この記事でわかること
- 建設業許可に必要な実務経験証明証の概要
- 実務経験の証明に必要な書類
- 建設業許可の実務経験証明書の書き方
- 建設業の実務経験を数えるポイント
- 建設業許可の実務経験証明書を自分で作成できるか
建設業許可を取得する場合、経営業務の管理責任者や、専任技術者の設置が必要です。
専任技術者には一定年数以上の実務経験などが求められるため、実務経験証明書を提出して行政庁に証明しなければなりません。
実務経験証明書の様式はシンプルですが、経験年数のカウントを間違えやすいため注意が必要です。
工事実績なども証明する必要があるため、実務経験証明書の添付書類も理解しておくとよいでしょう。
本記事では、実務経験証明書のテンプレートをもとに、具体的な書き方や実務経験のカウント方法などをわかりやすく解説します。
建設業許可に必要な実務経験証明証とは
建設業許可における実務経験証明書とは、専任技術者の実務経験や経験年数などを証明する書類です。
専任技術者の設置は建設業許可の取得要件になっており、一定年数以上の実務経験や、技術資格が必要です。
複数の営業所がある場合は、各営業所に専任技術者を設置する必要があり、常勤していなければ建設業許可を取得できません。
実務経験証明書も建設業許可には欠かせないため、提出が必要となるタイミングや、専任技術者の要件は以下を参考にしてください。
実務経験証明書が必要なタイミング
実務経験証明書が必要になるタイミングは、新規で建設業許可を取得するときや、許可を取得している専任技術者を変更するときです。
新たに専任技術者となる人が、「一般建設業の専任技術者と認められる技術資格」を取得している場合は、実務経験証明書の提出は不要です。
専任技術者になるための要件
建設業の専任技術者になる場合、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
-
(1)10年以上の実務経験があること
(2)高等学校または中等教育学校の指定学科を卒業後、5年以上の実務経験があること
(3)大学または高等専門学校の指定学科を卒業後、3年以上の実務経験があること
(4)一般建設業の専任技術者と認められる技術資格を有していること
専任技術者が(1)~(3)の要件を満たす場合は、許可行政庁に実務経験証明書を提出し、実務経験を証明しなければなりません。
指定学科は建設業の種類によって異なるため、詳細は国土交通省のホームページで確認してください。
指定学科一覧(国土交通省)
実務経験の証明に必要な書類
実務経験証明書を許可行政庁に提出する際は、専任技術者の実務経験を証明できる書類が必要です。
具体的な証明書類には以下の種類があり、勤め先の建設会社でコピーをもらえますが、個人事業主の場合は自分で準備します。
工事実績の証明書類
専任技術者の実務経験を証明する場合、建設業許可の対象となる工事について、指揮・監督や施工に従事したことがわかる書類が必要です。
建設業許可の有無で準備する書類が変わるため、以下を参考にしてください。
【すでに専任技術者として証明されている場合】
- 建設業許可申請書または専任技術者変更届のコピー
【証明者が建設業許可を受けていた事業者の場合】
- 建設業許可申請書のコピー
- 建設業許可通知書のコピー
- 決算変更届のコピー
- 廃業届のコピー
【証明者が建設業許可を受けていない事業者の場合】
- 工事請負契約書のコピー
- 請求書のコピー
- 注文書のコピー
- 預金通帳のコピー(請負工事代金の入金確認用)
なお、工事実績の証明書類が自治体ごとに異なるケースがあるため、各都道府県の建設業課などにも確認しておきましょう。
証明期間中の常勤がわかる書類
専任技術者には「常勤」の要件があるため、以下の書類で証明します。
【建設会社に勤務していた場合】
- 保険証のコピー
- 健康保険や厚生年金被保険者に関する標準報酬決定通知書
- 健康保険組合などの資格証明書
- 住民税特別徴収税額通知書
- 年金の被保険者記録照会回答票
- 直近の法人用確定申告書のコピー
- 証明者の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)
【個人事業主の場合】
- 保険証のコピー
- 所得税確定申告書の写し(証明する期間分)
- 証明者の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)
以前勤めていた建設会社が廃業しており、証明書類を入手できないときは、何が代替書類になるのか許可行政庁に相談してください。
建設業許可の実務経験証明書の書き方
建設業許可の実務経験証明書が必要なときは、各都道府県のホームページからダウンロードしてください。
「都道府県名+実務経験証明書」のキーワードでネット検索すると、建設業許可用の様式が表示されます。
ファイルはエクセル形式になっており、国土交通省のホームページでテンプレートをダウンロードすると、各項目の書き方もわかります。
では、証明者や実務経験などの書き方をみていきましょう。
実務経験証明書のテンプレート(国土交通省)
建設業許可の実務経験証明書のテンプレート
建設業許可の実務経験証明書を作成するときは、国土交通省が公開しているテンプレートで書き方を確認しておきましょう。
実務経験が多く、記入欄が足りないときは証明書を複数枚にしても構いません。
エクセルファイルをプリンターで印刷するときは、必ずA4サイズにしてください。
証明者や実務経験などの書き方
建設業許可の実務経験証明書を作成する場合、各項目の書き方は以下のようになります。
余白に建設業許可番号などを記入する場合もあるため、漏れがないように注意してください。
実務経験の証明欄
実務経験の証明欄については、実績のある工事をすべて記入してください。
たとえば、左官工事業と大工工事業の実務経験を証明する場合、証明欄の書き方は以下のようになります。
- 証明欄の記載例:下記の者は、左官工事業、大工工事業に関し、下記のとおり実務の経験を有することに相違ないことを証明します。
申請者以外の法人が証明するときは、証明欄の下部に建設業の許可番号や許可年月日、許可業種を記入しておきましょう。
日付
実務経験証明書の日付には、建設業許可の申請日を記入します。
作成段階では空欄にしておき、申請日に日付を記入してください。
証明者の欄
証明者の欄には、実務経験を積んでいたときの事業者名と代表者名を記入してください。
原則的には使用者が証明者となるため、技術者本人は記入できません。
すでに事業者が廃業している場合は技術者が証明者欄を記入しても構いませんが、「使用者の証明を得ることができない場合はその理由」にも記入が必要です。
使用者の証明を得られないときは「倒産」や「廃業」などの理由を記入し、事業の閉鎖がわかるように登記事項証明書を添付しておきましょう。
被証明者との関係
被証明者との関係は証明者からみた専任技術者になるため、役員や社員、元従業員などを記入します。
技術者の氏名と生年月日
技術者の氏名と生年月日については、専任技術者の設置を証明する「専任技術者証明書」と同一内容を記入してください。
使用者の商号または名称
使用者の商号または名称は実務経験を積んだ事業所や、個人事業主の屋号を記入してます。
事業所の商号が変更されている場合は、勤務していた当時の商号を記入してください。
使用された期間
使用された期間は「雇用されていた期間」になるため、実務経験の積み上げ期間のみ記入しないように注意しましょう。
職名
職名には工事主任や工事係長などの名称を記入します。
専任技術者となる人が法人の代表だった場合は、代表取締役と記入してください。
実務経験の内容
実務経験の内容には具体的な工事名を記入しますが、使用期間中に現場監督技術者、または設計技術者や見習いとして携わった工事のみとなります。
工事名は1行に1件を記入し、雑務のみとなる工事は含めないように注意してください。
実務経験年数と合計
実務経験年数は工事に携わった年数を記入します。
工事と工事の間が12カ月以上空いていなければ、実務経験が連続しているものとみなされます。
下部の合計欄を記入するときは、実務経験年数の合計が10年以上になるか確認してください。
建設業の実務経験を数えるポイント
建設業許可を申請する場合、専任技術者の実務経験は10年以上が要件となっています。
経験年数の考え方を間違えると許可申請が認められないため、実務経験が10年以上かどうかをカウントするときは、以下のポイントをよく理解しておきましょう。
実務経験のカウントは1業種のみ
実務経験証明書を作成する際、実務経験年数は1業種しかカウントできません。
たとえば、とび・土工工事業で10年間の実務経験を証明する場合、左官工事業などの経験年数はカウントできないため注意が必要です。
実務経験証明書の経験年数は1年単位になっており、複数の事業所で実務経験を積んだときは通算できますが、12カ月未満の空白期間はカウントの対象外です。
たとえば、工事と工事の間に3カ月の空白期間がある場合、実務経験の期間を9カ月として数えなければなりません。
また、実務経験の期間を正確にカウントしても、裏付け資料がなければ建設業許可が下りないため注意が必要です。
常勤で働いていた期間以外は実務経験に含められない
建設業の許可申請は専任技術者の「常勤」が要件となるため、日雇いやアルバイトで働いていた期間は実務経験に含められません。
実務経験年数のカウントは現場監督技術者や設計技術者、職人や見習いとして働いていた期間のみとなります。
建設業許可の実務経験証明書は自分で作成できる?
建設業許可の実務経験証明書は経験年数を正確にカウントする必要があり、証明資料もすべて揃えなくてはなりません。
事業者によっては契約書や注文書を取り交わしておらず、代替書類を準備するケースもあるため、作成時にはハードルの高さを感じてしまうでしょう。
10年分の証明資料を漏れなく揃える場合、実務経験証明書の作成準備だけでも数カ月かかってしまう可能性があります。
建設業許可の申請が遅れると、大型案件などの受注を逃す恐れもあるため、実務経験証明書の作成に対応できないときは行政書士に相談することをおすすめします。
許認可申請は行政書士の専門分野になっており、書類の収集・作成から提出までワンストップで対応してくれます。
証明資料の有効性や経験年数もチェックしてくれるため、実務経験証明書の作成ミスや書類の添付漏れも防止できるでしょう。
まとめ
建設業許可を申請するときは、まず専任技術者に10年以上の実務経験があるかどうか、資料をもとに確認してください。
実務経験証明書の作成時に常勤ではなかった期間を含めると、経験年数のカウントを間違えるため注意が必要です。
また、建設業の許可には様々な要件も満たさなければなりません。
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