

東京弁護士会所属。千葉県習志野市出身。
企業にとって、従業員とのトラブルは金銭的な損失以上に、組織の士気低下やブランドイメージの毀損を招く大きなリスクです。私は弁護士になる前、2社の上場メーカーの法務部門にて、契約交渉や社内規定の整備、コンプライアンス教育の最前線に携わってきました。
法律事務所の外部アドバイザーとしてだけでなく、「企業内部で法務を担ってきた当事者」としての視点を持ち合わせていることが私の最大の強みです。会社が直面する労務課題に対し、単に「法的に難しい」と断じるのではなく、ビジネスの実情に即して「どうすればリスクを抑えて目的を達成できるか」を経営者様と共に考え抜きます。
ビジネス実務法務検定1級や知的財産管理、個人情報保護といった多方面の専門知見を活かし、隙のない労務体制の構築を支援いたします。「弁護士は良質なサービスを提供する仕事である」という信念のもと、経営者の皆様が安心して事業に邁進できる環境作りを全力でバックアップいたします。

目次
社員の逮捕が発覚すると、会社は短時間で多くの判断を迫られます。焦って動くと、後から「不当解雇だ」「情報の扱いが不適切だ」と問題が広がりやすくなります。
まずは事実確認と社内の体制づくりを優先し、就業規則や法的ルールに沿って順序立てて対応しましょう。
最初に行うべきは、「何が起きたのか」をできる限り正確に把握することです。
逮捕はあくまで捜査の一段階で、罪が確定したことを意味しません。そのため、噂や憶測で判断せず、確認できる情報を整理しておく必要があります。
確認の対象は、たとえば次のような点です。
情報源は、本人や家族からの連絡、報道、取引先の問い合わせなどが想定されます。ただし、報道内容は断片的な場合もあるため、事実と推測を分けて記録しましょう。
そのうえで、社内では「誰が対応責任者か」「窓口はどこか」「外部への発信は誰が行うか」を決め、対応を一本化します。窓口を複数にすると、説明が食い違い、信頼低下や炎上につながりやすくなります。
社員が出勤できない、または出勤させにくい状況では、出勤停止や自宅待機を検討します。
ここで大切なのは、会社の判断が「懲罰」にならないよう、根拠と目的を整理することです。
運用上は「懲戒としての出勤停止」なのか「調査のための待機命令」なのかで、求められる手続きや説明が変わります。
就業規則に根拠規定がないのに、実質的に処分に近い扱いをすると、後から違法・無効と評価されるおそれがあります。
会社が社員を解雇するには、一般に客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。つまり、会社が見ても第三者が見ても、解雇が妥当だと言える事情が求められます。
判断の軸は主に次のとおりです。
戒告・減給・出勤停止などを飛ばしていきなり最も重い懲戒解雇を選ぶと、その処分が無効になることもあります。
会社として「どの処分が妥当か」を、就業規則と過去の運用も踏まえて検討しましょう。
逮捕情報は、扱い方を誤ると社内の混乱や二次被害につながります。余計なトラブルを避けるポイントは「必要な人に、必要な範囲で」共有することです。
共有範囲を検討する際は、次を意識します。
社内向けの説明は、断定的な表現を避け、「現時点で確認できる事実」「会社としての対応方針」「問い合わせ窓口」をセットにすると混乱を抑えやすくなります。
特に、会社の信用毀損を抑える意味でも、SNSでの発信を控える注意喚起は早めに行っておきましょう。
対外対応では、「説明の必要性」と「説明の範囲」を分けて考えると整理しやすくなります。
取引や顧客対応に影響が出る場合、会社として一定の説明が求められることがありますが、何でも話せばよいわけではありません。
検討のポイントは次のとおりです。
説明する場合も、事実確認が不十分な段階で詳細を語ると、後で説明が覆り信用を落とします。「担当変更」「業務継続の体制」「今後の連絡窓口」など、実務上必要な情報に絞るのが基本です。
報道やSNS拡散が起きると、会社として対応を求められる場面があります。
ただし、全てのケースで声明や謝罪が必要とは限りません。むしろ、反応が早すぎると、情報が不確かなまま会社の立場を固定し、後から修正しにくくなることがあります。
判断の軸は次のとおりです。
対応する場合は、窓口と発信者を一本化し、想定問答(Q&A)を用意しましょう。
発信内容は「客観的な事実」「会社の対応」「今後の方針」に絞り、推測や断定は避けます。
社員の逮捕が絡む場面では、会社の判断が労務トラブルや信用問題に直結します。
出勤停止・待機命令などの対応、懲戒・解雇の可否、社内外への説明内容など、どこか一つでもズレると、会社側が不利になりやすいのが実情です。
弁護士へ相談すると、たとえば次の点を整理できます。
早い段階で助言を受けるほど、無理のない対応方針を作りやすくなります。会社の不利益を広げないためにも、判断に迷う時点で相談を検討しましょう。
社員が逮捕されると、身柄拘束により一定期間出社できなくなる場合があります。この間の勤怠や金銭の扱いについて、会社は慎重に判断する必要があります。
【賃金】
身柄拘束中は業務に従事できないため、原則として賃金は発生しません。賃金は労務提供の対価であり、欠勤が続く限り無給扱いとする対応が一般的です(ノーワーク・ノーペイの原則)。
ただし、社員が有給休暇の取得を申し出た場合には、原則としてその申請に応じる必要があります。一方、本人の意思を確認しないまま、会社の判断で有給休暇扱いに切り替えることはできません。
また、就業規則に逮捕や勾留を理由とする休職制度がある場合には、休職扱いとする選択も考えられます。この場合の賃金の有無は、就業規則の定めに従って判断します。
【退職金】
逮捕をきっかけに社員が退職した場合でも、直ちに退職金を全額不支給とできるとは限りません。
退職金には、これまでの勤務に対する後払いとしての性質があると考えられており、裁判例でも、犯罪行為があったことのみを理由に全額不支給とする判断を否定した例が見られます。
減額や不支給を検討する際には、就業規則の内容や行為の重大性、過去の勤務状況などを踏まえ、慎重に判断することが重要です。
社員が逮捕されると、会社の信用への影響を理由に懲戒解雇を検討する場面もあります。
しかし、逮捕は捜査段階にすぎず、犯罪が確定した状態ではありません。処分を検討する際は、就業規則に懲戒事由の根拠があるか、行為の内容が会社の名誉や業務にどの程度影響したかを慎重に確認する必要があります。
プライベートでの逮捕であっても、会社の社会的評価を大きく損なう場合には懲戒の対象となり得ますが、判断は厳格になりやすい点に注意が必要です。
また、懲戒解雇は最も重い処分であり、減給や出勤停止など他の処分との均衡も検討しなければなりません。事案の内容に比べて過度な処分を選ぶと、無効と評価されるおそれがあります。
社員が逮捕され勾留が続くと、会社は「いつまで待つべきか」「業務をどう回すか」といった実務的な判断を迫られます。
勾留中は本人が出社できないため、まずは欠勤として扱い、業務への影響を最小限に抑える対応が必要です。担当業務の引継ぎや配置の見直しを進め、顧客対応や納期に支障が出ない体制を整えましょう。
就業規則に、逮捕や勾留を理由とする休職制度がある場合には、休職の適用を検討します。休職期間や賃金の有無は就業規則の定めに従って判断し、本人や家族に分かる形で説明することが重要です。規定がない場合に、独自の判断で長期の就労停止を続けると、後から不適切と評価されるおそれがあります。
また、勾留が長引くほど、処分のタイミングにも注意が必要です。逮捕や勾留の段階では、犯罪の成否は確定していません。早い段階で懲戒解雇などの重い処分に踏み切ると、後に不起訴や無罪となった場合、会社側の判断が問題視される可能性があります。事実関係の確認を継続しつつ、処分の検討は段階的に進める姿勢が求められます。
社員が逮捕された後、不起訴となった場合や裁判で無罪が確定した場合、会社はそれまでの対応を見直す必要があります。刑事責任が問われない以上、逮捕を前提に取っていた措置をそのまま続けることは適切とは言えません。
まずは、出勤停止や休職などの措置を継続する必要があるかを再検討し、就業規則や個別事情に照らして対応を整理します。勾留や休職により業務から外れていた社員については、原則として職場復帰を前提に調整を進めます。担当業務の引継ぎ状況や職場環境を踏まえ、復帰時期や配置について現実的な判断を行うことが重要です。
また、社内で逮捕の事実が共有されていた場合には、不起訴や無罪となった事実も適切に伝え、誤解や不当な評価が残らないよう配慮する必要があります。
一方、会社が独自に行った懲戒処分や不利益な取り扱いについては、その前提が失われていないかを確認します。処分の根拠が逮捕や刑事責任の追及に強く依存していた場合には、処分の見直しや撤回を検討する場面も生じます。
社員の逮捕が発覚すると、会社は短時間で多くの判断を迫られます。解雇や懲戒の可否、社内外への説明、将来に備えた体制づくりまで、判断を誤ると紛争や信用低下につながりかねません。
弁護士に早めに相談すると、法的な基準に沿って対応を整理し、会社のリスクを抑えやすくなります。
逮捕があっても、直ちに解雇や重い懲戒を選べるとは限りません。行為の内容、業務との関係、就業規則の定め、過去の裁判例などを総合して判断が必要です。
弁護士に相談すると、どの処分が選択肢に入るか、処分の重さが釣り合うかを事前に確認できます。結果として、後から無効と評価されやすい判断を避けやすくなります。
処分の理由付けや手続きが不十分だと、不当解雇や違法な懲戒と評価される可能性があります。
弁護士は、事実整理の進め方、本人への説明方法、記録の残し方などを具体的に助言します。これにより、会社の判断過程に合理性を持たせ、紛争に発展した場合でも説明しやすい対応を整えられます。
社内への情報共有や、取引先・顧客への説明は、範囲と表現を誤ると混乱や信用低下を招きます。
弁護士に相談すると、事実関係を断定しない伝え方や、共有すべき情報の範囲を整理できます。また、問い合わせ対応の窓口を一本化するなど、実務面での対応方針も明確になります。
結果として、過度な情報拡散や不用意な発信を防ぎやすくなります。
今回の対応を踏まえ、次に同様の事態が起きた場合の社内ルールを整えることも重要です。
弁護士は、社員が逮捕された際の初動対応の流れをはじめ、出勤停止や休職の位置づけ、賃金や退職金の扱い、適切な懲戒処分の種類などを整理し、社内体制としてまとめます。
事前に体制を整えておくと、現場判断のブレを減らし、落ち着いた対応につなげやすくなります。
社員が逮捕された場合でも、警察から会社へ必ず連絡が入るとは限りません。
警察は、捜査に必要がある場合や、勤務先への連絡が不可欠な事情がある場合にのみ、会社へ照会を行うのが一般的です。
万が一連絡があった場合、警察の捜査に真摯に対応してください。
社員の逮捕について、会社が一律に取引先や顧客へ説明しなければならない義務はありません。説明が必要かどうかは、業務への影響の有無が大きな判断基準となります。
たとえば、担当者の変更や業務の遅延が生じる場合には、最低限の説明が求められることがあります。
一方で、業務に直接影響がなく、社員個人の問題にとどまる場合には、あえて説明しない対応も考えられます。
原則として、社員の私生活上の行為について、会社が直接的な法的責任を負うことはありません。業務と無関係な事件であれば、会社の管理責任が問題となる場面は限定的です。
ただし、事件の内容や社会的な反響によっては、会社の信用や評価に影響が及ぶ可能性があります。その場合でも、会社が責任を負うかどうかは、業務との関連性や会社の関与の有無を踏まえて判断されます。
安易に会社の責任を認める発言や対応は避けるべきです。
社員個人の不祥事について、会社名で謝罪を行うかどうかは慎重に判断する必要があります。謝罪を行うことで、会社としての責任を認めたと受け取られるおそれがあるためです。
業務中の事件や会社の管理体制に問題がある場合には、一定の説明やお詫びが求められることもありますが、私生活上の行為にとどまる場合には、必ずしも会社として謝罪する必要はありません。
対応に迷う場合には、発信内容やタイミングを含めて、事前に弁護士へ相談することが安全です。
社員が逮捕された場合、会社は事実確認、就業規則の運用、賃金や処分の判断、社内外への説明など、短期間で多くの対応を求められます。判断を急ぎすぎると、不当解雇や違法な処分と評価され、会社側が新たなトラブルを抱えるおそれもあります。
一方で、対応を先延ばしにすると、業務や信用への影響が広がりかねません。
重要なのは、感情や世間の反応に流されず、法的な基準に沿って対応方針を整理することです。弁護士に早めに相談すれば、解雇や懲戒の可否、賃金や休職の扱い、社内外への説明の進め方などを総合的に確認できます。
「VSG弁護士法人」では、企業側の労働問題に豊富な実績があり、案件によっては初回無料相談も受け付けています。
トラブルの予防から解決まで徹底的にサポートさせていただきますので、社員が逮捕されたときの対応や労務リスクの判断に迷われた際は、ぜひお気軽にご相談ください。