規定から適用が除外されています(労基法41条2号)。
そのため、残業代や休日出勤手当などを管理監督者に支払う必要はありません(深夜の割増賃金は支払い義務あり)。

一方で、実際には管理監督者としての実態が伴っていない、いわゆる「名ばかり管理職」が問題となるケースもあります。
管理監督者に該当するかの判断は、役職名ではなく、実態として次のような要件を満たすかが考慮されます。

  • 経営者と一体的な立場で職務にあたっている
  • 勤務時間や業務内容について一定の裁量が認められている
  • 管理職にふさわしい給与や手当などの待遇を受けている

これらの要件を満たさない場合は、残業代の支払い義務が発生する可能性があるため、注意が必要です。

みなし労働時間制が適用されている

みなし労働時間制とは、実際に働いた時間を算定するのが難しい場合に、一定の時間働いたとみなす制度です。
実労働時間は考慮されないため、この適用を根拠に請求内容に反論できる場合があります。

しかし、実際に労働時間を算定しづらい場合であったか否かは、厳格に判断されます。
会社の外で働いていても、携帯電話などで随時上司から指示を受けている場合は、みなし労働時間制の適用要件を満たさないため、注意しましょう。

残業時間が過大に計算されている

請求された未払い残業代のうち、実際には残業時間として認められない時間が含まれ、過大に計算されているケースがあります。
たとえば、次のケースでは残業時間として認められない可能性があります。

  • 変形労働時間制を採用していた
  • 勤務時間中に業務とは無関係な私的行動をしていた
  • 所定の休憩時間以上に休憩を取っていた
  • 私用のために会社に居残っていた
  • 通勤ラッシュを避けるために始業時刻前に早く出勤していた

しかし、変形労働時間制が正しく運用されていない場合や、業務上必要な早出出勤が黙認されていた場合は残業時間とみなされるため、注意が必要です。
休憩時間中に電話番や接客などの業務を行っていた場合も「労働から完全に解放されていた」とは言えないため、休憩と認められない可能性があります。

残業が禁止・許可制である

会社が残業を原則禁止、あるいは許可制を導入していた場合、残業は会社の指示によるものではないと反論できる可能性があります。
ただし、制度として禁止や制限を設けているだけでは、反論の根拠として不十分になる恐れがあります。
実際にその制度が機能していたか否かが重要な判断ポイントです。

たとえば、申請なしの残業が常態化している場合や、上司が残業を黙認していた場合は「実質的な指示があった」と判断される可能性が高くなります。
ルールの規定だけでなく、その運用状況を裏付ける証拠(申請記録、指導履歴)の整備が重要です。

固定残業代として既に支払っていた

固定残業代(みなし残業代)制度とは、実際の残業時間に関わらず、あらかじめ定めた時間分の残業代を固定で支払うことをいいます。
そのため、すでに固定残業代として支給済みの部分は支払い義務がないと反論が可能ですが、制度の運用状況には注意が必要です。

制度の運用が不適切だった場合は、制度そのものが無効と判断され、それまでに固定残業代として支払っていた金額は、基本給の一部とみなされます
この場合、高額になった基本給を基に割増賃金が再計算され、かつ、今まで支払った固定残業時間分の残業代も未支給と判断されます。
結果として非常に高額な未払い残業代を請求されかねません。

このようなリスクを避けるためにも、固定残業代制度を導入する際は、就業規則や雇用契約書などの明確な記載や、適切な運用が重要です。

在籍中に未払い残業代を請求されたときの注意点・リスク

未払い残業代は、退職した従業員からだけではなく、現在在籍している従業員から請求されるケースもあります。
この場合のリスクや注意点は、次の通りです。

  • 他の従業員への波及
  • 時効の援用・中断・更新

ここでは、それぞれのリスクや対応の注意点について詳しく解説します。

他の従業員への波及

在籍中の従業員からの未払い残業代の請求は、社内で情報が広まりやすい点に注意が必要です。
一人の請求をきっかけに他の従業員にも同様の動きが広がり、結果として多額の残業代を支払う事態に発展する可能性があります。

また、請求してきた従業員のみに個別に支払うと、他の従業員に知られた際に、会社との信頼関係を大きく損ないます。
職場環境の悪化や大量離職につながる恐れもあるため、場当たり的な対応は避けましょう。
トラブルを避け、組織全体への影響を最小限に抑えるためには、弁護士への早期の相談、適切な対応方針の検討が重要です。

不利益扱いの禁止

残業代請求が他の従業員へ波及し、会社が損害を被ったとしても、きっかけを作った従業員に不利益な扱いをすることは法律で禁止されています
報復の意図で人事異動や、降格、減給、解雇などの取り扱いをしないように注意しましょう。
こうした措置を取る場合は、報復目的ではないと、会社側が根拠を示す必要があります。

時効の援用・中断・更新

時効の過ぎた残業代は、会社が時効を主張(時効の援用)すれば、請求権は消滅します。
しかし、会社が時効を主張せずに支払いを認めれば、時効消滅分の残業代請求は有効となり、原則撤回できません。

また、時効の援用ができないケースもあるため、注意が必要です。
内容証明郵便で支払いの催告を受けた場合や、訴訟などの法的手続きが行われている間は、時効が一時中断されます(時効の完成猶予)。
裁判等の判決により支払い義務が確定した場合は、それまでの時効期間がすべてリセット(時効の更新)され、再び時効期間がスタートします。

このように、会社や従業員の対応によって、時効が主張できないケースがあるため、安易に応じずに冷静に対応しましょう。

未払い残業代に関する判例

残業代請求は多くの場合、企業に支払い義務が生じますが、企業側の主張が認められ、残業代の支払い義務が否定された裁判例も存在します。

ここでは、会社側の反論が認められた代表的な裁判例を紹介します。

センチュリー・オート事件 平成19年3月22日東京地裁判決

自動車修理会社に営業部長として勤務していた従業員が、会社に対して未払い残業代や付加金を含む未払い賃金の支払いを求めた事件です。
会社は、請求人が管理監督者に該当するとの理由から、残業代の支払い義務は無いと主張しました。

事件概要

従業員は営業部長の職にあり、営業部門の労務管理を行うなど、経営者に近い立場で職務を遂行していました。
タイムカードによって出退勤の時間を管理していましたが、遅刻や早退等によって基本給は減額されず、労働時間は厳格に管理されていませんでした。
また、この従業員は会社の代表者、工場長に次ぐ、高額な給与を受け取っていた実態がありました。

判決

裁判所は、当該従業員が労働基準法上の管理監督者に該当すると判断し、会社に対する残業代及び付加金の請求を認めませんでした。

未払い残業代に対する会社側の対策

未払い残業代の請求は、企業にとって深刻な経済的リスクとなります。
会社を守るためには、日頃から未払い残業代を発生させない仕組みづくりが重要です。

企業が取り組むとよい主な対応策には、次のようなものがあります。

  • 適切な労働時間管理
  • 残業の許可制
  • 給与制度の正確な整備・運用

ここでは、それぞれの取り組みについて詳しく解説していきます。

適切な労働時間管理

会社が未払い残業代の請求を受けた場合、労働時間に関する客観的かつ正確な記録がなければ、従業員からの請求に反論できません。
また、労働時間の把握は企業に課せられた法的な義務です(労働安全衛生法66条の8の3)。

タイムカードや勤怠管理システムなどを用いて、従業員の労働時間を日々正確に記録し、万が一請求を受けた場合でも対応できるようにしましょう。

残業の許可制

未払い残業代請求の対策として、残業を制限・管理する制度を導入し、不要な残業を発生させない取り組みも有効です。
たとえば、残業を上司の事前承認制と就業規則等で定めれば、無断残業や不要な残業を防止できます。
この制度が適切に運用されていれば、会社の指示によらない残業には残業代が発生しないという反論が可能になる場合もあります。

ただし、制度が形骸化していると認められれば、かえって不利益になる可能性もあるため、申請と承認の手続きを正しく行うよう徹底しましょう。

給与制度の正確な整備・運用

各種手当や固定残業代などの給与制度は、制度そのものが否定された場合、高額な未払い残業代請求に転じるリスクがあります。
このような事態を避けるためにも、会社は給与制度の法的要件を正しく理解し、就業規則などに明記した上で、適切に運用していくことが重要です。

会社にとってリスクの少ない制度の設計や、現状の制度が正しく運用できているかを確認したい場合は、労働法に詳しい弁護士に相談しましょう。

まとめ

未払い残業代の請求は、退職者だけでなく在籍中の従業員からも発生し得る、企業にとって大きなリスクのひとつです。
一人の請求をきっかけに、社内全体に波及した場合、多額の支払い義務が発生するケースも少なくありません。

こうしたリスクを回避するためには、日々の労務管理を適切に行い、未払い残業代が発生しない仕組みの整備が極めて重要です。

そのため、未払い残業代対応などの実績がある弁護士に相談するのがよいでしょう。

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