建設業とは、元請・下請を問わず、建設工事の完成を請負うことをいいます。
例を挙げて説明すると、家を建てたい注文者から工事の注文を受けた、○○建設であるとか、△△工務店などのようなものが該当します。
建設業を行うためには建設業許可を受ける必要があります。
建設業の許可を受けるためには、5つの要件が必要となります。
その中でも、今回の記事の主要な内容とする要件は、「欠格要件に該当しないこと」と「請負契約に関して誠実性があること」です。
後述する他の三つの要件も満たすことが必要となりますが、特に上記二つの要件は、基準が厳しく法令の規定の仕方も分かりにくいため専門家以外の方は戸惑われることが多いようです。
そのため今回の記事では「欠格要件」と「不誠実」の内容を明らかにし、建設業許可を受けようとする方々に役立つ情報を提供してまいります。
建設業許可を受けるための五つの要件
- 経営業務の管理責任者がいること
- 専任技術者を営業所ごとに置くこと
- 請負契約に関して誠実性がること
- 請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有すること
- 欠格要件に該当していないこと
建設業法第七条では、国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
引用:法令検索データベース
http://elaws.e-gov.go.jp
と規定し、上記の五つの要件を要求しています。
また建設業法第八条では暴力団の構成員ではないことも要求しています。
このうち、管理責任者・専任技術者・請負契約を履行するに足りる信用を有するという三つの要件は、法令に従い形式的にクリアできる場合が大半です(証明する資料が多く大変ですので、専門家に依頼される方がスピーディーに事が運ぶと考えます)。
しかし、誠実性があることと欠格要件に該当しないことは、建設業許可を受けようとする側の過去の事実を評価されるため、該当してしまうと建設業許可が下りないということになります。
欠格要件とは?
欠格要件は建設業法第八条等に要件が定められています。
これに該当してしまうと、他の基準を全て満たしても、建設業許可を受けることができません。
ここでは条文の文言どおりに説明することが目的ではありませんから、ある程度デフォルメした形で説明させていただきます。
なお、ここでの建設業許可を受けようとする者とは、法人の場合にはその法人の役員、個人事業の場合にはその本人・支配人・その他営業所長などを指します。
欠格要件一覧
- 許可申請書もしくはその添付書類中の重要な事項について、虚偽の記載があるか重要な事実の記載が書けているとき
- 許可を受けようとする者が成年被後見人・被保佐人である者
- 破産者で復権を得ない者(注1)
- 不正の手段によって建設業許可を受けたことにより許可の取消処分を受け、その取消の日から五年を経過しない者
- 許可を受けようとする者が、許可の取消を免れるために廃業の届出をしてから五年を経過していない場合
- 許可を受けようとする者が建設の工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたか、およぼすおそれが大きいこと
- 許可を受けようとする者が、請負契約に関し不誠実な行為をしたため、営業の停止を命じられ、現在その停止期間中であること
- 許可を受けようとする者が禁固以上の刑に処せられその刑の執行を終えたか、その刑の執行を受けることがなくなってから五年を経過していない場合
- 許可を受けようとする者が一定の法令(注2)に違反し、又は刑法などの一定の罪を犯し罰金刑に処せられ、その刑の執行を終わり、若しくはその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない場合
- 役員等(顧問・相談役なども広く含む)に暴力団や過去五年以内に暴力団員だったものが所属している法人、暴力団員等である個人、暴力団員等に事業活動を支配されている者
(注1)破産者については、「復権」を得ればよいです。
多くの破産事件については「破産手続開始決定」とともに「同時廃止」されるケースがほとんどです。
同時廃止されれば復権を得たことになりますので、建設業許可の申請をすることができます。
免責決定までは受ける必要がありません。
また、経営者の方にありがちな場合として「管財事件」となり手続が長引くことがありますが、「免責許可決定の確定」を受ければ当然に復権します。
(注2)「一定の法令」とは次のようなものです。
- 建設業法
- 建築基準法、都市計画法、労働基準法、労働者派遣法など
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
- 刑法204条(傷害罪)、同206条(傷害罪の現場助勢)、同208条(暴行罪)、同208条の2(凶器準備集合罪)、同222条(脅迫罪)若しくは同247条(背任罪)の規定
- 暴力行為等処罰法
欠格要件の具体例
普通に生活をしている分には上記のような法令に触れることはないと思われますが、ついカッとなって人の胸ぐらをつかんでしまうと暴行罪に該当してしまいます。
また、法令に適切に従って経営をしてきたつもりでも、ちょっとした事務処理のミスから建設業法等に触れてしまい、建設業許可が下りないということもそれなりにあります。
例えば建築工事一式でなくとも、一件の請負代金が消費税を含んで500万円以上だとすると、建設業許可を受けていないと受注することができませんが、既に受注済みであるという場合。
新規で建設業許可を取ろうとするときには、過去何年分もの様々な資料の提出が求められます。
その中で上記のような法令違反が見つかってしまうと建設業許可がおりないということになります(ただしこれについては各県の運用が様々で、反省を促したうえで許可をしたり、不許可としたりする場合があるようです。
担当者などから指摘される話で、公式見解として運用を公表しているところはありません)。
誠実性とは何か?
建設業法では、なにが誠実であるかということは分かりやすく規定していません。
ただし、建設業法七条三号の規定を反対に解釈することで、「不誠実な行為に該当しなければ誠実である」という規定の仕方をしています。
不正な行為・不誠実な行為の意義
不正な行為とは、請負契約の締結または履行に際して詐欺、強迫、横領などの法律に違反する行為をいいます。
不誠実な行為とは、工事内容、工期などについて請負契約に違反する行為をいいます。
上記の要件に明らかに当てはまらなければ、その建設業許可を受けようとする者は誠実であると認められます。
不正な行為・不誠実な行為の具体例
- 建設業法や建築士法、宅建業法等の他の法律で「不正・不誠実な行為」をしたことで免許等を取り消されてから5年を経過していない場合は不誠実な者として扱われます。
- 暴力団等の関係者も上記と同様に不誠実なものとされます。
上記の要件が対象としている者
- 許可を受けようとする者が法人の場合には当該法人、役員、支店長、営業所長
- 個人の場合は当該個人事業主、または支配人
欠格要件に該当してしまったときの対処法
建設業を長く経営していくうちには、さまざまなトラブルが起きます。
建設業法に触れてしまうことも重大なトラブルの一つです。
このような場合にはどうするべきか?一番の対処法は、正直に主管部局に相談することです。
本文の欠格要件の具体例の後段でも指摘していますが、違反を隠し通そうとすることが一番の問題です。
規制法令に違反してしまった以上、許可取り消しを免れることはできません。
嘘をついてもいずれはバレます。
こうなったからには行政に正直に報告をし、違反状態をどうすれば是正することができるのか、再度建設業許可を受けるためにはどうしたらいいのかを、よく相談することです。
悪質に違反状態を隠す建設業者よりも、正直に申告する建設業者への方が、当局の対応も親身で丁寧な説明を貰えます。
その際の指示には必ず従い、誠意をもって対応してください。
その他の建設業許可要件
欠格要件と不誠実とされてしまうパターンはここまでにして、他の建設業許可を受けるための要件を確認していきましょう。
経営業務の管理責任者がいること
経営業務の管理責任者とは、法人と個人事業主で対象者の違いはありますが、経営業務を管理し、執行した経験を持つ者をいいます。
管理責任者になる者は、次の要件(A)(B)を満たす必要があります。
さらに上記の二つの要件に該当した者が、(a)(b)(c)のいずれかに該当することも要件です。
(A)法人の場合には、常勤の役員であること
(B)個人事業の場合には、事業主本人または支配人であること(商業登記法に基づいた支配人の登記をしていることが必要です)
(a)許可を受けようとする建設業に関して、五年以上経営業務の管理責任者としての経験があること
(b)許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験があること
(c)許可を受けようとする業種以外の建設業に関して、6年以上経営業務の管理責任者としての経験を有していること。
それなりに厳しい要件が定められています。
また申請に際しても上記の要件を証明する書類の提出が求められます。
この証明もなかなか面倒なのですが、今回の記事の趣旨は「欠格要件」と「不誠実」とされる場合なので、割愛させていただきます。
専任技術者が営業所ごとにいること
専任技術者とは、建設業の業務について専門的な知識・経験を持ち、営業所でその業務に専属で従事する者をいいます。
許可要件は建設業法第七条第一号イ・ロ・ハを満たすことですが、要件は複雑であり、この記事の目的である欠格要件と不誠実から大きくは慣れてしまいますので、建設業法の条文の引用にとどめます。
第七条国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない
一 法人である場合においてはその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)のうち常勤であるものの一人が、個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が次のいずれかに該当する者であること
イ 許可を受けようとする建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
ロ 国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者
二 その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による実業学校を含む。以下同じ。)
若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は同法による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。以下同じ。)
若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。以下同じ。)を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者
引用:法令検索データベース http://elaws.e-gov.go.jp
請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有していること
この要件は、許可を受けようとする建設業の業種が「一般」または「特定」の違いによって、以下のような図表にすると分かりやすいです。
一般許可 | 特定許可 | |
---|---|---|
純資産の額 | 純資産の額が500万円以上 あること |
純資産の額が4,000万円以上 あること |
資本金の額 | ― | 資本金の額が2,000万円以上 あること |
資金調達に関する能力 | 500万円以上の資金調達能力があること | ― |
流動比率 | - | 流動比率が75%以上 あること |
過去の営業実績 | 許可申請前の5年間で 許可を受けて継続して 営業したことがあること |
― |
欠損の額 | - | 欠損の額が資本金の20%を 超えていないこと |
(注)上記図表中の「-」は、チェックする項目とならないことを表しています。
なお、一般許可とは、許可を受けようとする業種が一般のことをいい、上記図表にある要件のいずれかを満たせば、財産的基礎または金銭的信用を有していると認められます。
これに対して特定許可とは、許可を受けようとする業種が特定のことをいい、上記図表にある要件の全てを満たさなければ、財産的基礎または金銭的信用を有しているとは認められません。
とくに特定許可の場合には、欠損の金額や流動比率の計算を伴うため、税理士等の専門家に計算してもらうことも建設業許可の申請を早く終わらせるために一考の価値があります。
まとめ
今回の記事では建設業許可がおりないケースとして「欠格要件」と「不誠実」とされてしまうパターンを紹介しました。
併せて、建設業許可を受けるための5つの要件も紹介していますので、ぜひ役立ててみてください。
最後にまとめとして、建設業許可申請をできる者を紹介します。
建設業の許可申請業務を行う者は、大別すると以下の5つに分けられます。
(ア) 建設業を営む事業所に所属する者…自社で申請までしてしまうというケース
(イ) 建設業者から申請業務を委任された代理人…委任状が必要になります。ただし、申請手続に詳しい人を代理人にしておかないと、あとで確認の問合せが来たときに右往左往することになるので注意が必要です。
(ウ) 建設業関係の組合
(エ) 行政書士…建設業許可申請のほか、官公署への書類の提出を業務として行うことができる資格者です。
(オ) 公認会計士・税理士…これらの者は行政書士登録も一緒にすることができるため、決算の届出とともに、建設業許可申請も併せて行うことができる資格者です。
自分で官公署への手続きが難しい場合には行政書士に、決算や経営事項審査も併せて依頼したい場合には、行政書士登録もしている税理士に依頼することで、経営者は自身の仕事に専念することができます。
これから建設業許可申請をされる方の仕事が、順調にいくことを祈念しております。