この記事でわかること
- 左官工事の種類や特徴
- 左官工事と塗装工事の違い
- 左官工事が求められる理由
- 左官工事業の一般建設業と特定建設業を取得するための要件
左官工事は、建物を丈夫かつ美しく仕上げる上で重要な役割を果たします。
左官工事と聞いても、具体的にどのような工事なのかイメージできない方は多いのではないのでしょうか。
この記事では、左官工事について紹介します。
塗装工事との違いや具体的な工事内容、建設業許可をとるための要件も詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
左官工事とは?塗装工事などとの違い
左官工事とは、こてを使って建物の壁や床などに塗り仕上げる工法です。
主な塗装材料として、壁土やモルタル、漆喰、珪藻土などが使われます。
職人の技術がダイレクトに反映される工法であり、通常の壁紙やクロスにはない独特な風合い・質感を出すことができます。
個人の住宅や店舗、高層マンションやビル、ショッピングモールなど、幅広い現場で活躍します。
塗装工事との違い
塗装工事は、壁や屋根に塗料を塗るあるいは吹き付ける工法です。
使用する道具がローラーやスプレーガンであることや、材料がペンキなどの塗料である点が左官工事とは異なります。
また、仕上がりにも違いがあり、基本的に塗装工事は塗り上げるだけですが、左官工事は独創的なデザインに仕上げることが可能です。
左官工事の種類・内容
左官工事は、壁や床の基礎となる下地づくりと表面を塗って仕上げる仕上げ塗りの2種類に分けられます。
下地づくり
下地づくりは、建物の壁や床の基礎となる下地を造る作業です。
たとえば、内装壁であれば、石膏ボードを貼り付けてつなぎ目をパテ埋めして表面を平らにし、さらに全体に下地素材を塗る作業を行います。
下地づくりをしっかり行うことで、壁のひび割れなどの欠陥を防ぎ、壁や床を綺麗に仕上げることができます。
建った後の建築物の下地を直接目にすることはありませんが、塗装やタイルなどで仕上げるにあたって、下地づくりは非常に重要な工程と言えるでしょう。
仕上げ塗り
仕上げ塗りは、建物の壁などの表面を塗装して仕上げる作業です。
下地を造った後に、壁材を上塗りすることで表面全体が完成します。
左官工事は仕上がりのパターンも多種多様であり、こてで模様をつける、フラットに仕上げる、あるいは立体感を出すことができます。
左官工事が求められる理由
建物を造る上で左官工事が求められる理由は、以下3つのメリットがあるためです。
- 壁や床の耐久性が高まる
- 美しく仕上がる
- アレルギー対策になる
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
耐久性が高まるため
左官工事は、建物の壁や床の耐久性を高めるために重要な役割を担います。
下地づくりの工程でしっかり土台をつくることで、ひび割れなどの欠陥を防ぎ、耐久性を高めます。
この下地づくりが粗悪な場合、壁や床に亀裂が生じる、あるいは上塗りした材料が剥がれやすくなります。
美しく仕上がるため
左官工事を行うことで、壁や床を美しく仕上げられます。
職人の技術によって造られた土壁や漆喰壁は、通常の壁紙やクロスよりデザイン性に優れ、美しい外観となります。
建物の細部までこだわりたい人やオリジナリティを求める人には、左官工事で仕上げるのがおすすめです。
アレルギー対策になるため
左官工事で壁や床に塗るのに使われる素材は、土や漆喰、珪藻土などの自然素材がほとんどです。
アレルギー反応やシックハウス症候群を引き起こす物質がほとんど含まれないため、このような理由からも左官工事が選ばれます。
左官工事の建設業許可を取得する要件
左官工事業の建設業許可をとるためには、営業所に一定の要件を満たす専任技術者を配置することと、財産要件を満たす必要があります。
建設業には一般建設業と特定建設業があり、どちらの許可を取得するかによって請け負える工事代金の上限が異なります。
一般建設業を取得すると500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円)の工事を請け負うことが可能となり、特定建設業許可を取得すると、4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円)の工事を請け負うことが可能です。
一般建設業と特定建設業のどちらを申請するかで、満たすべき専任技術者と財産の要件が異なります。
ここからは、それぞれの要件を詳しく解説していきます。
一般建設業許可
まずは、左官工事業の一般建設業許可を取得するにあたって、専任技術者になれる人の要件と財産要件を紹介します。
一般建設業の専任技術者の要件
次のいずれかの資格を保有している場合は、一般建設業許可における左官工事業の専任技術者になることができます。
- 一級建築施工管理技士
- 二級建築施工管理技士(種別:仕上げ)
- 職業能力開発促進法に基づく「左官技能士」(2級の場合は合格後3年の実務経験が必要)
一部実務経験が必要ですが、それ以外の資格を保有していれば実務経験は問われません。
また、上記の資格を持っていない場合であっても、次のように一定期間の左官工事に関する実務経験があれば、一般建設業における左官工事業の専任技術者になれます。
- 10年以上
- 3年以上(土木工学または建築学の学科を専攻しており尚且つ大卒または高専卒の場合)
- 5年以上(土木工学または建築学の学科を専攻しており尚且つ高卒の場合)
専攻学科や学歴によって必要な実務経験の期間は異なりますが、実務経験の要件を満たしていれば資格の有無は不問です。
一般建設業の財産要件
一般建設業を取得するためには、以下3つのいずれかの財産要件を満たす必要があります。
- 許可申請する直前の決算書において、純資産(新設法人の場合は設立時の資本金)の金額が500万円以上であること
- 500万円以上の資金調達能力(預金残高など)があること
- 過去5年間、建設業許可を得て営業を継続した実績があること
特定建設業許可
特定建設業は、一般建設業より要件が厳しくなります。
ここからは、左官工事業の特定建設業許可を取得するための専任技術者の要件と、財産要件を紹介します。
特定建設業の専任技術者の要件
特定建設業許可における左官工事業の専任技術者になるには、一級建築施工管理技士の資格を保有している必要があります。
一般建設業許可では、二級建築施工管理技士や左官技能士でも専任技術者として認められますが、特定建設業許可の場合は一級建築施工管理技士に限られます。
また、一級建築施工管理技士の資格がない場合であっても、一般建設業許可における左官工事業の専任技術者になるための要件(資格、実務経験どちらでもよい)を満たし、尚且つ4,500万円以上の左官工事の指導監督的実務経験が2年以上あると特定建設業の許可申請が可能となります。
特定建設業の財産要件
一般建設業を取得するためには、以下4つのいずれかの財産要件を満たす必要があります。
- 欠損の額が資本金の20%を超えないこと
- 流動比率が70%以上あること
- 資本金2,000万円以上あること
- 自己資本の額が4,000万円以上あること
なお、これらは特定建設業の許可申請する直前の決算書の数値で判断します。
まとめ
左官工事は、建物の壁や床の耐久性、および美観において重要な役割を果たします。
大規模な左官工事を請け負うには建設業許可の取得が必要ですが、一般建設業と特定建設業で要件が異なり、その内容も複雑です。
要件や手続きに不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
手続きを代行してもらうなど、適切なサポートを受けることができるでしょう。