

東京弁護士会所属。東京都出身。
労働問題は、ひとたび対応を誤れば、金銭的損失だけでなく企業の社会的評価をも大きく傷つける要因となります。私は弁護士になる前、公務員として自治体業務に従事してきました。そこで培われた「公正な判断力」と「ルールに対する厳格な姿勢」は、現在、使用者側の弁護士として企業のコンプライアンスを守る上での強力な基盤となっています。
私の信念は、常に「申し開きのできる仕事」をすることです。労働紛争においても、単にその場をしのぐ解決ではなく、企業の将来を見据えた透明性の高い解決策を提示いたします。複雑な法律の仕組みも、あたかも「複雑な迷路を解きほぐす地図」のように、経営者様に分かりやすく整理してお伝えします。
弁護士は敷居が高いと思われがちですが、私は常に話しやすいパートナーでありたいと考えています。労働問題という正解のない課題に対し、経営者様と密にコミュニケーションをとり、共に最適な解決策を見出していくことをお約束します。

この記事でわかること
労基署の臨検には定期監督の他、申告監督、災害時監督、再監督があります。
調査では、労働条件や安全衛生などが法令に沿って管理されているかを確認するため、関係書類の確認やヒアリングが行われます。
臨検の実施は事前予告されるケースもありますが、原則は事前通知なく実施されるため、日頃から労務管理体制を整備する姿勢が重要です。
突然の臨検であっても慌てず対応できるよう、必要な準備や当日の流れをあらかじめ把握しておきましょう。
この記事では、労基署の臨検について、実施のきっかけや頻度、調査内容、会社が行う事前準備、当日の流れまでを詳しく解説します。
目次
臨検(りんけん)とは、正式には「臨検監督」といい、労基署によって行われる事業場等への立ち入り調査を指します。
労基署が臨検を行う目的は、以下が挙げられます。
労働基準監督官は労基法101条[注1]により、関係書類の提出を求め、事業主や労務担当者、従業員へ質問を行う権限が認められています。
法令違反が確認された場合には、是正勧告や指導が行われ、会社は期限内に改善対応が求められます。
調査は法律の権限によって実施されるため、正当な理由なく調査を拒否することや、虚偽の説明や書類の改ざんなどをしてはいけません。
これらの行為があった場合、労働基準法120条[注2]により、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
[注1]労働基準法/e-Gov
労働基準法101条
[注2]労働基準法/e-Gov
労働基準法120条4項
臨検には「定期監督」「申告監督」「災害時監督」「再監督」の4種類があり、それぞれ実施される背景や目的が異なります。
毎回事前に予測できるきっかけがあるわけではなく、また、一度臨検が行われたからといって、しばらく調査が入らない理由にはなりません。
臨検が数年に1回のみの企業もあれば、期間を空けずに再度行われるケースもあります。
企業の状況や外部要因によって、臨検が行われる可能性は常にあるため、日頃から労務管理体制を適正に行う姿勢が重要です。
定期監督とは、労基署が年度ごとに策定する監督計画に基づき、調査対象となる事業場を抽出して、定期的に行う調査です。
特定の問題や申告がなくても実施されるため、労務トラブルが表面化していない企業であっても定期監督の対象となる可能性があります。
定期監督は、労働時間や賃金、安全管理などの法令違反を早期発見し、是正を促して重大なトラブルを未然に防ぐ目的があります。
新しい法令が施行された後は、特定の業種や事業規模を重点的な対象として、監督が行われるケースも少なくありません。
また、必要な届出が提出されていないなど、労務管理に不安要素があると判断された場合は、定期監督が入りやすくなる傾向があります。
申告監督とは、従業員または退職者からの申告をきっかけに行われる調査です。
未払い残業代や長時間労働など、申告内容に関連する事項を重点的に調査が行われます。
しかし、申告があった場合でも、定期監督として調査が行われるケースもあり、必ずしも申告者名や申告監督の事実が明かされるとは限りません。
従業員が労基署へ申告したことを理由とした不利益扱いは法律で禁止されているため、通報者を特定する行為は避けましょう(労基法104条2項[注3])。
災害時監督は、労働災害が発生した場合に行われる調査です。
事故の起こった原因や、事業場の安全管理体制を確認し、再発防止の指導を行う目的で実施されます。
調査では、労働安全衛生法に基づく各種規定が守られているかが重点的に確認されます。
特に、以下の場合は災害時監督が行われる可能性が高くなる傾向があります。
再監督とは、すでに臨検を受けた企業に対し、臨検後の対応状況を確認するために行う調査です。
是正勧告が出されても関わら改善が不十分であった場合や、期限内に是正報告書が提出されなかった場合に行われます。
是正勧告自体は行政指導であり、法的拘束力はないため、従わなかった事実が罰則の対象とはなりません。
しかし、労働基準監督官は、労働関連法令に違反する行為について捜査・送検できる司法警察としての権限を有します(労基法102条[注4])。
法令違反が指摘されているにも関わらず是正しない場合は、法令違反に基づく罰則や送検などの対応が取られる恐れがあるため、注意が必要です。
[注3]労働基準法/e-Gov
労働基準法104条2項
[注4]労働基準法/e-Gov
労働基準法102条
労基署の臨検では、主に労働条件と安全衛生の2つの観点で調査が行われます。
ここでは、臨検で一般的に確認されやすい調査項目について整理します。
日々の労務管理で守られているかを確認しておくと、突然の臨検があった場合も安心です。
労働条件に関する調査では、労働時間や賃金、有給休暇などについて、法令に沿った管理が行われているかが確認されます。
書類の整備状況だけでなく、実際の運用が伴っているかも重要なチェックポイントです。
労働条件の管理状況については、次の点が調査対象となります。
労働時間は形式的な管理にとどまらず、実際の働き方と合致しているか「記録と実態の整合性」が重要です。
賃金に関する調査では、支払方法や計算内容が法令に従っているかが確認されます。
特に残業代の取扱いは、指摘を受けやすい項目です。
有給休暇は、取得状況だけでなく、管理体制も重要です。
安全衛生に関する調査では、労働安全衛生法に基づく体制の整備状況が確認されます。
求められる体制整備は、事業規模や業種、業務内容によって異なるため、自社に求められる体制の個別確認も重要です。
ここでは、多くの事業場に共通する一般的な確認項目を紹介します。
安全衛生管理体制については、次のような点が確認されます。
従業員の健康確保に関する取り組みも、重要な調査項目です。
労基署の臨検は、原則として予告なく実施されますが、予告されるケースもあります。
予告があった場合、通知書の内容に基づいた事前準備が重要です。
準備不足のまま臨検を迎えると、調査が長引くことや、再監督につながる恐れがあります。
以下のポイントを確認しておきましょう。
申告がきっかけであっても、通知書には定期監督と記載されることがあり、調査の背景が明かされない場合もあります。
臨検当日は、書類の確認だけでなく、労務管理の実態についてヒアリングが行われるのが一般的です。
そのため、臨検に対応する社内担当者が事前に自社の運用状況を整理しておくとスムーズです。

臨検の事前予測は困難ですが、全体の流れをあらかじめ把握しておけば、突然の調査があっても落ち着いて対応できます。
臨検は、一般的に次のような手順で進みます。
それぞれの段階でのポイントを確認しておきましょう。
臨検は、何らかのきっかけをもとに実施が決まります。
たとえば、従業員から未払い残業代の相談が寄せられた場合、その内容が事実か否かを確認するため、調査が行われます。
臨検では事業場の日頃の労務管理体制を把握する必要があるため、原則として事前の予告はありません。
労災事故の発生など、臨検が予測できる状況であっても、通知がないまま行われるケースも少なくないため、日頃の労務管理が重要です。
臨検当日は、労働基準監督官が身分証を提示し、事業場に立ち入り調査を行います。
調査では、労務管理の実態を確認するため、帳簿や関係書類の提出が求められ、その内容が一つずつ確認されます。
書類の改ざんや虚偽の説明は禁止されており、罰則の対象となるため、行ってはいけません(労基法120条4項[注5])。
たとえば、未払い残業代の有無が調査の目的である場合、賃金台帳と出勤簿の照合、給与計算の方法について担当者へのヒアリングが行われます。
また、労災事故をきっかけとした臨検では、安全管理体制を確認するため、実際の作業現場が調査される場合もあります。
調査の結果、法令違反が認められなければその場で調査は終了です。
調査の過程で法令違反が確認された場合、是正勧告書や指導票などの書面が交付され、改善点が具体的に示されます。
会社は、指摘された内容について期限内に改善し、その結果を改善報告書として提出する必要があります。
多くの場合、法令違反が見つかっても直ちに罰則の適用や送検がされるわけではありません。
ただし、違反の内容が重大または悪質と判断された場合には、是正勧告を経ずに送検に至る可能性がある点には注意が必要です。
是正勧告や指導を受けた項目について、適切な改善が確認されれば、臨検は終了です。
一方で、改善内容が不十分であった場合や、期限までに報告が行われなかった場合には、再監督が実施されるケースがあります。
状況によっては、送検に発展する可能性もあるため、形式的な改善報告ではなく、改善実態を裏付ける証跡と併せた報告書の提出が重要です。
[注5]労働基準法/e-Gov
労働基準法120条4項
臨検は、定期監督だけでなく、従業員からの申告や労災事故、臨検後の再監督など様々なきっかけで行われます。
調査では、労働時間や賃金、有給休暇、安全衛生体制など、日常の労務管理状況が幅広く確認されます。
突然の臨検に慌てないためにも、会社は常日頃から法令に沿った労務管理体制を整備しておきましょう。
違反が見つかり、是正勧告が行われた場合は、期限内に改善できる計画づくりも重要です。
自社の労務管理体制に不安がある場合は、労務問題に精通したVSG弁護士法人へご相談ください。