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弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所 > コラム > 労働法全般 > うつ病の社員を退職させても問題ない?企業側がとるべき対応方法について

うつ病の社員を退職させても問題ない?企業側がとるべき対応方法について

この記事でわかること

  • うつ病で退職する社員への対応
  • うつ病の社員を放置するリスク
  • うつ病の社員を退職させる方法と流れ

うつ病の社員が退職を希望する場合、企業は何に気をつけるといいのでしょうか。
企業として適切な対応を取らないと、訴訟を起こされるケースや、後々トラブルに発展するケースも少なくありません。

この記事では、具体的な手続きの流れや法的根拠、注意しなければならない点を挙げ、企業の適切な対応を分かりやすく説明します。

目次

うつ病の従業員を放置するリスク

企業にとって、うつ病などのメンタルヘルスに問題を抱える従業員の存在は、非常にデリケートな問題です。
特に、うつ病の従業員を放置することで生じるリスクは深刻です。
ここでは、企業がうつ病の従業員に対して適切な対応を取らない場合のリスクについて詳しく解説します。

生産性の低下と業務への支障

うつ病の従業員を適切にサポートしない場合、その従業員の生産性が著しく低下する可能性があります。
うつ病の従業員をサポートせずにい続けた場合、他の従業員にも悪影響を及ぼし、チーム全体の生産性が低下することになります。
また、業務のミスや納期の遅れが発生し、会社全体のパフォーマンスに悪影響を与える可能性があります。

特に顧客対応や事業の進行に影響を及ぼす場合、企業の信頼性や評判にも傷がつくことになります。
長期的な視点で見ると、従業員のメンタルヘルス問題を放置することは企業全体にとって非常にリスクが高いといえます。

離職率の増加

うつ病の従業員を放置することや、適切な対応を怠ることは、他の従業員にも悪影響を与えます。
特に他の従業員が「会社は自分たちの健康や職場環境に関心がない」と感じた場合、企業全体の士気が低下することになるでしょう。

士気の低下は、生産性や創造性の低下に直結し、離職率の増加を招く可能性があります。
特に優秀な人材が、企業の対応に失望して退職することになれば、企業にとって大きな損失になります。
そうなると企業は新たな人材を採用し、育成するために多大なコストと時間を要することになります。

労働契約上の安全配慮義務違反の可能性

企業は、労働契約の一環(労働契約法第5条)として、従業員の安全と健康を守る義務があります。
この「安全配慮義務」に違反する場合、企業は法的な責任を問われることになるでしょう。
うつ病の従業員を適切にサポートせず、放置することは、この義務に違反する可能性があります。

たとえば、従業員がうつ病の症状を悪化させた場合、企業が適切な対応を怠ったとして、従業員から損害賠償を求められるリスクが生じます。
また、労働基準監督署からの指導や勧告を受ける可能性もあり、場合によっては企業名が公表されることも考えられます。
この結果企業の社会的信用を損ない、長期的な経営に悪影響を与えることになります。

企業イメージの低下

現代社会では、メンタルヘルスケアに対する関心が急速に高まっています。
特に、企業が従業員の健康に対してどのような姿勢を示すかは、世間から注目を浴びています。
企業の対応がメディアやSNSで取り上げられると、瞬く間にその情報が広まり、企業全体の評判に深刻なダメージを与えることが考えられます。

このようなイメージの低下は、消費者や顧客からの信頼を失うだけでなく、将来的な優秀な人材の確保にも悪影響を及ぼします。

うつ病を理由として退職させられない

企業にとって、うつ病などの精神的な疾患を持つ従業員への対応は、慎重かつ適切に行う必要があります。
特にうつ病を理由に従業員を退職させることは、法律上にも非常にリスクが高く、無視できない問題です。

ここでは、その理由についてわかりやすく解説します。

労働契約法と解雇の正当性

日本の労働法では、企業が従業員を解雇するためには「客観的に合理的な理由」が必要であり、かつその解雇が「社会通念上相当であることが認められる」場合に限られます(労働契約法第16条)
これは、企業が恣意的に従業員を解雇することを防ぐための重要な規定です。

うつ病を理由とした解雇が、この条件を満たすかというと、極めて難しいといえます。
うつ病は治療を受けることで回復する可能性があり、従業員が業務に復帰できる可能性も十分にあります。
そのため、単に「うつ病だから」という理由で解雇することは、客観的に合理的な理由とはみなされず、結果として不当解雇となるリスクが高いでしょう。

合理的配慮義務と企業の責任

うつ病は、精神的な障害として認定される場合があり、その場合は障害者雇用促進法の対象となります。
この法律では、企業は障害を持つ従業員に対して「合理的配慮」を行う義務があるとされています

合理的配慮とは、障害を持つ従業員が円滑に業務を遂行できるようにするための、必要な措置を講じることを指します。
具体的には以下のような工夫が挙げられます。

  • 業務内容や勤務時間の柔軟な調整
  • リモートワークの導入
  • 必要に応じて専門家の助言を受ける など

このように、従業員が安心して働ける環境を提供することが求められます。

うつ病を理由にした解雇は不当解雇にあたる

うつ病を理由にした解雇は、ほとんどのケースで不当解雇とみなされる可能性が高くなっています。
特に、労働契約法や障害者雇用促進法などに違反するような形での解雇は法的に無効とされ、企業は解雇された従業員に対して、賠償責任を負うことになります。

また、解雇だけでなく、退職勧奨(自発的に退職を促す行為)についても、注意が必要です。
うつ病に苦しむ従業員に対して、無理に退職を勧める行為は、心理的なプレッシャーを与えることになり、パワーハラスメント(以下パワハラ)と認定される可能性があります。
パワハラに認定された場合も、法的問題を引き起こし、企業にとって大きなリスクとなります。

企業が取るべき対応

企業で働く従業員がうつ病を発症した場合、企業が取ることを求められる対応は以下のとおりです。

1.原因の特定と対策の実施

まず、従業員がうつ病になった原因を特定し、業務量や職場環境に問題がある場合は、それを改善するための具体的な対策を講じる必要があります。

2.専門医との連携

従業員が適切な治療を受けられるよう、必要に応じて、専門医との連携を図ります。
また、医師の診断書をもとに、業務内容や勤務時間の調整を行い、従業員が無理なく働ける環境を整えます。

3.合理的配慮の提供

障害者雇用促進法に基づき、従業員が必要とする合理的配慮を提供します。
たとえば、フレックスタイムの導入やリモートワークの選択肢を検討し、従業員がストレスを軽減できるように配慮します。

4.継続的なサポート

従業員が復職した後も、継続的にサポートを行い、再発防止に努めます。
必要に応じて定期的な面談を行い、従業員の状態を把握しながら適切な対応を続けます。

うつ病の従業員を退職させる方法

前述したように、うつ病などの精神疾患を抱える従業員に対して企業が退職を求める場合、法的な制裁やリスクが伴います。
適切な手続きを踏まない場合、後に労働紛争に発展するリスクがあるため、慎重な対応が必要です。
社内での対応が難しい場合、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談し、法的なリスクを確認しながら進めることが望ましいでしょう。

ここでは、うつ病の従業員を退職させる方法と、その際のリスクについて、わかりやすく解説します。

自主退職を促す

企業が考慮すべき最もリスクの少ない方法は、退職勧奨、すなわち従業員に自主的な退職を促すことです。
自主退職とは、従業員が自らの意思で退職届を提出し、会社との雇用関係を終了させることを指します。
これを促す際には、従業員が自主的に退職を決定するよう、過度な圧力をかけずに丁寧な対応が求められます。

具体的には、次のような対応が推奨されます。

カウンセリングや面談を通じたコミュニケーション

従業員がうつ病に至った原因や現在の状況を確認し、今後の働き方について話し合う場を設けます。
従業員の気持ちを尊重しつつ、自主退職を促すことが可能です。

退職勧奨の法的注意点

退職を強要することは、問題となる可能性があります。
厚生労働省のガイドラインでは、退職勧奨は、あくまで「本人の意思に基づくもの」でなければならないとされています。
過度な圧力や脅迫的な言動は違法となり、後に労働紛争や損害賠償請求の原因となります。

労働契約上の解雇

うつ病の従業員を解雇する方法もありますが、これには高い法的ハードルが伴います。
解雇は、労働基準法や判例に基づく「合理的な理由」が必要とされ、また「社会通念上相当」であることが求められます

具体的な法的根拠と注意点は、以下のとおりです。

【労働基準法による解雇予告義務】

労働基準法第20条では、解雇する場合、30日以上前に解雇予告を行うか、もしくは30日分の平均賃金を支払うことが義務付けられています。
うつ病による長期休職が続いた場合でも、解雇には慎重な判断が必要です。し

【判例に基づく解雇の合理性】

解雇の合理性は、過去の判例に基づき、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 業務上の適応性の回復が難しい
    たとえば、長期間にわたる休職にも関わらず、職場復帰の見込みがない場合
  2. 業務の円滑な運営に支障をきたしている
    うつ病が原因で業務遂行能力が著しく低下し、業務に支障が生じている場合
  3. 代替策がない
    配置転換や職務内容の変更など、他の対応策が試みられたが、問題が解決しない場合

これらの条件を満たしていない解雇は「不当解雇」とみなされる可能性があり、従業員からの訴訟リスクを伴います。

休職期間満了による退職

休職期間満了後に復職が不可な場合、就業規則に基づき退職扱いとする方法もあります。

【就業規則の整備】

就業規則には、休職期間の長さや、「休職期間満了時に復職が不可能な場合、自然退職となる」など期間満了時の扱いについて明確に規定しておく必要があります
休職期間中の対応として、従業員と適切に連絡を取り、復職時には支援が行われていることが求められます。

【自然退職と解雇の違い】

自然退職は、企業の就業規則に基づき、休職期間が終了しても従業員が復職できない場合に、従業員に退職の意思がなくても、自動的に退職となることを指します。
解雇は、企業側が従業員との雇用契約を一方的に終了させる手続きです。

不当解雇となりうるケース

うつ病などのメンタルヘルス不調を理由に従業員を退職させる場合、法的に適切な手続きを取らないと「不当解雇」とみなされる可能性があります。
企業は慎重な対応が求められるため、ここでは不当解雇となりうる代表的なケースを解説します。

休職期間を使い切っていない場合の解雇

労働契約や就業規則で定められた休職期間を従業員がまだ使い切っていない場合、その従業員を解雇することは、合理的な理由が欠如しているため、不当解雇とされる可能性が高いです。
たとえば、休職期間が1年間と定められている場合、その期間内に復職が難しいと判断されても、休職期間が終了するまでは解雇することができません。

労働契約法第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用:法令検索:労働契約法

業務が原因のうつ病で休職している場合の解雇

業務が原因のうつ病で休職している従業員を解雇することは、以下の法律に抵触し、不当解雇となります

労働基準法第19条(解雇制限)
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。

引用:法令検索:労働基準法

医師が復職可能と診断している場合の解雇

会社が従業員を独自の判断で解雇する際、医師の「復職可能」との診断を無視することは、不当解雇とされる場合が多いです。
特に、医師が業務内容や勤務時間の調整を求めている場合、会社は実施する義務があります。
この義務は、労働契約法第5条で定められた安全配慮義務に基づき、従業員の安全を確保するために必要です。

労働契約法第5条(安全配慮義務)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

引用:法令検索:労働契約法

会社が復職支援を行っていない場合の解雇

うつ病などで休職していた従業員が復職を希望している場合、会社はその復職を支援する義務があります。
復職支援を行わずに解雇を決定することは、不当解雇とみなされる可能性が高いでしょう。

労働契約法第3条では、従業員が安心して働ける環境を提供する義務を企業に課しています。
復職支援はその義務の一環であり、たとえば職場復帰プログラムの導入や、負担の少ない業務内容の検討などが含まれます。

労働契約法第3条(労働契約の原則)
労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

  1. 2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
  2. 3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
  3. 4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
  4. 5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

引用:法令検索:労働契約法

復職後の業務内容が過度に厳しい場合の解雇

従業員がうつ病から復職した後に、過度に厳しい業務内容を与えたり、以前と同じ業務を強要したりすることは問題となる行為といえます。
復職した従業員の業務内容が、適切な配慮に欠けた場合、それに伴うストレスでうつ病が再発し、最終的に解雇へと至ることがありますが、これは不当解雇と判断される可能性が高いでしょう。

労働契約法第5条の安全配慮義務に基づき、健康状態に応じた業務内容の調整が求められますが、それを怠った場合の解雇は無効となる可能性があります。

従業員との十分な話し合いを行っていない場合の解雇

従業員がうつ病で休職している、または復職を希望している場合、会社は従業員との十分な話し合いを行う義務があります。
従業員の意見や状況を無視して、解雇を強行することは、不当解雇とみなされる可能性が高いでしょう。

労働契約法第3条では、労働条件の決定において、労働者の意見を十分に反映させることが求められています。

うつ病の従業員を退職させる流れ

企業としては、労働者の健康状態に配慮しながらも、企業活動を維持するために必要な措置を取らなければならない場合があります。
適切な手続きを行うことで、法的リスクを最小限に抑えることができます。

ここでは、休職命令や退職勧奨などの流れについて詳しく解説します。

休職命令を出す

うつ病の従業員が業務遂行に支障をきたしている場合、企業は従業員に対して休職を命じることができます
休職手続きの流れは、一般的に以下のようになっています。

【手続きの流れ】

  • 診断書の取得
    従業員がうつ病と診断された場合、まずは医師の診断書を取得することが必要です。
    この診断書に基づき、休職が適切かどうかを判断します。
  • 就業規則の確認
    休職命令を出すためには、会社の就業規則にその根拠が明記されている必要があります。
    休職期間中の賃金支払いについても、就業規則や労働協約に従います。
  • 休職期間の設定
    休職期間は無期限ではなく、就業規則で定められた期間内で設定されます。
    一般的な休職期間は、3カ月から6カ月です。
  • 休職期間中に従業員が治療を受け、復職が見込まれる場合は、企業はその従業員の復職を支援する義務があります。
    一方で、休職期間が終了しても従業員が復職できない場合は、退職勧奨などに進むことになります。

    休職中の対応

    休職期間中、企業は従業員の健康回復を支援するための措置を講じることが求められます
    必要に応じて、産業医との連携や従業員への定期的な連絡を行い、復職の可能性を探ります。

    【具体的な措置】

  • 産業医の活用
    従業員の状態を適切に把握するため、産業医の意見を参考にすることが重要です。
    産業医は、従業員の復職の可否や、職場復帰のための支援策について助言を提供します。
  • 復職の準備
    休職期間中に従業員の回復が見込まれる場合、復職に向けた準備を進めます。
    復職時には、業務量の調整や働き方の見直しなど、適切な環境を整えることが重要です。
  • 退職勧奨の実施

    休職期間が終了しても、従業員が復職できない場合、企業は「退職勧奨」を行うことができます。
    退職勧奨とは、従業員に対して自主的に退職を促す手続きです。
    強制ではなく、あくまで自主的な退職を促すものであり、従業員に対して過度の圧力をかけることは違法となります。

    【手続きの流れ】

  • 面談の実施
    退職勧奨を行う前に、従業員との面談を実施し、現状や今後の見通しについて話し合います。
    ここでは、復職が難しい理由や、退職後の生活支援についても説明します。
  • 退職の勧奨
    面談の結果、復職が困難であると判断された場合、企業は従業員に対して退職を勧めます。
    この際、従業員の意向を十分に尊重し、圧力をかけずに自主的な決断を促すことが重要です。
  • 書面での通知
    退職勧奨を行う際には、書面で通知を行うことも重要です。
    書面には、退職の理由や条件、退職後の手続きなどを明記し、従業員が納得できるように説明します。
  • 退職の手続き

    従業員が退職勧奨を受け入れた場合、企業は速やかに退職手続きを進めます
    ここでは、退職届の提出や退職金の支払い、社会保険の喪失手続きなどが行われます。

    【手続きの流れ】

  • 退職届の提出
    退職勧奨に同意した従業員から、退職届を提出してもらいます。
    後に不当解雇として訴えられた際に証拠となるため、退職届は従業員自身が記入し、署名捺印することが重要です
  • 社会保険の手続き
    退職後は、従業員の社会保険や雇用保険の手続きを行い、従業員が退職後に適切な保障を受けられるようにします。
  • うつ病の従業員の退職したあとのよくあるトラブル

    うつ病の従業員が退職した後、会社と従業員の間でトラブルが発生することがあります。
    ここでは、うつ病の従業員の退職後に起こり得るトラブルについて解説します。

    不当解雇の主張

    従業員が退職後に「不当に解雇された」と主張し、解雇撤回や賠償を求めるケースがあります。
    特に、退職願を提出した後に心変わりする場合や、退職の意思が曖昧だった場合に発生しやすいので注意が必要です。
    ただ、企業側が一度受理した退職願は撤回できません。

    労働条件に関するトラブル

    退職後に、労働条件や退職金、未払い給与などに関するトラブルが発生することがあります。
    特に、うつ病による長期休職中の給与や時間外手当の支払いに関する問題が多く発生します。

    復職希望のトラブル

    退職後に従業員が復職を希望し、会社がそれを拒否した場合にトラブルになることがあります。
    医師の診断書がある場合でも、会社が復職を認めないと不当解雇とされるリスクがあります。

    パワハラの主張によるトラブル

    うつ病の従業員が退職後に「パワハラ」を受けたとして、会社を訴えるケースも増えています
    特に、職場でのハラスメントや過重労働が原因でうつ病を発症した場合に多く見られます。

    従業員がパワハラを理由に会社を訴える場合、証拠の有無が重要なポイントとなります。
    メールや録音データ、証言などが証拠として提出されることがあります。
    訴訟の結果、会社側がパワハラを認めざるを得ない場合、損害賠償の支払いが命じられるだけでなく、社会的な信用を失うリスクもあります。

    うつ病の従業員を出さないような対策

    うつ病は、現代の職場でますます深刻な問題となっており、企業にとって従業員のメンタルヘルスを守ることは重要な課題です。
    特に、うつ病を発症させないための対策を講じることは、従業員の健康維持だけでなく、企業全体の生産性向上にもつながります。
    ここでは、従業員がうつ病にならないために企業に求められる具体的な対策について説明します。

    職場環境の整備

    うつ病を防ぐために重要なのは、職場環境の整備です。
    ストレスの少ない職場環境を作ることで、従業員のメンタルヘルスを守ることができます。

    適切な業務量の設定

    過重労働や長時間労働は、うつ病の大きな原因となります。
    企業は従業員に対して適切な業務量を割り当て、無理のない働き方を推奨しなくてはなりません。
    また、業務内容に応じて適切なリフレッシュ期間を確保することも有効です。

    人間関係の改善

    職場の人間関係も、メンタルヘルスに大きな影響を与えます。
    特に、上司の同僚との関係が悪化すると、従業員は孤立感を感じ、うつ病のリスクが高まります。
    そのため、企業は定期的にコミュニケーションの機会を設け、従業員同士の関係を良好に保つ努力をすることが重要です。

    メンタルヘルスケアの導入

    うつ病を未然に防ぐためには、メンタルヘルスケアの導入が不可欠です。
    従業員がメンタルヘルスについて相談できる環境を整えることで、早期の問題発見が可能となります。

    ストレスチェックの実施

    企業は、定期的にストレスチェックを実施し、従業員のメンタルヘルス状態を把握することで適切な対応をとることができます。
    ストレスチェックは、従業員が自分のストレスレベルを認識し、必要に応じて専門家に相談するきっかけにもなります。

    専門家の活用

    メンタルヘルスに関する専門家の活用も効果的です。
    企業内にカウンセラーを配置することや、外部のカウンセリングサービスと提携することで、従業員が気軽に相談できる環境を整えることができます。
    また、専門家によるセミナーや研修を実施し、従業員にメンタルヘルスの重要性を理解してもらうことも有効です。

    就業規則への明文化

    うつ病を防ぐための対策には、職場環境の整備やメンタルヘルスケアの導入といった直接的な施策だけでなく、企業の規範としての就業規則の整備も非常に重要です。
    具体的には、以下のような規定が求められます。

    メンタルヘルスやハラスメントに対する規定

    メンタルヘルスやハラスメントに対応する規定としては、以下のような対応が挙げられます。

    メンタルヘルスに関する規定の明文化

    具体的には、従業員が過度なストレスを抱えた場合やメンタルヘルス不調を感じた場合に、ストレスチェックや相談窓口でのサポートが受けられる旨を明記します。

    ハラスメント防止規定の強化

    就業規則には、パワハラやセクハラといったハラスメント行為を明確に定義し、その禁止を明記します。
    具体的な行為の例を挙げることで、従業員が理解しやすくなります。
    また、ハラスメントが発生した場合の対応方法についても規定しておきます。

    長時間労働の防止規定

    長時間労働はうつ病の大きな原因となり得るため、労働時間に関する規定を整備し、従業員の健康を守ることが求められます。

    残業時間の上限設定

    就業規則において、残業時間の上限を明確に設定し、それを超える残業を禁止する規定を設けます。

    フレックスタイム制やテレワークの導入

    従業員が自分のペースで働ける環境を整えることで、従業員が仕事とプライベートのバランスを保ちやすくなり、効果的です。

    休職・復職に関する規定

    就業規則には、メンタルヘルス不調による休職の期間や、その延長規定を明確に設定し、明記します。
    また、復職後のサポート体制についても規定し、従業員が無理なく職場に復帰できるよう配慮します。
    たとえば、段階的な業務復帰や、短時間勤務制度の利用を可能とする規定を設け、従業員の負担を軽減することが求められます。

    まとめ

    うつ病の従業員から不当解雇を訴えられた場合、企業側は裁判の準備などに多大の労力や金銭が必要になるため、注意が必要です。
    普段から従業員の普段と違う様子に気づき、うつ病を予防することも大切ですが、うつ病になった従業員がいる場合は、従業員ときちんと話し合い、適切な対応を取ることが重要です。
    うつ病による休職から解雇に至る従業員がいる場合には、対応について弁護士のチェックを受けることをおすすめします。

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