この記事でわかること
- 建設業許可事務ガイドラインの概要
- 建設業許可事務ガイドラインのポイント
建設業を営んでいる方で、建設業許可の取得を検討している方は多いでしょう。
とはいえ、どこから手をつけて良いか悩んでいる方も少なくありません。
建設業許可を取得する際には、まず建設業許可事務ガイドラインや建築業法について確認しましょう。
建設業許可事務ガイドラインは、建設業許可を取るための手続きをまとめた要項です。
建設業法の各条文には建設業許可を取るためのポイントがまとめられており、手続きを行う際は内容の把握が重要です。
この記事では、建設業許可事務ガイドラインで押さえておきたいポイントを詳しく解説します。
建設業許可事務ガイドラインについて
建設業許可事務ガイドラインとは、建設業許可を取得する際の事務手続きについてまとめられた書類です。
建設業許可を取得するには、いくつかの要件を満たさなければなりませんが、内容を理解しにくい箇所もあります。
そこで、国土交通省が建設業許可を取得しようとする事業者のために、建設業許可事務ガイドラインを作成し、要件をわかりやすく解説しました。
建設業許可事務ガイドラインには、建設業許可の申請が行われた場合に、その許可・不許可を判断する際の基準が書かれています。
建設業法の条文の順に、用語の解説や判断基準が明らかにされています。
ただ、すべての事例に該当する内容が網羅されているわけではありません。
建設業許可ガイドラインに掲載されていない場合は、個々の申請に応じた個別判断が必要になります。
建設業法の改正内容とは
建設業法の改正内容は、以下の通りです。
- 管理責任者の要件が変更
- 事業許認可手続き制度の新設
- 専任技術者のテレワーク可能に
それぞれの改正内容について詳しく解説します。
管理責任者の要件が変更
1つ目の改正点は、経営業務の管理責任者の要件です。
建設業許可を取るには、経営業務の管理責任者を常勤として設置が求められます。
改正前は、許可を受けようとする建設業において経営業務の管理責任者の経験が5年以上ある状態が求められていました。
しかしこの要件は廃止され、代わりに「建設業に関わる経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する」点が必要となりました。
具体的には、この能力を有していると判断されるには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
- ①適正な経営能力を有する
- ②社会保険に適切に加入している
また、この2つを満たしていると証明するための書類を提出する必要があります。
事業許認可手続き制度の新設
2つ目が、合併や事業譲渡、相続による事業承継の許認可手続き制度が新設された点です。
これまでは、事業承継があっても建設業許可を引き継げませんでした。
例えば、建設業を営む法人を事業譲渡により引き継ぐ場合、新たに申請して許可を得る必要があった訳です。
そのため、審査期間中に建設業の営業ができない、要件を満たさず不許可になるなどのケースがありました。
今回の建設業法の改正によって、合併や事業譲渡や相続などの事業承継において、建設業許可の引き継ぎが可能となりました。
建設業許可を引き継ぐ際も別途申請が必要となり、承継方法によって方法が異なるため注意しましょう。
専任技術者のテレワーク可能に
3つ目が、専任技術者のテレワークが可能となった点です。
建設業法では、営業所ごとに専任技術者の設置が義務付けられますが、テレワークを実施してもよいとされました。
ただし、営業所にいるときと同等に職務を遂行できる状況が求められます。
具体的な条件は以下の通りです。
- 常時電話がつながる
- メールを送受信・確認できる
- 契約書や設計図書などを確認できる
また、営業所に通勤不可能な場所でテレワークについては、専任技術者の要件を満たさないとされています。
例えば、営業所は東京にあり、沖縄に在住して業務を行うのは認められません。
緊急時には、営業所に行って対応できると示す必要があるため注意しましょう。
建設業許可事務ガイドラインのポイント
建設業許可事務ガイドラインは、以下のように建設業法の条文番号の順に、解説されています。
- 第2条関係(建設工事の例示)
- 第3条関係(建設業許可の種類、用語の定義など)
- 第3条の2関係(許可の条件)
- 第4条関係(附帯工事)
- 第5条及び第6条関係(許可申請の取下げ・却下など)
- 第7条関係(経営業務管理責任者・専任技術者などの要件)
- 第8条関係(欠格要件・営業停止処分中の更新など)
- 第9条関係(許可換え新規の取扱い)
- 第10条関係(登録免許税・許可手数料など)
- 第11条関係(変更届出書の効力など)
- 第12条関係(廃業届)
- 第15条関係(専任技術者・財産的基礎)
- 第29条の2及び29条の5関係(許可の取消し及び処分の公告)
このうち、特に重要な内容について詳しく説明します。
建設業法第2条
建設業法第2条は、建設業法上の「建設工事」の種類が定められています。
建設工事の種類は以下のとおりであり、土木一式工事と建築一式工事の2つの一式工事と、27の専門工事の合計29種類があります。
- 土木工一式工事
- 建築一式工事
- 代行工事
- 左官工事
- とび、土工、コンクリート工事
- 石工事
- 屋根工事
- 電気工事
- 菅工事
- タイル、レンガ、ブロック工事
- 鋼構造物工事
- 鉄筋工事
- 舗装工事
- 浚渫工事
- 板金工事
- ガラス工事
- 塗装工事
- 防水工事
- 内装仕上工事
- 機械機器設置工事
- 熱絶縁工事
- 電気通信工事
- 造園工事
- さく井工事
- 建具工事
- 水道施工工事
- 消防施設工事
- 清掃施設工事
- 解体工事
自社で行おうとしている建設工事が、どの種類の工事の許可が必要になるか検討が必要です。
建設業法第3条
建設業法第3条は建設業許可について定められており、ポイントは大きく3つあります。
1つ目が、建設業許可の許可者です。
2つ以上の都道府県に営業所がある場合は国土交通大臣の、1つの都道府県にのみ営業所がある場合は都道府県知事の許可を得る必要があります。
2つ目は、建設業許可の種類です。
建設業は、一般建設業と特定建設業の2つに分けられます。
4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円)の工事を請け負う場合は特定建設業の許可が必要です。
3つ目は、建設業許可の有効期限です。
建設業許可の有効期限は、許可があった日から5年間です。
5年ごとに更新が必要であり、更新申請の提出期限は有効期限の30日前となります。
建設業法第4条
建設業法第4条は、付帯工事について定められています。
許可を受けた種類の建設工事を請け負う場合、その主たる工事に付帯する他の建設業の工事も請け負えると示す趣旨の内容です。
例えば、部屋の電気配線の補修を行うために壁剥がしなどの作業が必要な場を考えてみましょう。主たる工事が電気工事、付帯工事が内装仕上工事となります。
この場合、電気工事を行う業者は、内装仕上工事の許可が無くても壁剥がしなどの作業を行えます。
ただし、附帯工事と認められるには要件があります。
あくまで主たる工事に付随した工事であり、主たる工事の工事代金より安い必要があるため注意しましょう。
建設業法第5・6条
建設業法第5条では、建設業許可の申請に必要な事項を、第6条では申請に必要な添付書類を定めています。
申請書に記載する必要のある事項は以下のとおりです。
- 商号または名称
- 営業所の名称と所在地
- 法人場合は資本金額と役員の氏名
- 個人の場合は申請者と支配人のそれぞれの氏名
- 営業所に常勤する役員の氏名
- 許可申請する建設業
- 他の業務を行っている場合はその業種
申請書に添付する必要書類は以下のとおりです。
- 工事経歴書
- 直前3年の工事施工金額が分かる書面
- 使用人数の記載書面
- 欠格要件に該当しない誓約書面
- 許可基準を満たすと証する書面
- その他国土交通省令で定める書面
なお、更新申請の際は、「工事経歴書」「直前3年の工事施工金額が分かる書面」「使用人数の記載書面」は不要です。
建設業法第7条
建設業法第7条は、建設業許可の基準を4つ定めています。
- ①経営業務の管理責任者がいる
-
②各営業所に、以下のいずれかに該当する専任技術者がいる
・申請する建設業に係る建設工事について、国土交通省が定めた学科を専攻し、卒業後、大卒・高専卒であれば3年以上、高卒であれば5年以上の実務経験がある
・申請する建設業について10年以上の実務経験がある
・国土交通省が認定した者である(定められた国家資格を有している等) - ③法人であれば法人や役員、個人事業主であれば申請者本人や使用人などが不正または不誠実な行為を行う恐れがない
- ④財産要件を満たす
建設業許可を受けるには、上記の4つをすべて満たす必要があります。
建設業法第8条
建設業法第8条には、国土交通大臣・都道府県知事が建設業を許可しない理由として、以下2つが定められます。
- ①許可申請者や役員、使用人などが欠格要件に該当する
- ②許可申請書や添付書類に虚偽の記載がある、重要な事実の記載が漏れている
欠格要件とは、成年被後見人や被保佐人、破産者で復権を得ない者や、建設業許可を取り消されてから5年を経過しない者が挙げられます。
また、禁固以上の刑に処されて5年を経過しない者や暴力団員が事業に関わっているなども欠格要件です。
また、建設業許可を受けた後であっても、虚偽の事実や記載漏れが判明した場合は、許可を取り消されます。
建設業法第9条
建設業法第9条には、すでに受けていた建設業許可について変更する際の許可換えについて定められています。
許可換えが必要となるのは以下の場合です。
- ①国土交通大臣許可を受けた業者の営業所の場所が、1つの都道府県になった場合は、都道府県知事の許可に換える必要がある。
- ②都道府県知事許可を受けた業者の営業所の場所が、2つ以上の都道府県になった場合は、国土交通大臣許可に換える必要がある。
- ③都道府県知事許可を受けた業者が、移転して異なる都道府県に移った場合は、移転先の都道府県の許可を受ける必要がある。
許可換えを申請している期間、既存の許可の効力は継続します。
建設業法第10条
建設業法第10条では、建設業許可を受ける際の登録免許税または許可手数料について定められています。
国土交通大臣の建設業許可を受けようとする場合は、登録免許税を1件につき15万円の支払いが必要です。
登録免許税は、申請書に収入印紙を貼り付けて支払います。
都道府県知事の建設業許可を受けようとする場合は、許可手数料を1件につき新規なら9万円、更新なら5万円の支払いが必要です。
許可手数料は、申請書に県収入証紙を貼り付けて納付したり、現金で支払ったりします。
適切な方法で納付しましょう。
建設業法第11条
建設業法第11条には、変更届出について定められています。
許可申請書や添付書類の事項に変更があった場合は、許可行政庁に変更届出が必要です。
また、変更事項によって届出期限が異なり、以下のように定められています。
- ①経営業務の管理責任者と氏名、専任技術者と氏名、使用人の就任と退任、欠格要件にあたる事由の発生の場合、変更発生後14日以内
- ②名称や商号、資本金、営業所の名称や所在地、営業業種の新設と廃止、代表者、役員などの就任と退任などの場合、変更発生後30日以内
- ③使用人数変更、国家資格者と監理技術者の変更と削除、社会保険加入状況の変更、定款変更などの場合、変更発生後4カ月以内
期限内に変更届出を行わないと、罰則の対象となる可能性があるため注意が必要です。
建設業法第12条
建設業法第12条は、廃業の届出について定めた法律です。。
具体的に、廃業届出を行う必要があるのは以下の場合です。
- ①許可を受けた個人事業主が亡くなった場合や法人が合併が解散などにより消滅した場合
- ②許可を受けた業種について廃業する場合。また、複数の建設業許可を受けている場合で、一部の業種を廃業する場合
- ③法人や個人事業主として存続する場合でも建設業の営業をやめた場合
廃業する事実が発生した日から30日以内に、許可行政庁に届出を行う必要があります。
廃業届出を怠った場合も、罰則が適用される可能性があるため、注意しましょう。
建設業許可の要件
建設業許可を取得するためには、第7条に定められた4つの要件を満たし、第8条にある欠格要件に該当しない必要があります。
建設業法の内容からまとめた建設業許可の5つの要件は、以下の通りです。
- 経営業務管理責任者がいる
- 専任技術者がいる
- 誠実性がある
- 財産的基礎または金銭的信用を有している
- 欠格要件に該当しない
それぞれの要件について詳しく解説します。
経営業務管理責任者がいる
経営業務管理責任者は、経営体制を整え、営業取引上の対外的な責任を負う役割を担う人です。
法人であれば役員、個人事業主であれば本人または支配人を指し、建設業許可を得るには、主たる営業所に経営業務管理責任者の配置が必要です。
経営業務管理責任者には建設業の経営業務の管理を適正に行う能力が求められ、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- ①許可を受けようとしている建設業に関して、5年以上の経営業務管理責任者としての経験がある
- ②常勤性がある(居住地が遠方の場合や、他社の代表取締役や経営業務管理責任者や専任技術者等の場合は不可)
- ③適切な社会保険に加入している
専任技術者がいる
専任技術者とは、建設業において専門的な知識や経験を有する人です。
工事請負契約を適切な内容で締結し、その工事を契約通りに実施する役割を担います。
専任技術者になるには、以下の要件を満たす必要があります。
-
①以下のいずれかに該当する
・許可を受けようする建設業に関して定められた資格を有する
・申請する建設業に係る建設工事について、国土交通省が定めた学科を専攻し、卒業後、大卒・高専卒であれば3年以上、高卒であれば5年以上の実務経験がある
・申請する建設業について10年以上の実務経験がある - ②営業所ごとに配置され、常勤性がある(居住地が遠方、他社の代表取締役や経営業務管理責任者や専任技術者等の場合は不可)
誠実性がある
建設業許可を受けるには請負契約に関する誠実性が求められます。
「誠実性がある」とは、法人や役員、個人事業主などが請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれがない状態です。
ここで言う「不正な行為」とは、請負契約の締結または履行の際の、詐欺や脅迫など違法行為をを指します。
また「不誠実な行為」とは、請負契約の工事内容や工期などについて契約に違反する行為を指します。
「不正または不誠実な行為」を行ったために免許などの取り消し処分を受け、処分の日から5年を経過しない場合は建設業許可を受けられません。
上記の行為が発覚すると、社会的信用が低下するだけでなく、後の建設業許可にも影響するため注意しましょう。
財産的基礎または金銭的信用を有している
建設業許可を受けるには、財産的基礎や金銭的信用が必要です。
また、一般建設業許可と特定建設業許可のいずれを取得するかで、財産要件が異なります。
一般建設業許可を受けるには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- ①直前の決算において、自己資本の額が500万円以上ある
- ②500万円以上の資金調達能力がある
- ③更新の際は、直前の5年間許可を受けて継続して営業した実績がある
特定建設業許可を受けるには、以下のすべての要件を満たす必要があります。
- ①欠損額が資本金の20%を超えない
- ②流動比率が75%以上である
- ③資本金の額が2,000万円以上あり、尚且つ自己資本の額が4,000万円以上ある
欠格要件に該当しない
建設業許可を受けるには、以下の欠格要件に該当しない必要があります。
- ①許可申請書や添付書類に虚偽の記載があったり、重要な事実の記載が漏れている
-
②法人や役員、個人事業主などが以下のいずれかに該当する
・成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者である
・不正を働いたで許可を取り消されてから5年経過していない
・営業停止を命じられ停止期間が経過していない
・禁固以上の刑に科せられ、執行の終わりの日から5年を経過していない
・罰金刑に処され、執行の終わりの日から5年を経過していない
・暴力団員でなくなった日から5年を経過していない
・暴力団員等が事業活動を支配している
建設業許可が不要な工事
建設業許可を取得していない事業者であっても、建設業を営めます。
ただし、以下の工事に制限されています。
- 軽微な建設工事
- 附帯工事
それぞれの工事の内容について解説します。
①軽微な建設工事
以下の工事の種類と請負金額の場合は、軽微な建設工事とみなされるため、建設業許可は不要です。
工事の種類 | 請負金額 |
---|---|
専門工事 | 500万円未満 |
建築一式工事 | 1,500万円未満 |
なお、建築一式工事のうち「延べ床面積が150㎡に満たない木造住宅の建設工事」は、1,500万円以上でも建設業許可は必要ありません。
②附帯工事
附帯工事とは、メインとなる工事に付随して行われる工事です。
たとえば、塗装工事を行うために行う足場工事は、塗装工事の附帯工事といえます。
附帯工事の金額は、メインとなる工事の代金と合わせて500万円を超えるかどうかの判定を行います。
そのため、附帯工事だけを行う事業者は、金額に関係なく建設業許可は不要です。
建設業許可事務ガイドラインの使い方
実務上、建設業許可事務ガイドラインは、許可申請書や必要書類の確認や不明点のチェックなどに使われます。
実務上の建設業許可申請のやり方や具体的な事務手続きについて記載されています。
実際に自社が行う業種について建設業許可手続きを行う際は、ガイドラインに記載されたポイントを確認しながら進めます。
建設業許可事務ガイドラインのポイントを押さえたうえで、不明点があれば各申請窓口に問い合わせが必要です。
また、建設業に関わるガイドラインは建設業許可事務ガイドラインだけではありません。建設業法遵守ガイドラインや工期設定に関するマニュアルなどもあり、国土交通省のページにまとめられています。
改訂される場合も多いため、定期的に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
建設業許可の申請にあたっては建設業許可事務ガイドラインについてポイントの把握が重要です。
特に、許可基準や要件や必要な変更届出などを把握していないと、許可されなかったり、失効したりする恐れがあります。
内容が改訂される場合もあるためこまめなチェックをおすすめします。
これから建設業許可の取得を考えている方は、建設業許可事務ガイドラインを一読し内容を把握しておくとよいでしょう。
ガイドラインを読んでも不明点がある場合は、申請先の行政機関に問い合わせをおすすめします。
また、手続きに不安がある方や書面を集める時間が取れない方などは行政書士などの専門家に代行してもらってもよいでしょう。