

東京弁護士会所属。新潟県上越市出身。
労働問題は、一歩対応を誤れば損害賠償だけでなく、企業の信用失墜や従業員の士気低下、ひいては経営基盤を揺るがす重大なリスクとなります。
私は、野村證券をはじめとする金融機関で10年以上にわたり、リテール営業からコンサルティング、金融庁との折衝やリスク管理まで、多方面の業務に従事してまいりました。これらの経験から、企業の数字と法務は密接にリンクしており、労働問題を「点」ではなく「経営の一部」として捉えることの重要性を痛感しております。
経営者側の立場に立ち、財務分析や資金調達の観点も含めた戦略的なアドバイスを行うことが私の強みです。単に紛争を解決するだけでなく、組織の持続的な発展を見据えた強固なガバナンス構築のお手伝いをいたします。経営者の皆様の良き相談相手として、誠実かつ論理的にサポートさせていただきます。

この記事でわかること
社内でセクハラが発生した場合、加害者にどの程度の懲戒処分を行うかは、経営者や人事担当者にとって難しい判断です。
セクハラ処分には、戒告から懲戒解雇まで段階があり、悪質性や頻度、被害の影響等を踏まえた慎重な検討が求められます。
特に、判断が分かれやすいグレーゾーン事例では、処分が重過ぎれば不当解雇、軽過ぎれば安全配慮義務違反と判断されかねません。
被害者と加害者双方からの訴訟リスクで、板挟みになる可能性があります。
処分の妥当性に迷う場面では、弁護士への相談が重要です。
この記事では、具体的な処分事例と判断ポイント、処分を誤った場合の企業リスク、グレーゾーン事案への対応策を、使用者側弁護士が解説します。
目次
職場でのセクハラに対して懲戒処分を行うためには、就業規則上の根拠が必要です(労基法第89条[注1])。
懲戒処分には、軽い処分から最も重い処分まで、次の段階があります。
発言のみの行為から、身体接触や関係の強要まで、内容や悪質性に応じて、処分の選択肢を用意する必要があります。
ここでは、セクハラ処分におけるそれぞれの段階について解説します。
注意・戒告・けん責は、セクハラ対応の初期段階で行われる処分です。
性的な冗談や容姿への言及等、比較的軽微な発言によるセクハラや、初めて問題となった場合が主な対象となります。
注意は懲戒処分ではなく、処分を行う前段階として、口頭で行う指導です。
戒告やけん責は、口頭または文書で注意し、再発防止を促します。
特にけん責では、始末書の提出を求めるケースが一般的です。
しかし、これらの区分や始末書の有無は、就業規則の定め方によって異なるため、会社規定の確認が重要です。
いずれも最も軽い処分ですが、会社がセクハラを許さない姿勢を示す重要なステップとなります。
減給・出勤停止(停職)は、注意や戒告よりも重い、中程度のセクハラに対して行われる処分です。
対象となる行為は、執拗な誘いや、肩や手に触れる程度の身体接触、問題発言の繰り返し等です。
減給は、給与から一定額を差し引く処分ですが、金額や回数には法律による制限があります(労基法第91条[注2])。
出勤停止(停職)は、一定期間の出勤を禁じ、その間の賃金を支払わない措置です。
いずれも経済的な不利益を伴うため、事実関係の確認を慎重に行う必要があります。
降格・諭旨解雇は、セクハラの中でも悪質性が高い事案に行われる処分です。
対象となる行為は、強い身体接触、管理職によるセクハラで、部下に不利益な扱いを行ったケース等が挙げられます。
降格は、管理職として不適格であると判断し、役職や職位を引き下げる処分です。
諭旨解雇は、問題行動が懲戒解雇相当である事案において、反省の態度が見られる場合等に、退職届の提出を勧告する処分です。
提出されれば退職扱いとし、退職金の一部を支給する等、温情的な措置として選択されます。
諭旨解雇に応じない場合は、一般的には懲戒解雇へ移行します。
懲戒解雇は、セクハラに対する処分の中で最も重い処分です。
対象となる行為は、不同意わいせつや性行為の強要、執拗で悪質なストーカー行為等、犯罪に匹敵する行為です。
また、セクハラ行為について繰り返し指導や処分を受けても改善が見られない場合も該当します。
懲戒解雇は、即時に雇用契約を終了させ、退職金を全額または一部不支給とする重い処分です。
事実関係や証拠を十分に確認しないまま行うと、裁判等で解雇権の濫用と判断されるリスクが高まります(労契法第16条[注3])。
そのため、懲戒解雇を行う場合は、法的に適正な手続きと慎重な検討が欠かせません。
ここでは、実際の裁判例や報道事例から、セクハラ行為と処分の具体例を、軽い処分から順に、次の通り紹介します。
懲戒処分は、行為の内容だけで機械的に決定するのではなく、回数、反省の有無、加害者の職位等を総合的に考慮して判断する点に注意しましょう。
同僚の女性社員に対して、職場で性的な発言をした男性社員に対し、会社は当該発言を理由にけん責処分(始末書提出)を行いました。
裁判所は、セクハラ行為が故意であったかは明確でないとしても、相手の意に反する性的言動であったと評価しました。
その上で、けん責処分は最も軽い懲戒処分として社会的相当性を欠く対応ではないとして、処分の有効性を認めました。
この判例のポイントは、発言のみであっても、相手に不快感を与えた場合は、懲戒処分の対象になり得ると認められた点です。
事例事件名:Xファイナンス事件
・裁判所・部:東京地裁
・判決日:2011年1月18日
・要旨:女性社員に対する不用意な性的発言が、セクハラに当たると認定され、始末書提出を伴うけん責処分が有効とされた事例。
発言のみでも懲戒処分の対象となると示された。
・出典:全国労働基準関係団体連合会:労働基準判例検索
勤務時間中に市職員がコンビニの女性店員に対して手を触れる等のわいせつ行為をしたとして、停職6カ月の懲戒処分を受けました。
裁判では、制服着用で公務中であり、不快感を与えた身体接触が繰り返されていた点等が総合的に考慮されました。
結果として、市の社会的評価の低下が避けられないとし、停職処分は社会通念上の妥当性を欠いていないと認めました。
この判例のポイントは、社外の第三者に対する迷惑行為であっても、懲戒処分の対象になり得ると判断された点です。
勤務中の行為で職務に関連すると判断された場合、会社や組織の信用失墜行為として認められる可能性があります。
事例事件名:A市事件
・裁判所・部:最高裁三小
・判決日:2018年11月6日
・要旨:勤務中にコンビニ店員へわいせつな行為を行ったとして停職6カ月の処分を受け、その処分の有効性が争われた事案。
最高裁は行為の内容と社会的影響を総合的に考慮し、懲戒処分を有効と判断した。
・出典:あかるい職場応援団:裁判例を見てみよう
参考:人事院:懲戒処分の指針について
水族館の管理職が、女性従業員に対して不適切な性的発言を繰り返したとして、会社が出勤停止および降格処分を行った事案です。
処分無効が争われましたが、最高裁は、懲戒処分および降格はいずれも社会通念上相当であると判断しました。
発言内容に加え、本来は部下を指導・監督する立場にある管理職が、同様の行為を繰り返した点を重く評価しています。
この判例のポイントは、管理職は一般の従業員以上に高いセクハラ防止意識が求められる点です。
管理職という立場に反する行為は、管理職不適格として厳しく判断される例を示しています。
事例事件名:海遊館事件
・裁判所・部:最高裁一小
・判決日:2015年2月26日
・要旨:管理職による繰り返しの不適切・性的言動について行われた、懲戒処分および降格の有効性が争われた事案。
管理職としての責任の重さが、処分の妥当性判断の重要な要素とされた。
・出典:あかるい職場応援団:裁判例を見てみよう
ある製薬会社の室長が、複数の女性社員に対し、執拗に食事やデートに誘い、露骨な性的発言を繰り返した事案です。
会社は、懲戒解雇相当としながらも、本人の将来を考慮し、通常解雇(普通解雇)しました。
裁判では、解雇無効とともに、解雇手続きの適正さについても争われました。
裁判所は、妥当性の判断において、室長の職務上の能力が評価されて管理職に就いている点や、過去に処分歴が無い点も考慮しました。
しかし、セクハラ行為が複数の部下の就業環境を著しく害し、管理職としての適格性も欠くと評価して、通常解雇を有効と認めました。
この判例は、懲戒解雇相当とされる行為に対する普通解雇が有効とされたケースです。
事例事件名:製薬会社室長解雇事件
・裁判所・部:東京地裁
・判決日:2000年8月29日
・要旨:管理職による執拗な誘い・性的発言を理由に、懲戒解雇相当としつつも通常解雇を選択した事案。
裁判所は就業環境への悪影響や管理職の地位を踏まえ、通常解雇を有効と判断した。
・出典:一般社団法人女性労働協会:判例データベース
大学の教授が、女子学生に対し、優越的な立場を利用してホテル内でわいせつ行為を行ったため、大学が教授を懲戒解雇した事案です。
教授は処分を不服として、懲戒解雇の無効を求めて提訴しました。
裁判所は、これらの行為が職場の秩序を乱すセクハラ行為に当たると認定し、懲戒解雇は有効と判断しました。
教育の場における信頼関係を著しく損ない、優越的地位を悪用した点は、処分を正当化する重大な事情であると評価しています。
この判例では、これまで特段の問題行動が見られなかった場合であっても、行為の結果の重大性により、懲戒解雇が認められる点が示されました。
事例事件名:A大学教授懲戒解雇事件
・裁判所・部:東京地裁
・判決日:2002年9月30日
・要旨:大学教授が大学院生に対し、優越的地位を利用してわいせつ行為を行い、懲戒解雇された。
職場秩序の乱れが認められ、懲戒解雇は濫用に当たらず有効とされた。
・出典:一般財団法人女性労働協会:判例データベース

懲戒処分は、セクハラ行為に見合った重さで行う必要があり、過度に重い処分は懲戒権の濫用として無効となる恐れがあります(労契法第15条[注4])。
そのため、処分の判断では、社内ルールだけではなく、過去の裁判例との整合性も重要です。
具体的には、次の5つの視点を総合的に検討します。
処分が重過ぎると不当懲戒を訴えられ、軽過ぎると被害者から安全配慮義務違反を問われる恐れがあります。
こういった板挟みを避けるためにも、弁護士による判断も重要です。
ここでは、5つのポイントを詳しく解説します。
セクハラ処分では、まず行為の悪質性を判断します。
発言のみにとどまるのか、身体への接触を伴うのか等、問題となった行為の質や悪意の有無が重要です。
一般的に、身体接触がある場合や、性的な関係の強要、拒否しにくい状況を利用した脅迫的な言動は、悪質性が高い行為です。
また、一時的な軽率行為よりも意図的に行われた行為は、悪質性が高いと判断されます。
セクハラ処分の判断では、行為の回数や継続期間も重要です。
一度きりの不用意な発言か、同様の言動が繰り返されたかで評価は異なります。
一般的に、回数が多い、継続性がある場合は、処分が重くなる傾向です。
特に、注意や指導を受けた後も行為をやめなかった場合、被害者の拒絶を無視して執拗に続けた場合は、責任や悪質性はより重くなります。
処分の判断ポイントには、被害者に生じた影響も含まれます。
一般的には、被害者の精神的・身体的被害の程度、業務への支障が深刻であるほど、求められる処分も重くなる傾向です。
たとえば、被害者がうつ病等のメンタル不調に陥り、出勤困難となったケースや、休職・退職に追い込まれたケースでは、影響は重大と評価されます。
行為の内容や結果だけではなく、加害者の対応姿勢を考慮する点も重要です。
調査に協力し、事実を認め、誠実に謝罪して反省を示している場合、一定の情状酌量措置が検討されます。
一方で「冗談だった」「相手にも非がある」と責任転嫁する態度は、改善の見込みがないとして、処分が重くなる傾向です。
再発防止に向けた研修の受講状況や改善策への協力姿勢も、重要な判断ポイントです。
処分の決定は、会社の就業規則や懲戒規定、セクハラ防止規定等に基づいて行わなければなりません。
また、過去の類似事案や処分事例とのバランスも重要です。
規定に根拠がない、または過去事例と整合性が取れない判断は、後に無効とされる恐れがあります。
特定のケースのみ極端に重く、または軽くする処分は公平性を損なうため、注意が必要です。
セクハラは、ニュースに取り上げられるほど悪質な事例だけではなく、日常的に判断が難しいグレーゾーンの事例も多く存在します。
ここでは、職場でよく見られる判断が難しい事例について解説します。
食事の誘いは、社会的な付き合いの一環として許容される場合もありますが、誘い方や頻度、相手の反応によってはセクハラとなり得る行為です。
たとえば、業務時間中に頻繁に誘う行為や、明確に断られた後も執拗に誘い続ける行為は、相手に不快感を与え、セクハラと判断されやすくなります。
特に上司から部下に対して行われる場合は、立場上、拒否しにくい状況が生まれます。
こういった事態を避けるためには、以下の姿勢が重要です。
「~君」「~ちゃん」といった呼び方は、親しみを込めて使用する場合もある一方で、性差別的な印象を与える可能性があります。
職場はあくまでも公的な場として振る舞う姿勢が求められます。
相手が男性・女性問わず、「~さん」と統一して呼ぶようにしましょう。
「女性だから」「男性のくせに」などの性別役割分担意識に基づく言動は、社会的な慣習や文化的背景から無意識に生じやすい問題です。
たとえば以下の発言が該当します。
これら発言は、たとえ本人に悪気がなくても、相手を不快にさせ、セクハラ・性差別と捉えられる可能性があります。
性別による固定概念で判断せず、個人の能力や適性に基づいた言動を心掛けましょう。
容姿やプライベートに関する発言も、状況や相手との距離感によってはセクハラとなり得ます。
具体的な発言例は、次の通りです。
これらがセクハラに該当するか否かは、状況や相手との関係性によっても異なり、友人関係等の距離の近い相手であれば、許される場合もあります。
しかし、職場におけるこれらの発言は、相手に不快感を与える可能性があるため、控えましょう。
職場での雑談やコミュニケーションは、良好な人間関係を作り、円滑に業務を遂行させるために不可欠です。
しかし、発言内容によってはセクハラとなる可能性があります。
特に注意が必要なのは、卑わいな発言や、「下ネタ」と呼ばれる性的な冗談です。
これらの発言は、話し手に悪意がなくても、聞き手を不快にさせる可能性が高いです。
特にお酒が入った席では、普段よりも言動が大胆になりがちで、こうした発言が増える傾向にあります。
しかし、あくまでも職場は仕事をする場であり、同僚は仕事上の関係です。
たとえ業務時間外や職場外であっても、仕事関係者との会話である以上、一定の節度が求められます。
職場でセクハラが発生した場合、会社は適切に対応しなければなりません。
具体的な対応の流れについて解説します。
まず、セクハラ被害の報告等があった場合は、速やかに事実関係を調査します。
被害者の話だけで判断せず、加害者や目撃者にも丁寧に聞き取りを行い、双方の主張を整理します。
「言った・言わない」で主張が食い違うケースは、特に注意が必要です。
安易にどちらか一方の言い分を信じると、事実認定を誤るリスクが高まります。
こういった状況において、メールや録音データ、第三者の証言等、客観的証拠が不十分な場合、社内だけで結論を出すのは容易ではありません。
その後の法的リスクを回避するためには、専門家である弁護士の支援が有効です。
中立的な視点で証拠が整理され、後のトラブルを防ぐためのサポートも得られます。
同時に、二次被害を防ぐために、関係者に守秘義務を徹底し、被害者のプライバシーを厳重に保護しましょう。
噂が広まれば、被害者にさらなる苦痛を与えるため、最新の注意を払う必要があります。
また、セクハラ相談を理由とした、被害者への不利益扱いは禁止されています。
被害者への配慮であっても、本人が望まない部署へ異動させる行為は、不利益扱いとなる可能性があるため、慎重に行いましょう。
調査結果に基づき加害者への懲戒処分と再発防止策を決定します。
懲戒処分を実施する場合は、就業規則に基づいて適切に行いましょう。
加害者に対しては、決定した処分を明確に伝えるとともに、再発防止のための教育も必要となります。
加害者が自身の行動の問題点を深く理解し、再発防止につながる教育を行いましょう。
セクハラ発生時は、加害者への処分だけではなく、社内全体に向けた再発防止メッセージの発信も重要です[注5]。
発信では、加害者のプライバシーにも配慮し、個人名を伏せて対象行為と処分内容を公表します。
会社の対応姿勢が明示され、セクハラに対する抑止力を高める効果が期待できます。
併せて、再発防止研修や相談窓口の再周知により、全社員で問題意識を共有しましょう。
単発または部分的な対応にとどまらず、組織全体でセクハラ防止意識を高める体制整備が重要です。
セクハラかどうか判断が難しいグレーゾーン事例であっても、被害者が不快感を示している場合、会社は問題を放置できません。
すぐに懲戒処分を行うのはリスクが高いため、まずは就業環境の調整と指導を中心に対応し、改善が見られない場合に処分を検討しましょう。
段階的な対応は、会社の法的リスクを回避するための基本原則です。
具体的には、次の手順で進めます。
ここでは、段階ごとの会社対応のポイントを解説します。
被害申告があった場合は、できるだけ早く被害者と行為者双方に詳細を聞き取りましょう。
聞き取った行為の内容や状況は記録し、メールやチャット等の客観的証拠があれば、保存します。
事実関係が完全に確定しなくても、お互いの受け取り方の違いや「不快に感じた事実」を共有すれば、問題の深刻化を防ぐ適切な対応となります。
グレーゾーン事例では、懲戒処分をいきなり行わず、まずは上司による口頭注意や指導で対応します。
具体的には「誤解を与える言動」「業務に支障がある」と伝え、行動改善の意識を促しましょう。
行為者の意図にかかわらず、相手が不快に感じた事実を明確に伝える点が重要です。
併せて、再発防止のために、ハラスメント研修や上司面談も実施します。
指導内容や研修状況は将来の処分の根拠となるため、必ず記録しましょう。
被害者の希望に応じて席替えや担当変更、配置転換を行う等、就業環境を調整して心理的負担を軽減します。
セクハラ申告を理由とした評価や人事上の不利益扱いは禁止されているため、本人の意思の確認や配慮措置に関する丁寧な説明が重要です。
「会社はあなたの味方であり、環境改善の意思がある」と伝え、安心して働ける職場作りを心がけましょう。
再発防止のため、事例は匿名化して共有し、問題となりやすい言動を社内全体で再確認します。
併せて、相談窓口や通報ルートを見直し、安心して相談できる体制を継続的に整えましょう。
啓発活動では、特定の個人を対象にせず、全体に向けて「コミュニケーションのあり方」等をテーマに研修を実施します。
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)への気づきを促し、グレーゾーンになりやすい言動を防止するしくみが重要です。
セクハラ処分は、被害者の保護と行為者の権利配慮を同時に求められる、極めて判断の難しい対応であり、法的視点を踏まえた判断が欠かせません。
対応や判断を誤った場合、会社には次のリスクが生じます。
ここでは、会社の負うリスクを解説します。
セクハラ処分の根拠や手続きが不十分なまま懲戒を行うと、行為者から「不当懲戒」や「懲戒権の濫用」を訴えられる恐れがあります。
不十分な事実確認や、軽微な発言に対して懲戒解雇を行う等の過重処分は、懲戒無効や損害賠償請求へ発展しやすくなるため、注意が必要です。
裁判等で負けた場合、処分無効だけではなく、バックペイや慰謝料の支払いを命じられるリスクも生じます。
調査の過程が不透明、または処分が加害者・被害者のどちらかに偏ると、公平性が損なわれ、社員の不信感が高まります。
その結果、職場全体の士気低下を招きかねません。
特に、軽すぎる処分や対応の遅れは、被害者から安全配慮義務違反として損害賠償請求を受けるリスクが高まります。
「この会社はハラスメントを許容する」という失望が広がれば、優秀な人材の離職が相次ぎ、組織の基盤が揺らぐ恐れがあります。
セクハラ対応の誤りが外部に報じられれば、企業の社会的評価や顧客からの信頼が大きく損なわれます。
SNSでの拡散や報道をきっかけに「ブラック企業」との印象が定着すると、採用難や取引停止へ発展しかねません。
さらに、再発防止策や透明性ある対応が不十分な場合は、会社のコンプライアンス意識が疑われ、経営リスクに直結します。
会社のセクハラ対応は、発生時だけではなく、未然に防止する社内体制づくりも重要です。
セクハラを予防するための対策について解説します。
会社は、職場におけるセクハラ防止に関する方針を明確化し、労働者に周知徹底する必要があります。
具体的には、就業規則やその他の服務規律を定めた文書に、セクハラ禁止の方針を明記します。
禁止される行為の内容や、セクハラが許されない行為である旨を明確に示しましょう。また、規定だけではなく社内報やパンフレット、ホームページ等で、セクハラと認識しづらいグレーゾーン事例についても周知します。
特に、性別分担意識に基づく言動(「男のくせに~」「女だから~」など)や、同性に対する言動等もセクハラに該当し得る点は、重要です。
さらに、セクハラ行為者に対する厳正な対処方針も示しましょう。
具体的には、セクハラ行為者への懲戒規定を就業規則等に明記し、対象行為と処分内容、その判断要素を明らかにします。
セクハラ問題が発生した際に、労働者からの相談に迅速に対応できる相談体制を整備しなくてはなりません。
具体的には、社内に相談窓口を設置し相談担当者を指定する、あるいは外部機関に委託する等の方法があります。
相談方法は、面談・電話・メール等複数の選択肢を用意し、労働者の利用しやすさに配慮しましょう。また、相談内容に応じて人事部門や上司と連携できるしくみを構築し、適切な対応につなげます。
相談担当者には、対応マニュアルを作成・配布し、必要な研修を実施し、適切な相談対応ができるための支援をします。
相談対応自体が二次被害に発展するケースもあるため、相談者への研修は欠かせません。
セクハラに対する職場全体の意識を高めるために、定期的な研修を行いましょう。
まずは、セクハラの定義と種類を明確に説明し、職場で起こりうる具体的な事例を提示します。
明らかなセクハラだけでなく、グレーゾーン事例も含めれば、日常の言動を見直すきっかけとなり、より効果的です。
そして、男女雇用機会均等法[注6]等の関連法規や会社の方針を解説し、法的責任についても理解を深めます。
セクハラが被害者や職場環境、会社へ与える影響を具体的に説明し、問題の重大性を共有します。
セクハラ防止に向けた行動指針や、目撃した際の適切な対応方法、相談窓口の利用方法についても説明しましょう。
特に、管理職世代に対しては、特別な研修の実施が推奨されます。
時代背景の変化により、かつては許容されていた言動が、現在ではセクハラと判断される可能性について強調します。
悪意がなくとも相手を不快にさせてしまう具体例を示すと、効果的です。
また、管理職の立場からセクハラを防止し、適切に対応する責任についても重点的な説明が求められます。
セクハラは、従業員の尊厳を傷つけ、職場環境を著しく悪化させる問題です。
職場で実際にセクハラが発生してしまった場合や、発生リスクが高い状況にある場合は、早めに弁護士へ相談をしましょう。
セクハラ問題は、発生してからの対応よりも、未然の防止が最も重要です。
適切な予防体制の構築には、法的な観点からのアドバイスが欠かせません。
セクハラに関する方針を定める規定の作成や整備、従業員に対する研修内容、相談窓口の設置等について支援を受けましょう。
セクハラが発生してしまった場合や、従業員から訴えがあった場合、会社は迅速かつ適切な対応が求められます。
セクハラの調査や処分での誤った対応は、被害者にさらなる苦痛を与える二次被害を引き起こす可能性があります。
そのため、セクハラ問題が発生した際は、速やかに専門の弁護士へ相談しましょう。
弁護士に相談するメリットは、多岐に渡ります。
セクハラは、被害者と加害者が存在するため、極めて複雑かつ繊細な問題です。
専門の弁護士の助言を受けながら、適切な対応をしましょう。
セクハラ行為への懲戒処分は、行為の悪質性や結果の重大性等に応じた、相当性のある判断が求められます。
セクハラ認定の難しいグレーゾーン事例では、いきなり処分を行わず、口頭注意や指導、就業環境の調整から対応しましょう。
対応を誤ると、加害者・被害者双方から訴えられるリスクが生じ、職場環境や企業信用にも悪影響が生じます。
公平かつ適切な処分を下すためには、事実確認のための調査段階から、弁護士による支援が不可欠です。
セクハラ事案の事実認定や処分の判断に迷われた際は、労働問題に強いVSG弁護士法人にご相談ください。
[注1]労働基準法/e-Gov
労働基準法第89条
[注2]労働基準法/e-Gov
労働基準法第91条
[注3]労働契約法/e-Gov
労働契約法第16条
[注4]労働契約法/e-Gov
労働契約法第15条
[注6]男女雇用機会均等法