この記事でわかること
- 機械器具設置工事業についてわかる
- 他の工事業との区別ができる
- 機械器具設置工事業で一般建設業許可を取得する要件がわかる
- 機械器具設置工事業で特定建設業許可を取得する要件
機械器具設置工事は、機械器具を組み立てること全般と思われがちです。
実際の建設業許可の審査において「機械器具置工事」に該当するか否かの判断はそう簡単なものではなく、電気工事などの「他の専門工事」であると判定されてしまう恐れがあります。
建設業許可では実務経験の証明が必要となるケースが多々あり、そこで「他の専門工事」の実務経験と判断されてしまうと審査がそこで止まってしまいます。
そうならないためには、機械器具設置工事の定義づけについて、具体的に理解しておくことが重要です。
ここでは「機械器具設置工事」の内容と、「他の専門工事」との違いや許可申請の要件について詳しく解説します。
機械器具設置工事業とは
機械器具設置工事は「機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取り付ける工事」と定義されています。
次に、機械器具設置工事の内容と工事の代表例について解説します。
機械器具設置工事の内容
機械器具設置工事は、その名の通り、機械器具の設置工事のことをいいます。
種類によっては他の専門工事である「電気工事」「管工事」「電気通信工事」「消防施設工事」などと重複するものがあり、重複する工事は「他の専門工事」として分類されます。
「他の専門工事」に該当しない機械器具・複合的な機械器具の設置が「機械器具設置工事」です。
このように、組立て等を要する機械器具の設置工事のみが該当します。
機械器具設置工事の代表例
機械器具設置工事に該当する工事として、以下のものが挙げられます。
- プラント設備工事
- 運搬機器設置工事
- 内燃力発電設備工事(ガスタービンなど)
- 集塵機器設置工事
- トンネル・地下道等の給排気機器設置工事
- 揚排水機器設置工事
- ダム用仮設備工事
- 遊技施設設置工事
- 舞台装置設置工事
- サイロ設置工事
- 立体駐車設備工事
機械器具設置工事に該当する工事は、他の工事業種のいずれにも該当しない工事であり、建設現場で機械器具を組み立て工作物を建設し、工作物に機械器具を取り付ける工事ということになります。
機械器具設置工事業と他の業種との違い
機械器具設置工事は、以下の3つの条件が揃うことが必要です。
- 「現場で組み立て・取り付けをする」
ただ運んで大型機械を設置するだけでは「機械器具設置工事」に該当しません。 - 「単体では使用することができないもの」
現場で組み立てる大型機械あっても、単体で使用することができるものは「機械器具設置工事」に該当しません。 - 「その他の専門工事に該当しない工事」
他の建設業の工事に該当するものは「機械器具設置工事」に該当しません。
この3条件を踏まえて、判別しにくい工事を以下にピックアップしました。
機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置は「とび・土工工事業」
機械器具の設置は、建設現場での組み立て等が不要な場合、機械器具設置工事とは見なされません。
既製の機械器具の運搬や搬入自体は建設工事ではなく、ボルトやアンカーによる設置工事は「とび・土工工事」に分類されます。
建設業の種類 | 内容 | 例示 |
---|---|---|
機械器具設置工事業 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取り付ける工事 ※組立て等を要する機械器具の設置工事のみ。 ※他工事業種と重複する種類のものは、原則として、その専門工事に分類される。 |
プラント設備工事、運搬機器設置工事(昇降機設置工事を含む)、内燃力発電設備工事(ガスタービンなど)、集塵機器設置工事、トンネル・地下道等の給排気機器設置工事、揚排水機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設備工事 |
とび・土工工事業 | ……機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置…… | ……重量物の揚重運搬配置工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事…… |
参照元:建設業許可(申請 変更)の手引(3〜4ページ)(東京都)
他の工事業種(とび・土工工事)と重複する建設工事の場合は、機械器具設置工事業に該当しません。
したがって、設置を含め、建設現場で複数のものを組み立てて連動させることが必要です。
建築物の中に設置される通常の空調機器の設置工事は「管工事」
トンネルや地下道などに設置される給排気用の機械機器の工事は、機械機器設置工事として分類されます。
一方、建築物内に設置される一般的な空調機器の工事は、管工事に分類されます。
建設業の種類 | 内容 | 例示 |
---|---|---|
機械器具設置工事業 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取り付ける工事 ※組立て等を要する機械器具の設置工事のみ。 ※他工事業種と重複する種類のものは、原則として、その専門工事に分類される。 |
プラント設備工事、運搬機器設置工事(昇降機設置工事を含む)、内燃力発電設備工事(ガスタービンなど)、集塵機器設置工事、トンネル・地下道等の給排気機器設置工事、揚排水機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設備工事 |
管工事業 | 冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 | 冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、ガス管配管工事、ダクト工事 |
参照元:建設業許可(申請 変更)の手引(3〜4ページ)(東京都)
公害防止施設を単体で設置する工事について
公害防止施設の場合は「清掃施設工事業」と思われがちですが、以下のように分類されます。
- 排水処理設備で:管工事
- 集塵設備機械器具設置工事
建設業の種類 | 内容 | 例示 |
---|---|---|
機械器具設置工事業 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取り付ける工事※組立て等を要する機械器具の設置工事のみ。※他工事業種と重複する種類のものは、原則として、その専門工事に分類される。 | プラント設備工事、運搬機器設置工事(昇降機設置工事を含む)、内燃力発電設備工事(ガスタービンなど)、集塵機器設置工事、トンネル・地下道等の給排気機器設置工事、揚排水機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設備工事 |
管工事業 | 冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 | 冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、ガス管配管工事、ダクト工事 |
清掃施設工事業 | し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事 | ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事 |
参照元:建設業許可(申請 変更)の手引(3〜4ページ)(東京都)
他の工事業に当てはまるものは「機械器具設置工事業」に該当しない
機械器具設置工事と電気工事、電気通信工事とは、密接に関連しています。
では、電気工事、電気通信工事に該当する工事はどの工事に該当しているのかを確認しておきましょう。
建設業の種類 | 内容 | 例示 |
---|---|---|
機械器具設置工事業 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取り付ける工事※組立て等を要する機械器具の設置工事のみ。※他工事業種と重複する種類のものは、原則として、その専門工事に分類される。 | プラント設備工事、運搬機器設置工事(昇降機設置工事を含む)、内燃力発電設備工事(ガスタービンなど)、集塵機器設置工事、トンネル・地下道等の給排気機器設置工事、揚排水機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設備工事 |
電気工事業 | 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 | 発電設備工事、太陽光発電設備の設置工事(『屋根工事』以外のもの) |
電気通信工事業 | 有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事 | 電気通信線路設備工事、電気通信機械設置工事、放送機械設置工事、空中線設備工事、データ通信設備工事、情報制御設備工事、TV電波障害防除設備工事 |
参照元:建設業許可(申請 変更)の手引(3〜4ページ)(東京都)
機械器具設置工事業で一般建設業許可を取得する要件
建設業許可を取得するためには、以下の6要件が必要です。
提出書類の中では、実務経験が重要です。
実務経験を証明するためにも、過去の実務経験が機械器具設置工事であったのかどうかの見極めが必要になってきます。
経営業務の管理責任者
常勤役員等のうち、一人が次のいずれかに該当する必要があります。
役員経験で要件を満たす場合と、補佐者を置いて要件を満たす場合の2通りがあります。
建設業での役員経験
建設業の業種に関わらず、役員経験5年です。
建設業の役員に準ずる経験は6年、建設業の業種は関係ありません。
経営業務管理責任者+補佐者
- 建設業で役員等に次ぐ地位での経験と建設業の役員2年以上の経験を合計して5年以上の場合
- 建設業以外の役員経験と建設業の役員を2年以上の経験を合計して5年以上の場合
なお、補佐者は、建設業の財務管理・労務管理・業務運営における5年以上の経験者で、それぞれを置くとしています。
専任技術者
選任技術者に関して、これまでは以下の5要件に限られていました。
- 大学(短期大学を含む)・高等専門学校の「建築学」「電気工学」「機械工学」に関する学科卒業後又は専門職大学の前期課程の学科修了後3年以上の実務経験
- 高等学校・中等教育学校の「建築学」「電気工学」「機械工学」に関する学科卒業後5年以上の実務経験
- 機械総合技術監理(機械)
- 機械「流体機器」又は「熱・動力エネルギー機器」総合技術監理( 機械「流体機器」又は「熱・動力エネルギー 機器」)
- 機械器具設置工事に関する10年以上の実務経験
しかし令和5年7月1日から、下記要件が追加されています。
- 一級建築施工管理技士
- 一級建築施工管理技士補
- 二級建築施工管理技士(建築)
- 二級建築施工管理技士(躯体)
- 二級建築施工管理技士(仕上げ)
- 二級建築施工管理技士補
- 一級電気工事施工管理技士
- 一級電気工事施工管理技士補
- 二級電気工事施工管理技士
- 二級電気工事施工管理技士補
- 一級管工事施工管理技士
- 一級管工事施工管理技士補
- 二級管工事施工管理技士
- 二級管工事施工管理技士補
※1級は3年、2級は5年の実務経験が必要です。
財産的基礎
以下のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本の額が500万円以上あること
- 法人の場合、申請直前の決算で貸借対照表上の純資産の合計額が500万円以上あることが必要です。
- 個人事業主の場合は、下記の計算式になります。
- 「自己資本」=(期首資本金+事業主借勘定+事業主利益)-事業主貸勘定+利益留保性の引当金・準備金
- 500万円以上の資金調達能力があること
- 申請者名義(法人である場合は当該法人名義)の口座における取引金融機関発行の500万円以上の預金残高証明書又は融資証明書が必要です。
- 証明日が許可申請受付日から1か月以内のものを提出します。
誠実性
次の事項に該当しないことが要件です。
- 不正な行為
- 請負契約の締結又は履行の際の詐欺、脅迫、横領等法律に違反する行為
- 不誠実な行為
- 工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等請負契約に違反する行為
欠格要件
欠格要件では、虚偽記載がないことや下記の14項目に該当しないことが求められます。
- 許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合
- 下記のいずれかに該当する場合
- 1.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 2.一般建設業の許可又は特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない
- 3.一般建設業の許可又は特定建設業の許可の取消しの処分に係る聴聞通知を受け取った後、廃業の届出をした場合に届出から5年を経過しないもの
- 4.聴聞通知を受け取った日から取消処分がされた日(取消処分をしないことの決定がされた日)までの間に廃業の届出をした場合、聴聞通知を受け取った日から遡って60日前までの間に当該廃業届出をした法人の役員等若しくは政令使用人であった者(個人事業主の政令使用人を含む。)で、廃業届出の日から5年を経過しないもの
- 5.建設業法第28条第3項又は第5項の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
- 6.建設業法第29条の4の規定により営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
- 7.禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 8.建設業法等に違反したこと又は刑法の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 9.暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 10.心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの
- 11.未成年者の法定代理人が建設業法第8条各号のいずれかに該当するもの
- 12.法人の役員等又は政令で定める使用人のうちに、建設業法第⑧条第1号から第4号まで又は第6号から第10号までのいずれかに該当する者のあるもの
- 13.政令で定める使用人のうちに、建設業法第8条第1号から第4号まで又は第6号から第10号までのいずれかに該当する者のあるもの
- 14.暴力団員等がその事業活動を支配する者
欠格要件に該当しない旨を「誓約書」で提出します。
社会保険への加入
令和2年10月1日から、適切な社会保険の加入が建設業許可の要件となっています。
機械器具設置工事業で特定建設業許可を取得する要件
特定建設業は、下請負人の保護などのために設けられた制度です。
4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)を下請けに出す場合は、特定建設業者の免許が必要です。
「専任技術者」と「財産的基礎」の要件が、一般建設業とは異なります。
専任技術者
特定建設業の許可を受ける場合、専任技術者は所定の「国家資格」又は「指導監督的な実務経験」を有する必要があります。
特定建設業の専任技術者は、「国家資格」又は「指導監督的な実務経験」を有することが必要 | |
---|---|
国家資格 | 指導監督的な実務経験 |
機械総合技術監理(機械) | 建設工事の設計又は施工の全般について、元請として工事現場主任又は工事現場監督のような立場で工事の技術面を総合的に指導した経験 2年間の実務証明または監理技術者資格者証を提出 |
機械「流体機器」 | |
機械「熱・動力エネルギー機器」 | |
総合技術監理 (機械「流体機器」) |
|
総合技術監理 (「熱・動力エネルギー機器」) |
財産的基礎
次の全ての要件に該当することが要件になります。
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金の額が2,000万円以上あること
- 自己資本の額が4,000万円以上あること
【特定建設業の財産的基礎要件計算式】
要件 | 法人 | 個人 | |
---|---|---|---|
欠損比率 | 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと | 欠損の額=繰越利益剰余金の負の額-(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く。)) | 欠損の額=事業主損失-(事業主借勘定-事業主貸勘定+利益留保性の引当金+準備金) |
(欠損の額/資本金)×100≦20% | (欠損の額/期首資本金)×100≦20% | ||
流動比率 | 流動比率が75%以上であること | (流動資産合計÷流動負債合計)×100≧75% | |
資本金額 | 資本金の額が2,000万円以上あること | 資本金≧2,000万円 | 期首資本金 ≧2,000万円 |
自己資本 | 自己資本の額が 4,000万円以上あること |
純資産合計≧4,000万円 | (期首資本金+事業主借勘定+事業主利益)-事業主貸勘定+利益留保性の引当金+準備金≧4,000万円 |
参照元:建設業許可(申請 変更)の手引(9ページ)(東京都)
まとめ
械器具設置工事業は、設置や電気、配管等、他の専門工事と重なるところがあり、重なる工事が他の専門工事に該当すれば械器具設置工事業として判定されなくなります。
それだけに、実務経験として証明書類を提出するには、他の工事に該当していないかを精査していく必要があります。
令和5年7月から専任技術者の要件が緩和されましたが、実務経験は必要であるため、早めの準備が大切です。