この記事でわかること
- 資格なしで建設業許可を取得できるか
- 建設業許可なしで請け負える工事とは
建設業許可を取得するための要件の1つが、専任技術者の設置です。
専任技術者は建設工事の専門的な知見を持つ人材であり、適切な施工をするために各営業所で常駐しなければなりません。
専任技術者の要件として、工事の業種に応じた資格の保有などが求められます。
資格以外に実務経験や学歴で要件を満たす方法もありますが、経験を証明する資料の提出などが必要です。
ここでは資格なしで建設業許可を取得する方法や、建設業許可なしで請け負える工事などを紹介します。
資格なしでも建設業許可を取得できる
建設業許可取得に必要な条件として、国土交通省HPから引用とともに解説します。
専任技術者を選任する場合、次のような方法で相応の知見があると証明しなければなりません。
- 工事の業種に応じた国家資格を保有する
- 10年以上の実務経験を証明する
- 工事の業種に応じた学科の科目を履修し、さらに3年~5年の実務経験を証明する
ここからは、国家資格がない場合でも専任技術者と認められるための具体的な方法を確認していきましょう。
10年間の実務経験の証明が必要
10年以上の実務経験を証明するために、次のような書類が必要です。
-
工事実績を証する書類
請負工事の契約書、受発注の関連書類、請求書、工事代金の振込がわかる預金通帳などを提出します。 -
常勤を証する書類
健康保険被保険者証、厚生年金被保険者記録照会回答票、住民税特別徴収税額通知書、確定申告書などを提出します。
いずれも、許可を取りたい業種と関連した実務経験でなければなりません。
必要となる書類は自治体によって異なる場合もあるため、事前に確認をしておきましょう。
10年間の実務経験を短縮する方法
特定の学科を履修している場合、必要な実務経験の期間は次のように短くなります。
- 特定の学科を履修して高校卒業した場合:5年間の実務経験
- 特定の学科を履修して大学卒業した場合:3年間の実務経験
特定の学科とは、たとえば土木工学、機械工学、建築学、電気工学、都市工学などが該当します。
高校や大学を卒業するだけでなく、履修した学科が許可を取りたい業種に関連していなければなりません。
学科の履修を証明するため、卒業証明書の提出も必要となります。
建設業許可の取得に必要な条件・資格
建設業許可の取得に必要な条件・資格は、以下の通りです。
- 専任技術者がいる
- 経営業務の管理責任者がいる
- 社会保険に加入している
- 誠実に契約を履行する
- 財産的基礎が安定している
- 欠格要件に該当しない
それぞれの条件・資格について解説します。
専任技術者がいる
専任技術者は、主に請負契約書の締結や見積もりの作成、受発注などの業務を担当します。
営業所に常勤するため、原則として工事現場での作業は担当しません。
工事現場での進捗や安全管理を担当する現場監督は主任技術者といい、役割が異なります。
専任技術者が退職や休職となった場合、建設業許可が取り消しとなる恐れがあるため不在期間ができないように注意しましょう。
経営業務の管理責任者がいる
管理責任者は事業責任を負う役員で、就任には次の要件を満たす必要があります。
要件 | 備考 |
---|---|
①5年以上、役員として建設業を経営 | 取締役や個人事業主など |
②5年以上、管理責任者に準ずる地位で建設業を経営 | 執行役員など |
③6年以上、経営者に準ずる地位で補助 | 工場長など |
④2年以上、取締役や執行役員として建設業を経営。かつ5年以上、建設業で財務・労務・業務などで役員に次ぐ地位を経験 | 同時に、5年以上、建設業で財務・労務・業務を経験した補佐人の選任が必要 |
⑤2年以上、取締役や執行役員として建設業を経営。かつ5年以上、他社で建設業以外の取締役などを経験 |
社会保険に加入している
建設業許可を取得する際に、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険への加入が令和2年の10月から義務化されました。
建設会社の社長や一人親方などの場合、健康保険や労災保険などは原則として加入できません。
「建設国保」といった建設業者向けの健康保険組合や、特別加入制度を利用すると労災保険に任意加入できます。
誠実に契約を履行する
建設業者は、顧客と締結した請負契約を遵守しなくてはなりません。
大規模な建設工事は施工期間が長期にわたり、かつ、大きな金額が動きます。
詐欺や脅迫などの法律に違反する不正や不誠実な行為は、建設業法によって厳しく禁止されています。
建設業者と依頼人との間に信頼関係が不可欠であり、法では業者の「誠実性」を特に重視するためです。
工事の放棄や業者が必要な費用を負担しないなど契約内容に違反すると、不誠実な行為に該当します。
財産的基礎が安定している
建設工事は多額の費用や労働力が必要となるため、建設業者には一定基準以上の財産要件を求めています。
たとえば、大規模な工事では長期間にわたり多くの資材、備品、人手などが必要です。
建設業者からの支払いが適切に行われないと、資材の仕入れなど必要な取引ができず、工事が中断する可能性があります。
最終的には、依頼人が不利益を被りかねません。
国土交通省によると、一般建設業の財産的基礎として、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 自己資本が500万円以上であること
- 500万円以上の資金調達能力を有すること
- 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること
自己資本は残高証明書、過去の実績は過去の工事の契約書や確定申告書などで証明できます。
欠格要件に該当しない
以下の欠格要件に該当する場合、建設業許可は取得できません。
- 破産している
- 刑罰を受け、受けることがなくなっても5年間を経過していない
また、反社会的勢力の構成員や反社会的勢力との関係性がある場合も、許可を取得できません。
関係性がある場合とは、反社会的勢力、いわゆる企業舎弟やフロント企業が取引先となるケースを指します。
建設業許可なしで請け負える工事
これまでは建設業許可の取得要件について見ていきましたが、以下のように許可がなくても請け負える工事があります。
- 軽微な工事
- 付帯工事
それぞれの工事の概要について見ていきましょう。
軽微な工事
次の要件に該当する場合、軽微な工事であるため建設業許可を取得せずに請負契約を締結できます。
- 1件の請負代金が税込500万円未満の専門工事
- 1件の請負代金が税込1,500万円未満の建築工事一式
- 木造住宅で延べ床面積が150㎡未満の建築工事一式
住宅とは、延べ面積の2分の1以上を居住に使用する共同住宅や店舗との併用住宅などをいいます。
注文者から工事の材料の提供を受けた場合、その市場価格や運送費も請負代金に含めて計算しなければなりません。
付帯工事
付帯工事とは、主たる建設工事のために施工が必要となった他の従たる工事などをいいます。
たとえばビルを建設する場合、建物を建設するための土木工事や鉄筋工事以外に、電気、水道、内装など様々な工事が必要です。
主たる建設工事に関する建設業許可を取得していれば、付随する工事は許可を取得せずに一括して受注できます。
ただし、付随工事の請負代金は主たる工事を超えられず、税込500万円以上のときは付帯工事の種類に応じた専任技術者の設置が必要です。
下請けが建設業許可がない場合はどうなる?
建設工事の規模が大きくなるほど、プロジェクトを統括する元請業者のほかに、専門的な工事を担当する下請業者が多くなります。
工事に建設業許可が必要となる場合、元請業者は許可を取得していない下請業者に工事を発注できません。
許可を取得していない業者と下請契約を締結した場合、元請業者には営業停止処分などの罰則が科せられる可能性があります。
もし下請契約の締結後に許可を取得していないと発覚した場合、ただちに契約を解除しましょう。
まとめ
建設業法では、違反した事業者への罰則を定める一方、発注者や建設業者の便益のために要件を緩和する措置も規定されています。
専任技術者に就任するために必要な資格を保有する人材がいない場合、実務経験や学歴などの要件を満たせば就任が認められます。
もし建設業許可の取得に不安がある場合、専門家である行政書士に依頼するのがおすすめです。
行政書士に依頼した場合、自社の業種や施工内容などに応じた最適な建設業許可の取得方法を提案してもらえるでしょう。