この記事でわかること
- 出面表について
- 出面表を作成する目的
- 出面表の作り方や管理方法
建設現場では、作業員の勤務日や労働時間の管理に、日常的に出面表を利用しています。
しかし建設業界以外で利用することはほとんどないため、あまり耳にしたことがない人もいるでしょう。
そもそも出面表とはどのようなもので、建設現場で利用される目的とは一体何でしょうか。
今回は建設現場で利用されている出面表について、利用目的や適切な管理方法などを中心に解説します。
出面表とは
出面表とは、建設現場で働く作業員の労働状況を把握するもので、勤怠簿と同じ役割のものです。
誰が・いつ・どこで・何時間働いたかなど、主に労働状況を管理し集計します。
建設現場では、様々な職種の工事が同時並行で行われていることが少なくありません。
多くの職人や関係者が出入りするため、就業状況が一目でわかるように出面表が取り入れられています。
出面表は、元請け業者と下請け業者の双方で管理しておくことが基本です。
もし万が一、不測の事態が発生した場合にも、当時現場に誰がいたのか、どのような状況であったか把握しやすくなり、スムーズに対応できます。
読み方は「でづら」または「でめん」と読みます。
もともと建設現場の1日あたりの作業人数や、職人の作業日数のことを出面と呼んでいることから、こう呼ばれるようになりました。
出面表を作成する目的
出面表は労働状況だけを管理するものではありません。
作業員の賃金や安全など、建設工事にかかわる様々な情報を一元管理しています。
ここでは、出面表を作成する目的について詳しく解説します。
労務管理
出面表を見れば、作業員ごとの出勤日数と労働時間が一目でわかります。
現場では非常に多くの職人が関わっているため、個別に把握することは困難です。
また、現場の進捗によって出勤日や時間が一定ではないため、出面表を利用することで無断欠勤や残業時間、休日出勤など、就労状況を一度に把握できるようにしています。
働き方改革により、残業時間が月45時間、年360時間という制限ができたため、建設現場でも労働時間の管理が重要な課題となっています。
賃金管理
建設現場では、複数の現場を掛け持ちすることや、数時間のスポット勤務をすることも珍しくありません。
賃金を時間給で計算している場合や、月間の労働時間数により賃金を割り出す場合にも、出面表のデータをもとに計算を行います。
残業や休日出勤は割増賃金として計算されるため、正しく記入できていなければ給与に影響します。
安全管理
労務管理とあわせて、出面表には安全管理の一面もあります。
残業時間があまりにも多く、休日を取れていないような場合、建設現場では労働災害につながりかねない懸念材料になります。
建設現場でのミスは、大事故につながる恐れのある重大な事案です。
特に人災は事前の対策で予防できることも多く、そのためには安全管理を徹底する必要があります。
事故を起こさないよう、安全な現場を運営するためには、それぞれの勤務状況を正確に把握しておくことが重要です。
新人教育のため
出面表は、新人教育の一環としても使われています。
建設業界に慣れていない人であれば、出面表の存在自体を知らないことも多いでしょう。
出面表を作ることで、どの現場にどんな業者が出入りしているか、工期や作業の進み具合など、工事の全容を把握することができます。
全体像をつかむことで、作業の進め方や安全管理のポイントを理解できるメリットがあります。
また、新人はまだできる作業も少なく、手が空きやすいという一面もあります。
出面表を作成することで時間を有効活用し、仕事に早く慣れるということも目的の一つです。
出面表の必須項目・書き方
出面表には記載すべき項目がいくつもあり、それぞれに書き方のポイントがあります。
ここでは出面表に必要な項目や、それぞれの書き方について解説します。
現場名
現場名は詳細に記載しましょう。
たとえば「A邸外壁工事」「○○ビル改修工事」のように、一目でわかるように書きます。
一つの現場で複数の工事が同時並行で行われていることも少なくありません。
どの工事の種類や作業に関わったのか、誰が見てもわかるように記入しましょう。
氏名
当日作業する作業員の他、現場監督者や日雇い労働者など、現場に関わるすべての人の氏名を記載します。
そして記入するときはフルネームが基本です。
人の出入りが多い現場では、名字だけでは判別できません。
賃金計算や安全管理にも影響するため、必ずフルネームで記入しましょう。
職種
建設現場ではとび、左官、内装、電気など、様々な職種の職人が出入りしています。
多くの企業から職人が集まって1つの現場で作業をするため、どの職種の何の職人なのか明記しておく必要があります。
また、下請けと元請けが混ざらないように注意しましょう。
同じ職種でも下請け企業や、さらに下の孫請けまで現場に入っている場合もあります。
それぞれの所属を明確にして、記入するようにします。
記載方法が不明な場合は、必ず事前に担当者に確認しましょう。
労働形態
労働形態には、勤務した時間帯や曜日に即した勤務形態と、正社員・派遣・パートなど雇用関係に関する雇用形態があります。
勤務形態は、勤務した時間帯によって通常労働・時間外労働・深夜労働・休日労働に分けられます。
残業や深夜労働、休日出勤は、割増賃金が適用される場合もあるため正しく記入しましょう。
また、雇用形態も重要です。
建設現場で働く人は派遣社員や日雇い労働者など、雇用関係は多岐にわたります。
雇用形態や賃金規定により賃金計算が異なるため、雇用形態も把握しておくようにしましょう。
勤務日
出面表はカレンダーのように、日付がすでに記載されている形が基本です。
出勤した日の欄に勤務時間を記載しましょう。
よくあるミスとして、数時間だけスポットで応援に来たときなど、記載忘れがありがちです。
また、出勤日を間違えて記載していることもよくあります。
出勤した日と勤務時間は正確に記入しましょう。
出面表の管理方法
出面表は現場全体を管理するための重要なツールです。
従来は紙やエクセルでの管理が主流でしたが、近年アプリやクラウド型の出面表システムが多数リリースされています。
ここでは、それぞれの特徴や管理方法について解説します。
紙を利用する
パソコンが普及する以前は、紙での管理が主流でした。
現場は多種多様な業種の職人が多く出入りするため、アナログ管理が有効な場合もあります。
そのため今も紙で管理している現場もあります。
紙を利用する場合は、記入漏れや紛失に注意が必要です。
出面表の情報を正として処理を行うため、もし書き間違っていればそのまま労働時間や賃金に反映されることになります。
また、書き換えができないようにボールペンなどを利用し、不正を防ぐことも重要です。
紙の情報をパソコンに落とし込む際には、入力ミスにも注意しましょう。
紙で管理をしていると年間で数百枚と膨大な量になり、保管場所も必要になります。
紛失を防ぐためにも、早めにPDFなどでデータ化し、クラウド上で管理するといいでしょう。
エクセルで管理する
エクセルで表を管理する方法もあります。
ウェブ上にはテンプレートを配布しているサイトも多数存在し、利用しやすいことが特徴です。
関数を組み込ませれば、勤務日数や労働時間を自動集計し、数カ月、数年分をまとめて管理することもできます。
過去の実績と比較することもできるため、とても便利です。
ただし、利用するにはある程度の知識が必要です。
関数がすでに組み込まれているテンプレートでも、エラーが起こった際に対処できなければ正しく集計ができません。
システムを活用する
近年ではアプリなどを利用した出面表管理システムが広まっており、国土交通省もシステムについて言及し、利用を促進する動きが出てきています。
アプリやシステムの利用には、ICカードや顔認証が用いられていることが多く、操作性の向上と不正防止を同時に行うことが可能です。
データがシステム上に蓄積されていき、自動で集計されるため、手書きや手入力のような人的ミスを防ぐこともできます。
請求書データと紐づけて経理と連携すれば、給与計算や請求処理も容易です。
出面表管理の注意点
アプリやシステムは導入の手間や費用もかかるため、中小企業で導入している企業はまだそれほど多くありません。
紙やエクセルで管理している企業も多い中、出面表は個人情報や企業情報が詰まったものであるため、管理には細心の注意を払う必要があります。
出面表の管理で注意する点は以下のようなものです。
- 情報漏洩
- 情報の共有やダブルチェック
- 記入漏れ、ミス
それぞれについて見ていきましょう。
情報漏洩に注意
紙で管理する場合、事務所に置きっぱなしにしていると、多くの人が出入りするため紛失や書き換えなどが起こる可能性があります。
同時に個人情報や工事に関する情報の漏洩にもつながる恐れがあるため、情報管理は非常に重要なポイントと言えます。
エクセルやアプリなどのシステムを利用する場合も同様です。
管理画面へのアクセス権限を制限し、IDやパスワードなどの情報もしっかりと管理しておく必要があります。
情報の共有やダブルチェック
出面表は個人情報保護や情報漏洩防止の観点から、基本的に1人、または少人数で管理をします。
しかし担当者が休むときや不在時に、「保管場所や操作方法がわからない」ということにならないよう、最低限の情報共有は行うことがポイントです。
また、1人で管理と確認を行うと、人的ミスがあった場合に防ぐことができません。
慣れない場合や大規模な現場の管理をする場合は担当者を増やし、エリアや職種ごとに管理を分けることも検討しましょう。
ダブルチェックを行い、ミスを未然に防ぐことも大切です。
記入漏れ・ミス
どの管理方法においても、記入漏れや記入ミスに注意が必要です。
間違ったままにしておくと、賃金計算や安全管理にも影響が出てきます。
時間が経ってから修正しようとすると、該当日の勤務の実態を証明する必要が出てくるため、手間がかかります。
また、不測の事態が発生した際に正しく確認が取れず、現場の安全管理が問われることにもなりかねません。
記入漏れやミスに気が付いたら、早めに修正するようにしましょう。
まとめ
出面表は現場名、出勤日、勤務時間など、建設現場に関わる人の勤務状況を一覧で管理するものです。
労務管理だけでなく、給与や安全管理にもつながる重要なものです。
書き間違いや記入漏れがあると正しく管理できず、賃金管理や安全管理に影響が出るため、正しく記入しましょう。
この記事では、出面表の書き方や管理方法について解説しました。
出面表の適切な作成・管理は、企業の生産性向上やコンプライアンス遵守に繋がる重要な役割を果たすものです。
近年は、アプリなど便利なシステムが数多くリリースされています。
より安全に、正確な管理を行うため、現場のDX化を検討するのもいいでしょう。
もし、出面表について疑問や課題があれば、専門家にご相談ください。