この記事でわかること
- 建設業の決算変更届とはどのような書類かを知ることができる
- 決算変更届の提出期限や出さなかった場合のペナルティがわかる
- 決算変更届の作成方法や自分で作成する場合の注意点がわかる
建設業許可を取得すると、それまで行うことができなかった規模の工事を受注することができるようになり、仕事の幅が広がります。
その一方で、建設業許可を取得・更新する際には様々な手続きが必要となります。
決算変更届も、そのような手続きの1つとして定められているものです。
どのような書類を作成しなければならないのか、そして自分で作成することができるのか、解説していきます。
- 目次
- 決算変更届とは
- 決算変更届の提出期限
- 決算変更届を出さないとどうなる?
- 決算変更届の書き方・必要書類
- 決算変更届の作成を行政書士に依頼したときの報酬相場
- 決算変更届を自分で作成するときの注意点
- まとめ
決算変更届とは
決算変更届とは、建設業許可を取得している事業者が、毎年監督官庁に提出することが義務づけられている書類です。
決算変更届には1年間の決算の内容や、この1年間に行った工事の内容を記載することとされています。
なお、決算変更届という名称になっていますが、報告事項に変更があった場合に提出するものではありません。
都道府県によっては、決算報告書や年次報告書といった名称となっている場合もあります。
あくまでも、決算を行ったら必ず提出しなければならないものであることは覚えておきましょう。
決算変更届の提出期限
決算変更届には、この1年間の決算の結果を記載しなければなりません。
そのため、決算を終えてから書類の作成を行うこととされています。
決算変更届の提出期限は、事業年度終了の日から4か月以内とされています。
なお、事業年度が終了すると、決算変更届の作成以外に税務署に提出する申告書の作成もしなければなりません。
税額を計算して納税し申告書を提出するのは、事業年度終了の日から2~3か月とされています。
そのため、申告書を提出してから考えると、決算変更届の作成は1~2か月しかないこととなります。
決算変更届を出さないとどうなる?
決算変更届を毎年提出しなければならないこととされていますが、もしその提出を忘れてしまった場合どうなるのでしょうか。
決算変更届の提出が必要ないと思っていた、あるいは忙しくて提出を失念してしまった場合、どうなるのか解説します。
建設業許可の更新や業種の追加ができない
取得した建設業許可は、その有効期間が5年間とされています。
そのため、有効期間が満了する30日前までに、更新の申請を行う必要があります。
ところが、毎年の決算変更届が出されていなければ、建設業許可の更新を受け付けてもらうことができません。
また、建設業者の中には取引上の必要があるために、他の建設業許可を取得しなければならない場合もあります。
しかし、決算変更届を提出していなければ、業種の追加を行う申請は受理されません。
これらを行うためには、過去にさかのぼって決算変更届を作成しなおす必要があります。
しかし、決算が終わった直後とは違って、何年も前の資料を集める必要があり、すぐにできるわけではありません。
その結果、建設業許可が失効してしまったり、建設業許可の追加を断念したりということも考えられます。
自社の業績を証明することができない
決算変更届を提出すると、その書類に記載された業務の状況を第三者が閲覧することができます。
そのため、継続的に取引がある業者が取引先の状況を確認するために閲覧しているかもしれません。
また、新たに取引を開始しようとする事業者が、相手の状況を知るために閲覧しようとするかもしれません。
この時、決算変更届を提出していなければ、その状況を知ることができないこととなります。
決算変更届を提出していないということは、相手に対してマイナスイメージとなることはいうまでもありません。
信用は大きく失墜し、場合によっては取引停止、新規発注の停止といったことも考えられるのです。
建設工事を確実に行ったという証明ができない
建設業許可を取得しているだけでなく、実際にその業種の工事を行っていることを、決算変更届で証明することができます。
公的な機関に提出した書類自体、社会的な信用の高い書類といえるため、工事の実績を証明するには最適です。
一方、決算変更届を提出していなければ、公的にその事業者がどのような工事をどれくらい行ったのかを証明する書類はありません。
この場合、過去にどのような工事を行ったのかを証明することは簡単ではなく、非常に手間がかかるのです。
決算変更届の書き方・必要書類
決算変更届の重要性がわかったところで、どのような書類が必要なのか確認していきましょう。
必ず提出しなければならない書類一覧
まずは決算変更届の書類一式の記載・作成方法についてひとつずつ解説していきます。
決算変更届
変更届出書や事業年度終了届などと呼ばれることもある書類で、その名称は地域により異なります。
事業年度終了から4か月以内に提出する書類の、もっとも基本になる書類です。
工事経歴書
建設業許可を取得している業種の工事に実績に関する情報を記載します。
申請書類を提出する事業年度の前事業年度に完成させた工事や、前事業年度に請け負った未完成の工事を記載します。
元請・下請の別に関係なく、請負金額の大きい工事から順に記載するのが基本となります。
完成工事についてすべて記載したら、未完成工事についても請負金額の大きいものから順に記載します。
記載すべき工事の件数については、各都道府県で決まりがあります。
金額上位10か所といったものもあれば、すべての工事の請負代金の70%に達するまでというものもあります。
直前3年の各事業年度における工事施工金額
建設業者の、直近3年の各事業年度に発生した完成工事の施工金額を記載する書類です。
建設業許可の種類ごとに、元請工事と下請工事を区分して合計金額を記載していきます。
また元請工事については、公共工事と民間工事を区分しなければなりません。
財務諸表(貸借対照表、損益計算書・完成工事原価報告書、株主資本等変動計算書、注記表、付属明細表)
財務諸表は、決算を行った際に作成する決算書と基本的には同じものです。
ただ、建設業法に沿った形に一部作り直す必要があるため、決算書をそのまま使えばいいというわけではありません。
事業報告書
決算を行った際に作成する決算書の中に、事業報告書は通常含まれていません。
そのため、決算変更届を提出する際には事業報告書を新たに作成する必要があります。
会社の概況や直近の事業年度における変化、財務状況などを記載していきます。
納税証明書
事業者が税金をきちんと納めていることを証明するための書類です。
未納の税金がある場合は、決算変更届が受理されないこともあります。
変更があった場合のみ必要な書類一覧
ここからは、変更があった場合のみ提出が必要な書類を解説します。
使用人数
営業所ごとに、建設業に関わる技術者の人数や事務を行う人の人数を記載します。
新たに雇用した場合や退職者がいる場合に提出します。
建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表
支店、あるいは従たる営業所がある場合に必要となる書類です。
「建設業法施行令第3条に規定する使用人」とは、従たる営業所に配置された一定の権限を持つ使用人のことです。
この人に変更がある場合のみ、提出しなければなりません。
定款
定款に変更があった場合、変更後の定款を提出します。
決算変更届の作成を行政書士に依頼したときの報酬相場
決算変更届の作成は、毎年欠かさず行わなければなりません。
本業を行いながら決算と決算変更届の作業を立て続けに行う必要があるため、すべてを自分で行うことができないかもしれません。
そこで、決算変更届の作成を行政書士に依頼しようと考える場合があるでしょう。
もちろん、高い報酬を支払えばすべての作業を専門家に任せることもできます。
しかし、できることは自分で行い、難しい部分だけを専門家に依頼すれば、より効率的に決算変更届を提出することができます。
決算変更届に関する書類の作成を行政書士に依頼し、役所への提出を自分で行うこととした場合、税込11,000円程度から依頼可能です。
この価格で、書類の作成を依頼することができるため、大変に効率的ということができます。
決算変更届を自分で作成するときの注意点
決算変更届を自分で作成することももちろん可能です。
報酬を支払う必要もなく、空いた時間をうまく使いながら作業を進めれば、事業年度終了から4か月以内に提出できます。
ただ、この場合注意しなければならない点がいくつかあります。
最後に、その注意点について確認しておきましょう。
提出期限は必ず守る
決算変更届は、毎年必ず提出しなければならないと定められています。
中には、建設業許可の更新期限である5年ごとにまとめて提出すれば問題ないと考える人もいるかもしれません。
しかし、決算変更届の提出を怠った事業者には、懲役刑や罰金といった罰則規定が設けられています。
いきなり罰則が科されることは考えにくいのですが、罰則を受けるかもしれないようなことは避けておく方が安心です。
工事経歴書の作成方法に気を付ける
工事経歴書は、閲覧した相手に事業者としての実績をアピールすることができる書類です。
しかし、作成方法がいい加減になってしまうと、会社の実績を正しくアピールすることができません。
業種の振り分けは正しく行い、技術者の配置をきちんと行っていることを正しく記載するようにしましょう。
特定建設業者の財産要件に注意する
特定建設業者は、一般建設業者より厳しい財産要件をクリアしなければなりません。
そして、決算変更届を提出する度に、その要件をクリアしていることを確認する必要があります。
仮に財産要件をクリアできない可能性がある場合には、財産要件を満たすように増資を行うなどの対策が必要です。
もし特定建設業者の要件を満たすことができなくなった場合は、一般建設業者としての建設業許可を取得し直すこととなります。
まとめ
決算変更届という名前からすると、事業者に何らかの変更があった場合にのみ、書類を作成すればいいように思う方もおられるでしょう。
しかし、実際は毎年、決算を終えたら決算変更届などの書類の提出を行う必要があります。
仮に決算変更届の提出を忘れてしまうと、今回述べてきたようにその悪影響は多大なものとなります。
専門家の知恵や力を借りるなどして、必ず書類の提出を忘れないようにしましょう。