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弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所 > コラム > 労働法全般 > 【早見表付き】高年齢雇用継続給付金の計算方法・申請方法について

【早見表付き】高年齢雇用継続給付金の計算方法・申請方法について

この記事でわかること

  • 高年齢雇用継続給付金の支給条件・計算方法・申請方法
  • これからの高年齢雇用継続給付の支給率について
  • 高年齢雇用継続給付金を受けるときの注意点

定年後は、継続雇用や再就職しても賃金が引き下げられることが一般的です。
年金の支給開始までの生活費を少しでも補うために、雇用保険の高年齢雇用継続給付金を活用することをおすすめします。

この記事では、高年齢雇用継続基本給付金の計算方法や申請方法をわかりやすく解説します。

目次

高年齢雇用継続給付金の種類

高年齢雇用継続給付金には以下の2つがあります。

  • 高年齢雇用継続給付金:失業手当をもらっていない場合に支給される
  • 高年齢再就職給付金:失業手当をもらった場合に支給される

高年齢雇用継続給付とは

60歳時点の賃金75%未満に低下した雇用保険の被保険者に、60歳から65歳まで各月に支払われた賃金の最大15%の給付金が支給される制度です。

高年齢雇用継続給付をもらうには

次の要件をすべて満たした場合に支給されます。

  • 60歳以上65歳未満の一般被保険者(注1)であること
  • 被保険者であった期間(注2)が通算して5年以上であること
  • 60歳時点に比べて、60歳以降の賃金が75%未満となっていること
  • 各暦月の賃金額が支給限度額(令和5年8月1日以降の支給限度額:37万452円)未満であること
  • 育児休業・介護休業給付の支給対象となっていないこと
  • (注1)雇用保険の一般被保険者とは65歳未満で、以下の2つを満たす被保険者を指します。
  • 31日以上の雇用見込みがあること
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 被保険者であった期間は、離職した日の翌日から再就職した日の前日までの期間が以下の場合に通算できます。
  • 1年以内であること
  • この期間に雇用保険(失業手当、再就職手当等)の支給を受けていないこと

高年齢雇用継続基本給付金とは

60歳以上65歳未満で、60歳以降に賃金が下がった一般被保険者の賃金を補填するためのもので、雇用保険(失業手当等)を受給していない人を対象に支給されます。

高年齢雇用継続基本給付金の支給を受けることができる人

(例1)継続雇用された場合

(例2)60歳到達時点では通算できる被保険者期間が5年未満だったが、その後支給対象者となる場合

(例3)60歳到達時点では被保険者ではなく、失業手当をもらわず再就職して支給対象となる場合の例

→この場合、離職した時点(被保険者であった期間5年以上の場合に限る)の賃金月額と比較することになります。

高年齢雇用継続給付金の支給期間

被保険者が60歳に到達した月から65歳に達する月までですが、各暦月の初日から末日まで被保険者であることが必要です。
この期間内にある各暦月のことを支給対象月といいます。

高年齢再就職給付金とは

会社を離職後に再就職した65歳未満の人が対象で、雇用保険(失業手当等)の受給中に再就職した人を対象に支給されます。

高年齢再就職給付金を受けることができる人

  • 失業手当の受給後、60歳以後に再就職した人
  • 再就職後の賃金月額が、失業手当の賃金日額×30の75%未満となった人
  • 失業手当についての算定基礎期間が5年以上あること
  • 再就職した日の前日における失業手当の支給残日数が100日以上あること
  • 安定した職業につき被保険者となること

(例1)60歳後に離職した場合

(例2)60歳前に離職した場合

(例3)支給対象とならない場合(60歳より前の再就職は、支給を受けることができません。)

高年齢再就職給付金の支給期間

支給期間は以下のとおりです。

再就職日の前日に失業手当の支給残日数200日以上再就職の翌日から2年を経過する日の属する月まで
再就職日の前日に失業手当の残日数100日以上200日未満再就職の翌日から1年を経過する日の属する月まで

ただし、被保険者が65歳に達した場合は、その期間にかかわらず、65歳に達した月までとなります。
また、各暦月の初日から末日まで被保険者である必要があります。

(例1)再就職日の前日における支給残日数が100日以上200日未満の場合

(例2)再就職日の前日における支給残日数が200日以上の場合

(注)上記高年齢雇用継続給付を受ける期間は、特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)の支給額が一部支給停止される場合があります。

参照元:厚生労働省 「高年齢雇用継続基本給付金」「高年齢再就職給付金」 

【早見表付き】高年齢雇用継続給付金の計算方法

高年齢雇用継続給付金の計算方法は、賃金の額によって変わります。

高年齢雇用継続基本給付金の計算方法

  1. 1.60歳以降の賃金が60歳到達時点の61%以下の場合
    60歳以降に受け取る賃金 ×15%
  2. 2.60歳以降の賃金が60歳到達時点の賃金の61%超75%未満の場合
    ー 183/280×60歳以降の賃金+137.25/280×60歳到達時点の賃金

2.のケースは計算が複雑なので、以下の ①「支給率早見表」と②「支給額早見表」で大まかな金額が把握できます。

(例)

  • 60歳時点の賃金:30万円
  • 60歳以降の月の賃金:18万円

高年齢雇用継続基本給付金の支給率は、(18万円÷30万円)×100=60% 

①「支給率早見表」より、賃金の低下率は61%以下となり、支給率は15%です。

よって、高年齢雇用継続基本給付金は、18万円×15%=2万7,000円になります。

  1. 「支給率早見表」
賃金の低下率支給率賃金の低下率支給率
75%以上0.00%67.5%7.26%
74.5%0.44%67.0%7.80%
74.0%0.88%66.5%8.35%
73.5%1.33%66.0%8.91%
73.0%1.79%65.5%9.48%
72.5%2.25%65.0%10.05%
72.0%2.72%64.5%10.64%
71.5%3.20%64.0%11.23%
71.0%3.68%63.5%11.84%
70.5%4.17%63.0%12.45%
70.0%4.67%62.5%13.07%
69.5%5.17%62.0%13.70%
69.0%5.68%61.5%14.35%
68.5%6.20%61%以下15.00%
68.0%6.73%
  1. 「支給額早見表」(令和6年8月1日現在)
60歳以降
各月の賃金
60 歳到達時等賃金月額(賃金日額×30 日分)
494,700
円以上
45 万40 万35 万30 万25 万20 万15 万
36 万7,200   0 0 0 0 0 0 0
35 万13,755 0 0 0 0 0 0 0
34 万20,264 0 0 0 0 0 0 0
33 万26,7964,917 0 0 0 0 0 0
32 万33,34411,456 0 0 0 0 0 0
31 万39,89717,980 0 0 0 0 0 0
30 万45,00024,510 0 0 0 0 0 0
29 万42,00031,0596,525 0 0 0 0 0
28 万42,00037,57613,076 0 0 0 0 0
27 万40,50040,50019,602 0 0 0 0 0
26 万39,00039,00026,130 0 0 0 0 0
25 万37,50037,50032,6758,175 0 0 0 0
24 万36,00036,00036,00014,688 0 0 0 0
23 万34,50034,50034,50021,229 0 0 0 0
22 万33,00033,00033,00027,7643,278 0 0 0
21 万31,50031,50031,50031,5009,807 0 0 0
20 万30,00030,00030,00030,0001,6340 0 0 0
19 万28,50028,50028,50028,50022,876 0 0 0
18 万27,00027,00027,00027,00027,0004,896 0 0
17 万25,50025,50025,50025,50025,50011,441 0 0
16 万24,00024,00024,00024,00024,00017,968 0 0

引用:厚生労働省 高年齢雇用継続給付支給率・支給額早見表

高年齢雇用継続基本給付金を受けるときの注意点

残業が増えると高年齢雇用継続基本給付金の支給額が減ります

理由は、雇用保険の賃金には、残業代が含まれるためです。

(例)

60歳時点の賃金が30万円
60歳以降の賃金が18万円のとき

支給率15%となり、2万7,000円の給付金支給

残業代が4万5,000円の場合:賃金は18万円+4万5,000円=22万5,000円

22万5,000円は60歳到達時賃金30万円の75%超のため、高年齢雇用継続基本給付金の支給はありません。

ただし、この場合、受け取る賃金総額は、高年齢雇用継続基本給付金をもらう場合(20万7,000円)より、残業代を含めた額(22万5,000円)の方が多くなるため、どちらがいいのか検討する必要があります。

高年齢雇用継続給付金の申請方法

高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の申請方法は、以下のとおりです。
どちらも実際に支給されるのは、事業主が手続きをして支給が決定された日から1週間程度です。

高年齢雇用継続基本給付金の申請方法

ここでは、以下の2つのケースについて説明します。

  • 定年再雇用などの継続雇用の場合
  • 退職後に再就職した場合

60歳到達日において被保険者であった場合(継続雇用の場合)

  • 【提出者】
  • 事業主(本人が希望する場合は、被保険者本人も申請可
  • 【提出書類】
  • 「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」
  • 「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」
    (マイナンバーの記載が必要)
  • 「払渡希望金融機関指定届」
  • 様式はハローワーク インターネットサービスからダウンロードできます。
  • 【提出期限】
  • 最初に支給を受けようとする支給対象月の初日から起算して4カ月以内
  • 【提出先】
  • 事業所の所在地を管轄するハローワーク
  • 【持参するもの】
  • 賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿、雇用契約書など定年後再雇用が確認できるもの
  • 被保険者の年齢が確認できる書類の写し(運転免許証、住民票、その他公的機関が発行した証明書年齢を確認できる書類)

60歳到達日において被保険者でなく、それ以降の再就職により被保険者となった場合

  • 【提出者】
  • 事業主(本人が希望する場合は、被保険者本人も申請可
  • 【提出書類】
  • 直近の離職時の「雇用保険被保険者離職票」(受給資格決定を受けた人は「雇用保険受給資格者証」)
  • 「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」
    (マイナンバーの記載必要)
  • 【提出期限】
  • 被保険者として雇用された日以降速やかに、「雇用保険被保険者取得届」と同時に
  • 【提出先】
  • 事業所の所在地を管轄するハローワーク
  • 【持参するもの】
  • 継続雇用と同様の書類

2回目以降の支給申請方法

2回目以降の申請は、原則として事業主のみが行うことができ、手続き内容も若干簡略化されます。

  • 【提出者】
  • 事業主
  • 【提出書類】
  • 「高年齢雇用継続給付支給申請書」
  • 【提出期限】
  • 指定された支給申請月(原則2カ月ごと)
  • 【持参するもの】
  • 支給申請書の内容がわかる書類の写し(賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿など)

高年齢再就職給付金の申請方法

では次に、高年齢再就職給付金の申請方法について説明します。

  • 【提出者】
  • 事業主
  • 【提出書類】
  • 「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」
  • 【提出期限】
  • 被保険者として雇用された日以降速やかに、「雇用保険被保険者取得届」と同時に
  • 【提出先】
  • 事業所の所在地を管轄するハローワーク
  • 【持参するもの】
  • 賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿、雇用契約書など

高年齢雇用継続給付金の廃止はいつから?

高年齢雇用継続基本給付金は、段階的に縮小される予定です。

高年齢雇用継続給付金の廃止の背景

かつては、少子高齢化が進む中で労働力を確保するために、働く意欲のある高年齢者が安定的に働きやすい環境の整備が必要でした。

そこで、高年齢者雇用安定法で、原則として「希望者全員」にいずれかの措置をとることが事業主に義務づけられました。

  • 65歳まで定年引上げ
  • 65歳までの継続雇用制度の導入
  • 定年廃止

さらに、2021年4月1日以降は、70歳まで高年齢者の就業を確保するために、努力義務として次のようなものが設けられています。

  • 70歳までの定年引上げ
  • 70歳までの継続雇用制度の導入
  • 定年廃止
  • 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に①事業主が自ら実施する社会貢献事業②事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入

これにより、以下の効果が期待できます。
65歳(もしくは70歳)まで安定的な待遇を受けることができる制度が整い、
徐々に支給率引き下げが行われ、最終的には制度廃止の準備ができる

また、60歳から64歳までの高年齢労働者の賃金の増額改定など一定の処遇の改善を行った事業主には、「高年齢労働者処遇改善促進助成金」が支給されます。
詳しくはハローワークのリーフレットをご確認ください。

高年齢雇用継続給付金の廃止のスケジュールと給付率

高年齢雇用継続給付金廃止に向けて、スケジュールと給付率は以下のようになっています。

いつから支給率の上限
2024年現在(2003年5月~)15%
2025年4月~10%

ただし、2025年3月31日までに60歳になる人は15%の支給率が適用されます。

高年齢雇用継続給付に関する注意点

高年齢雇用継続給付を受ける際は、いくつかの注意点があります。

高年齢雇用継続給付金の申請期限と遅れるとどうなるか?

支給がスムーズに行われるためには、原則として期限内に申請を行うことが必要ですが、万が一遅れた場合、2年の時効の期間内であれば、支給申請が可能です。

申請期限時効の起算点と終点
高年齢雇用継続基本給付金支給対象月の初日から起算して4カ月以内支給対象月の末日の翌日から起算して2年を経過する日
高年齢再就職給付金支給対象月の初日から起算して4カ月以内支給対象月の末日の翌日から起算して2年を経過する日

引用:厚生労働省リーフレット:申請期限が過ぎたことにより給付を受けられなかった方へ

高年齢再就職給付金と再就職手当の併給はできない

高年齢再就職給付金と再就職手当を同時にもらうことはできません
双方の支給要件を満たすときは、どちらが有益になるのかを考える必要があります。

高年齢再就職給付金再就職手当
失業手当の残日数により1年または2年支給
(支払われた賃金×最大15%)
一括で支給
(失業手当日額×残日数×60%または70%)
賃金が変動すれば給付額も変わる再就職後の賃金に影響されない
年金と併給調整される年金と併給調整されない

高年齢雇用継続給付金をもらうと年金が一部支給停止になる場合がある

特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)の受給中に、同時に高年齢雇用継続給付金の支給を受けている場合があり得ます。
その場合は高年齢雇用継続給付金の額に応じて、年金の一部(最大で標準報酬月額の6%相当額)が支給停止されることがあります。

年金額や賃金額には人によって違いがあるため、詳細については、最寄りの年金事務所へお問い合わせください。

まとめ

少子高齢化が進む中、労働力を確保するためには高年齢者の雇用が欠かせません。
しかし高年齢者は豊富な経験の一方、体力などが衰えてくるため現役時代と同じ給料の保障が難しい一面もあります。

高年齢従業員の収入に対する不安をなくし、企業は労働力を確保して競争力を高めるためにも、高年齢雇用継続給付金を活用することが必要です。
また、制度が段階的に縮小・廃止されることを踏まえ、企業は高年齢従業員の処遇改善に関する取り組みを模索していきましょう。

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