この記事でわかること
- 建設業許が必要な工事・不要な工事
- 建設業許可の種類
- 建設業許可を取得するための要件
- 建設業許可を申請する流れ
建設業界で仕事をしている方は、「500万円以上の契約をするときには建設業の許可を受けていないと罰則がある」との情報を耳にしたかもしれません。
小規模な工事であれば建設業の許可がなくても実施可能です。
しかし、上記の規模を超える仕事をするときには、建設業許可を受けていないとペナルティが課せられる可能性があります。
建設業の許可を受けるためには、資格要件を満たしたうえで国土交通省または都道府県への申請が必要です。
資格取得後も様々な手続きを継続的に行わなくてはなりません。
本記事では、建設業許可の基本情報から、取得するための要件や申請時の流れを解説します。
「建設業許可」とは?
建設業許可は、土木や建築の一式工事や、大工・左官などの専門工事など、一定の工事を行う建設業者に取得が求められる許可です。
建築業法第3条で定められており、基本的には該当する工事を請け負う全ての建築会社が取得する必要があります。
ただし、条件を満たす簡単な工事であれば、許可がなくても作業が可能です。
建設業許可を取得すると、建設業許可番号が発行され通知されます。
建設業許可番号は許可の種類や取得年、会社番号などを示します。
建設業許可が不要な工事
建設業許可がなくても、条件を満たす軽微な工事はできます。
建築業許可が不要な軽微な工事に該当するのは、まず1件の工事請負金額が500万円未満になる場合です。
この500万円未満には、材料費や消費税も含まれるため注意しましょう。
また、工期や支払いを分けた場合でも、1つの工事であれば合算して500万円未満とします。
ただし、建築一式工事の場合は上限の金額が1,500万円未満もしくは、延べ面積が150㎡未満の木造工事となります。
建設業許可の有効期限
建設業許可の有効期限は、取得より5年となっています。
より厳密に説明すると、5年後の建設業許可を取得した前日です。
例えば令和6年の6月2日に建設業許可を取得した場合の有効期限は、令和11年の6月1日となります。
ちなみに、有効期間の満了日は土日祝日などに影響されません。
継続して建設業の許可が必要な場合は、毎回有効期限を迎える30日前までに更新する必要があります。
審査手続きに約1カ月かかるためです。
手続きしないまま更新期限がすぎると、許可が取り消されます。
また、期限後の更新はできないため、必要な場合は再度新規で申請を行わなければなりません。
建設業許可の区分
建設業許可には、いくつか種類があります。
種類による違いは、許可を出す行政庁や、下請契約の規模です。
違う種類の許可を取得してしまうと、建設業許可を受けているにも関わらず、一部の工事を請け負えないケースがあります。
詳細は、以下に記載している内容を参考にしてください。
許可を出す行政庁(大臣許可と知事許可)
建設業許可には、大臣許可と知事許可があります。
違いは、許可を取得した建設業者の営業所がある場所です。
ここで言う営業所とは、本店や支店だけではありません。
常時建設工事の請負契約を行う事務所など実質的に営業を行っている事業所も含まれます。
逆に建設業の営業に関与しない店舗(本店も含む)や、工事現場の事務所・資材置き場などは含まれません。
上記の条件を満たす営業所が1箇所しかない場合や1つの都道府県内のみにある場合、該当する都道府県知事による知事許可です。
営業所が2つの都道府県以上に存在している場合は、国土交通大臣による大臣許可となります。
知事許可と大臣許可の両方を取得できる?
基本的に、知事許可もしくは大臣許可いずれかの建設業許可しか取得できません。
2種類の許可は、あくまで営業所所在地で区分されている分類です。
「県知事許可を受けた業者はその県のみ工事可能」など、許可の違いで工事ができる都道府県が決まるのではありません。
ただし、複数事業所があり要件を満たせば、営業所ごとに土木や水道などといった別業種の許可を取得できます。
また、土木と建築など営業所により業種が違う場合は、後ほど解説する一般と特定それぞれの許可を取得可能です。
下請契約の規模(一般建設業と特定建設業)
下請契約の規模により、一般建設業と特定建設業の2種類があります。
違いは発注者より元請として受注した工事で1件あたり4,500万円(建築業は7,000万円)以上の下請契約を結ぶかどうかです。
上記の条件に当てはまる下請契約を行う場合は特定建設業、それ以外もしくは下請契約しない場合は一般建設業となります。
あくまで判断のポイントは、元請として受注した工事を下請に出した金額です。
自社施工の工事や、下請として受注しさらに下請に出した工事は対象外となります。
条件に当てはまらなければ、一般建設業でも金額を気にせず工事の引き受けが可能です。
また、下請に材料を提供して、一般建設業許可の条件以内に契約金額を抑える対応もできます。
建設工事の種類(全29業種)
建設業の許可は、全29種類の業種別に行われます。
業種については2種類以上の同時に許可取得が可能で、営業する内容により異なる許可を得る必要があります。
作業と対応する業種の許可を取得していなければ、その工事を請け負えません。
電気設備と屋根など複数の作業工程がある工事を請け負う際、許可を持っている範囲しか対応できない場合もあるため注意しましょう。
建設業における工事の種類は以下の通りです。
工事の分類 | 工事の種類 |
---|---|
一式工事 | 土木一式工事 |
建築一式工事 | |
専門工事 | 大工工事 |
左官工事 | |
とび・土木・コンクリート工事 | |
石工事 | |
屋根工事 | |
電気工事 | |
管工事 | |
タイル・レンガ・ブロック工事 | |
鋼構造物工事 | |
鉄筋工事 | |
舗装工事 | |
しゅんせつ工事 | |
板金工事 | |
ガラス工事 | |
塗装工事 | |
防水工事 | |
内装仕上工事 | |
機械器具設備工事 | |
熱絶縁工事 | |
電気通信工事 | |
造園工事 | |
さく井工事 | |
建具工事 | |
水道施設工事 | |
消防施設工事 | |
清掃施設工事 | |
解体工事 |
工事内容の詳細や区分の考え方について、詳細は以下をご確認ください。
参考:業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正):国土交通省
建設業許可の取得に必要な6つの資格条件
建設業の許可を受けるためには、次の6つの資格要件を満たしている必要があります。(※令和2年改正で要件が6つになりました)
- ①経営業務の管理責任者がいる
- ②専任技術者がいる
- ③財産的な基礎が安定している
- ④誠実に契約を履行する
- ⑤欠格要件に該当しない
- ⑥社会保険に加入している
以下、順番に説明していきます。
①経営業務の管理責任者がいる
建設業の許可を受けるためには、会社の経営業務に従事する管理責任者を、経営幹部としておいている必要があります。
経営幹部とは、個人事業の場合には事業主本人、法人企業の場合には取締役となっている人です。
ここでいう管理責任者については、以下のような経験を有していなければなりません。
②専任技術者がいる
建設業の許可を受けるためには、専任技術者を雇用している必要があります。
専任技術者は、一定の資格を有しているか、実務経験を有していなくてはなりません。
資格については許可を受けたい建設業によって異なります。
実務経験については10年以上の経験または指定された種類の学校を出た後に3~5年従事した経験が必要です。
なお、社長自身が①、②の双方の資格を有している場合には、同一人物を管理責任者・専任技術者の両方に指定しても問題ありません。
③財産的な基礎が安定している
建設業許可申請にあたっては、ある程度安定的に事業を経営していると役所側に判断してもらう必要があります。
具体的には、直前の事業年度における決算書で、
- 貸借対照表の純資産の部合計額が500万円以上である
- 500万円以上の金額が記載された残高証明書を取得できる
上記のどちらかの条件を満たさなければなりません。
④誠実に契約を履行する
建設業以外の事業で不正行為を行い、営業許可の取り消し処分になった経歴などがある場合、建設業許可を受けられない可能性があります。
建設業の許可を受けようとする人が、脅迫や横領といった法律に反する行為をする恐れがある場合には許可申請を受けられません。
なお、許可を受けようとする「人」とは、法人企業の場合には役員、個人事業者の場合は個人事業主本人が該当します。
⑤欠格要件に該当しない
建設業許可を受けるためには、欠格要件に該当してはいけません。
欠格要件とは、破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない場合、過去に許可を取り消された経歴がある場合を言います。
また、禁固以上の刑に処された経歴がある人や暴力団の構成員なども欠格要件に該当します。
⑥社会保険に加入している
令和2年10月の法改正により、社会保険への加入が建設業許可の要件となりました。
すべての建設業を営む者が建設業許可の申請をする際、適切な社会保険に加入しているかを確認されます。
この建設業で求められる社会保険とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の3つです。
法律上加入義務があるこれらの保険に加入していないと、建設業許可の申請ができなくなってしまいます。
建設業許可の申請の流れ
要件を満たしている前提での、建設業許可申請の流れは以下の通りです。
- ①申請先を確認する
- ②許可申請書・添付書類を作成する
- ③書類一式を提出して費用を支払う
手順の詳細を下記に示しています。
参考にしてください。
①申請先を確認する
まずは、建築業許可の申請先を確認しましょう。
営業所の所在地により、申請先が異なるためです。
また、申請先により、必要な書類や事前予約・郵送申請の可否などが異なる場合があります。
大臣許可の取得は国土交通省の各地方整備局へ、知事許可の取得は各都道府県庁へそれぞれ申請します。
各都道府県の許可行政庁一覧は、以下の通りです。
問い合わせ先も記載されているので、事前に確認しておきましょう。
②許可申請書・添付書類を作成する
申請先を確認したら、必要な許可申請書や添付書類を用意しましょう。
認可申請書は、許可行政庁のホームページよりダウンロード可能です。
様式や記載すべき内容を確認し、作成しましょう。
添付書類として、登記事項証明書や納税証明書といった、公的機関が発行する証明書が必要です。
種類は、申請する側が法人か個人かにより異なります。
また、提出する窓口により異なる場合もあるため、注意が必要です。
以下、国土交通省のサイトで必要な書類一覧を確認し、漏れなく提出しましょう。
③書類一式を提出して費用を支払う
都道府県によっては、建設業許可の予備審査が行われ、その後許可申請書と添付書類一式を提出します。
建設業許可の取得には手数料もしくは登録免許税が必要です。
建設業許可を新規で取得する場合、必要な費用は以下の通りです。
許可行政庁 | 費用 |
---|---|
都道府県知事許可 | 手数料 9万円 |
大臣許可 | 登録免許税 15万円 |
許可の費用について、許可行政庁による違いはありますが、一般許可と特定許可で違いはありません。
一般と特定を両方同時に取得する場合は、上記の手数料を2倍した料金を支払います。
さらに、別途事務手数料や添付書類の取得費用などで、3,000円程度かかります。
具体的には、登記証明書や印鑑証明書の発行手数料などが上記に含まれます。
まとめ
以上、建設業許可を受けるために必要な6つの資格要件について解説しました。
建設業を営む方にとって、建設業許可を受けられるかどうかは死活問題となる重要な問題です。
本文で説明した6つの資格要件を満たせば、法律上は問題なく許可申請を受けられます。
しかし、実際に手続きを進める上ではさまざまなハードルがあります。
建設業の許可申請手続きを行う際には、行政書士などの専門家にアドバイスを受けてみてください。