この記事でわかること
- 主任電気工事士はどのような人でどのような役割があるのかがわかる
- 主任電気工事士を選任・変更しなければならない場合がわかる
- 主任電気工事士の届出方法やその際の必要書類を知ることができる
建設業者が扱う工事中には、主任電気工事士を設置することが義務づけられている場合があります。
はたして、主任電気工事士とはどのような役割をする人なのでしょうか。
また、主任電気工事士になるためには、どのような資格が必要なのでしょうか。
さらに、主任電気工事士を設置する際にはいくつかの注意点があるため、その点についても確認しておきましょう。
- 目次
- 主任電気工事士とは
- 主任電気工事士の役割・職務内容
- 主任電気工事士を選任・変更が必要なケース
- 主任電気工事士を設置する際の注意点
- 主任電気工事士の登録の拒否事由
- 主任電気工事士の届出方法・必要書類
- まとめ
主任電気工事士とは
主任電気工事士とは、一般用電気工作物の設置や変更のための電気工事を行う営業所に配置しなければならない資格者のことです。
現場で電気工事を行うだけでなく、一般用電気工事の作業の管理も行います。
営業所ごとに配置しなければならないため、複数の営業所を持つ事業者は、複数の主任電気工事士が必要となることが考えられます。
なお、必要となる主任電気工事士を適切に配置せず電気工事業を営業している場合、罰金が科されるため、注意が必要です。
また、誤解されている方が多いのですが、「主任電気工事士」という名前の資格はなく、あくまでも要件を満たしている人の中から選任するものになります。
主任電気工事士の役割・職務内容
主任電気工事士の役割は、事業者として法令に違反することなく、安全な電気工事を行うための監視役といったところです。
具体的な主任電気工事士の職務は、以下の6つになります。
(1)配線図の作成や変更
また、配線図の作成に直接関与していない場合は、その配線図のチェックを行います。
(2)一般用電気工事が関連法規に違反しないように管理
具体的には、まず[1]電気工事士でない者が電気工事の作業に従事しないように管理します。
そして、[2]表示のない電気用具の使用の監視を行い、[3]危険等防止命令を受けた場合の遵守義務を履行します。
さらに、[4]電気設備の技術基準の適合性など、電気関係法規を遵守するようにつとめます。
このような形で、事業者として行う業務が法令にもとづいたものとなるようにします。
(3)立入検査を受ける際に、その検査に立ち会う
電気工事業の業務の適正化に関する法律にもとづいて、電気工事業を営む事業者には、定期的に立入検査が実施されます。
この時、主任電気工事士はこの検査に立ち会うことができます。
(4)一般用電気工事の検査結果の確認
一般用電気工事の内容に不備がないかなど、工事を行った後に主任電気工事士が確認を行うこととされています。
(5)帳簿の記載上の管理監督
電気工事業者は、注文者の氏名や電気工事の種類、施工場所や施工年月日などを記した帳簿を作成しなければなりません。
この帳簿の管理監督を主任電気工事士が行うこととされているのです。
(6)その他一般電気工事に関する管理監督
なお、主任電気工事士になれるのは、第一種電気工事士、あるいは第二種電気工事士で3年以上の電気工事の実務経験がある者です。
主任電気工事士を選任・変更が必要なケース
主任電気工事士を選任したり変更したりしなければならない場合には、全部で4つのケースが考えられます。
ここでは、その4つのケースについて解説していきます。
主任電気工事士が登録の拒否事由に該当した場合
主任電気工事士になるのがふさわしくない人を主任電気工事士とした場合、そのままの状態で電気工事業を継続することはできません。
なお、登録の拒否事由に該当したケースについては、後ほど詳しく解説します。
主任電気工事士が退職して不在となった場合
主任電気工事士となっていた人が退職した場合、そのままでは主任電気工事士が不在となってしまいます。
主任電気工事士が不在の営業所では、電気工事業を営むことはできません。
この場合、電気工事業を継続するためには、新たな主任電気工事士を配置しなければならないのです。
営業所が一般用電気工作物の設置、変更の工事の業務を行うこととなった場合
それまで電気工事業を行っていなかった営業所で、新たに電気工事業を開始する場合があります。
主任電気工事士は営業所ごとに配置しなければならないため、他の営業所に主任電気工事士がいても、新たに選任しなければなりません。
新たに一般用電気工作物の設置、変更の工事の業務を行う営業所を設置した場合
新しく電気工事業を行う営業所を設置した場合、その営業所には主任電気工事士がいない状態です。
営業所ごとに設置しなければならないため、この場合も主任電気工事士を選任する必要があります。
主任電気工事士を設置する際の注意点
主任電気工事士を選任する際には、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
特に誤りやすい点について、確認しておきましょう。
主任電気工事士となる人は雇用しなければならない
主任電気工事士となる人は、その会社や事業主が雇用している人でなければなりません。
外部の電気工事士の資格を持つ人と契約をしても、主任電気工事士としては認められません。
必要に応じて対応できるというだけでは、主任電気工事士になることはできないのです。
主任電気工事士は複数の営業所を掛け持ちできない
主任電気工事士は、必ず1つの営業所に1人配置していなければなりません。
たとえ営業所間の距離が近くても、1人で複数の営業所の主任電気工事士を兼務することはできません。
また、主任電気工事士となる人は営業所に通うことが前提とされます。
仮に、営業所に通うのが難しいような遠方に住む人を主任電気工事士としても、受理されないこともあるため注意しましょう。
第二種電気工事士は実務経験が必要
主任電気工事士となることができるのは、第一種または第二種の電気工事士の資格を持つ人です。
ただし、第二種電気工事士の場合は、第二種電気工事士となってから3年以上の実務経験が必要です。
申請の際には、当該期間の実務経験を証明する実務経験証明書を準備する必要があります。
主任電気工事士の登録の拒否事由
主任電気工事士として登録を受けようとする人は、登録の拒否事由に該当していないことが求められます。
主任電気工事士の登録の拒否事由に該当する場合、電気工事業を営むことができないこととされているのです。
以下の4つは、主任電気工事士の登録の拒否事由として定められているものです。
- (1) 過去2年以内に電気工事に関する法律に違反して罰金以上の刑罰を受けた者
- (2) 過去2年以内に電気工事業の登録を取り消されたことがある者
- (3) 電気工事業の登録を受けた法人が登録を取り消された場合に、取消処分のあった日以前30日以内にその法人の役員であった者で、取消処分があった日から2年以内の場合
- (4) 事業の停止を命じられ、その停止期間中に電気工事業を廃止した者で、その停止期間を経過していない場合
なお、電気工事業の営業を開始してから、主任電気工事士が拒否事由に該当することが発覚することがあります。
このような場合、該当することを知った日から2週間以内に新たな主任電気工事士を選任しなければなりません。
主任電気工事士の届出方法・必要書類
主任電気工事士を選任しなければならない場合、どのような手続きを行う必要があるのでしょうか。
その提出先や提出書類などを確認しておきましょう。
主任電気工事士の届出先
主任電気工事士を選任して申請する場合、その営業所のある都道府県知事に提出する必要があります。
ただし、2以上の都道府県に営業所を有する場合は、産業保安監督部長あるいは経済産業大臣に提出することとなります。
多くのケースでは、その都道府県知事に対して申請を行うこととなるでしょう。
主任電気工事士の選任に係る必要書類
主任電気工事士を選任したり変更したりする際に提出しなければならない書類は、提出先によって若干異なります。
そこで、多くの都道府県で主任電気工事士に関する提出書類として定められているものをご紹介していきます。
(1)主任電気工事士の雇用証明書
申請者自身や申請法人の役員が主任電気工事士となる場合は、雇用関係にはないため不要とされます。
(2) 電気工事士等の免状の写し
第一種電気工事士の場合は、免状番号記載面と自家用電気工作物の保安に関する講習受講履歴欄の写しが必要となります。
また、第二種電気工事士の場合は、免状番号記載面の写しを提出します。
(3) 主任電気工事士等実務経験証明書
第一種電気工事士を主任電気工事士とする場合は、不要となります。
まとめ
電気工事業法により、一般用電気工事の業務を行う営業所では、主任電気工事士を配置しなければなりません。
この配置義務は、会社に1人ではなく、営業所ごとに1人必要である点に注意しなければなりません。
また、主任電気工事士は直接雇用している者でなければならず、下請業者にお願いするようなことはできないことにも注意が必要です。
なお、電気工事業者として登録を終えても、その登録の有効期限は5年間とされています。
5年ごとに更新手続きが必要になるため、忘れずに手続きを行うようにしましょう。