この記事でわかること
- 経営事項審査の概要がわかる
- 経営事項審査の手続きの流れが理解できる
- 経営事項審査に必要な書類がわかる
「公共工事の元請として安定して仕事を受注したい」「大規模な公共工事に携わりたい」など、公共工事に魅力を感じ、参入を検討している建設業経営者の方も多いのではないでしょうか。
公共工事は競争入札によって仕事を受注できますが、入札に参加するためには経営事項審査を受ける必要があります。
本記事では、公共工事への参入を検討中の建設業経営者の方向けに、経営事項審査の基本から手続きの流れ、必要書類について詳しく解説します。
経営事項審査とは
経営事項審査とは、国や地方公共団体が発注する公共工事を、元請として受注するために必要な審査です。
省略して「経審(けいしん)」とも呼ばれています。
経営事項審査では、以下の4つの観点から「総合評定値」という点数が付けられます。
- 会社の規模
- 経営状態
- 技術力
- その他(社会性など)
公共工事の発注者は、総合評定値をもとに各業者をランク付けします。
ランクごとに工事の発注があるので、各事業者は自社に合ったランクの工事の入札に参加するという形になります。
経営事項審査のランク付けについて
国や地方公共団体など、公共工事の発注者は「客観的事項」と「発注者別評価」の審査結果を点数化し、各事業者のランク付けを行います。
経営事項審査は「客観的事項」に該当し、発注者は経営事項審査の結果をもとに評価を行います。
一方の「発注者別評価」は、発注者が独自で行う評価のことです。
発注者別評価では、以下の項目について審査が行われます。
- 工事関連項目(工事成績、技術者数、表彰実績等)
- 社会性関連項目(防災協定、地元雇用等)
発注者は、「客観的事項」と「発注者別評価」を組み合わせて、各事業者をランク付けしていきます。
ランクはA~Dの4種類あり、最も高い評価がAランクです。
ランクが高いほど、大規模な工事の入札に参加することが可能です。
経営事項審査は何のためにあるのか?
公共工事は税金を使って行う工事です。
そのため、国や地方公共団体などの発注者は、安心して公共工事を依頼できる企業を見分ける必要があります。
- 赤字経営で倒産危機
- 工事に必要な資格を持った人材がいない
このような不安要素のある会社に、公共工事を任せることはできません。
こうしたリスクを負わないよう、安心して公共工事を発注するための手段として、経営事項審査があると言えます。
経営事項審査を受けるメリット
経営事項審査を受けるメリットは、主に以下の3つが挙げられます。
- 不況の時でも安定して仕事が獲得できる
- 大規模な工事に参加できる
- 公共工事の実績で信頼が得られる
やはり、不況の時でも仕事を受注できるというのが大きなメリットでしょう。
公共工事は不況の影響を受けにくく、経営事項審査を受けて入札に参加できれば、安定経営の実現を目指すことが可能です。
また、公共工事は大規模な工事にも参加できるため、受注することで実績を積むことができます。
実績を積めばそれだけ信頼が得られるため、金融機関から融資を受けやすくなるなどのメリットがありまます。
経営事項審査の有効期限
経営事項審査は、1度受ければそれで終わりではありません。
経営事項審査には有効期限があり、「経営事項審査の審査基準日から1年7ヶ月の間」とされています。
審査基準日とは、申請をする日の直前の事業年度終了日(直前の決算日)を指します。
実質的な期限は1年、残りの7ヶ月は準備期間
有効期限が1年7ヶ月あると聞くと、なんとなく長く感じるかもしれませんが、継続して入札参加するためには毎年経営事項審査を受ける必要があります。
有効期限を長めに設けている理由は、準備期間を考慮しているからです。
実質的な期限1年に加え、決算日から経営事項審査を受審し、総合評価通知書を受け取るまでに要する期間を残りの7ヶ月で設けているということになります。
空白期間には要注意
7ヶ月も準備期間があれば余裕があると思うかもしれませんが、決算から経営事項審査が完了するまでには半年近く時間がかかります。
そのため、もしも有効期限内に経営事項審査が完了しなければ空白期間が生じてしまいます。
空白期間が生じると、当然ですが公共工事の入札に参加できません。
また、有効期限が切れていることを忘れて入札に参加し、公共工事を受注してしまった場合、指名停止処分という厳しいペナルティを受けてしまうリスクもあるので、注意が必要です。
継続して公共工事を受注するためには、しっかりスケジュールを組んで経営事項審査を受けることが重要です。
経営事項審査の手続き・申請方法
経営事項審査の手続きの流れは以下のとおりです。
- 決算変更届の提出
- 経営状況分析を行う
- 経営事項審査を受ける
なお、経営事項審査を受ける前提として建設業許可は必須となりますので、取得していない方はまず、建設業許可を取得するようにしましょう。
それでは、解説します。
1.決算変更届の提出
まず、決算期が到来したら税務申告及び納税を済ませます。
そして、税務申告書をもとに決算変更届を作成し提出します。
決算変更届は、決算終了後4ヶ月以内に許可行政庁に提出しなければなりません。
たとえば、3月決算の場合であれば7月末日が提出期限となります。
決算変更届は入札参加や経営事項審査に関係なく、建設業許可業者に義務付けられていますので、許可業者は毎年忘れずに提出しましょう。
2.経営状況分析を行う
決算変更届を提出したら、続いて経営状況分析を行います。
経営状況分析は、国土交通大臣の登録を受けた分析機関(民間会社)へ依頼します。
経営状況分析にかかる期間は約1~2週間となります。
3.経営事項審査を受ける
決算変更届の提出と経営状況分析が完了すれば、最後に経営事項審査を受けます。
経営事項審査の申請先は建設業許可を申請した都道府県です。
審査期間は1~2ヶ月ほどで、審査が完了すると「経営事項審査結果通知書」が交付されます。
経営事項審査が完了した後ですが、公共工事の入札に参加するためには「入札参加資格申請」という申請を行わなければなりません。
入札参加資格申請は、入札に参加したい都道府県や市区町村など、自治体ごとに行います。
自治体ごとに入札参加資格申請を行い、資格を取得できれば、公共工事の入札参加が可能となります。
経営事項審査に必要な書類
経営事項審査に必要な書類については、以下のとおりです。
- 建設業許可通知書または許可証明書
- 建設業許可申請書の副本
- 決算変更届出書
- 社会保険被保険者証及び社会保険被保険者標準報酬額決定通知書
- 雇用保険の確認書類
- 確定申告書控一式
これらは、最低限必要となるものであり、提出先によって準備する書類も変わってきます。
ご自身で申請手続きを行う場合、事前にご確認いただく必要があります。
まとめ
経営事項審査は、公共工事の入札に参加するためには必須の審査となります。
公共工事を受注して安定した会社経営を目指す方は、毎年忘れずに経営事項審査を受けましょう。
とはいえ、経営事項審査の手続きは複雑で、書類の収集には膨大な時間と労力がかかります。
やっとの思いで申請しても、書類の不備があれば何度も申請先に足を運ばなければならないなんてことも。
なるべく手間はかけたくない、仕事に集中したいという方は、専門家に相談してみるのもいいかもしれません。
経営事項審査について気になること等ございましたら、ぜひ一度、お気軽にお声掛けください。