この記事でわかること
- コンクリート打設の概要
- コンクリート打設の手順・流れ
- コンクリート打設の工法
- コンクリート打設の注意点
コンクリート打設は構造物の耐久性などを左右するため、高品質を要求される工事です。
施工する場合は「とび・土工・コンクリート工事業」の許可を必要としますが、その他の工事と関連性が高いため、自社の業務拡大につながりやすいでしょう。
また、コンクリート打設は需要が多く、建物の基礎や駐車場、玄関までのアプローチや犬走り(幅が短く長さがある空き地)などにも施工されます。
ただし、生コンクリートを扱うため、作業全体の工程を把握し、スピーディに施工しなければなりません。
今回は、コンクリート打設の手順や工法、施工時の注意点などをわかりやすく解説します。
コンクリート打設とは
コンクリート打設とは、木製の型枠に生コンクリートを流し込み、打ち固める工事です。
かつては生コンクリートから空気や水を抜くため、表面を叩く、あるいは棒状の工具で突いたたことから、コンクリート打設と呼ばれるようになりました。
空気や水が抜けたコンクリートは内部の隙間がなくなり、強度が増すため、構造物の安定性や耐久性も向上します。
施工品質のよいコンクリート打設であれば、建物を地震による倒壊から守れるでしょう。
なお、現在のコンクリート打設はコンクリートバイブレーターなどを使うケースが多いため、手作業で空気や水を抜く施工は少なくなっています。
コンクリート打設の手順・流れ
建物の基礎などにコンクリート打設する場合、手順は以下のようになります。
工事全体の流れに狂いが生じないよう、関連業者と十分な打ち合わせを行い、進捗状況を入念にチェックしてください。
現地調査
コンクリート打設する場合、まず現地調査が必要です。
現地調査では構造物の荷重に耐えられる地盤かどうか、機械や車両をどう配置するかなど、様々な項目をチェックします。
軟弱地盤だった場合は構造物が沈下するため、現地の状況を入念に調査してください。
また、隣地オーナーとトラブルにならないよう、境界表示(境界ピンなど)も必ずチェックしておきましょう。
打設計画書の作成
現地調査の終了後は打設計画書を作成し、関連業者と情報共有します。
打設計画書を作成する際は、以下の項目を決めておきましょう。
- コンクリート工事の全体概要
- 日程などの打設計画
- コンクリート会社への入荷手配
- コンクリート配送や圧送方法
- コンクリートの配合や種類
- コンクリートの強度
- コンクリートの打設工法
- コンクリートの養生方法
- 人員配置
- 打設場所の図面
- 受入検査の回数
- 打設計画書および各種書類の管理方法
コンクリート打設が始まると中断できないため、適切な工法を選択しなければなりません。
打設工事の開始地点と終了地点なども決定し、関連業者へ漏れなく打設計画書を配布すると、工事中のトラブルを防止できるでしょう。
コンクリート打設の準備
コンクリート打設の準備は以下の4工程に分かれており、すべて工事品質に影響します。
型枠や鉄筋などをチェックし、コンクリートを流し込める状態かどうか判断してください。
- 鉄筋や型枠の配置確認
- 開口部などの目印設置
- 型枠内部の清掃
- コンクリート打設の事前周知
コンクリートは均一な高さを出す必要があるため、鉄筋や型枠が設計図どおりの配置かどうか確認し、コンクリート天端から一定の高さに基準点も設置します。
また、コンクリート打設には多くの業者が関連するため、吹き出しや開口部がわかるよう、鉄筋や型枠に養生テープなどを貼り付けます。
型枠内部にゴミが残ると、コンクリートの強度や仕上げの美しさに影響するため、おがくずなどがあれば必ず除去してください。
準備が仕上がったら、関係者全員に施工日の作業内容を周知しておきましょう。
受入検査
コンクリート打設の際には受入検査が必要になるため、ミキサー車が到着したときは荷卸しの前に以下の項目を検査します。
- スランプ試験:生コンクリートの柔らかさが既定の範囲内かどうかを測定
- 空気量試験:生コンクリートに含まれる空気量が既定の範囲内かどうかを測定
- 塩化物量試験:測定器を使って生コンクリートの塩分濃度を測定
- 温度検査:生コンクリートが35℃以下かどうかを測定
規定の品質に満たないコンクリートは建物の強度を弱めるため、検査漏れがないように注意してください。
また、受入検査の際には空気量を測定するエアメーターや、塩化物イオン量の測定器などが必要です。
コンクリート打設と締固め
コンクリートを打設する場合、型枠への流し込みと空気抜きを同時進行させるため、とび職人や左官職人などの連携が重要です。
また、コンクリート打設は以下の時間内に完了させる必要があります。
【練り混ぜから打設完了まで】
- 外気温が25℃以下の場合:120分以内
- 外気温が25℃を超える場合:90分以内
【打設が2層以上になる場合】
- 外気温が25℃以下の場合:150分以内
- 外気温が25℃を超える場合:120分以内
規定時間を超えると上下の層が一体化しないコールドジョイントになり、漏水やひび割れの原因になります。
また、コンクリートの締固めには基本的に棒状バイブレータ―を使い、内部から気泡を追い出しますが、作業が不十分だった場合はジャンカなどが発生します。
生コンクリートは連続供給が必要になるため、ミキサー車の到着にも配慮しましょう。
仕上げ
生コンクリートの締固めだけでは表面に凸凹ができるため、以下の方法で表面を均一に仕上げます。
- 均し:コンクリートの表面をトンボで均す方法
- 金鏝(かなごて)均し:トンボなどで均した後に金鏝で表面を仕上げる方法
- 木鏝(きごて)均し:表面を新たな下地にする場合、トンボで均した後に木鏝で仕上げる方法
- 金鏝仕上げ:コンクリートの最終仕上げ、または塗装仕上げの場合に施工
駐車場やスロープにコンクリート打設する場合、滑り止めとして箒(ほうき)や刷毛などを使った目荒らしを施工するケースもあります。
仕上げも外気温に左右されるため、コンクリートの固まり具合をよく確認しておきましょう。
コンクリート打設の工法
コンクリート打設する場合、施工場所の面積や高さに応じて適切な工法を選択します。
各工法によってミキサー車到着後の手順や職人の配置が変わるため、具体的な内容は以下を参考にしてください。
コンクリートバケットを使った工法
コンクリートバケットとは、ミキサー車が運搬した生コンクリートを仮受けする容器です。
バケットは漏斗状になっており、コンクリートを流し込んで現場まで運び、打設作業を開始します。
コンクリートバケットは「コンクリートホッパー」とも呼ばれており、工事の際には以下のメリットがあります。
- 生コンクリートの状態を打設開始まで維持できるため、施工品質が高くなる
- コンクリートの強度を出しやすく、高強度品質が求められる工事に向いている
- バケットの種類が多く、現場の型枠に合せて選択できる
- 少量のコンクリートを打設する現場に向いている
- バケットの清掃やメンテナンスが容易
コンクリートを直接投入できない護岸工事や河川工事の場合、コンクリートバケットを使った工法が効率的になるでしょう。
コンクリートポンプ車を使った工法
コンクリート打設する場合、コンクリートポンプ車から施工場所にコンクリートを圧送する工法もあります。
ミキサー車からコンクリートポンプ車へ生コンクリートを移し、ブーム(輸送管)を通して圧送するため、高い場所などのコンクリート打設に向いています。
また、ブームは折りたたみ式になっており、車両によっては40m近くの長さがあります。
コンクリートポンプ車が浮かないようにアウトリガーを使う場合もあるため、打設計画書を作成するときは作業スペースの広さを考慮してください。
手押し車を使った工法
手押し車を使った工法は「ネコ打ち」とも呼ばれており、狭い場所のコンクリート打設に向いています。
少量のコンクリートを打設するときも、手押し車を使うケースが多いでしょう。
コンクリート打設の注意点
コンクリート打設は外気温や天候に影響されるため、以下のような注意が必要です。
夏と冬では生コンクリートの種類を変える必要があり、養生も適切な方法を選択しなければなりません。
必ず受入検査を行う
生コンクリートの受入検査を怠ると、施工品質が下がる可能性があります。
受入検査は短時間で終わるため、スランプや空気量などの試験を必ず行い、規定の強度になるかどうか必ずチェックしてください。
また、受入検査の際には、納品書の内容も確認しておきましょう。
雨天のコンクリート打設は強度が下がる
コンクリートはセメント・水・砂・砂利を配合しているため、雨天に打設すると強度が下がる恐れがあります。
雨にさらされる場所でコンクリート打設すると、水の割合が多くなり、必要な強度を出せなくなるでしょう。
工期の終了が迫っているときはブルーシートを張り、雨水を防いでコンクリート打設するケースもあります。
コンクリート打設のタイミング
コンクリートの打設には標準的なタイミングがあり、練り混ぜから打設完了までの時間が規定されています。
上層・下層の打ち重ねにも規定があるため、時間がかかり過ぎるとコールドジョイントの発生リスクが高くなります。
ミキサー車の到着後は作業の遅延が許されないため、現場監督が時間をチェックし、工事の進捗状況全体を管理しなければなりません。
コンクリート打設するときの気温
コンクリートを打設するときは、必ず気温を確認してください。
施工に適した気温は25℃前後、コンクリートの温度は35℃以下ですが、夏の気温は30℃を超えるため、コンクリートが早く固まってしまいます。
真夏は早朝や午前中がコンクリート打設に適していますが、騒音の苦情が出やすく、生コンクリートの出荷も早朝には対応してもらえないケースがあるでしょう。
冬期はコンクリートが固まりにくいため、気温が低いときは工事をスタートできないケースもあります。
コンクリートが固まるタイミング
コンクリートが固まるタイミングは以下のようになっており、完全に硬化するまで1カ月程度かかります。
- 人が立ち入れる程度:打設から2~3日程度
- 車を駐車できる程度:打設から6~7日程度
- 完全硬化:1カ月程度
なお、コンクリートはセメントと水の水和反応で固まるため、気温が5℃以下になると打設工事が難しくなります。
工事の途中で気温が0℃以下になるとコンクリートが凍結し、気温が上がっても固まらなくなるため、最初からコンクリート打設をやり直すことになるでしょう。
冬期の工事に使う生コンクリートを「寒中コンクリート」、夏用を「暑中コンクリート」といい、成分の配合が違うため、季節や気温で使い分けなければなりません。
養生の方法
生コンクリートを養生するときも、気温や日照時間に合わせた方法を選択する必要があります。
養生には水和反応を適切に進行させる目的があるため、セメントの種類や気温を考慮し、標準的な養生期間が規定されています。
たとえば、コンクリートに普通ポルトランドセメント(速乾性のセメント)を使用した場合、養生には以下の期間が必要です。
- 15℃以上:5日
- 10℃以上:7日
- 5℃以上:9日
気温が低い時期は養生期間が長くなるため、工期を短縮したいときは単管パイプとブルーシードで簡易テントを組み、ヒーターで周辺温度を上げる場合もあります。
コンクリートの打設場所によっては電熱マットを使ったり、断熱材で保温したりするケースもあるでしょう。
まとめ
コンクリート打設は建物の躯体に関わるため、鉄筋工事や型枠工事との親和性があります。
関連する工事をまとめて施工できれば、元請からの発注も増加する可能性があるでしょう。
すでに大工工事業を取得している場合、型枠工事とコンクリート打設をセットで受注できるため、会社を大きく成長させる機会にもなります。
コンクリート打設はとび土工工事の許可が必要になるため、申請要件などがわからないときは、ベンチャーサポート行政書士法人の無料相談を活用してください。