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専任技術者が退職したら建築業許可は失効?必要な手続きと対処法

建設業の許可を取得する際、いくつもの要件を満たすのが大変だったという記憶がある方も多いことでしょう。

それらの要件は、許可を取得した後も継続してクリアしなければならないため、常に気をつけていなければなりません。

ここでは、建設業許可を取得するための要件のひとつである専任技術者の配置について確認していきます。

専任技術者とは?専任技術者になるための要件を確認

建設業許可を取得するためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。

そのような要件のひとつに専任技術者の配置があります。

専任技術者が退職してしまうと、建設業許可はすぐに取り消されてしまうのでしょうか。

また、どのような手続きを行う必要があるのでしょうか。

専任技術者の配置は建設業の許可を取得するための要件

最初に、建設業許可を取得するための要件について確認しておきましょう。

建設業の許可を取得するためには、以下の5つの要件をクリアしなければなりません。

  • (1)経営業務の管理責任者を有すること
  • (2)営業所ごとに専任技術者を有すること
  • (3)誠実性を有すること
  • (4)財産的基礎または金銭的信用を有すること
  • (5)欠格要件に該当しないこと
経営業務の管理責任者を有すること

経営業務の管理責任者とは、建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有しており、対外的に責任を有する地位にある人をいいます。

経営業務の管理責任者になるためには、以下の3つの要件を満たさなければなりません。

  • (1)法人の場合は役員として登記されている者であり、個人事業であれば個人事業主本人か支配人として登記されている者であること
  • (2)常勤であること
  • (3)許可を受けようとする業種で一定の経験が5年以上あること、または許可を受けようとする業種以外での一定の経験が7年以上あること
営業所ごとに専任技術者を有すること

今回取り上げたテーマです。

要件などは後で詳しく確認します。

誠実性を有すること

誠実性とは、詐欺、脅迫、横領などの行為をするおそれがないことをいいます。

具体的には、過去5年以内に建築士法や宅地建物取引法などの法律に基づく行政処分を受けていないことが求められます。

財産的基礎または金銭的信用を有すること

財産的基礎として求められるのは、貸借対照表の純資産の部が500万円以上であることです。

法人の場合、設立当初は資本金500万円以上でなければなりません。

金銭的信用とは、純資産の部が500万円未満である場合に500万円以上の財産があることをいいます。

預金の残高証明書や不動産の評価証明書などで、500万円以上の財産があることを証明する必要があります。

欠格要件に該当しないこと

過去に建設業の許可を取り消されて5年を経過していない者や、禁固以上の刑に処せられて5年を経過していない者、破産者で復権を得ない者などは欠格要件に該当するため、建設業の許可を取得することはできません。

「営業所ごとに専任技術者を有する」ことの意味とは

建設業の許可を取得するための要件である専任技術者とは、どのような人のことをいうのでしょうか。

また、営業所ごとに必要であるとされていますが、複数の営業所の専任技術者を兼務したり経営業務の管理責任者と兼務したりすることはできないのでしょうか。

詳しい内容を確認してみましょう。

専任技術者になることができる人

専任技術者とは、営業所に常勤してもっぱらその業務に従事する人をいいます。

専任技術者になるためには、以下の要件のうちいずれか1つ以上を満たす必要があります。

(1)所定の国家資格を有している

建設業の業種ごとに定められた国家資格を有していれば、実務経験に関係なく専任技術者になることができます。

(2)高校の所定学科を卒業後5年以上の実務経験がある、あるいは高専・大学の所定学科を卒業後3年以上の実務経験がある

建設業の業種によって、要件を満たすことができる所定の学科が定められています。

また、実務経験については許可を受けようとする業種の実務経験でなければなりません。

(3)10年以上の実務経験を有している

国家資格や高校・高専・大学の所定学科を卒業していなくても、許可を受けようとする業種の実務経験が10年以上あれば専任技術者になることができます。

経営業務の管理責任者とは異なり、法人の役員や個人事業主本人あるいは支配人である必要はありません。

ただし、その営業所に常勤している人でなければならないため、非常勤やパート・アルバイトの者が専任技術者になることはできません。

専任技術者を兼務することができるのか

専任技術者は、営業所ごとに配置することが求められています。

そのため、1人で複数の営業所の専任技術者になることは認められません。

一方、経営業務の管理責任者と専任技術者を兼務することはできます。

もちろん、この場合は1人で経営業務の管理責任者と専任技術者それぞれの要件を満たしている必要があります。

専任技術者がいなくなった場合の手続き

退職などの理由で専任技術者となっていた者が営業所からいなくなった場合、どのような対応が必要となるのでしょうか。

また、その営業所に専任技術者となれる人がいない場合、どのようなことが起こるのでしょうか。

専任技術者の要件を満たす人がいる場合

これまで専任技術者として登録されていた者がその営業所からいなくなってしまっても、代わりに専任技術者となることができる人がいる場合、慌てる必要はありません。

新たな専任技術者に交代するものとする内容の変更届を、各都道府県に提出すれば手続きは完了します。

この際、新たに専任技術者となる人が所定の国家資格を有しているのであれば、その資格を有していることを証明するために資格証の写しを提出します(原本の提示または原本証明が必要)。

また、実務経験を有する人が専任技術者となる場合は、その実務経験を有することの証明書が必要となります。

この変更届は、専任技術者の変更があってから14日以内に提出しなければなりません。

専任技術者の要件を満たす人がいない場合

専任技術者となることができる人が営業所内にいない場合、まずは他の営業所から専任技術者となることができる人を配置できないか検討しましょう。

ただし複数の営業所で専任技術者を兼務することはできないため、専任技術者となっていない人から選ぶ必要があります。

どうしても専任技術者となることができる人がいない場合、専任技術者が退社していなくなったことを記載した届出書を提出することとなります。

この届出書は、退社してから14日以内に届け出る必要があります。

この届出書を提出すると、建設業の許可を取り消されることとなるため、廃業届を提出するように指導されます。

ただ、この廃業届は会社や個人事業としてすべての事業をやめることを届け出るものではありません。

廃業届を出すことで当該業種の建設業についての許可は取り消されてしまいますが、その後要件を満たすことができた場合はすぐに許可申請をすることができます。

ペナルティを受けて建設業許可が取り消された場合、その後5年間許可申請ができなくなることとは大きな違いがあるのです。

必ず14日以内に届出書を提出し、その後廃業届の提出を忘れないようにしましょう。

専任技術者がいなくなる具体例と対処法

実際に専任技術者がいなくなってしまう時には、どのようなケースがあるでしょうか。

また、その時にどのような対応が必要となるのでしょうか。

対応が分かっていれば、専任技術者がいなくなっても慌てずに準備ができるはずです。

中小企業や個人事業の場合

中小企業や個人事業で専任技術者がいなくなってしまうケースとして最も考えられるのが、専任技術者となっていた経営者が常勤することができなくなるケースです。

というのは、中小企業や個人事業として建設業の許可を取得している場合、その多くで経営者が経営業務の管理責任者となり、かつ専任技術者となっているからです。

経営者が元気なうちに別の人に経営を引き継ぐことができれば大きな問題にはなりません。

しかし中には、経営者が事故で亡くなってしまったり、突然病気になって入院してしまったりすることもあります。

この時に専任技術者となることができる人がいないと、最悪の場合、建設業許可が取り消しとなってしまうのです。

このような事態を防ぐためには、専任技術者の要件を満たす従業員を育成することが必要です。

具体的には、この3点を考えてみましょう。

  • 国家資格を取得させること
  • 所定の学科を卒業した人を雇用すること
  • 従業員を社会保険に加入させること

国家資格の取得をバックアップすることで、専任技術者の要件をクリアする従業員を育てることを目標にしましょう。

資格取得のための費用補助や資格取得後の手当て支給の制度を設ければ、従業員のやる気を引き出すことができるはずです。

次に、所定の学科を卒業した人を雇用することで、より短い期間で専任技術者の要件を満たすことができます。

また、社会保険への加入は従業員の定着を図るとともに、常勤で10年間勤務したことを証明するための書類として利用することができます。

ただ、このような方法をとったとしても簡単に育成することはできません。

どうしても育成することができなかった場合は、要件を満たす人を雇用するしかありません。

大企業の場合

大企業の場合は中小企業と異なり多くの営業所を有していることが考えられるため、従業員には定期的な異動があります。

そのため、専任技術者となっていた従業員が転勤してしまうことで、専任技術者が不在にならないよう気を付けなければなりません。

大企業の場合で特に注意が必要なのは、親会社などから出向で来ている従業員が専任技術者となっているケースです。

常勤していれば出向者がその出向先で専任技術者となることは問題ありません。

しかし、出向解除となって元の会社に戻ったり別の営業所に転勤したりする際に、専任技術者が空席となってしまい後任者がいないということにならないよう、注意しなければならないのです。

また、従業員が専任技術者となっている場合、その従業員が突然退職してしまうこともあり得ます。

その営業所に専任技術者となれる人がいない場合は、他の営業所から異動させなければなりません。

突然の退職といった事態にも対応できるよう、各営業所で専任技術者になれる人を複数配置することが望ましいでしょう。

まとめ

建設業の許可を得るための要件として大きなハードルとなるのが、専任技術者の配置です。

中小企業や個人事業の場合、その経営者自身が専任技術者となることも多いと思いますが、不慮の事態で専任技術者が不在となってしまうことがないよう手を打っておく必要があります。

そのためには、従業員の教育や、長期間にわたって働き続けることのできる環境づくりなどが重要となります。

従業員が目標を持って働き続け、あるいは資格を取得しようと考えるような職場となるよう、経営者自ら行動することが必要なのです。

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