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弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所 > コラム > 労災 > 労災保険の計算方法と計算例を労働保険料との違いを合わせて解説

労災保険の計算方法と計算例を労働保険料との違いを合わせて解説

この記事でわかること

  • 労災保険料の計算方法
  • 労災保険料の申告・納付手続きの流れ
  • 労働保険料と労災保険料の違い

労災保険は、従業員の労働災害に備えるための公的保険制度です。
労災保険料の正確な計算と納付は、事業主の重要な義務となります。

本記事では、労災保険料の計算方法を、具体的な例を用いながら詳しく解説します。
また、労働保険料との違いや納付手続きについても解説し、事業主や人事担当者が知っておくべき基本情報をまとめています。
労災保険制度について、正しく理解をしましょう。

労災保険料の計算方法

労災保険料は、労働者に支払う賃金の総額に労災保険料率を乗じて算出します。
【労災保険料=賃金総額×労災保険料率】

ここでは、この計算式について、詳しく解説していきます。

賃金総額について

賃金総額とは、労働者に支払われた賃金の合計額を指します。

その事業に使用する労働者(年度途中の退職者を含みます)に対して、労働の対価として支払うすべてのものを指します。
賃金、手当、賞与、その他名称の如何を問わず、また税金、社会保険料等を控除する前の支払総額のことをいいます。
また、保険料算定期間中に支払いが確定した賃金は、期間中に支払われなくとも算入されます。

具体的には、以下のものが含まれます。

賃金総額に含まれるもの

  • 基本給
  • 諸手当(残業手当、通勤手当、住宅手当など)
  • 賞与
  • 定期券・回数券
  • 前払い退職金

賃金総額に含まれないもの

  • 役員報酬
  • 結婚祝金
  • 死亡弔慰金
  • 災害見舞金
  • 年功慰労金
  • 勤労褒賞金
  • 退職金
  • 出張旅費(宿泊費含む)
  • 休業補償費(傷病手当金含む)
  • 解雇予告手当

労災保険料率について

労災保険料率は、事業の種類に応じて設定されています。

労災保険制度は、仕事中や通勤途中の事故でケガをした場合や、業務が原因で病気になった場合に補償を行う制度です。
そのため、労災事故の発生頻度が高い業種では労災保険料率が高く、逆に労災事故が少ない業種では低く設定されています。
つまり、労災リスクの高さに応じて労災保険料率が調整されているしくみです。

労災保険料率は定期的に見直され、社会情勢や各業種の労災発生状況の変化に応じて改定されます。
また、一定の条件を満たす事業場では、労災事故の発生状況に応じて、一定の範囲内(基本:±40%、例外:±35%、±30%)で労災保険料率または労災保険料額を増減させる制度(メリット制)を設けています。

これにより、常に実態に即した公平な保険制度が維持されるよう努められています。

令和6年度の労災保険料率

労災保険料率表

引用:労災保険率表(厚生労働省)

上記の表が、令和6年度の労災保険料率です。

事業主は各事業の業種に応じた労災保険料率によって労災保険料を算出し、納付します。
メリット制が適用された場合は、厚生労働省から送付される「年度更新申告書」に同封している「労災保険率決定通知書」で通知されます。

労災保険料の計算例

労災保険料は、賃金の総額に労災保険料率を乗じて計算されます。
用いるのは、冒頭でお伝えした【労災保険料=賃金総額×労災保険料率】という計算式です。

具体的な計算例を見てみましょう。

金融業の場合

金融業を営む会社Aの年間賃金総額が1億円で、労災保険料率が0.25%の場合

労災保険料=1億円×0.25%=25万円

この場合、会社Aは年間25万円の労災保険料を納付することになります。

建築事業の場合

建築事業を営む会社Bの年間賃金総額が2億円で、労災保険料率が0.95%の場合

労災保険料=2億円×0.95%=190万円

この場合、会社Bは年間190万円の労災保険料を納付することになります。

複数の事業を行っている場合

会社Cが食料品製造業(労災保険料率0.55%)と小売業(労災保険料率0.3%)を
営んでおり、それぞれの賃金総額が、食料品製造業3億円、小売業2億円の場合

食料品製造業の労災保険料=3億円×0.55%=165万円
小売業の労災保険料=2億円×0.3%=60万円
合計労災保険料=165万円+60万円=225万円

この場合、会社Cは年間225万円の労災保険料を納付する必要があります。
このように、複数の事業を行っている場合は、事業ごとに計算した保険料を合算します。

労災保険料の納付

労災保険料を計算したら、計算結果に基づき申告・納付手続きをします。
労災保険は仕事中の事故やケガに対する補償であるため、保険料は全額事業主負担となります。
労働者の負担はありません。

納付期間

労災保険料の納付は、前年度の確定した労災保険料の納付と、新年度の概算の労災保険料を納付するための申告・納付をする「年度更新」という手続きを行います。
年度更新期間は、原則6月1日から7月10日までになります。
更新期間が土日祝日に当たる場合には、以下のように繰り延べられます。

6月1日が土曜日に当たるときは6月3日、日曜日に当たるときは6月2日からとなります。

保険料額が一定の要件を満たした場合や、労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は、事業主の申請により、労災保険料の納付を3回に分割することもできます。
分割納付の場合の期限は、以下の通りです。

  • 第1期:7月10日まで
  • 第2期:10月31日まで
  • 第3期 翌年1月31日まで

※10月1日以降に成立した事業については、延納は認められません。

提出先

申告書の提出先は、以下のとおりです。

  • 金融機関(銀行・郵便局など)
  • 管轄の労働局
  • 管轄の労働基準監督署
  • 社会保険・労働保険徴収事務センター(年金事務所内)
  • e-Govによる電子申請

口座振替をご利用の場合や納付金額が0円の場合は、金融機関への提出はできませんのでご注意ください。

また、e-Govを利用した電子申請では、24時間365日申請が可能です。
申請書類の作成支援機能もあり、入力ミスを減らすことができます。
申請状況をオンラインで確認でき、書類の郵送コストも削減できるため、多くの企業で活用されています。

労働保険料と労災保険料の違い

労働保険料と労災保険料は、似ている表現ではありますが、以下のとおり違いがあります。

  • 労働保険料:労災保険と雇用保険の保険料を合わせたもの
  • 労災保険料:労災保険のみの保険料

つまり、労働保険料は労災保険料を含む、より広い概念となります。
多くの事業では、労災保険料と雇用保険料をまとめて労働保険料として、一緒に申告・納付を行います。これを「一元適用事業」といいます。

一方、労災保険料と雇用保険料を別々に取り扱う事業を「二元適用事業」といいます。

適用される事業の違い

ここでは、一元適用事業と二元適用事業について説明します。

一元適用事業

一元適用事業とは、労災保険と雇用保険の保険料の申告・納付に関して、両保険を一元的に取り扱う事業です。
多くの事業がこれに該当し、労働保険料として一括して徴収されます。

二元適用事業

二元適用事業とは、その事業の実態から、労災保険と雇用保険の適用に仕方を区別する必要があるため、保険料の申告・納付をそれぞれ別個に二元的に行う事業です。
具体的には、次の事業が該当します。

  1. 都道府県及び市区町村が行う事業、それに準ずる事業
  2. 港湾労働法の適用される港湾の運送事業
  3. 農林・水産の事業
  4. 建設の事業

まとめ

労災保険制度は、従業員の安全を守るためにも重要な制度です。
本記事で解説した通り、労災保険料の計算を行うには、正確な賃金総額の把握や、業種による労災保険料率の違い、メリット制による調整なども理解しなくてはなりません。
また、労働保険料との違いを理解し、自社が一元適用事業か二元適用事業かを確認することも重要となります。
労災保険制度への理解を深め、正確な労災保険料の計算と納付に努めましょう。

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