この記事でわかること
- 建設業許可の取得に裏ワザが存在しない理由
- 建設業許可を取得するためのコツ
建設業の多くは大臣許可や知事許可が必要となっており、無許可では営業できません。
軽微な建設工事以外であれば、原則として許可の取得が必要です。
しかし、「無許可だが○○の工事はどうしても受注したい」などの事情から、裏ワザで建設業許可を取得できないか?と考えてしまうケースもあるでしょう。
今回は、建設業許可の取得に裏ワザがない理由や許可取得までの期間、無許可だったときの影響などをわかりやすく解説します。
建築業許可を取るための裏ワザが存在しない理由
結論になりますが、建設業許可取得には「裏ワザ」は存在せず、要件を満たす必要があります。
裏ワザがない理由は、次の2つです。
- 虚偽記載は建設業法50条違反となるため
- 許可基準が定められており、全ての申請者にとって平等であるため
それぞれの理由について解説します。
虚偽記載は建設業法50条違反となるため
虚偽記載を禁止する内容が定められた建設業法50条に違反した場合、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処されます。
すなわち、建設業許可を取得したいがために、記載をごまかしたり、でっち上げたりすると、重いペナルティを科されます。
ペナルティは、建設業許可の欠格要件にも該当するため、虚偽記載は建設業許可においてマイナスとなるでしょう。
行政の調査によって、虚偽記載は必ず見抜かれるため「知らなかった」「誤差の範囲内」などの言い訳は通用しません。
許可基準が定められており、全ての申請者にとって平等であるため
行政手続法第五条には、審査基準(ここでは許可基準)の公開について、以下のように規定しています。
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第五条 行政庁は、審査基準を定めるものとする。
2 行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
3 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。
したがって、建設業も許可基準が建設業法にて定められ、基準をクリアした場合に許可が下ります。
この基準は公表されている基準に一律に従っているため、個々の申請者の事象によって基準が緩められたり、免除されたりはしません。
建築業許可を取得する要件
建設業許可を取得する際は、以下の4つの要件を満たす必要があります。
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(1)建設業の経営業務管理を適正に行える者を者を配置すること
(2)専任技術者を配置すること
(3)誠実性があること
(4)欠格要件に該当しないこと
(1)は経営管理者を指しており、経営業務の管理責任者経験が5年以上必要など、いくつかの要件が設定されています。
専任技術者には一定の資格や実務経験が必要になるため、短期間では育成できません。
建設業許可の取得には誠実性も欠かせない要素になっており、建設業許可取消しなどの欠格要件もチェックされます。
建築業許可を取得する裏ワザのようなテクニック
建設業許可を取得するときの裏ワザはありませんが、通過しやすくなるテクニックはあります。ここからは、許可申請の前に押さえておきたい6つのテクニックについて解説します。
注文書がない
建築業許可を申請する際、各種許可要件の証明には資料が必要です。
注文書や工事請負契約書などを探しても見つからないときは、取引先に確認してみましょう。
取引先に当時の書類が残っていれば、注文書や請書のコピー、発注証明書の発行を依頼してください。
行政庁によっては、押印済みの発注証明書と預金通帳のセット提出を認めてくれるケースもあるため、都道府県の建設業課にも相談しておくとよいでしょう。
確定申告書の写しがない
確定申告書の写しがないときは、以下のように対処してください。
- 無申告だった場合は過去分を確定申告する
- 税務署に情報開示請求する
- 税務署に閲覧請求した申告書を転記する
- 顧問税理士に確認する
もともと確定申告していなかったときは、過去分の申告書を作成しましょう。
税務署に情報開示請求して写しを入手する方法や、閲覧請求した申告書を転記する方法もあります。
顧問税理士に確定申告を依頼した場合、事務所に写しが保管されているかもしれません。
以前の建設業許可証がない
以前の建設業許可証がないときは、都道府県の建設業課に相談してください。
経営管理者や専任技術者を証明する場合、以前の建設業許可証や各種変更届の副本を提出しますが、建設業は扱う書類が多いため、紛失しているケースがあります。
都道府県の建設業課に書類がない旨を伝えると、建設業許可証(正本)の写しを交付してもらえる場合があるでしょう。
なお、他の都道府県で建設業許可を取得している場合は、その都道府県の担当部署に相談してください。
業種の記載がない
定款や登記事項証明書(全部事項証明書)に業種の記載がなかった場合、時間に余裕があれば株主総会を開催してください。
株主総会の決議によって定款を変更し、法務局へ変更登記を申請すると、登記事項証明書に業種が記載されます。
時間に余裕がないときは、役所に宣誓書を提出する、または次回分の決算変更届を提出する際に、変更済みの定款と登記事項証明書を提出する方法もあります。
宣誓書には変更後の定款と登記事項証明書を提出する旨を記載しますが、特に決まった様式はありません。
10年の実務期間が足りない
10年以上の実務期間がなく、専任技術者を配置できないときは、以下のどちらかで対処してください。
- 10年経過するまで実務を続ける
- 法人の場合は実務経験者を採用する
専任技術者の要件を満たす人がいない場合、自分で国家資格の技能士などを取得する方法もあります。
試験の難易度は高めですが、自分が有資格者になると、専任技術者の問題は解消されるでしょう。
技能士検定は年2回実施されるため、スケジュールも調整してください。
資本金が500万円以下である
資本金500万円以下で会社を設立したときは、以下の方法で建設業許可を取得できるケースがあります。
- 増資で資本金を500万円以上にする
- 500万円以上の残高証明書を取得する
資本金を500万円以上にする場合、株主総会の特別決議(非上場会社の場合)や、定款・商業登記の変更も必要です。
預金残高が500万円に満たないときは、工事代金が振り込まれた時点で金融機関に残高証明書を請求しておきましょう。
建築業許可に関するよくある質問
ここからは、建設業許可に関するよくある質問を解説します。
建設業許可がないとどうなる?
施工した工事が軽微な工事の範囲を超えていた場合、建設業許可を取得していなければ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金になる可能性があります。
罰金刑の処分が下されると「欠格要件」に該当するため、今後5年間は建設業許可を取得できません。
無許可の建設業者は社会的信用度が低くなり、公共工事の入札にも参加できないため、業務の範囲が限定されます。
建設業許可を取得していない場合、現場に入れないケースもあるでしょう。
建設業許可を取るまでの期間はどれくらい?
建設業許可を申請すると、概ね2.5カ月で取得できます。
一般的なスケジュールは以下のようになります。
- 建設業許可の申請準備:1~1.5カ月程度
- 行政庁の処理期間:標準的な処理期間が1カ月程度
行政庁の処理期間は短縮できませんが、申請準備はスケジュールを調整しやすいため、半月程度で必要書類を準備できる可能性があります。
行政書士に必要書類の収集・作成などを依頼すると、1.5カ月程度で建設業許可を取得できるケースもあるでしょう。
建設業許可がなくてもできる工事はある?
建設業許可がなくても、軽微な工事は問題なく施工できます。
軽微な工事は「完成を請け負わない工事」や「建設工事ではない作業」を指しており、具体的には以下のような工事です。
- 工事1件の請負代金が500万円に満たない工事
- 工事1件の請負代金が1,500万円に満たない工事、または延床面積が150㎡に満たない木造住宅工事
800万円の工事を400万円ずつに分けて2回請け負った場合、基本的に請負代金800万円の工事になるため注意してください。
まとめ
建設業許可の取得には裏ワザがないため、実務経験を地道に積み上げ、資格も取得する必要があります。
有資格者の採用によって専任技術者の要件を満たせる場合もありますが、人材確保はハードルが高いため、実務経験を積み上げた方が近道になるでしょう。
建設業許可を取得すると、受注可能な工事が増えるため、会社を大きく成長させる足がかりになります。
少しでも早く建設業許可を取得したいときは、ベンチャーサポート行政書士法人の無料相談をご活用ください。