この記事でわかること
- 建設業許可が取り消されてもすぐに再取得できる場合があることがわかる
- 建設業許可を取り消されて再取得できないケースがあることがわかる
- 建設業許可が取り消されることとなる欠格要件について知ることができる
建設業許可を取得しても、何らかの理由によって取り消されてしまうことがあります。
ただし、建設業許可が取り消される場合にもいくつかの理由があるため、すぐに再取得できることもありますし、一度取り消されてしまうと、その後一定期間をおかなければ再取得できない場合もあります。
ここでは、そのように建設業許可が取り消される理由や、その後の再取得について解説していきます。
建設業許可の取り消し後にすぐ再取得できるケース
建設業許可を取得する際には、多くの条件をクリアしなければなりません。
また、その建設業許可を維持するためには、その条件を引き続き維持しなければなりません。
しかし、場合によってはその条件を維持することができなくなってしまいます。
そのような場合、せっかく取得した建設業許可が取り消されることがあるのです。
このような取り消しのことを「手続き上の許可の取り消し」と呼びます。
「手続き上の許可の取り消し」とは
手続き上の許可の取り消しと呼ぶのは、許可の条件を維持できなくなったために、事務的に行われる取り消しだからです。
建設業許可を取得する際に付された条件を維持できなくなったため、いったん建設業者名簿から削除されるというイメージです。
何かのペナルティとして建設業許可が取り消されるわけではないため、このように呼ばれます。
手続き上の許可の取り消しの具体例
具体的に、どのような場合に手続き上の許可の取り消しに該当することとなるのでしょうか。
主なものとしては、以下のようなものがあります。
- (1) 建設業許可に付された条件に違反した場合
- (2) 経営業務の管理責任者の要件を欠いた場合
- (3) 専任技術者の要件を欠いた場合
- (4) 欠格要件に該当した場合
- (5) 許可を受けてから1年以内に営業を開始しなかった場合
- (6) 許可を受けてから1年以上引き続き営業を休止した場合
- (7) 廃業届を提出した場合
(2)の経営業務管理責任者や(3)の専任技術者は、建設業許可を取得する際に必ず設置しなければなりません。
しかし、そのような人の配置についての要件を満たさないこととなった場合は、建設業許可を維持することはできなくなります。
(4)の欠格要件については、後ほど詳しく説明します。
建設業許可を取得した後に欠格要件に該当した場合、その許可は取り消されることとなります。
(5)や(6)については、建設業法に規定があるため、このような説明がされています。
ただ、単純に1年以上売上がゼロだから取り消されるというわけではなく、営業活動を行っていれば問題はありません。
(7)の廃業届とは、建設業許可を受けている事業者が、その要件を満たさなくなった際に提出するものです。
つまり、廃業届を提出する時点で何らかの事情により、建設業許可を維持できなくなっていると考えられます。
建設業許可の廃止時の対応
建設業許可を受けていた会社が解散する際、あるいは会社が合併により消滅する際には、廃業届を提出しなければなりません。
このほか、経営業務管理責任者や専任技術者の不在により建設業許可を維持できなくなった場合も、廃業届の提出義務があります。
廃業届は、会社を消滅させる時だけに提出するものではなく、建設業許可の取り消しを受けるために提出するものとしても提出するものなのです。
建設業許可はなくても会社は継続し、軽微な工事を行ったりすることがあります。
また、建設業は廃業しても、他の業種の会社になることもあります。
このような場合にも、建設業許可の取り消しを受ける時は必ず廃業届を提出しなければならないので注意しましょう。
建設業許可の取り消し後すぐに再取得できないケース
建設業を営む中で、会社やその会社の役員などが重大な違反をしてしまう場合があります。
このような場合、建設業法に違反したことに対するペナルティが科されることとなります。
その結果、取得している建設業許可が取り消されることとなるのです。
このような建設業許可の取り消しのことを、「不利益処分の取り消し」と呼びます。
「不利益処分の取り消し」とは
不利益処分とは、行政庁の権限により特定の人や法人の許認可を取り消したり、金銭納付命令を出したりすることです。
通常、行政庁は何の理由もなしに人や法人の権利に制限を加えたり、義務を課したりすることはできません。
このようなことは、一方的に不利益を及ぼすこととなるためです。
しかし、何らかの違反行為を行った場合には、その権利を制限することが監督官庁によって行われることになります。
ただ、不利益処分を行うことは、その処分を受ける側にとっては権利が侵害されることを意味します。
そこで、不利益処分を受ける前に、必ず反論することのできる機会が与えられることとなります。
聴聞、あるいは弁明といった形で処分を受ける建設業者が反論する機会が保障されています。
不利益処分の取り消しの具体例
具体的に、どのような場合に不利益処分の取り消しを受けることになるのでしょうか。
おもなケースとしては、以下のようなものがあげられます。
- (1) 不正の手段により新規・更新の建設業許可を受けた場合
- (2) 許可行政庁の指示処分にあたる違反を行って情状が特に重い場合
- (3) 許可行政庁の営業停止に違反して営業活動をした場合
(1)は、建設業許可を申請した際に虚偽の申請を行うなど、不正に建設業許可を取得した場合です。
後ほど紹介する欠格要件にも関係する重大な違反であり、この事実が発覚すれば建設業許可は取り消されます。
(2)にある指示処分とは、建設業者に建設業法違反が認められた場合、行政庁から違反した建設業者に出される指示をいいます。
たとえば、建設業許可を受けていない事業者と、500万円以上の下請け契約を締結した場合があります。
あるいは、建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼした場合や、そのおそれがある場合も該当します。
このような内容の違反行為を行った場合、通常は国土交通大臣や都道府県知事から適切な対応を行うように指示処分が出されます。
しかし、特に情状が重い場合には、建設業許可が取り消されてしまう場合があるのです。
(3)の内容は、営業停止処分を受けることが前提となっています。
建設業許可を受けた事業者が指示処分を受けても従わない場合、営業停止処分を受けることとなります。
最長1年間の期間にわたって営業停止処分を受けると、その期間内は営業の全部または一部を停止しなければなりません。
しかし、この営業停止処分に違反して期間内に営業活動をしてしまうと、建設業許可が取り消されることとなるのです。
不利益処分の取り消しによる影響
不利益処分の取り消しにより建設業許可が取り消されると、その後5年間は建設業許可を取得することができなくなります。
違反行為の対象となる人は、代表者本人だけではありません。
役員については全員が対象となるほか、使用人にも対象になる人はいます。
さらに、株主の中にも対象になる人がいます。
そのため、建設業許可を維持するためには、このような人選に細心の注意を払う必要があるのです。
建設業許可の欠格要件
建設業許可を取得する際には、いくつもの条件があります。
その条件の中に、欠格要件に該当しないことがあります。
この欠格要件とは、どのようなものをいうのでしょうか。
欠格要件とは、建設業許可を申請しても、形式的に認められないことをいいます。
その内容は大きく2つに分けることができます。
1つは提出書類の内容に関するものです。
事実と異なる内容を記載して建設業許可の申請を行った場合や、重要な事項の記載漏れがあった場合が該当します。
この場合、事実を隠ぺいする意図がある場合はもちろんですが、単なる記載漏れや記載忘れでも、欠格要件に該当するのです。
もう1つは人に関するものです。
過去に建設業の不正取得に関わったことがある人や、禁固以上の刑に処された人などがこの要件に該当する可能性があります。
欠格要件に該当する場合、建設業許可を受けることができません。
また、書類の欠格要件に該当する場合は、その時に在籍していたすべての役員が、その後欠格要件に該当することとなります。
その結果、法人として建設業許可を受けることが非常に難しくなることがあるのです。
まとめ
建設業許可を取得しても、その後の状況によっては、その建設業許可が取り消されてしまう場合があります。
建設業許可が取り消されると、すぐに建設業許可を再取得できる場合もあれば、5年間取得できない場合もあります。
どのような理由で取り消されたのか、その内容を確認してその後の対応方法を決めなければならないのです。
また、一番大事なのは建設業許可を取り消されないように、法令順守を徹底することなのです。