この記事でわかること
- 監理技術者とはどのような人で主任技術者とどう違うのかがわかる
- 監理技術者を配置しなければならない工事の種類を知ることができる
- 監理技術者として認められる人の要件を知ることができる
建設業を営む事業者の中には、監理技術者と呼ばれる人を配置しなければならない場合があります。
すべての建設工事が対象ではないので、どのような場合に必要になるのかを確認しておきましょう。
また、監理技術者となることのできる人はどのような人なのか、あらかじめ知っておく必要があります。
監理技術者になるにはどのような手続きが必要か、解説していきます。
監理技術者とは
監理技術者が必要になる工事がありますが、この場合に設置する監理技術者とはそもそもどのような人なのでしょうか。
建設業者が設置しなければならない主任技術者とはどのような違いがあるのかも、ご紹介します。
監理技術者の役割
監理技術者は、元請負の特定建設業者が工事を施工するために締結した下請契約の総額が4,500万円以上となる場合に必要とされます。
工事現場ごとに、原則としてその工事現場の専任として配置されます。
監理技術者を設置する目的は、工事現場における技術水準を確保することにあります。
そのために、以下のような業務を行います。
- 施工計画の作成
- 工程管理、品質管理などの技術管理
- 工事の施行に携わる者の指導や監督
監理技術者と主任技術者との違い
主任技術者は、すべての工事現場に配置しなければならない技術者のことです。
元請か下請かの違いに関係なく、また請負金額の大小も関係ありません。
すべての工事現場に配置するのが主任技術者、大規模な工事現場に配置されるのが監理技術者という違いがあります。
なお、監理技術者を配置した工事現場には、主任技術者を配置する必要はありません。
監理技術者も主任技術者も、ともに工事現場の安全管理や技術管理などの職務を担うという点では、大きな違いはありません。
ただ、監理技術者は下請業者に対しての指導監督も担います。
そのため、主任技術者よりさらに高度な経験や資格が求められることとなります。
監理技術者の配置が必要な工事
監理技術者の配置が必要になる工事は、建設工事の中の一部となります。
どのような工事なのか、その内容を確認しておきましょう。
監理技術者が必要な工事の要件
監理技術者の配置が義務付けられる工事には、2つの要件があり、この両方を満たしているものとなります。
この2つの要件は、工事の発注者との関係、そして請負代金の合計額となっています。
- 工事の発注者との関係
工事の発注者から直接工事を請け負っていること。
他の建設業者から下請工事を請け負っているものでないことが要件となります。 - 請負代金の合計額
請負代金の合計額が4,500万円以上であること。
なお、その工事が建築一式工事に該当する場合は、基準になる金額は7,000万円以上になります。
上記2つの要件をいずれも満たす工事現場に、監理技術者の配置が求められます。
原則として、1つの現場について1名の監理技術者を配置しなければなりません。
監理技術者の専任が必要な工事の要件
監理技術者の配置が求められる要件とは別に、監理技術者の専任が求められる要件が設定されています。
要件の基準に違いがあるので、確認しておきましょう。
- 工事の請負金額
工事1件あたりの請負金額の合計が4,000万円以上であること。
なお、建築一式工事の場合は、請負金額の合計額が8,000万円以上であることとされています。 - 工事の内容
公共性のある施設や工作物、または多数の人が利用する施設や工作物に関する重要な工事であること。
このうち、②工事の内容については、具体的な内容が列挙されています。
ここでは、列挙されている工事の内容の一部をご紹介します。
- 国または地方公共団体が発注者である施設や工作物
- 鉄道や道路、堤防、ダム、飛行場、上下水道などの工事
- 電気事業用施設
- ガス事業用施設
- 学校
- 図書館や美術館、博物館
- 病院や診療所
- 百貨店
- ホテル
- 共同住宅
列挙されている工事の内容は、いずれも規模の大きな工事ばかりとなっています。
監理技術者を専任で配置しなければならないものは、規模の大きな重要な工事であるということができます。
監理技術者の配置基準の緩和
2020年10月1日に建設業法の改正が行われ、一部の工事現場で監理技術者の兼務が認められるようになりました。
これまでは、監理技術者は工事現場を専任するのが基本となっていました。
しかし、慢性的な人出不足により、監理技術者の確保が難しい状況となっています。
そこで、監理技術者が2つの工事現場を兼務することができるようになりました。
監理技術者が兼務する場合は、それぞれの工事現場に技士補を配置しなければなりません。
技士補は監理技術者の補佐を行います。
技術検定の学科試験合格者が、技士補となります。
監理技術者の要件
監理技術者になるには、どのような要件が設けられているのでしょうか。
業種によっても違いがあるので、その内容を確認していきましょう。
監理技術者になれる人
監理技術者になることができるのは、建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係になる人です。
一時的に雇用されている人、あるいは下請や外注として出入りしている人は、監理技術者になることができません。
また、監理技術者になることができる人は、業種ごとに定められた要件をクリアしなければなりません。
指定建設業での要件
指定建設業となっている7つの業種の監理技術者になるには、特定の国家資格が必要とされています。
この7つの指定建設業は以下のとおりです。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 鋼構造物工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
これらの建設業で監理技術者になるには、1級施工管理技士、1級建築士、技術士の資格が必要です。
施工管理技士が監理技術者になる際は、業種に合ったものでなければなりません。
たとえば、土木工事業で監理技術者になる場合、1級土木施工管理技士の資格が必要になります。
指定建設業以外での要件
指定建設業以外に、全部で22の建設業があります。
これらの業種で監理技術者になるには、実務経験で監理技術者になることができます。
まずは22の業種にはどのようなものがあるのか、ご紹介します。
- 大工工事業
- 左官工事
- とび・土木・コンクリート工事
- 石工事
- 屋根工事
- さく井工事
- 鉄筋工事
- しゅんせつ工事
- 板金工事
- ガラス工事
- 塗装工事
- 防水工事
- 内装仕上工事
- 機械器具設置工事
- 熱絶縁工事
- 電気通信工事
- タイル・れんが・ブロック工事
- 建具工事
- 水道施設工事
- 消防施設工事
- 清掃施設工事
- 解体工事
実務経験による監理技術者の資格要件については、学歴と実務経験、指導的実務経験の年数の組み合わせで定められています。
学歴または資格 | 必要な経験年数 | |||
---|---|---|---|---|
実務経験 | 指導的実務経験 | |||
イ | 大学・短期大学・高等専門学校を卒業し、かつ指定学科を履修した場合 | 卒業後3年以上 | 2年以上 | |
高等学校を卒業し、かつ指定学科を履修した場合 | 卒業後5年以上 | 卒業後5年以上 | ||
ロ | 国家資格を有している場合 | - | - | |
技術検定2級または1級を有している場合 | - | 2年以上 | ||
平成16年3月31日以前に技能検定2級等を有している場合 | 合格後1年以上 | 2年以上 | ||
平成16年4月1日以後に技術検定2級等を有している場合 | 合格後3年以上 | 2年以上 | ||
電気通信主任技術者資格証を有している場合 | 合格後3年以上 | 2年以上 | ||
ハ | 上記イ・ロ以外の場合 | 10年以上 | 2年以上 |
指導的実務経験の年数は、実務経験の年数と重複しても問題ありません。
監理技術者講習の受講
監理技術者になる際に、上記の資格や実務経験を満たすだけでは認められません。
工事現場に監理技術者として配置されるには、監理技術者講習を受講する必要があります。
監理技術者講習は、監理技術者の職務に必要な知識や法律、建築技術などを学びます。
1日の講習が修了すると、講習受講証明書(修了履歴)が交付されます。
監理技術者資格者証の交付
監理技術者は、原則として2つ以上の工事現場を兼ねることはできません。
そのため、監理技術者になった人は、監理技術者資格者証を携帯することとなっています。
監理技術者資格者証の交付申請手続きを行い、審査基準に適合すると確認された後に交付されます。
資格者証は、交付から5年の有効期限が設けられており、期限内に更新する必要があります。
まとめ
建設業者は、規模の大きな工事や公共性のある工事を請け負うこともあるでしょう。
このような工事を行う場合には、監理技術者を工事現場ごとに配置しなければならないことがあります。
監理技術者になる人は、主任技術者とは異なる要件が定められているので、その要件に合致することを確認しておきましょう。
また原則として、工事現場ごとに監理技術者を配置しなければならないので、必要な人材を確保するようにしましょう。