この記事でわかること
「労働審判」とは、会社と労働者個人との間で起きた労働問題を解決するための法的な手段のひとつです。
労働者側から未払いの残業代や退職金、解雇の相当性について申し立てられることが多く、申立てから解決までのスピードが早い点が特徴です。
そのため、全体の流れや対応のポイントを事前に知っておかなければ、申立てによるダメージを抑えることができず、悔いの残る結果になりかねません。
今回は、労働審判の全体的な流れや勝率、想定されるダメージを解説し、労働審判を起こされた会社側の対応ポイントを紹介します。
労働審判とは、会社と労働者個人との間で起きた労働に関するトラブルを、法的に解決するための手続きです。
会社と労働者のどちらからも申立てが可能ですが、労働者から申し立てられるケースがほとんどです。
申立ての内容には、主に以下のようなものがあります。
解決までのスピードが早く、最終的な解決力が高いことが特徴の制度です。
ここでは、さらに詳しい概要や特徴、訴訟との違いについて解説します。
労働審判は、最大3回までの審理で申立人と申立てを受けた相手方の間に起きた、労働に関するトラブルの解決を図ります。
当事者の他に「労働審判委員会」という組織が加わり、話し合いを中心として、双方が和解することを目指します。
なお、手続きは非公開です。
労働審判委員会の構成は、労働審判官という裁判官1名と、労働審判員という労働問題に関して専門的な知識や経験を持つ専門家2名です。
労働審判員は、企業側と労働者側の双方にそれぞれ担当が就きます。
労働審判で和解が成立しなかった場合は、労働審判委員会によって「労働審判」という、裁判でいう判決に相当する最終判断が下されます。
労働審判の結果に納得がいかなければ、不服申立てを行うことが可能です。
どちらからか不服申立てがあった場合は、労働審判の内容は無効になります。
労働審判の特徴は、次のものが挙げられます。
ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説します。
労働審判の審理は原則3回までと法律で決められているため、解決までのスピードが早いことが特徴です。
必ずしも3回まで審理を行う必要はなく、和解のための案(調停案)が成立した時点で審理は終了します。
裁判所によると、2006年から2022年までに終了した労働審判について、平均審理期間は81.2日でした。
労働問題について豊富な知識や経験を持つ労働審判員が審理に加わる点も、労働審判の特徴です。
労働審判員の専門的な意見が活用されることで、会社や労働者の実情に即した調停案で解決を図ることができます。
労働審判の呼出しを受けたのにも関わらず、正当な理由なく審理に欠席した場合、5万円の過料が処されます。
どちらかが欠席した場合でも、審理はそのまま行われるため、欠席した側に不利益な審判が下る可能性があります。
そのため、労働審判は相手方が応じる可能性が高い制度です。
労働審判は、原則非公開で行われます。
審理が行われるのは裁判所の一室で、審理中は関係者以外が入ることはできません。
そのため、当事者と労働審判員、代理人弁護士以外に審理の内容が知られることはありません。
労働審判は、無料で労働相談ができる都道府県労働局のあっせん手続きや、裁判所による民事調停と比べて解決力が高い点が特徴です。
あっせん手続きや民事調停では、当事者双方の合意が得られず、調停が成立しなかった場合はそのまま終了します。
一方で労働審判は、調停案に双方の同意が得られなかった場合は、労働審判委員会が労働審判という、判決に相当する内容を決めます。
労働審判で決められた内容は法的な効力を有するため、双方が守らなければなりません。
この点において、労働審判はその他の手続きと比べて、トラブルを最終的に解決する力が強いと言えます。
労働問題を解決する法的手段には、労働審判の他に通常の裁判(民事訴訟)があります。
両者の違いには、次の点が挙げられます。
ここでは、それぞれの違いについて詳しく解説します。
労働審判が取り扱う事案は、労働者個人と会社の間で起きた労働問題です。
そのため、労働に関する問題以外のことや、労働者個人間に起きた争いについては扱いません。
たとえば、労働者が受けたハラスメントについて損害賠償を請求する事案においては、労働審判では会社に対する損害賠償請求のみを扱います。
ハラスメントを行った上司等、別の労働者個人に対しては、労働審判以外の手続きで解決を目指すことになります。
また、労働者が複数人で結託して、会社側に労働審判を申し立てることも原則はできません。
この場合は、個人がそれぞれ会社に申立てを行うか、あるいは複数人で訴訟を行います。
訴訟では、取り扱う事案は限定されていないため、労働問題以外の事案や個人間のトラブルを申し立てることが可能です。
なお、争点が複数あるような複雑な事案の場合は、労働審判の3回以内の期日では解決できない可能性が高くなります。
そのため、当初から訴訟を行うことが推奨されます。
労働審判は、審理の回数が法律によって決まっているため、解決までにかかる時間が短い点が特徴です。
裁判所によると、7割近い事案が3カ月以内に終了しています。
参考(裁判所:労働審判手続)
一方、2022年の司法統計によると、労働関係の訴訟の平均審理期間は、17.2カ月でした。
つまり、訴訟の場合は問題が解決するまでに1~2年ほど時間がかかるため、労働審判よりも長い期間、トラブルへの対応が続くことになります。
参考(裁判所:令和4年司法統計)
労働審判は話し合いを中心とした手続きであるため、通常の訴訟と比べて柔軟な解決を図ることが可能です。
訴訟のように原告の主張を認めるか否かという法律に則った判決という形ではなく、当事者間の事情や意向を踏まえた解決を目指します。
労働審判は、次の流れに沿って進みます。
ここでは、それぞれの段階でどのようなことが起こるのかを詳しく解説します。
労働審判は、会社あるいは労働者からの申立てにより始まります。
労働審判を申し立てようとする者は、労働審判を管轄する地方裁判所に、申立書と証拠書類を同時に提出します。
労働審判では、迅速な解決を図ることを目的としているため、証拠書類は審理当日ではなく、申立ての段階から提出しなければなりません。
この点は、後述する答弁書の提出時も同様です。
申立書には、次のような内容が記載されます。
申立書は相手方に届く「呼出状」に添付されるため、相手方や労働審判委員会は申立書に記載された内容から、申立人の主張を知ることになります。
申立てが受理されると、相手方には申立書の写しと共に、第1回目の期日が書かれた「呼出状」が送付されます。
第1回期日は法律の規定があり、申立てのあった日から40日以内の日に設定されます。
相手方は期日の出頭以外に、答弁書の提出が求められます。
答弁書は、第1回期日当日に提出するのではなく、期日よりも前に指定された期限までに提出しなければなりません。
呼出状を受け取った相手方が、実際に答弁書の準備ができる期間は、約3週間ほどです。
答弁書には、次のような内容が記載されます。
労働審判では迅速な解決を図るため、申立書同様に、期日前に提出される書類や証拠を重視する傾向があります。
そのため、答弁書の内容が申立書に書かれた内容の認否だけでは十分とは言えません。
具体的な事実を記した上で的確な主張を行う、充実した内容であることが求められます。
答弁書には、記載した内容を裏付けるための証拠も同時に提出する必要があります。
どのようなものが証拠となるかは事案によって異なりますが、一般的にはタイムカードや出勤簿、36協定書、解雇予告通知書等が該当します。
期日は事前に決められた日程で行われます。
期日の回数は法律で原則3回までと決められていますが、必ず3回行うわけではなく、初回で調停が成立すれば、2回目や3回目が開かれることはありません。
実際に、調停案は第1回期日から出され、随時調停が試みられるため、1回目の期日で労働審判が終了することもあり得ます。
ここでは、それぞれの期日におけるポイントを解説します。
労働審判において、第1回期日は特に重要な場面です。
第1回期日では、はじめに当事者双方の意見や主張を確認し、争点や証拠の整理等を行います。
代理人の弁護士がいる場合は、弁護士による主張の展開から行われるケースが多いです。
労働審判委員会からは、申立書や答弁書からはわからない点等が質問されます。
話し合いが中心となりますが、当事者双方がお互いに主張をぶつけ合うわけではありません。
原則は、労働審判委員会から当事者への質問という形で審理は進みます。
事案や状況によっては、当事者のどちらかが席を外した状態で聴取が行われることもありますが、基本的には当事者双方が同席した状態での話し合いです。
双方への質問や事実確認が終わると、第1回期日から調停案が出されます。
労働審判はその後も2回の期日がありますが、第1回期日による事実確認等で、裁判官の心証が決まります。
第2回、第3回と主張を補完し続けられるわけではないことに注意が必要です。
第1回期日は、双方の言い分を確認し、調停案が出されて調停が試みられるため、全3回期日の中でも多くの時間を要します。
開始から終了までの時間は、約1時間〜4時間見込まれるため、余裕をもったスケジュールで日程を調整することが推奨されます。
第1回期日で調停が成立しなかった場合は、第2回期日が指定されます。
第1回期日と異なり、期日の指定に関して法律の規定はなく、当事者間の事情も考慮した上で、約1週間〜1カ月程度の間で日が指定されます。
第2回期日以降は、当事者間の主張を聞くことに多くの時間は割かれません。
審理の内容は、第1回期日に出された調停案に対して、お互いの検討結果の確認が中心です。
所要時間は第1回期日よりも短く、約30分〜1時間程度が見込まれます。
なお、第2回期日後は、証拠等の書類を追加で提出できなくなることに注意が必要です。
第2回期日でも調停が成立しない場合は、最後の期日として第3回期日が指定されます。
期日の日程は、第2回期日と同様に法律による規定はありません。
双方の事情を考慮しつつ、1週間〜1カ月の間で日が指定されます。
審理の内容は、第2回期日同様に、調停案に対してのお互いの検討結果の確認で、所要時間も約30分〜1時間程度です。
第3回期日でも調停が成立しなかった場合でも、審理は終了し、次の期日が指定されることはありません。
労働審判の手続きは、調停が成立した時点で終了します。
しかし、3回の期日を経ても双方の合意が得られず、調停が成立しなかった場合は、労働審判委員会による労働審判が行われます。
これは通常の訴訟における判決と捉えて問題ありません。
当事者のどちらからか適法な異議申立てが行われなければ、労働審判は確定します。
労働審判の内容に納得ができない場合は、異議申立てを行うことができます。
異議申立ては、労働審判が言い渡されてから2週間以内に、裁判所に対して「異議申立書」を提出することで認められます。
なお、異議申立書には、異議申立ての理由を詳細に書くことまでは求められていません。
異議申立てが行われた場合、労働審判の効力はなくなり、通常の訴訟に移行します。
なお、異議申立てを行うことのできる期限が過ぎた場合は、労働審判が確定するため、当事者の双方が、その内容に従うことになります。
労働審判における勝率は「請求(主張)内容がどの程度認められたか」という点から判断できます。
この観点で言えば、申立ての内容が会社側の責任が強く問われる解雇等の場合、労働者側の主張が認められやすくなるため、会社側の勝率は低いと言えます。
しかし、調停が成立したことで訴訟リスクを回避できた点では「勝ち」と考えることも可能です。
他の例では、未払いの退職金請求等のケースで、100万円の請求が50万円に減額された場合、勝ちか負けかの判断は会社によって異なります。
このように、労働審判で得た結果から勝ち負けを一概に判断することはできません。
また、労働審判では和解による解決を目的としており、実際に多くの事案が和解により解決しています。
そのため、裁判所がどちらかの主張を全面的に認める等、訴訟のように勝ち負けが明確になるケースは多くありません。
実際に、裁判所の公表によると、大阪地裁では年間約300件の労働審判の申立てがあり、この内の75%~80%で調停が成立しています。
なお、裁判所による労働審判が行われたのは約10%~20%でした。
参考(裁判所: 労働審判のQ&A)
労働審判における勝ち負けの基準や、どのような解決を目指すかは、会社側で事前に検討しておくとよいでしょう。
また、弁護士へ依頼をするときも、弁護士が何をもってして「勝ち」と捉えるかは共通の認識を持つように心がけましょう。
労働審判で得られる結果には、次のものが挙げられます。
ここでは、それぞれの結果について詳しく解説します。
3回の期日の中で調停案に双方の合意が得られた場合は、調停が成立し、労働審判の手続きも終了します。
双方が合意した内容は「調停調書」という書面に記載されます。
当事者双方の交渉の上で、お互いに内容を口外しない「口外禁止条項」や、今後一切の請求を行わない「精算条項」を調停調書に加えることも可能です。
このような条項を加えることができる点も、労働審判における柔軟な解決のメリットです。
合意した内容は裁判上の和解と同じ効力を持つため、万が一内容が守られなかった場合は、強制執行を行うことができます。
3回の期日で調停が成立しなかった場合は、労働審判委員会により、審判が行われます。
審判は調停成立と同様に、裁判上の和解の効果を持ちます。
決められた内容を守られなければ、強制執行の対象となります。
審判の告知を受けてから2週間以内に当事者のどちらからも異議申立てがなければ、審判は確定します。
労働審判が確定した後は、異議申立てを行うことはできません。
労働審判委員会による審判が行われても、その内容に納得がいかなければ、申立人、相手方どちらの立場からも異議申立てが可能です。
異議申立てを行えば、労働審判の内容は無効となり、自動的に通常の訴訟へと移行します。
この場合、もう一度労働審判を行うことはできないことに、注意が必要です。
前述したように、労働審判に対して異議申立てが行われると、通常の訴訟に移行します。
しかし、訴訟へ移行するケースは、異議申立てがあった場合だけではありません。
たとえば、争点が複数あるような複雑な事案は、労働審判の3回の期日以内では解決できない可能性が高くなります。
このときは、労働審判委員会が労働審判での解決が困難であると判断することがあり、労働審判を打ち切り、訴訟へと移行させます(24条終了)。
労働審判は勝ち負けを一概に判断できない手続きですが、それでも会社側が受けるダメージについては、会社の担当者が気になるポイントでしょう。
労働審判で会社が負うダメージは大きく「金銭面」と「労力面」の2つに分けることができます。
ここでは、労働審判における会社側の金銭面と労力面についてのダメージについて詳しく解説します。
なお、この解説は、会社が申立てを受けた場合を前提としています。
労働審判では、申立人である労働者が残業代や退職金等の金銭の支払いを求めるケースが多く、会社側の金銭的ダメージは避けられません。
また、請求に対して支払う金額以外にも、弁護士に依頼する場合の費用も想定されます。
労働審判における弁護士費用は、弁護事務所により差があるものの、1つの事案に対しての相場は50万円~100万円です。
労働審判において代理人を立てることは必須ではありませんが、多くの企業が弁護士へ依頼をします。
労働審判を申立てられた場合、少ない時間で専門的な知識を要する書類の作成を行うことを強いられ、専門家の力を借りずに解決することが非常に困難なためです。
そのため、弁護士費用は必須の費用と言えるでしょう。
なお、事案の難易度が高いほど、弁護士費用は高額になる傾向があります。
調停の成立、不成立による労働審判、どちらの結果を得ても、申立人が金銭の請求をしている場合は、請求に係る金額の支払いが生じます。
企業側の主張や反論、事情を考慮して、申立ての金額が減額される可能性もありますが、よほど特殊なケースでない限りは、請求金に係る支払いがゼロとなることはないでしょう。
特に、違法な残業代の未払いがあった場合は、会社側の減額の主張はほとんど認められないでしょう。
労働審判の申立て内容が解雇無効を主張する地位確認請求である場合「解決金」を支払うことで調停が成立するケースがあります。
本来、解雇無効と判断された場合に労働者は復職することができますが、労働者だった者の退職を前提に金銭を支払うことで、解決させるという方法です。
解決金の相場は、解雇の相当性が疑われるケースでは賃金の3カ月~12カ月程度です。
解決金には「バックペイ」と呼ばれる金銭が解決金に含まれることもあります。
バックペイとは、解雇されていた期間において、本来労働者が働いて得るはずだった賃金分のことです。
争いが長期化し、解決するまでの期間が長くなるほど、バックペイの金額も増えていくことに注意しなければなりません。
労働審判の申立てに応じないことへのリスクは大きいため、申立てには必ず応じなければなりません。
正当な理由なく労働審判を欠席した場合は、5万円の罰金が科せられる可能性があるばかりではなく、当事者欠席のまま労働審判が行われます。
結果的に、申立人の請求が大幅に認められることとなり、大きな不利益を被ることになるでしょう。
そのため、申立てを受けた会社側は、労働審判に応じるための労力を避けることはできません。
当然、通常の会社業務がある中で対応をするため、労力のダメージは軽視することのできないポイントです。
労働審判において、事前に提出する答弁書や証拠書類等は重要であり、慎重かつ漏れのない準備が求められます。
弁護士に依頼した場合は、準備にかかる労力を大きく削減することが可能ですが、すべてを丸投げすることはできません。
弁護士との打合せは必須であり、指示された証拠書類を揃えることは、会社が行います。
証拠書類は、一般的にはタイムカードや出勤簿等ですが、申立人の請求にかかる時期分を揃えなければなりません。
残業代や退職金請求の時効を考慮すると、証拠書類は数年分遡る可能性があります。
なお、令和6年7月現在の法律では、残業代の時効は3年、退職金の時効は5年です。
労働審判は調停が成立すれば1回の期日で終わることもありますが、書類のやり取りだけで解決することはないため、呼び出しを受けたら必ず出廷しなければなりません。
代理人である弁護士を立てれば、審理に同席して貰うことができ、整理された論点で効果的な主張を行ってくれます。
しかし、弁護士にすべてを任せられるわけではなく、出廷した者に対しても労働審判委員会からの質問は行われます。
このときの当事者の言動も、労働審判委員会の心証形成に大きな影響を与えるため、出廷する者は質問に対して的確に答えられるように準備が必要です。
また、当然出廷する場合は期日に合わせて仕事のスケジュールを調整しなければならないため、業務調整の労力も生じます。
ここでは、具体的に労働審判にかかる費用を、実費と弁護士費用の2つの面で解説します。
労働審判において、裁判所に払う費用の実費は収入印紙代であり、申立人にのみ発生します。
印紙代は、申立て内容に金銭の請求が含まれる場合、請求する金額に応じて費用が異なります。
請求金額ごとの収入印紙代は次の通りです。
なお、労働審判にかかる収入印紙代は、通常の訴訟にかかる費用の約半分程度です。
労働審判の手続きを弁護士に依頼する場合は、弁護士費用がかかります。
なお、弁護士費用は弁護士事務所が自由に設定できるため、料金形態や価格は依頼する弁護士によって異なります。
依頼するときは、料金形態に疑問点を残さないようにしましょう。
相談料とは、弁護士へ法律相談をしたときに発生する費用で、相場は30分~1時間を単位として約5,000円~1万円です。
なお、初回の相談を無料とする弁護士も多くいます。
労働審判の申立ての内容から、どのように対応すべきか、弁護士に依頼すべきかを含めて相談できます。
着手金は、弁護士が事案に着手したときに支払う費用で、相場は約30万円~50万円前後です。
労働審判から得られた結果が思わしくない場合や、弁護士を途中解任した場合でも返金されません。
弁護士事務所の中には「完全報酬制」の料金形態を取り、着手金をゼロ円とするところもあります。
なお、着手金は事案の難易度に応じて金額が変動しやすい部分です。
いわゆる「成功報酬」と言われる費用です。
相場は基準額に対して約15%~20%です。
労働審判における勝ち負けは判断しづらく、報酬金のベースを何とするかは事案や弁護士によって異なります。
報酬金の例のひとつとして、申立てにかかる金額から減額できた分を基準とするケースがあります。
たとえば、100万円の請求が70万円に減額できた場合、差額分の30万円を成功報酬のベースとする方法です。
この30万円に対して、弁護士事務所の提示する料率を乗じます。
当事者間に争いがなく、事務手続きのみを依頼する場合に支払う費用で、相場は約5万円前後です。
労働審判においては、答弁書の作成や証拠書類の整理を行い、裁判所へ郵送するまでの手続きをいいます。
日当やタイムチャージとは、弁護士が書類の作成や審理に出廷するために拘束された時間に対して支払う金額です。
着手金とは別に設定されることもありますが、弁護士事務所によっては着手金に含まれるケースもあります。
通常は時間単価で設定されており、相場は1時間あたり1万円〜3万円です。
実費とは、弁護士が手続きに要した費用です。
通常はかかった費用分を請求しますが、弁護士によっては着手金等に含む場合もあります。
実費には、裁判所へ答弁書等を送付するときの郵送料やコピー代等の消耗品費の他、出廷のために移動した交通費、宿泊費も含まれます。
多くの会社において、労働審判は労働者からの申立てを受ける相手方となります。
突然裁判所の呼出状が届くことや、答弁書の返答期限が短いことなど、対応に苦慮する点が多いことが相手方の特徴です。
ここでは、労働審判が起こされた会社側の対応ポイントについて解説します。
労働審判を起こされた場合、まずは労働審判がどのような制度なのかを知ることが重要です。
労働審判において重要視されるポイントや通常の訴訟との違いを知らなければ、対策することは難しいでしょう。
たとえば、事前に提出する答弁書や証拠書類の重要性を理解せずに適当に提出してしまうと、主張や証拠が十分に伝えきれず、想定以上のダメージを被る恐れがあります。
また、調停案を検討する段階においても、労働審判に関する知識は重要です。
調停案の検討には、労働審判による解決で得られるメリットと訴訟に移行した場合のデメリットを考慮する必要があるため、それぞれの違いを企業の担当者は必ず理解しておくことが求められます。
労働審判を申立てられた会社側は、決められた期日までに答弁書と共に証拠書類等を提出しなければなりません。
通常、答弁書の提出期限は第1回期日よりも前に設定されるため、企業は急に対応することになりますが、提出期限は厳守しなくてはなりません。
仮に提出期限を過ぎてしまった場合でも諦めるのではなく、1回目の期日までに提出をするようにしましょう。
審理に出頭する人選は、慎重に行いましょう。
労働審判委員から申立ての内容について質問を受けたときに、的確に回答ができる、事情をよく知る者が適任です。
また、調停案は1回目の期日から提示され、金銭的な解決案が示されるケースも多くあります。
そのため、金銭面について現実的な検討ができる決定権のある社長等が同席することが望ましいでしょう。
出廷する者が決まった後は、当日に効果的な主張を行うことができるように、代理人弁護士の力を借りてリハーサルを行うと、より効果的です。
労力はかかりますが、第1回期日の事実確認は重要であるため、出来うる限りの対策を講じることがよい結果に繋がります。
労働審判を申立てられた場合は、弁護士への早めの相談が推奨されます。
依頼するときの費用を気にして専門家の力を借りずに独自に対応することや、相談を遅らせることは、会社にデメリットしかありません。
下手に対応した結果、事案が複雑化してから弁護士に依頼するケースでは、かえって弁護士費用が高額になる恐れもあります。
呼出状が届いた時点で、早急に依頼をしましょう。
労働審判を弁護士に依頼する場合は、費用だけではなく、次の点も選出のポイントです。
弁護士にも得意、不得意分野があるため、労働審判を依頼する場合は、労働問題に詳しい「企業側の味方に立つ」弁護士に依頼しましょう。
インターネット上での検索や、知り合いの士業や経営者、地域の弁護士会に紹介して貰う方法があります。
また、弁護士と期日の日程が合うかも重要なポイントです。
特に労働審判は、呼出しから第1回期日までの日程が短いため、個人の弁護士事務所では日程が折り合わない可能性も高くなります。
複数の弁護士でチームを組んでいる事務所は、急な期日にも対応して貰いやすい点が特徴です。
労働審判を起こされると、会社側は対応せざるを得ず、金銭面や労力面のコストは避けられません。
また、迅速な解決が特徴的であるからこそ、それぞれの流れで対応すべきポイントが異なります。
労働審判の流れや結果、他の解決方法との違いを知ることは、会社が負う最終的なダメージを抑えることに繋がります。
必要に応じて専門家の力を借りる等、ポイントを押さえた行動を心がけましょう。