この記事でわかること
- 建設業許可の欠格要件や該当した場合の処分の内容がわかる
- 建設許可の取り消し時に在籍していた役員がどうなるかがわかる
- 建設業許可が取り消されないように注意すべきポイントがわかる
建設業許可を取得する際には、欠格要件に該当しないなど多くの条件をすべてクリアしなければなりません。
ただし、建設業許可を取得した法人でも、その後に欠格要件に該当することがわかり、建設業許可が取り消されることがあります。
建設業許可を取り消されてしまうと、単に建設業許可が取り消しになるだけでない影響が生じる可能性があります。
そこで、建設業許可が取り消された場合、その法人の役員にどのような影響があるのか、解説していきます。
建設業許可の欠格要件
建設業許可を取得する際には、いくつもの条件をクリアしなければなりません。
その条件の中には、経営業務管理責任者や専任技術者といった人に関するものや、財産的基礎といったお金に関するものがあります。
その条件の中に、「欠格要件に該当しないこと」というものがあります。
この欠格要件は、大きく2つのタイプに分けることができます。
1つは提出する書類の内容に関するものです。
申請書類や添付する書類に嘘の内容を記載した場合、書類に関する欠格要件に該当します。
また、嘘を記載する意思がなくても、重要な事項の記載漏れがあった場合にも、書類の欠格要件に該当することとなります。
記載しなければならない内容を隠した、あるいは記載しなければならないことを知らなかった場合には、欠格要件に該当するのです。
もう1つは、人に関する欠格要件です。
代表的なケースとして、過去に建設業許可の不正取得に関わって許可を取り消された者があります。
また、建設業の影響の禁止や停止を命じられ、まだその期間中である場合も欠格要件に該当します。
このほか、罰金の刑に処された者、あるいは禁固以上の刑に処された者で、刑の執行から5年を経過した者なども含まれます。
欠格要件に該当すると、建設業許可を受けることはできません。
また、すでに建設業許可を受けている場合には、その許可が取り消される場合もあるのです。
建設業許可の取り消し時に在籍していた役員はどうなる?
前述したように、建設業許可を取得している法人でも、後から欠格要件に該当することがわかると、建設業許可が取り消されることがあります。
建設業許可を取り消されてしまうと、建設業許可はないものとされてしまいます。
ただし、欠格要件に該当したからといって、必ず建設業許可を取り消されるとは限りません。
欠格要件の内容によっては、欠格要件に該当する役員を外すことで再び建設業許可を取得することができる場合があるのです。
たとえば、取締役のうち1人が過去に交通違反により罰金刑を受けたとします。
罰金刑に処された者は、その罰金刑を受けた日から5年間は欠格要件に該当するため、建設業許可を受けることができなくなります。
仮に、この欠格要件を無視して建設業許可を取得していた場合、そのままでは建設業許可が取り消されてしまいます。
ただ、このケースでは、欠格要件に該当するのはこの役員だけです。
そのため、この人が役員でなくなれば建設業許可を受けられるのです。
ただし、欠格要件の内容によっては、在籍している役員の全員が欠格要件に該当するものとされることがあります。
こうなると、その後しばらくの間は法人として建設業許可を取得することができなくなってしまいます。
在籍中の役員全員が欠格要件の対象になってしまうケース
在籍している役員の全員が欠格要件に該当することとなるケースには、書類の欠格要件に該当する場合があります。
書類の欠格要件に該当する場合とは、たとえば役員が欠格要件に該当することを記載していなかった場合があります。
過去に罰金刑を受けていた人が役員となっているのに、そのことを記載していなければ欠格要件に該当します。
また、過去に罰金刑を受けたことを知らなかったり、そのことを忘れていたりしただけでも欠格要件に該当します。
その経緯に関係なく、事実にもとづく記載をしていない場合、不正な手段で建設業許可を得ようとしたと判断されてしまいます。
このような場合、建設業許可を取得することはできません。
また、その後5年間、罰金刑を受けた役員は建設業許可を受けられなくなります。
さらに、この申請時の役員全員も、同じくその後5年間、建設業許可を受けることはできなくなるのです。
人に関する欠格要件の場合、その人だけが建設業許可を受けられなくなるだけです。
しかし、書類の欠格要件に該当すると、申請に関与していたものとして在籍する役員全員が建設業許可を受けられなくなります。
建設業許可の取り消しに合わないようにする方法
建設業許可を取得している法人は、建設業許可の取り消しを受けないようにしなければなりません。
法人の存続にかかわる事態に陥ることのないよう、どのようなことに注意するといいのでしょうか。
役員等となる人の履歴書を確認する
法人の役員となる人が、過去に罰金刑や懲役刑を受けたことがあるかどうかを確認しておく必要があります。
また、建設業許可の取り消しを受けたことがないか、建設業の営業禁止などを受けたことがないかも
確認しておく必要があります。
もし、欠格要件に該当する人がいる場合、建設業許可を取得することはできないため、他の人に役員を依頼しなければなりません。
このような欠格要件に該当するか否かを確認するために、その人の履歴書などを確認しておく必要があります。
また、場合によっては本人からヒアリングを行ったり、身辺調査を行ったりする必要があるかもしれません。
なお、欠格要件に該当しないかどうかを確認しなければならない人は、具体的には以下のような人です。
- (1) 取締役
- (2) 執行役
- (3) 業務執行社員
- (4) 理事(組合等の場合)
- (5) 顧問
- (6) 相談役
- (7) 議決権の100分の5以上を有する株主
特に(7)の要件は、役員とは異なる者が対象となるため注意が必要です。
一方、執行役員や監査役などは役員に含まれません。
古くからの付き合いのある人を役員にする
人に関する欠格要件を検討する場合、現在の状況だけでなく過去5年間の行動について問題がないことを確認する必要があります。
しかし、役員となる人が5年間の行動について虚偽の申告を行えば、いくら本人に確認しても欠格要件に該当すると判断できません。
そこで、少なくとも過去5年以上の付き合いのある人を法人の役員にするようにします。
そうすれば、本人の申告に頼ることなく、法人の建設業許可に影響がないことを確認することができるはずです。
本人が会社に対して虚偽の説明をし、その内容にもとづいて会社が申請を行ったとしても、会社は救済されません。
このような形で、法人の役員全員が欠格要件に該当することのないよう、古くからの知り合いが役員になるのが安全な方法です。
まとめ
建設業許可を取得する際には、多くの条件をクリアしなければならないため、無理にでも条件を満たすようにすることがあります。
そのため、法人の役員となる人がどのような経歴かを確認しないまま建設業許可の申請をしてしまうことがあるのです。
しかし、欠格要件に該当する人を知らずに役員にしてしまうと、他の役員まで欠格要件に該当することになってしまいます。
そのため、欠格要件に該当する人がいるのであればすぐに役員から外し、別の人に役員を依頼する必要があります。
また、役員の人数を減らせば問題が起こる可能性を下げることができるため、法人のあり方についても見直すといいでしょう。