この記事でわかること
- コンクリート打設の工法の種類
- コンクリート打設の具体的な手順
- コンクリート打設の注意点
コンクリート構造物を建設するにあたって重要となるのがコンクリート打設であり、この作業は構造物の耐久性や安全性に大きく影響します。
コンクリート打設と聞いても、どのような作業なのか、何のために行うのかわからない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、コンクリート打設について解説します。
工法の種類や具体的な手順、施工にあたっての注意点などを詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
コンクリート打設とは
コンクリート打設とは、建築工事や土木工事において、生コンクリート(固まる前のコンクリート)を建築物や構造物の基礎部分の型枠に流し込み、充填させる作業です。
生コンクリートは工場で製造されて、ミキサー車などで工事現場に運ばれます。
そして、打設現場の型枠に流し込まれ、十分に充填・硬化させます。
適切な品質管理のもとで作業を行うことで、高品質かつ高強度な構造物をつくることができます。
また、コンクリート打設は、建物の基礎・道路・トンネル・ダム・橋など、様々な工事で行われており、適切に施工することで耐久性や安全性が確保され、地震などによる倒壊を防止できます。
コンクリート打設の工法
コンクリート打設の工法には、以下の3種類があります。
- コンクリートポンプ工法
- コンクリートバケット工法
- 一輪車を使った工法
ここからは、それぞれの工法を詳しく紹介します。
コンクリートポンプ工法
コンクリートポンプ工法とは、コンクリートポンプ車を使って型枠に生コンクリートを流し込む工法です。
具体的には、コンクリートポンプ車の後ろにミキサー車を配置し、ミキサー車の運んできた生コンクリートを、コンクリートポンプ車の配管を通して打設現場の型枠に圧送します。
コンクリートポンプ車の性能によって、圧送量や作業範囲が異なります。
コンクリートバケット工法
コンクリートバケット工法とは、ミキサー車が運んできた生コンクリートをバケットに移し、それをクレーンで打設現場に搬送して打設する工法です。
生コンクリートを圧送せずそのままの状態で搬送できるため、骨材の損傷や材料分離を軽減でき、品質を維持できる、また作業後の清掃やメンテナンスが容易であるといったメリットがあります。
一輪車を使った工法
機械や重機を設置できない狭い場所でコンクリート打設を行う場合、一輪車を使って生コンクリートを打設現場まで搬送することがあります。
狭い範囲で少量の生コンクリートを打設する場合に用いられる工法です。
ただし、搬送時の振動で材料分離などが生じる可能性があるため、搬送経路をできるだけ平らにする、また搬送距離を短くするといった工夫が必要です。
コンクリート打設の手順
強度が高く高品質なコンクリート構造物をつくるには、正確な手順で尚且つ丁寧な作業が求められ、手順をしっかり守る必要があります。
コンクリート打設の具体的な手順は、以下のとおりです。
-
①打設方法の選定
②打ち込み準備
③受入検査
④コンクリート打設
⑤締固め
⑥仕上げ
ここからは、コンクリート打設のそれぞれの作業内容を詳しく解説します。
①打設方法の選定
先述したとおり、コンクリート打設にはコンクリートポンプ工法とコンクリートバケット工法、一輪車を使った工法の3種類があります。
打設現場の規模や予算・工期などの条件から、いずれの工法で施工するのが相応しいかを検討します。
②打ち込み準備
コンクリートを流し込むための鉄筋や型枠を設置し、設計図面どおりに配置されているか確認します。
鉄筋や型枠の位置は、完成後の強度に影響するため、適切な位置に配置されているかをしっかりチェックする必要があります。
また、型枠内部には鉄筋の削りカスなどのごみが落ちているため、コンクリート打設前に高圧水洗浄などで除去作業を行います。
③受入検査
ミキサー車で打設現場に運ばれてきた生コンクリートが発注どおりのものか、計画通りの品質・強度であるかを検査します。
納品書確認、以下の試験を行い、必要な基準値を満たしているかを確認します。
- スランプ(生コンクリートのやわらかさを計測する)試験
- 空気量試験
- 塩化物量試験
- 圧縮強度試験
④コンクリート打設
受入検査を終えたら、設置した型枠に生コンクリートを流し込みます。
生コンクリートは時間の経過とともに硬化するため、打設時間を考慮してできるだけ速やかに行う必要があります。
生コンクリートの練り混ぜを行ってから打設を完了するまでの時間は、外気温が25℃以下の場合は120分以内、外気温が25℃を超える場合は90分以内と規定されています。
打設作業に時間がかかってしまうと、コンクリートの強度や品質に影響が生じる可能性があるので注意が必要です。
また、コンクリートを2層以上重ねる場合は重ね打ちを行います。
重ね打ちを行う場合は、外気温が25℃以下の場合は150分以内、外気温が25℃を超える場合は120分以内に打設を完了させる必要があります。
重ね打ちの場合も時間がかかりすぎると、先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートが一体にならず、コンクリート間に継ぎ目ができてしまう可能性があります。
この継ぎ目は、コンクリートのひび割れや漏水の原因となり、建物の耐久性を低下させる恐れがあります。
⑤締固め
コンクリートを打設した後、型枠内のすみずみまで行き渡らせるために、締固め作業を行います。
締固めの方法には、内部振動方式と型枠振動方式の2種類があります。
内部振動方式
内部振動方式とは、打設した直後に型枠内のコンクリートに振動棒を挿入し、コンクリート内に残留する気泡を排除することで、型枠内のすみずみまで充填させる方法です。
型枠内の鉄筋が複雑に交差する場合はすみずみまでコンクリートが行き渡りにくいため、十分に締固め作業を行う必要があります。
また、重ね打ちを行う場合は、先に打設したコンクリート内部まで振動棒を挿入することで継ぎ目を生じにくくできます。
型枠振動方式
型枠振動方式とは、型枠の外部から木槌で叩く、あるいは型枠用振動機を使うなどして振動を与えることで、コンクリート内の余分な気泡を排除する方法です。
型枠を木槌で叩く音によって、コンクリートが十分に充填しているか確認できます。
⑥仕上げ
締固め後、仕上げ作業を行います。
コンクリート打設後、締固めをしただけでは、コンクリートの表面に凹凸が残り綺麗に仕上がりません。
そのため、表面をこてなどを使ってなめらかにする必要があります。
コンクリート打設の注意点
コンクリート打設時の注意点として、主に以下の4つが挙げられます。
- 受入検査を行うこと
- 打設完了までの時間を管理すること
- 適切な養生を行うこと
- 雨の日に打設を行わないこと
ここからは、それぞれの注意すべき点を詳しく解説します。
受入検査を行うこと
1つ目が、打設前に生コンクリートの受入検査を行うことです。
コンクリートの品質管理においては、受入検査の工程が非常に重要です。
受入検査では、先述したスランプ試験、空気量試験、塩化物量試験、圧縮強度試験を行いますが、それぞれ規定基準値を満たしているかなどをよく確認する必要があります。
検査の工程を怠ると、コンクリートの欠陥などの事故に繋がる可能性があるので注意しましょう。
打設完了までの時間を管理すること
2つ目が、コンクリート打設を完了するまでの時間を管理することです。
先述したとおり、コンクリートの打設を行う際、練り混ぜから打設までの時間や打ち重ね時の時間が決まっています。
この時間が経過すると、継ぎ目が生じ、建物の強度や品質に影響を及ぼしかねません。
また、生コンクリートの打設現場へ運搬するまでの時間などにも注意が必要なので、きちんと時間管理を行い、速やかに作業を進めることが重要となります。
適切な養生を行うこと
3つ目が、コンクリート打設の作業を完了した後に適切な養生を行うことです。
コンクリートは、コンクリートの原料であるセメントと水の水和反応が起こることで硬化し、強度が高まります。
水和反応を適切に進めるためには、湿度を保ち外部からの衝撃などからコンクリートを保護する必要があり、コンクリートが露出する部分に散水シートで覆って適切な養生を行わなければなりません。
また、養生期間は、次のとおり、セメントの種類や温度・湿度などにより異なり、状況に合わせて適切な期間行う必要があります。
温度 | 普通ポルトランドセメント | 混合セメントB種 | 早強ポルトランドセメント |
---|---|---|---|
5℃以下 | 9日間 | 12日間 | 5日間 |
10℃以下 | 7日間 | 9日間 | 4日間 |
15℃以下 | 5日間 | 7日間 | 3日間 |
雨の日に打設を行わないこと
4つ目は、雨の日のコンクリート打設を行わないことです。
基本的に、打設前や打設後であればそこまで影響しないと言われますが、打設中の雨には十分に注意する必要があります。
生コンクリートは、セメント・水・砂利・砂を混ぜてつくられていますが、コンクリートの強度には、セメントと水の割合が大きく影響します。
生コンクリートは、元々必要な強度を確保するためにセメントの水の割合を算出してつくられています。
そのため、雨の日に打設するとセメントと水の比率が崩れてしまい、コンクリートに必要な強度を保てない可能性があり得ます。
小雨であれば品質に影響を及ぼす可能性は低いですが、強い雨の日のコンクリート打設は避けた方がよいでしょう。
まとめ
コンクリート打設は、建物の基礎の耐久性を確保する上で非常に重要な工事です。
工程や打設時間が、コンクリートの強度や品質に大きく影響するため、仕様書や規定に従い作業を進める必要があります。
本記事で紹介した内容を押さえることで、理想的なコンクリート打設を実現できるでしょう。