この記事でわかること
- 電気工事業者の登録や通知が必要な工事の種類がわかる
- 電気工事業者の登録を行う際の要件を確認することができる
- 電気工事業者の登録を行う際の流れや必要書類を知ることができる
建設業許可が必要とされない規模の工事を行う場合、本来は工事業者に特別な手続きは必要ありません。
しかし、電気工事を行う場合は、その工事の規模に関係なく一定の知識や技能が求められます。
そこで、建設業許可とは別に、電気工事業者の登録や通知が必要とされるものを定めています。
ここでは、電気工事業登録の制度について解説するとともに、登録の要件や手続きの流れについて確認していきます。
- 目次
- 電気工事業者の登録や通知が必要な工事・不要な工事
- 登録・通知電気工事業者の要件
- 登録・通知電気工事業者の手続き方法
- 電気工事業者の登録・通知手続きの必要書類
- 登録・通知電気工事業者が手続きをしていないときの罰則
- まとめ
電気工事業者の登録や通知が必要な工事・不要な工事
一定の電気工事を行うためには、電気工事業者の登録あるいは通知が必要とされます。
ここではまず、どのような工事に登録や通知が必要とされるのかを確認しておきましょう。
登録が必要となる電気工事
電気工事業者の登録が必要とされるのは、一般用電気工作物(電力会社から600V以下で受電するもの)の設置、変更を行う工事です。
一般家庭や商店などに設置された屋内配電設備、小出力発電設備などが該当します。
通知が必要となる電気工事
電気工事業者の通知が必要とされるのは、自家用の電気工作物の設置や変更等の工事を行う場合です。
ただ、自家用であればすべて該当するわけではなく、電力会社から600V超で受電するもののうち、受電電力容量が500kW未満のものとされます。
中規模・小規模のビルや工場にある設備がこれに該当します。
登録も通知も不要な電気工事
登録も通知も不要とされる電気工事は、全部で6種類に分類されます。
これらのことを「6つの軽微な工事」と呼び、事前の手続きが不要なものとして認識されています。
6つの軽微な工事とは、以下のような電気工事をいいます。
- ①電圧600V以下で使用する差込接続器、ねじ込み接続器、ソケット、ローゼットその他の接続器又は電圧600V以下で使用するナイフスイッチ、カットアウトスイッチ、スナップスイッチその他の開閉器にコード又はキャブタイヤケーブルを接続する工事
- ②電圧600V以下で使用する電気機器(配線器具を除く。以下同じ)又は電圧600V以下で使用する蓄電池の端子に電線(コード、キャブタイヤケーブル及びケーブルを含む。以下同じ)をねじ止めする工事
- ③電圧600V以下で使用する電力計若しくは電流制限器又はヒューズを取り付け、又は取り外す工事
- ④電鈴、インターホン、火災感知器、豆電球その他これらに類する施設に使用する小型変圧器(二次電圧が36V以下のものに限る。)の二次側の配線工事
- ⑤電線を指示する柱、腕木その他これらに類する工作物を設置し、又は変更する工事
- ⑥地中電線用の暗渠又は管を設置し、又は変更する工事
法律の条文上の表現であるため、わかりにくいものもあるかもしれません。
実際に行おうとしている工事がこれらに該当するのか、事前によく確認するようにしましょう。
登録・通知電気工事業者の要件
登録あるいは通知が必要となる電気工事を行うためには、事業者としてどのような要件を満たさなければならないのでしょうか。
それぞれに要件が異なるため、しっかりとその内容を確認しておきましょう。
登録が必要な電気工事を行う事業者の要件
登録が必要な電気工事を行うためには、次の2つの要件を満たさなければなりません。
- ①主任電気工事士を置いている
- ②経済産業省令で定める器具を有している
なお、この要件は電気工事を行う営業所ごとに判定を行います。
またこの場合、営業所とは電気工事の施工管理を行う店舗のことをいいます。
たとえば、本社と支店を有する会社で考えてみます。
このうち本社には総務や経理・営業などの機能しかなく、工事の施工管理はすべて支店で行っていたとします。
この場合、工事の施工管理を行うのは本店ではなく支店ということになります。
そのため、支店に主任電気工事士を配置し、必要な器具を備えおく必要があるのです。
会社としては要件を満たしても、営業所に主任電気工事士がいなければ要件を満たさないため、注意が必要です。
主任電気工事士とは
①の要件にある主任電気工事士とは、以下のいずれかを満たす人のことです。
- 第一種電気工事士免状を持っている
- 第二種電気工事士免状を持っている人で、免状取得後に一般電気工作物について3年以上の実務経験がある
2つめの要件にある実務経験とは、登録電気工事業者等での実務経験のことをいい、単に電気工事の業務に関わっただけでは満たしません。
第一種電気工事士の免状交付には、少なくとも3年以上の実務経験が必要です。
また、第二種電気工事士免状を持っている人の場合は、主任電気工事士となるためには実務経験が求められます。
したがって、いずれの要件による場合でも、実務経験がなければならない一方、実務経験だけで認められるわけでもないのです。
なお、第二種電気工事士について実務経験があることを証明するのは、以前に働いていた電気工事業者です。
すべての人が以前に働いていた会社からすんなりと証明書を出してもらえるわけではないので、注意しましょう。
経済産業省令で定める器具とは
経済産業省令で定める器具とは、具体的にはどのようなものをいうのでしょうか。
登録が必要な電気工事を行うためには、絶縁抵抗計、接地抵抗計、抵抗・交流電圧測定回路計の3つが必要とされます。
このすべてがなければ、要件を満たすことはできません。
通知が必要な電気工事を行う事業者の要件
通知が必要な電気工事を行うためには、経済産業省令で定める器具を有していなければなりません。
登録が必要な場合にも、この経済産業省令で定める器具が必要とされますが、通知の場合はその中身が異なります。
登録の際に必要とされた、絶縁抵抗計、接地抵抗計、抵抗・交流電圧測定回路計のほかにも必要とされるものがあります。
低圧検電器、高圧検電器、継電器試験装置、絶縁耐力試験装置もあわせて、全部で7種類の器具が必要とされます。
通知の方が、登録の場合より必要とされる器具が多いことには注意が必要です。
なお通知の場合は、登録の場合のように主任電気工事士などの人の配置は必要とされません。
登録・通知電気工事業者の手続き方法
登録電気工事事業者あるいは通知電気工事事業者となるためには、申請書を提出しなければなりません。
この申請書の提出先は、営業所が1つの都道府県内のみにある場合と、複数の都道府県にある場合では異なります。
1つの都道府県内のみに営業所がある場合
営業所が1つの都道府県だけにある場合は、その都道府県知事に申請書を提出します。
営業所が1つだけの場合はもちろんですが、同一都道府県内に複数の営業所がある場合も該当します。
複数の都道府県に営業所がある場合
2以上の都道府県に営業所を有している場合は、その営業所が所在する場所によって2つのパターンがあります。
- (1)1つの産業保安監督部の区域内に営業所がある場合は、その産業保安監督部長に申請書を提出します。
- (2)2つ以上の産業保安監督部の区域にまたがる場合は、経済産業大臣に申請書を提出します。
なお、以下のパターンで産業保安監督部内の支部に営業所を設ける場合には、経済産業大臣ではなく産業保安監督部庁に提出します。
- ①関東東北産業保安監督部と関東東北産業保安監督部東北支部に営業所がある場合は、関東東北産業保安監督部
- ②中部近畿産業保安監督部、中部近畿産業保安監督部北陸監督署、中部近畿産業保安監督部近畿支部にまたがって営業所がある場合は、中部近畿産業保安監督部
- ③中国四国産業保安監督部と中国四国産業保安監督部四国支部に営業所がある場合は、中国四国産業保安監督部
産業保安監督部の管轄する都道府県については、ホームページなどで確認することができます。
同一の都道府県でも産業保安監督部の管轄が異なる場合があるため、複数の都道府県にまたがる場合は必ず確認しましょう。
電気工事業者の登録・通知手続きの必要書類
それでは、初めて登録・通知電気工事業者となるためには、どのような書類が必要となるのでしょうか。
どのような電気工事業者になるかによって、必要となるものが異なるため、よく確認して準備するようにしましょう。
登録電気工事業者になる場合
法人が登録電気工事業者になる場合、下記の書類が必要となります。
- ①登録電気工事業者登録申請書
- ②登録申請者の誓約書(法人用)
- ③主任電気工事士等の電気工事士免状の写し
- ④主任電気工事士の誓約書
- ⑤主任電気工事士の雇用証明書
- ⑥主任電気工事士の実務経験証明書
- ⑦法人の登記簿謄本
また、個人が登録電気工事業者の申請を行う場合は、下記の書類を提出します。
- ①登録電気工事業者登録申請書
- ②登録申請者の誓約書(個人用)
- ③主任電気工事士等の電気工事士免状の写し
- ④主任電気工事士の誓約書
- ⑤主任電気工事士の雇用証明書
- ⑥主任電気工事士の実務経験証明書
- ⑦申請者の本人確認書類
申請時には、各提出先が定める金額の収入印紙を購入し納めなければなりません。
法人・個人に関係なく、書類の作成時には、いくつか注意点があります。
③の電気工事士免状の写しを提出する場合は、免状番号記載面の写しを提出します。
また、第一種電気工事士免状の場合は、これに加えて自家用電気工作物の保安に関する講習受講履歴の写しも必要となります。
④の主任電気工事士の誓約書、⑤の主任電気工事士の雇用証明書は、主任電気工事士が従業員の場合に必要です。
主任電気工事士自身が申請する場合や、主任電気工事士が法人の役員の場合は、いずれも不要となります。
⑥の主任電気工事士の実務経験証明書は、第二種主任電気工事士の場合に必要となるものです。
先ほども紹介しましたが、以前に勤務していた登録電気工事業者等に証明書を書いてもらう必要があります。
なお、以前勤務していた会社が倒産した場合などは、2か所の同業他社による証明でも有効とされます。
ただこの場合も、証明する事業者は登録電気工事業者等でなければなりません。
通知電気工事業者になる場合
通知電気工事事業者になる場合に必要な書類は、登録電気工事業者の場合より少なくて済みます。
これは通知電気工事事業者になる場合、主任電気工事士を配置する義務がないためです。
法人が通知電気工事事業者になる場合、下記の書類が必要となります。
- ①電気工事業開始通知書
- ②通知者の誓約書(法人用)
- ③法人の登記簿謄本
また、個人が通知電気工事事業者になる場合、下記の書類が必要となります。
- ①電気工事業開始通知書
- ②通知者の誓約書(個人用)
- ③通知者の本人確認書類
登録・通知電気工事業者が手続きをしていないときの罰則
登録や通知が必要な電気工事を行う際に必要な手続きを行わなかった場合、どのような罰則があるのでしょうか。
登録電気工事業者・通知電気工事業者でそれぞれ違いがあるため、その内容を確認しておきましょう。
なお、要件を満たしているにもかかわらず登録や通知の手続きだけを怠っていた場合は、すぐに処罰されるとは限りません。
ただ、登録や通知を適切に行わなければ、罰則を受ける可能性はあるため、きちんと手続きを行うようにしましょう。
登録電気工事業者の手続きをしなかった場合
電気工事業者の登録が必要な電気工事を行ったのに登録電気工事業者の手続きを怠った場合には、罰則が科されます。
「1年以下の懲役もしくは10万円以下の罰金またはこの併科」という内容の罰則を受けることとなるのです。
通知電気工事業者の手続きをしなかった場合
電気工事業者の通知を行う必要がある電気工事を行ったのに通知電気工事業者の手続きを怠った場合も、罰則があります。
この場合は「2万円以下の罰金」が科されることとなります。
まとめ
建設業許可を必要としない電気工事であっても、登録電気工事業者や通知電気工事業者
の手続きが必要となるケースがあります。
必要な手続きを行わずに電気工事を行ってしまうと、最悪の場合、罰則を受けることもあります。
登録電気工事業者や通知電気工事業者となるためには、必要な書類を提出すればいいため、それほど難しいものではありません。
自身の行っている電気工事の内容を確認し、必要な手続きを忘れずに行うようにしましょう。