この記事でわかること
- しゅんせつ工事とはどのような工事か
- しゅんせつ工事の種類
- しゅんせつ工事の建設業許可を取得する方法や要件
一般的に、工事と聞くと建物や道路などを造ることを想像される方が多いかもしれません。
建設工事には沢山の種類がありますが、その中で船舶が走るための安全な航路をつくるのが、しゅんせつ(浚渫)工事です。
この記事では、しゅんせつ工事について解説します。
しゅんせつ工事の種類や建設業許可を取得するための方法や要件を詳しく説明するので、ぜひ参考にしてください。
しゅんせつ工事(浚渫工事)とは
しゅんせつ工事とは、河川や海底の土砂を取り除き、船舶の通る航路をつくる工事を指します。
船舶が安全に海の上を走行するには、一定の水深が必要となります。
なぜなら、水深を十分に確保できていなければ、座礁(船舶が浅瀬や暗礁に接触すること)などの事故を引き起こしてしまう可能性があるためです。
このような事態が起こらないよう、河川や海の底を掘り下げておく必要があります。
なお、しゅんせつ工事で取り除かれた土砂は、埋立や土地の造成などに利用されます。
近年は、より多くの貨物を積載できるよう船舶が大型化していることから、安全確保のためより深い水深を求められるため、しゅんせつ工事の重要性が大きくなっていると言えます。
しゅんせつ工事の種類
しゅんせつ工事は、ポンプ浚渫工事とグラブ浚渫工事の2種類に分けられます。
ここからは、それぞれどのような工事か詳しく解説します。
ポンプ浚渫工事
ポンプ浚渫工事は、ポンプをストローのように使い、土砂を吸い上げて海底を掘り下げる工事です。
ポンプ浚渫船の先端には、回転するカッターヘッドと吸入口が装備されており、カッターで海底の土砂を切り崩し、巨大なポンプで水と土砂を吸い上げます。
吸い上げられた土砂は、ポンプ浚渫船の後方の排砂菅を通って埋立地に直接運び出されます。
基本的にポンプ浚渫は、やわらかい土砂の現場で使用されますが、カッターヘッド以外にも、ジェット水流で攪拌することや、粘土の高い土質にも対応できる特殊ポンプを使用することで、様々な土質の土砂に対応可能です。
また、短時間で大量の土砂を取り除けるため、大規模な工事の際に使われます。
グラブ浚渫工事
グラブ浚渫工事は、海底の土砂をつかみとって掘り下げる工事です。
グラブ浚渫船の先端に、グラブバケットというクレーンが装着されており、クレーンゲームのように海底の土砂とつかみとり引き上げます。
引き上げられた土砂は、運搬用の船に積み込まれ、埋立地まで輸送されます。
ポンプ浚渫工事と比べると作業に時間がかかってしまうため、範囲の広い工事にはあまり向いていません。
一方で、範囲の狭い工事に適しているため、構造物が近くにあるような場所でも施工が可能です。
また、固い土質の土砂にも対応でき、船に装着するクラブバケットの大きさを変更することで一度につかみとれる土砂の量を調整することもできます。
しゅんせつ工事の建設業許可を得る方法
しゅんせつ工事は、国土交通省の定める建設業の1つであり、請負代金500万円以上のしゅんせつ工事を請け負うには、建設業許可を取得する必要があります。
また、建設業には一般建設業と特定建設業があり、請負代金が4,000万円以上になると特定建設業許可が必要であり、要件も厳しくなります。
建設業許可を得るには各都道府県窓口に申請が必要であり、以下の要件を満たさなければなりません。
- 営業所ごとに専任技術者がいること
- 経営業務の管理責任者がいること
- 財産的基礎を有すること
ここから、それぞれの要件について詳しく見ていきましょう。
営業所ごとに専任技術者がいること
専任技術者とは、建設業の許可を受けるにあたり、営業所ごとに配置することが義務付けられる技術者であり、一定の資格や実務経験を有する人に限られます。
専任技術者になれる代表的な資格は、土木施工管理技士と技術士です。
なお、これらの資格がなくても、以下の要件に該当すれば、一般建設業の専任技術者になることができます。
- 実務経験を10年以上積んだ人
- 高校を卒業して実務経験を5年以上積んだ人
- 大学や高専を卒業し実務経験を3年以上積んだ人
土木施工管理技士
土木施工管理技士は、建設業法に定められた国家資格です。
1級と2級があり、土木施工管理技士2級を取得すると一般建設業の専任技術者に、土木施工管理技士1級を取得すると特定建設業の専任技術者になれます。
4,000万円以上のしゅんせつ工事を請け負う場合は、営業所に土木施工管理技士1級の保有者を置く必要があります。
技術士
技術士の資格には21分野あり、しゅんせつ工事の専任技術者になるには建設部門、水産部門、総合技術管理部門のいずれか技術士になる必要があります。
技術士の試験には一次試験と二次試験があり、二次試験を通過することで専任技術者の資格が得られます。
技術士を取得することで、一般建設業・特定建設業のどちらでも専任技術者になることが可能となります。
経営業務の管理責任者がいること
しゅんせつ工事の建設業を取得するためには、一定期間以上の経営経験のある人を置く必要があります。
法人の場合は常勤役員のうち1人、個人事業主の場合は本人または支配人のうち1人が、以下のいずれかの条件を満たさなければなりません。
- しゅんせつ工事業の企業で5年以上の役員経験があること
- しゅんせつ工事業以外の建設業の企業で5年以上の役員経験があること
- 個人事業主としてしゅんせつ工事業を5年以上経営していること
- 個人事業主としてしゅんせつ工事業以外の建設業を5年以上経営していること
財産的基礎を有すること
しゅんせつ工事の建設業許可を得るには、一定の財産的基礎要件を満たさなければなりません。
一般建設業の場合は、次の条件のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本が500万円以上あること
- 500万円以上の資金調達能力があること
- 建設業許可申請の直前の過去5年間、許可を得て継続して営業を行った実績があること
特定建設業の場合は、次の条件のすべてを満たす必要があります。
- 欠損額が資本金の20%未満であること
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金が2,000万円以上かつ自己資本が4,000万円以上であること
このように、一般建設業と比較して特定建設業になると要件がさらに厳しいため、事前によく確認しておきましょう。
まとめ
しゅんせつ工事は、船舶が海の上を走るのに欠かせない工事であり、請け負うには建設業許可が必要です。
ただ建設業許可は、取得するための要件が複雑であり、個人で確認し手続きすることが難しい場合があります。
行政書士などの専門家に依頼することで、適切なアドバイスをもらいながら申請手続きを代行してもらえるため、手続きが不安な方は相談することをおすすめします。