この記事でわかること
- 国土交通大臣許可の概要を知ることができる
- 知事許可との違いが理解できる
- 国土交通大臣の取得方法がわかる
「国土交通大臣許可と知事許可の違いが理解できない」
「どちらを取得すればいいのかわからない」
このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか?
建設業許可は、大きく分けて国土交通大臣許可と知事許可の2種類に分かれます。
どちらも同じ建設業許可ですが、それぞれに違いがあり、必要となる場面も異なります。
本記事では国土交通大臣許可の概要をはじめ、知事許可との違いやメリット・デメリットについて詳しく解説します。
最後までご覧いただくことで、今まで曖昧だった国土交通大臣許可についての理解を深めていただけます。
- 目次
- 国土交通大臣許可とは
- 建設業における「国土交通大臣許可」と「知事許可」との違い
- 国土交通大臣許可のメリット・デメリット
- 国土交通大臣許可を取得するための方法
- 国土交通大臣許可の取得に必要な書類・費用
- まとめ
国土交通大臣許可とは
国土交通大臣許可とは建設業許可の「区分」のひとつで、国土交通大臣によって行われる許可のことを言います。
建設業許可は、区分によって都道府県知事か国土交通大臣のどちらかが行います。
これらの区分は、工事の請負金額や業種で分けるのではありません。
それぞれの区分は「営業所の所在地」で判断します。
「営業所の所在地」によって、建設業許可を都道府県知事が行うのか国土交通大臣許可が行うのかが決まります。
国土交通大臣許可はどのような時に必要か
先述したように、建設業許可の区分は「営業所の所在地」で判断します。
国土交通大臣許可は、2つ以上の都道府県に営業所がある場合に必要となります。
たとえば、本店が東京にあり、名古屋や大阪に支店を置くような場合です。
東京都以外の都道府県に営業所があるため、国土交通大臣許可に区分されます。
建設業における「国土交通大臣許可」と「知事許可」との違い
先述したように、2つ以上の都道府県に営業所がある場合は国土交通大臣許可に区分されます(例:本店が東京、支店が名古屋や大阪にある場合など)。
一方、知事許可は「1つの都道府県内にのみ営業所がある場合」の許可を言います。
たとえば、東京都内にのみ営業所があり、他の都道府県には営業所を設けていないなどの場合です。
このように、1つの都道府県内にのみ営業所がある場合は、知事許可に区分されます。
許可を取得できるのはどちらか一方
国土交通大臣許可と知事許可は、営業所の所在地によって区分されるため、許可を取得できるのはどちらか一方のみで両方を取得することはできません。
ただし、それぞれの許可を変更することは可能です。
たとえば、「他の都道府県の営業所を減らしたい」という場合であれば、国土交通大臣許可から知事許可への変更ができます。
また、「他の都道府県に営業所を増やしたい」という場合には、知事許可から国土交通大臣許可への変更が可能です。
国土交通大臣許可と知事許可の基本的な違いは営業所の所在地だけ
基本的に国土交通大臣許可と知事許可の違いは、営業所の所在地だけです。
知事許可は、「国土交通大臣許可と違って他県の工事ができない」などと言われることがありますが、これは間違いです。
国土交通大臣許可と知事許可で、建設工事ができる地域に違いはありません。
東京都で知事許可を受けた建設業者が大阪府の工事を行うことも可能です。
国土交通大臣許可であろうと知事許可であろうと、建設工事を行う場所に制限はなく、全国どこでも建設工事を行うことができます。
ただし、注意点もあります。
知事許可でも全国各地の建設工事を行うことができますが、建設工事の請負契約は許可を受けた都道府県の営業所でしか行えません。
東京都で知事許可を受けた建設業者が大阪府内で建設工事を行う場合、請負契約は東京都の営業所で行う必要があります。
建設業許可における営業所とは?
建設業許可における営業所とは、「常時建設工事の請負契約を締結する事務所のこと」を言います。
営業所と認められるためには、契約締結の権限が与えられていることが必要であり、少なくとも以下の要件を備えていなければなりません。
- 工事の見積もりや入札、契約書の締結行為など、請負契約に係る実体的な業務を行っていること
- 契約締結に関する権限を付与された者が常勤していること
- 営業を行う場所を有し、電話や机などの物理的な施設を備えていること
- 専任技術者が常勤していること
また、主たる営業所以外に営業所がある場合は、使用人を配置しなければなりません。
使用人は、支店長や営業所長など、その事務所を統括する代表者(請負契約の締結等を行う権限が与えられている人)が就任します。
国土交通大臣許可のメリット・デメリット
続いては、国土交通大臣許可のメリットとデメリットについて解説します。
国土交通大臣許可のメリット
国土交通大臣許可のメリットは次の3つです。
1.社会的評価が上がる
国土交通大臣許可と知事許可は単に営業所の所在地で区分しているだけであり、許可自体に優劣はありません。
しかし、建設業許可のことをよく知らない方の中には「大臣許可のほうが知事許可より優れていそう」といったイメージを抱いている方も少なくありません。
そのため、国土交通大臣許可を取得しているだけで、信用できる建設業者だと思われやすい傾向にあります。
また、建設業許可自体が技術や経験、財産状況など様々な要件をクリアしなければならないため、社会的評価が上がりやすい傾向にあります。
厳しい要件をクリアして許可を取得していることから、建設業者として一定のレベルを満たしているという証明になるからです。
その結果、発注者や金融機関から社会的評価が得られ、仕事の受注や融資を受けやすくなるなどのメリットを受けられるようになります。
2.事業規模を拡大しやすくなる
建設工事自体は国土交通大臣許可であろうと知事許可であろうと、全国どこでも行うことが可能です。
しかし、営業所が許可を受けた都道府県だけでなく各地域にあれば、契約締結をはじめ施工管理や材料の調達など、一つ一つの仕事が知事許可に比べてスムーズにこなせます。
また、発注者側からしてもわざわざ遠くに営業所がある会社に発注するよりも、近くに営業所がある会社に依頼しようと考えるため、建設工事を受注しやすくなります。
結果として、知事許可よりも効率よく仕事を回すことができ、かつ受注もしやすくなることから、事業規模を拡大しやすくなります。
3.入札が有利になる
公共工事を受注するには、国や地方公共団体等の各発注機関が実施する入札に参加する必要があり、国土交通大臣許可を取得していることで有利になる場合があります。
発注機関によっては、地元企業を優先して公共工事を発注する場合があるからです。
たとえば、大阪府の河川改修工事の発注について、大阪府内に本店や営業所がある建設業者が優遇されるといったケースです。
このような場合、もし国土交通大臣許可を取得していて大阪府に営業所を設けていれば、建設業許可を受注できるチャンスが生まれ、入札を有利に進めることができます。
国土交通大臣許可のデメリット
国土交通大臣許可のデメリットは、主に次の2つです。
1.許可取得にかかる費用が高い
国土交通大臣許可は知事許可に比べて申請費用が高くなります。
具体的には、知事許可であれば許可手数料9万円のところ、国土交通大臣許可の場合は登録免許税が15万円かかります。
また、専門家に依頼する場合も知事許可に比べて報酬が高い傾向があり、許可取得までにかかる費用が高くなります。
2.審査期間が長い
国土交通大臣許可は知事許可に比べて申請書の提出から許可がおりるまでの審査期間が長くなります。
各都道府県によって異なりますが、一般的には以下のとおりです。
- 知事許可は1カ月前後
- 国土交通大臣許可は2~3カ月以上
申請後は1日でも早く許可がおりてほしいものですが、国土交通大臣許可は審査期間が長く、知事許可に比べて3倍近く時間がかかってしまいます。
国土交通大臣許可を取得するための方法
国土交通大臣許可を取得するには、以下の手順で申請を進める必要があります。
- 書類の収集
- 申請書の作成
- 申請書類の提出
それぞれ解説します。
1.書類の収集
まずは、国土交通大臣許可の取得に必要な書類の収集を行います。
申請には法定の書類(ダウンロード可)のほかに、役所で取得する書類や会社で保管している書類、資格者の合格証など様々な書類が必要です。
会社ごとに必要書類は異なるため、事前にしっかり確認し漏れのないよう揃えなければなりません。
2.申請書の作成
国土交通大臣許可の申請に必要な書類は多岐にわたり、膨大な量となります。
少しでも早く許可がほしいからと焦って作成すると書類の記載ミスや不備を起こす原因になりかねません。
焦ってミスを起こせば結果的に申請が遅れてしまうため、申請書は一つずつじっくり丁寧に作成していきましょう。
3.申請書類の提出
書類の収集と申請書の作成が完了したら、書類一式をまとめて指定の窓口へ提出します。
添付書類を含む申請書類は、正本1部と副本1部が必要です。
提出先は、「本店の所在地を管轄する地方整備局長等」に直接提出します。
申請書類の提出が無事に終われば、後は結果待ちとなります。
審査結果が出るまでに約2~3カ月かかり、許可がおりると建設業許可通知書という書類が送られてきます。
国土交通大臣許可の取得に必要な書類・費用
最後に、国土交通大臣許可の取得に必要な書類と費用についてそれぞれ解説します。
国土交通大臣許可の取得に必要な書類
必要書類は以下の3種類に分類されます。
- 申請書類および添付書類
- 別とじ用の申請書類および添付書類
- 確認書類等
それぞれ解説します。
1.申請書類および添付書類
申請書類および添付書類については、以下のとおりです。
様式番号 | 提出書類 |
---|---|
様式第一号 | 建設業許可申請書 |
様式第ニ号 | 工事経歴書 |
様式第三号 | 直近3年の各事業年度における工事施行金額 |
様式第四号 | 使用人数 |
様式第六号 | 誓約書 |
定款(法人のみ) | |
様式第十五号、様式第十六号、様式第十七号のニ、様式第十七号の三 | 直前1期分の財務諸表 |
様式第二十号 | 営業の沿革 |
様式第二十号のニ | 所属建設業者団体 |
様式第七号の三 | 健康保険等の加入状況 |
様式第二十号の三号 | 主要取引金融機関名 |
2.別とじ用の申請書類および添付書類
必要書類の中でも、個人情報の関係で閲覧による公開に適さないものについては「別とじ」としてひとまとめにします。
詳細については以下のとおりです。
様式番号 | 提出書類 |
---|---|
様式第七号 | 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書 |
様式第七号のニ | 常勤役員及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書 |
別紙 | 常勤役員等の略歴書 |
別紙1 | 常勤役員等の略歴書 |
様式第八号 | 専任技術者証明書 |
様式第十二号 | 許可申請者の住所、生年月日等に関する調書 |
様式第十四号 | 株主調書 |
登記事項証明書(発行後3カ月以内のもの) | |
納税証明書 |
3.確認資料等
申請書類の記載内容を確認するため、以下の確認資料も分けて準備します。
- 登記事項証明書
- 身分証明書(免許証やパスポートでは不可。本籍地を管轄する市区町村役場で取得する書類)
- 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)の確認資料(保険証と住民票の写し)
- 専任技術者の確認資料(保険証の写しおよび合格証や免許証など技術者の要件が確認できる資料)
- 営業所の確認資料(写真)
- 健康保険、厚生年金、雇用保険の加入を証明する資料
国土交通大臣許可の取得にかかる費用
国土交通大臣許可を新規で許可申請する場合、登録免許税15万円が必要となります。
支払先は、本店所在地を管轄する地方整備局等を管轄する税務署です。
費用は、「新規か業種追加か」などの申請区分や「大臣許可か知事許可か」などの許可区分によって異なり、具体的には以下のとおりです。
区分 | 国土交通大臣許可 | 知事許可 |
---|---|---|
新規 | 登録免許税15万円 | 許可手数料9万円 |
業種追加 | 許可手数料5万円 | 許可手数料5万円 |
更新 | 許可手数料5万円 | 許可手数料5万円 |
許可手数料とは、許可申請の審査に要する事務手数料のことです。
許可手数料は、許可を得られない場合や申請を取り下げrた場合であっても戻ってきません。
そのため、申請にあたっては不許可になるような事由がないかしっかり確認をする必要があります。
一方、国土交通大臣許可の新規申請については許可手数料ではなく、登録免許税の納付として扱われます。
許可手数料と違い、許可がおりれば納付義務が発生する税金となります。
そのため、許可がおりない場合や取り下げた場合には登録免許税は納めなくてもよいことになっています。
まとめ
建設業許可における国土交通大臣許可と知事許可の違いは、「営業所の所在地」が1つの都道府県内にのみあるか2つ以上の都道府県にあるかです。
その他の違いはなく、まとめると以下のとおりです。
- 1つの都道府県内にのみ営業所がある場合は「知事許可」
- 2つ以上の都道府県に営業所がある場合は「国土交通大臣許可」
- 工事ができる地域に違いはなく、どちらも全国どこでも建設工事ができる
しかし、国土交通大臣許可は知事許可に比べて申請費用が高く、審査期間もかかるといったデメリットがあります。
一方で、社会的信用が得られる、事業規模を拡大できるなどのメリットもあります。
建設業許可を申請する際はそれぞれの違いをよく理解し、しっかり準備を整えてから臨みましょう。