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経営事項審査(経審)の点数を上げるためには?仕組み・算出方法について

この記事でわかること

  • 経営事項審査の概要がわかる
  • 経営事項審査の点数の仕組みが理解できる
  • 経営事項審査の評点の上げ方を知ることができる

経営事項審査について、こんな悩みを抱えていませんか?

「経営事項審査の点数を上げる方法が知りたい」

「そもそも仕組みや算出方法がわからない」

経営事項審査の仕組みは複雑で、理解するのは非常に大変です。

本記事では、経営事項審査の仕組みや計算方法をはじめ、評点の上げ方について解説します。

わかりやすくまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

経営事項審査とは

経営事項審査とは、国や地方公共団体が発注する公共工事の入札に参加するために必要な審査のことです。

経営事項審査を受けた建設業者には「総合評定値(P点)」という評点が与えられます。

各発注機関はこのP点をもとに、入札に参加する建設業者のランク付けを行います。

入札のランクはP点によって変わり、点数が高いほど規模の大きな公共工事の入札に参加することが可能です。

そのため、「仕事の幅を広げたい」「より大きな工事を受注したい」という建設業者は、経営事項審査で評点の上げ方をしっかり理解して取り組む必要があります。

経営事項審査の点数の仕組み

まずは、経営事項審査の点数の仕組みについて見てみましょう。

経営事項審査では、以下の5つの項目について審査が行われます。

  1. 完成工事高=(X1)
  2. 自己資本および利払前税引前償却前利益=(X2)
  3. 経営状況=(Y)
  4. 技術職員数および元請完成工事高=(Z)
  5. その他の審査項目(社会性等)=(W)

5つの項目はそれぞれアルファベットで表現され、各評点に法律で定められた割合をかけて合計したものが経営事項審査の点数として算出されます。

先ほどもお伝えしましたが、この経営事項審査の点数は「総合評定値」といい、アルファベットでは「P」で表されます。

総合評定値(P点)の算出方法については、以下のとおりです。

【総合評定値(P点)の算出方法】
総合評定値(P点)=X1×0.25+X2×0.15+Y×0.2+Z×0.25+W×0.15

X1~Wの各評点の詳細については以下のとおりです。

審査項目 上限値 下限値 P点に占める割合(%)
完成工事高(X1) 2,309点 397点 25%
自己資本および利払前税引前償却前利益(X2) 2,280点 454点 15%
経営状況(Y) 1,595点 0点 20%
技術職員数および元請完成工事高(Z) 2,441点 456点 25%
その他の審査項目(社会性等)(W) 1,966点 -1955点 15%

次は、各評点の加点方法や評点の上げ方について解説していきましょう。

(参照元:国土交通省

経営事項審査の加点方法・評点の上げ方

X1~Wの各評点の加点方法や上げ方について、それぞれ解説します。

ご自身の会社の状況と照らし合わせて、取り組めるものがあるかご確認ください。

完成工事高=(X1)

「X1」は、元請と下請けを合わせた完成工事高(工事売上のこと)が審査項目になります。

評点アップのポイントは当然、「工事の受注量を増やす」こと。

採算を無視した赤字工事の受注などは避け、利益率のよい工事を受注することが重要です。

完成工事高を上げる方法は、受注を増やす以外にも「完成工事高の振替(積上げ)」という方法もありますので、解説します。

完成工事高の振替(積上げ)とは

完成工事高の振替(積上げ)とは、専門工事の完成工事高を一式工事に振り替え、あるいは専門工事間で完成工事高を振り替える方法のことです。

たとえば、「建築一式工事」と「とび」の許可を持っている会社が建築一式工事のみ経審を受ける場合を考えてみます。

このケースだと、とびの完成工事高はその他の売上になるため、建築一式工事の完成工事高のみを申請することになります。

しかし、振替(積上げ)を行えば、とびの完成工事高が上乗せされるため、評点アップが狙えます。

振替(積上げ)は認められた業種間のみ行える

ちなみに、完成工事高の振替(積上げ)は認められた業種間でしか行えないため注意しましょう。

具体的には以下のとおりです。

【専門工事の完成工事高を一式工事に振り替えるパターン】

振替先の一式工事 振替元の専門工事
土木一式工事 土木一式工事 とび、石、タイル、鋼構造物、鉄筋、舗装、しゅんせつ、水道施設
建築一式工事 大工、左官、とび、屋根、タイル、鋼構造物、鉄筋、板金、ガラス、塗装、防水、内装、建具、解体

【専門工事間で完成工事高を振り替えるパターン】

専門工事の種類 相互に振替(積上げ)可能 専門工事の種類
とび
とび 造園
熱絶縁
水道施設
電気 電気通信

その他の注意点

他にも、完成工事高の振替(積上げ)は許可を受けている業種でしかできないため、注意しましょう。

たとえば、「建築一式工事」の許可は受けているけれど、「とび」の許可は受けていない場合などがあります。

このケースでは、許可を受けていない「とび」の完成工事高の振替(積上げ)はできません。

また、完成工事高は、直近の2年平均または3年平均の値を用いて計算されます。

完成工事高の振替(積上げ)を行うにあたり、「2年平均」「3年平均」いずれの場合も事業年度ごとに振替(積上げ)を実施する、実施しないを分けることはできないため、注意が必要です。

自己資本および利払前税引前償却前利益=(X2)

自己資本額と利払前税引前償却前利益が審査項目となります。

「X2」の評点アップには、会社の規模と利益がどれだけ出ているかが重要です。

この項目の評点アップに関しては、「増資により資本金を増やす」のが最も簡単な方法と言えるでしょう。

ただし、増資によって資本金が大きくなれば、税負担が増えるというデメリットが生じます。

そのため、評点アップをしたいからとむやみに増資するのは危険です。

増資で資本金を増やす場合は、会社規模に見合った金額にとどめておくのがいいでしょう。

経営状況=(Y)

「Y」に関しては許可行政庁ではなく、登録経営状況分析機関が以下の審査項目から評点を算出します。

Y点の審査項目
  1. 純支払利息比率(売上高に対して実質的な支払利息がどれくらいあるのか)
  2. 負債回転期間(負債が経営状況を圧迫していないか)
  3. 売上高経常利益率(売上総利益が2期平均の総資本額に対していくらか)
  4. 純資本売上総利益率(企業の収益性)
  5. 自己資本対固定資産比率(自己資本が固定資産をどれだけ上回っているか)
  6. 自己資本比率(自己資本が総資本に占める割合)
  7. 営業キャッシュフロー(企業の現金創出能力)
  8. 利益剰余金(会社が生み出した益金の累計額)

上記の審査項目から評点をアップする方法については、以下のものが挙げられます。

  • 借入金を返済して支払い利息を減らす
  • 負債を減らす
  • 在庫を減らして資金に転換する
  • 売上げ純利益を増やす
  • 売上原価割合を抑える
  • 増資する

「Y」に関してはP点に占める割合が20%と高く全業種共通項目であるため、評点アップの重要な項目のひとつと言えます。

技術職員数および元請完成工事高=(Z)

技術職員数と元請完成工事高が審査項目となります。

「Z」においては技術職員数の割合が高く、「審査基準日時点で技術者が何人いるか」「技術者がどんな資格を持っているか」によって点数が変わります。

技術者の人数は、審査基準日時点で6ヶ月と1日以上在籍している方が対象。

加点される技術者の資格と点数については以下のとおりです。

資格の種類 点数
1級技術者で監理技術者講習修了者 6点
1級技術者 5点
監理技術者補佐 4点
登録基幹技能者講習修了者 3点
2級技術者 2点
その他の技術者 1点

評点アップのポイントは「上位資格を持った技術者を増やす」こと。

会社全体で技術者の資格取得を目指せる環境づくりを支援することが重要です。

元請完成工事高に関しては、直近2年または3年平均でどれだけの元請工事を請負ったかを評価されます。

評点を上げるためには、少しずつでも元請工事を増やしていくことが大切です。

その他の審査項目(社会性等)=(W)

「W」の審査項目は以下のとおりです。

  1. 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況
  2. 建設業の営業継続の状況
  3. 防災活動への貢献の状況
  4. 法令順守の状況
  5. 建設業の経理の状況
  6. 研究開発の状況
  7. 建設機械の保有状況
  8. 国際標準化機構が定めた規格による登録の状況

「W」の審査項目(社会性)については加点項目だけでなく減点項目もあります。

評点アップには加点項目をどれだけ増やせるかが重要ですが、減点項目をなくすことも大切です。

「W」における減点項目は、社会保険に関する以下の3つが対象です。

  • 雇用保険
  • 健康保険
  • 厚生年金保険

それぞれ未加入の場合、40点ずつ減点されるため、必ず加入しておきましょう。

「W」の加点項目

「W」の加点項目については沢山あり、中でも以下の3つに関してはそれぞれ15点(P点に換算すると21点)がプラスされるため、大幅な評点アップが狙えます。

  1. 建設業退職金共済制度の加入
  2. 退職金一時金制度もしくは企業年金制度の導入
  3. 法定外労働災害補償制度の加入

1つめの建設業退職金共済は、建設現場で働く労働者を対象にした退職金制度のことで「建退共」とも呼ばれています。

建設業退職金共済制度を採用している建設業者は、経営事項審査において加点されます。

2つめの「退職金一時金制度もしくは企業年金制度の導入」については、労働者が退職後に安定した生活を送れるようにする狙いがあります。

退職金制度もしくは企業年金制度を導入している建設業者は、経営事項審査において加点されます。

3つめの「法定外労働災害補償制度」は、法定の労災保険に上乗せして保証を手厚くするための制度です。

任意の制度であり、加入している建設業者は経営事項審査において加点されます。

法定外労働災害補償制度には加点項目になる条件があり、具体的には以下のとおりです。

  • 業務災害および通勤災害の両方を担保していること
  • 死亡および労働者災害補償保険の障害等級第1級から第7級を補償していること
  • 直接の使用関係にある下請負人(数次下請けになる場合は下請負人すべて)の直接使用関係に職員すべてを対象としていること
  • 当該申請者が施行する全工事を補償していること

「Z」が占めるP点の割合は15%と最も低いですが、下限値がマイナス1,995点と大きい上に全業種共通の評点ですので、しっかり対策する必要があります。

まとめ

経営事項審査の加点方法や評点の上げ方は、各項目によって様々です。

いずれもお金や時間がかかるため、まずは無理のない範囲で取り組んでいくのがいいでしょう。

本記事を参考に、ご自身の会社状況をしっかり把握した上で、経営事項審査の評点アップにどのように取り組めるかを検討してみてください。

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