この記事でわかること
- 鉄筋工事業とはどのような工事を指すのか具体例で知ることができる
- 鉄筋工事業の経営業務管理責任者や専任技術者の要件がわかる
- 鉄筋工事業の実務経験を証明するために必要な書類がわかる
鉄筋工事業という建設業の業種について、名前からなんとなくのイメージはつくかもしれません。
しかし、具体的にどのような工事を行っているのか、その内容まで詳しくはわからない方もいるでしょう。
今回は、鉄筋工事業とは具体的にどのような工事を行う人のことをいうのか、確認していきます。
また、鉄筋工事業の建設業許可を取得するために必要な要件についても解説していきます。
鉄筋工事業とは
鉄筋工事業とは、棒鋼などの鋼材を加工や接合、組み立てを行う工事のことです。
具体的な工事の内容としては、鉄筋加工組立工事や鉄筋継手工事がこれに該当します。
建物の構造として、鉄筋コンクリート造というものがあります。
これは、鉄筋で建物の骨組みにあたるものを作り、この周りにコンクリートを流して固めるものです。
鉄筋で建物の骨組みを作る工事は、鉄筋加工組立工事に該当します。
また、鉄筋継手とは鉄筋同士を接合する工事です。
ガス圧接継手、溶接継手、機械式継手といったものがあります。
鉄筋工事業に該当する工事を請け負う場合、請負金額が500万円未満の軽微な工事を除いては、建設業許可が必要です。
勘違いしやすいのですが、公共工事だけでなく民間の工事でも建設業許可が必要な場合があるため、注意が必要です。
建設業許可の要件
建設業許可を取得するためには、大きく分けて5つの要件を満たさなければなりません。
ここでは、その5つの要件について簡単にご紹介していきます。
経営業務の管理責任者を設置する
経営業務の管理責任者と呼ばれる人を設置し、建設業を行う事業者の管理を行います。
具体的な要件については、後ほど詳しく解説することとします。
誠実性の要件を満たす
誠実性と呼ばれる要件を満たさなければ、建設業許可を取得することはできません。
建設業を営む事業者は、代金を前払いで受け取った上で、その工事を長期間にわたって施工することとなります。
しかし、不正な行為を行う者や不誠実な者が建設業に従事すると、建設工事を安心して依頼することができません。
そこで、建設業許可を取得する際には、誠実性の要件を満たすことをあらかじめ確認することとされているのです。
法人の場合は、その法人自体と経営にあたる役員に誠実性が求められます。
個人事業の場合は、その事業主本人や支配人に誠実性が求められます。
なお、誠実性とは、具体的には違法行為や契約違反にあたる行為を行わないことをいいます。
過去に建設業の営業を行う上で、不正な行為を行っていた場合は誠実性がないということになります。
また、過去に宅建士などの資格を得ていた者が、不正行為などでその取り消しを受けた場合も該当します。
この場合、取り消しを受けた後5年経過していない場合には、誠実性の要件を満たしません。
欠格要件に該当しない
欠格要件とは、法人の役員や個人事業主、その支配人などになることができない要件のことをいいます。
成年被後見人・被保佐人・破産者で復権を得ない者などは、建設業許可を得ようとする法人の役員や事業主になれません。
また、不正に許可を得たり、営業停止処分に違反して許可を取り消されたりした後、5年経過しない者も欠格要件にあてはまります。
この他、禁固刑以上の刑や建設業法等に違反して罰金刑以上に処せられて5年経過しない者も、欠格要件に該当します。
欠格要件に該当する人が役員などにいると、その法人としても建設業許可を受けることはできません。
専任技術者を設置する
専任技術者と呼ばれる技能や知識を有する人がいなければ、建設業許可を得ることはできません。
専任技術者についての要件も、後ほど詳しく解説していきます。
財産的基礎をクリアする
財産的基礎とは、建設業を営む事業者として一定以上の財産を有していることをいいます。
一般建設業許可を得る場合は、自己資本500万円以上、あるいは500万円以上の資金調達能力のいずれかが求められます。
一般的には、金融機関の残高証明で500万円以上の預金残高があることを証明する必要があります。
また、特定建設業許可を得る場合は、さらにそのハードルが上がります。
以下の3つの要件のすべてを満たす必要があります。
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えていない
- 流動比率が75%以上である
- 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ自己資本の額が4,000万円以上である
これらを満たすかどうか確認するために、会社の財務諸表が必ず必要となります。
経営業務の管理責任者の要件
経営業務の管理責任者のことを、一般的に「経管」と呼ぶ場合があります。
この経営業務の管理責任者を設置できるかどうかが、建設業許可を得ることができるかどうかの大きなポイントとなります。
具体的に、経営業務の管理責任者となることができる人は、以下のような人です。
- ①常勤の役員であること
- ②建設業における十分な経営経験がある
この2つの要件を満たすことは、書類で証明しなければなりません。
このうち、①の要件については、常勤でなければならないことが大きなポイントとなります。
住所と勤務地が離れすぎていて毎日通勤することができない場合には、要件を満たさないと判断されます。
また、他社の経営業務の管理責任者や専任技術者となっている人も、経営業務の管理責任者には認められません。
また、②の要件については、実際の業務を一定期間、総合的に経験していることが求められます。
たとえば、許可を得ようとする業種について役員としての経験がある場合は、5年以上の経験が必要とされます。
また、許可を得ようとする業種以外の業種について役員としての経験がある場合は、6年以上の経験が必要です。
このような実務経験があることを、書類で証明する必要があるため、その証明が簡単ではない場合もあります。
この時に用意する書類については、後ほどご紹介します。
専任技術者の要件
専任技術者とは、事業者が一定の技術や知識を有していることを担保するために配置される人のことです。
建設業許可を得るためには、必ず専任技術者を置く必要がありますが、一般建設業と特定建設業では求められる要件が異なります。
一般建設業の場合
鉄筋工事業について、一般建設業許可を得ようとする場合は、以下の4つのいずれかに該当する人を営業所ごとに配置します。
①国家資格を保有している
1級・2級建築施工管理技士、技能検定や登録基幹技能者のうち一定の資格を有する者が該当します。
②指定学科の学校を卒業し、かつ実務経験がある
土木工学や建築学、機械工学の高校卒業後5年以上、大学・高専卒業後3年以上の実務経験がある者が該当します。
③国土交通大臣の特別の認定を受けた
海外での実務経験や学歴などで、特別に認定を受けられる場合があります。
④鉄筋工事業の実務経験が10年以上ある
鉄筋工事業で10年以上の実務経験があれば、専任技術者になることができます。
特定建設業の場合
鉄筋工事業の特定建設業許可を得ようとする場合、以下の3つのいずれかに該当する人を営業所ごとに配置します。
- 1級建築施工管理技士の資格を有している
- 一般建設業の専任技術者として、4,500万円以上の元請工事について2年以上、指導監督的実務経験がある
- 国土交通大臣の特別の認定を受けた
鉄筋工事業の実務経験証明に必要な書類
経営業務の管理責任者や専任技術者の要件について、実務経験の要件を満たすことで、建設業許可を得るケースがあります。
しかし、実務経験を証明する書類をそろえることは想像以上に大変なこともあります。
ここでは、具体的にどのような書類を準備すべきか、ご紹介していきます。
経営業務の管理責任者の要件
鉄筋工事業を営む会社で一定期間、役員の経験があることを証明するためには、会社の登記簿謄本が必要となります。
また、その会社が建設業許可を有する場合は、建設業許可通知書のコピーを準備します。
建設業許可を有しない会社の場合は、工事請負契約書などで、具体的な業務の内容を証明しなければなりません。
なお、複数の会社にまたがっている場合も、その期間を合算することができるため、それぞれの会社についての書類を準備します。
専任技術者の要件
専任技術者の要件として実務経験が必要な場合、厚生年金被保険者記録照会回答表などで、会社に在籍していたことを証明します。
また、その会社が建設業許可を有する場合は、建設業許可通知書のコピーで証明します。
一方、建設業許可を有しない会社に従事していた場合は、工事請負契約書などでその業務の内容を証明します。
なお、学校を卒業していることを証明するには、卒業証明書を準備すればよいこととされています。
各都道府県の実例
なお、ここまで紹介してきたのは、原則的に必要となる書類です。
特に実務経験を証明するための書類は、各都道府県によって対応が異なる場合があるため、その一例をご紹介します。
【東京都の場合】
- 期間分の工事請負契約書や工事請書、注文書、請求書に加えて、法人の預金通帳などの入金確認資料
【神奈川県の場合】
- 期間分の法人税確定申告書
- 確定申告書に申請する業種が記載されていない場合は、期間分の工事請負契約書や工事請書などに加えて、預金通帳などの入金確認資料
【関東地方整備局の場合】
- 工事請負契約書や工事請書に加えて、期間分の注文書
なお、実務経験のある期間分の書類が必要となるものがあります。
その場合、5年~10年間の書類をまとめて提出しなければなりません。
そのため、非常にハードルが高いと言えます。
まとめ
鉄筋工事業の建設業許可を得ようとする場合、他の建設業許可と同様に、経営業務の管理責任者や専任技術者が必要です。
この両者については、どのように人材を確保するのか、あるいはどのように実務経験を証明するのかが重要なポイントです。
もし実務経験があっても、過去の書類がそろっていない場合には、建設業許可を得ることができません。
その場合はすぐに建設業許可を得ることは難しいので、この先に建設業許可を得ることができるよう、これからの書類をきちんと残しておくようにしましょう。