この記事でわかること
- 墨出しがどのような作業か
- 墨出しに使用する道具や工具
- 墨出しの作業手順
建設工事において「墨出し」は、とても重要な工程です。
日常ではあまり聞き慣れない言葉なので、「墨出し」と聞いてもどのような作業なのか、具体的に何をするのかわからない方は多いのではないでしょうか。
この記事では、墨出しについて解説します。
作業時に使用する道具や工具、作業の手順などを詳しく説明するので、墨出しについて知りたい方はぜひ参考にしてください。
墨出しとは
墨出しとは、設計図面の内容を建設現場に反映させる作業です。
その名のとおり墨を使って、床や壁、天井などに図面内容の線や寸法などを書き込み、施工の目印を記します。
わかりやすくいうと、設計図の内容を建設現場に原寸大で下書きしたものです。
すべての建設工事において、初めに墨出しの作業が必要となります。
1つの作業を行う度に寸法を測量し、図面から正確な位置を抽出していては非常に効率が悪く、なかなか作業が進みません。
作業前に墨出しを行うことで、作業者が都度設計図面を確認する手間がなくなるため、効率よく作業を進めることができるようになります。
また、墨出しを行うことで、建設現場の作業者が設計図面の内容を実際にイメージしやすくなります。
たとえば、「この位置に扉が設置される」「これぐらいのサイズのキッチンが設置される」など、墨出しを行うことで具体的にイメージでき、位置情報などを把握できます。
墨出し作業はわかりやすくまっすぐな線を引くこと、墨出しを間違えた際はすぐに修正を行うことがポイントであり、墨出しを丁寧かつ正確に行うかどうかが建設工事に大きく影響します。
墨出しに使用する道具・工具
墨出しを正確に行うには、多くの道具を使いこなす必要があります。
ここからは、墨出しの作業に必要となる道具を紹介します。
墨壺
墨壺は、実際に建設現場の壁や床などに基準線を記すための道具です。
壺に墨を吸わせた綿を入れ、この綿に糸を通して墨で黒く染めます。
そして、墨で染まった糸を使って、設計図面どおりに線を引いていきます。
具体的には、1人が墨壺の本体、もう1人が糸の先端を持ち、糸を持ち上げて弦楽器の弦をはじく要領で糸をはじいて線を引きます。
この作業は、2人のうちいずれかがベテランであることが求められます。
準備に若干の時間がかかりますが、慣れれば線引きの時間を短縮でき、黒く細い線が引けます。
ただし、墨なので一度線を引くとやり直しができず技術が必要なため、注意が必要です。
墨差
墨差とは、墨を使って線を引くための道具です。
片端はペン状、もう片端はヘラ状の形をしており、ヘラの方は細かい切れ込みが入っており、短い線を引くときによく用いられます。
チョークライン
チュークラインも用途は墨壺と同じであり、建設現場で基準線を引くための道具です。
線を引くのに用いるのが墨ではなく、粉のチョークという点で墨壺と異なります。
墨壺の場合、一度引いた基準線を消せませんが、チョークは簡単に書き直しが可能であり、事前準備が不要で誰でも簡単に基準線を引くことができます。
墨壺ほど細く綺麗なラインは出せませんが、初心者にはおすすめの道具です。
レーザー墨出し器
レーザー墨出し器は、建設現場で基準線を示す装置です。
機械からレーザーラインを照射し、壁面や床面、天井面の水平や直角などの基準線を作り出します。
スイッチを入れるだけで正確に素早く墨出しを仕上げることが可能なので、効率的に作業を進められます。
スケール(メジャー)
スケール(メジャー)は、墨出しに限らず工事現場で必須の道具であり、日常生活でも長さを計るのによく使うものです。
墨出しでは、線の長さを計る目的で使われます。
100円ショップなどでも売られているため、他の道具より入手しやすいのが特徴です。
下げ振り器
下げ振り器とは、糸の先端に重りがぶら下がった道具で、壁や柱などが地面に対して垂直かどうかを確認できるものです。
差金
差金は、2つのものさしをL字に交差させたような器具です。
一般的なストレートのものさしと異なり、直角であるかどうかを確認することができます。
壁と地面に合わせることで、直角になっているかを隙間の空き具合でチェックできます。
レベル
レベルは、地面の高低差を測るときや水準測量を行うときに使う道具です。
オートレベルとレーザーレベルがあり、オートレベルは平らに設置すると視準線で自動補正し、レーザーレベルは装置本体からレーザーを出して測量できます。
その他の道具
墨出しの作業では、上記の他にも、以下の道具が使われます。
- 図面
- 水平器
- カッター
- ほうき
- ヘッドライト
- 建築用の筆記用具など
墨出しのやり方・手順
墨出し作業は、大きく4つの手順に分けられます。
ここからは、それぞれの手順を詳しくみていきましょう。
墨出しの事前準備を行う
まずは墨出しを行う場所を確認して、必要な道具を用意するなど、墨出しを行うための事前準備を整えます。
作業スペースを確保できるか、どの部分に線を引くのかなどを事前に確認しておくことで、スムーズに墨出し作業に入ることができます。
また、先述したとおり墨出し作業には様々な道具があり、作業箇所によって必要な道具が異なる場合があります。
墨出しを行う際は、事前に必要となる道具を1つ1つチェックし、不足のないよう用意しておくことで、滞りなく作業を進められるでしょう。
清掃する
作業箇所の確認と道具の準備が済んだら、墨出し箇所の清掃を行います。
床などに障害物があると正しく線を引けないので、不要なものは撤去します。
また、ごみなどが落ちていると、基準線が途切れたり、歪んでしまったりするため、ほうきなどで除去しておかなくてはなりません。
床や壁にこびりついたごみは、雑巾で拭き取ったり、カッターで削り落としたりして、綺麗にしておきましょう。
墨出しを行う
清掃が終わったら、建設現場の床や壁、天井などに寸法や基準線を書き込みます。
具体的な作業手順は以下のとおりです。
-
①設計図通りに基点に印をつける
②鉛筆やシャープペンシルで両端に小さな印をつける
③両端の印の間に、墨壺またはチョークラインを使って墨を打つ
④(墨壺を使用する場合)1人が墨壺の本体を持ち、もう1人が糸の先端を持つ
⑤糸を持ち上げて、弦楽器の弦のようにはじくことで線が引ける
上記の5ステップで墨出しは完了です。
墨出し作業は、基準線を出すのに2つ以上の点をつなぐ必要があるため、2人1組で行うのが基本です。
しかし、先ほど紹介したレーザー墨出し器やチョークラインを使うと、1人での墨出し作業も可能となります。
設計図面と現場を確認する
ひと通りの墨出しが完了したら、設計図面と現場の墨出しがきちんと合っているかチェックします。
チェックする項目としては、以下のものが挙げられます。
- 図面の寸法どおりに墨出しできているか
- まっすぐな線になっているか
- 線が薄くなっていないか
- 線が途切れていないか
- 線がにじんでいないか
- 他の墨と重なって二重になっていないか
- 前後と左右が逆になっていないか
この確認を怠たったり、ミスを見逃したりすると、ズレが生じ、建設工事に大きく影響する可能性があります。
まとめ
墨出しは、設計図面の情報を建設現場に原寸大で反映する作業であり、建設工事では必須の作業です。
墨壺は職人の技術が要るので、初心者の方や自信がない方はチョークラインの使用をおすすめします。
地道な作業ではありますが、確実に手順を踏んで作業することが重要です。
墨出しに興味ある方や墨出しを行う予定のある方は、ぜひこの記事を参考にしてください。