この記事でわかること
- 足場工事に建設業許可が必要な理由
- 足場工事が該当する建設業許可の許可業種
- 足場工事の建設業許可を取得する要件
足場工事にも建設業許可が必要だと知り、自分の会社も許可が必要かどうか気になっていないでしょうか。
この記事では、足場工事に必要な建設業許可の種類や取得条件について詳しく解説しており、どのようなケースであれば許可が必要かわかります。
よく聞く「請負金額500万円以上は許可が必要」の500万円は税込みか、解体工事があるとどうなるか、についても書いています。
本記事を読めば、現時点で建設業許可が必要か、これからどんなタイミングで必要になるかがわかるでしょう。
足場工事とは
足場工事は、住宅やビルの建設現場において、高所作業を行うための仮設の通路や作業板を設置する工事です。
ここでは、足場の種類、工事の流れ、足場工事に関する2024年の法改正について解説します。
足場の種類
足場には単管足場、枠組足場などの種類があります。
一般的な住宅建設で見られる鋼鉄のパイプと踏板を使う足場は単管足場と呼ばれます。
よく使われる単管足場は一側足場・本足場(二側足場)の2種類あり、支柱の数によって構造が異なります。
また、建枠ジャッキ・筋交・鋼製布板などの資材を組み合わせた足場を枠組足場と言い、耐久性が高く高層建築にも使われます。
ここでは、単管足場について解説します。
一側足場(いっそくあしば・ひとかわあしば)
一側足場は1本の支柱にブラケット(踏板を掛ける菅)を取り付けて踏板を掛ける足場です。
一側足場は以下のような特徴があります。
- 支柱が片側だけのため強度は低い
- 耐荷重も少ない
- 狭い場所にも設置しやすい
- コストも安い点
しかし、作業員の落下、足場そのものが倒壊するリスクがあるため、原則として敷地が狭い、本足場が組めない現場でのみ使われます。
本足場(ほんあしば)
本足場は縦方向の内側・外側にある支柱に広い踏板を掛ける足場で、二側足場(にそくあしば・ふたかわあしば)とも呼ばれます。
本足場は一側足場に比べてコストがかかるものの、安全性が高いとされています。
また、支柱が2本あるため二側足場(にそくあしば・ふたかわあしば)とも呼ばれます。
足場工事の流れ
足場工事の流れは次のとおりです。
現地調査
足場を設置する現場に直接赴き、設置箇所、対象建物・隣接地との距離、スペースなどを調査します。
足場材の運搬・組立て
工事に必要な足場材を現場に運搬し、現場で足場材を組立てます。
足場の解体
足場を使う建設現場の工程が完了すれば足場を解体し、足場工事の作業はここまでで完了です。
足場に関する2024年4月の法改正の内容
多くの建設現場で施工される足場工事は安全に配慮して行われていますが、建設業の死亡事故の2割近くが足場に関連した事故です。
このため、2024年4月に足場工事に関する墜落防止措置強化を目的に、労働安全衛生規則の改正が行われました。
改正のポイントは次の3つです。
一側足場の使用範囲の明確化されます
幅が1メートル以上の箇所において足場を使用するときは、原則として本足場を使用することが必要になります。
足場の点検時に点検者の指名が必要になります
事業者及び注文者が足場の点検(つり足場を含む。)を行う際は、あらかじめ点検者を指名することが必要になります。
足場の組立て等の後の点検者の氏名の記録・保存が必要
足場の組立て、一部解体、変更等の後の点検後に、点検者の氏名を記録・保存することが必要になります。
今まで曖昧だった一側足場の使用範囲が明確化され、足場の点検者の記録・保存が必要となり、更なる安全管理が求められています。
足場工事で建設業許可が必要?
足場工事は請負金額が税込500万円以上の場合に、建設業の許可が必要です。
ここでは、建設業許可の概要、許可業種、請負金額の範囲について詳しく解説します。
建設業許可とは
建設業許可とは、建設工事を請け負う会社・個人事業主が営業する際に必要な許可で、建設業法第3条に定められています。
ただし、「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する場合は必ずしも建設業の許可を受けなくてもよいとされています。
「軽微な建設工事」とは
建設業許可の不要な「軽微な建設工事」とは、次の規模の工事を指します。
- 建築一式工事の場合には工事1件の請負代金の額が税込1,500万円未満の工事または延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事
- 建築一式工事以外の建設工事では、工事1件の請負代金の範囲が税込500万円未満の工事
なお、請負代金には材料費も含まれるため、注意が必要です。
都道府県知事または国土交通大臣の許可を受ける
建設業許可は、1つの都道府県にのみ営業所を置く場合は該当の都道府県知事、2つ以上の都道府県に営業所を置く場合は国土交通大臣から取得します。
業種別許可制
建設工事は土木一式工事と建築一式工事の2つの一式工事と、27の専門工事の合計29種類に分類されます。
各業種の定義等については、後述します。
複数の業種に該当する場合は、複数の業種で許可を取得する必要があり、同時に2つ以上の許可取得、追加取得も可能です。
足場工事の該当業種
足場工事も建設業許可の対象となるため、軽微な建設工事以外を受注するのであれば建設業許可が必要です。
足場工事は「とび・土木・コンクリート工事業」に該当する
足場工事は、建設業の「とび・土木・コンクリート工事業」、この中でもとび業に該当します。
足場材の販売のみは許可不要
足場材の販売のみで、足場組立ての工事を行わないのであれば、販売は工事に該当しないため建設業許可は不要です。
足場工事の請負代金が税込500万円以上なら許可が必要
許可の基準となる請負代金には材料費が含まれるため、足場材の材料費を含めて請負代金が税込500万円以上であれば許可が必要です。
解体も含む場合には「解体工事業」の許可も必要
工作物の解体工事は、「とび・土木・コンクリート工事業」とは別の「解体工事業」という業種に該当します。
そのため、解体工事も請け負う場合は「解体工事業」の許可も必要です。
請負代金は各契約金額の合計額と規定(建設業法施行例第1条の2第2項)されています。
足場工事400万円、解体工事200万円で合計600万円の請負代金など、個々の請負代金が500万円未満でも、合計が500万円以上であれば許可が必要です。
建設業許可の種類
建設工事の種類、内容、例示は次のとおりです。
一式工事(2種類)
一式工事は、土木一式工事と建築一式工事です。
建設工事の種類 | 建設工事の内容 |
---|---|
土木一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。) |
建築一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 |
専門工事(27種類)
専門工事は27種類です。
建設工事の種類 | 建設工事の内容 | 建設工事の例示 |
---|---|---|
大工工事 | 木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事 | 大工工事、型枠工事、造作工事 |
左官工事 | 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事 | 左官工事、モルタル工事、モルタル防水工事、吹付け工事、とぎ出し工事、洗い出し工事 |
とび・土工・ コンクリート工事 |
イ 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物のクレーン等による運搬配置、鉄骨等の組立て等を行う工事 | イ とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物のクレーン等による揚重運搬配置工事、鉄骨組立て工事、コンクリートブロック据付け工事 |
ロ くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事 | ロ くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ぐい工事 | |
ハ 土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事 | ハ 土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事 | |
ニ コンクリートにより工作物を築造する工事 | ニ コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事 | |
ホ その他基礎的ないしは準備的工事 | ホ 地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、屋外広告物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事、切断穿孔工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事、潜水工事 | |
石工事 | 石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事 | 石積み(張り)工事、コンクリートブロック積み(張り)工事 |
屋根工事 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 | 屋根ふき工事 |
電気工事 | 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 | 発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備(非常用電気設備を含む。)工事、照明設備工事、電車線工事、信号設備工事、ネオン装置工事 |
菅工事 | 冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 | 冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス管配管工事、ダクト工事、管内更生工事 |
タイル・れんが・ブロック工事 | れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け、又ははり付ける工事 | コンクリートブロック積み(張り)工事、レンガ積み(張り)工事、タイル張り工事、築炉工事、スレート張り工事、サイディング工事 |
鋼構造物工事 | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事 | 鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、石油、ガス等の貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、閘門、水門等の門扉設置工事 |
鉄筋工事 | 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事 | 鉄筋加工組立て工事、鉄筋継手工事 |
舗装工事 | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事 | アスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事、ブロック舗装工事、路盤築造工事 |
しゅんせつ 工事 | 河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事 | しゅんせつ工事 |
板金工事 | 金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事 | 板金加工取付け工事、建築板金工事 |
ガラス工事 | 工作物にガラスを加工して取付ける工事 | ガラス加工取付け工事、ガラスフィルム工事 |
塗装工事 | 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事 | 塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事 |
防水工事 | アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事 | アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シーリング工事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事 |
内装仕上工事 | 木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 | インテリア工事、天井仕上工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、床仕上工事、たたみ工事、ふすま工事、家具工事、防音工事 |
機械器具設置工事 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事 | プラント設備工事、運搬機器設置工事、内燃力発電設備工事、集塵機器設置工事、給排気機器設置工事、揚排水機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設備工事 |
熱絶縁工事 | 工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事 | 冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事 |
電気通信工事 | 有線電気通信設備、無線電気通信設備、ネットワーク設備、情報設備、放送機械設備等の電気通信設備を設置する工事 | 有線電気通信設備工事、無線電気通信設備工事、データ通信設備工事、情報処理設備工事、情報収集設備工事、情報表示設備工事、放送機械設備工事、TV電波障害防除設備工事 |
造園工事 | 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、又は植生を復元する工事 | 植栽工事、地被工事、景石工事、地ごしらえ工事、公園設備工事、広場工事、園路工事、水景工事、屋上等緑化工事、緑地育成工事 |
さく井工事 | さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事 | さく井工事、観測井工事、還元井工事、温泉掘削工事、井戸築造工事、さく孔工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事、揚水設備工事 |
建具工事 | 工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事 | 金属製建具取付け工事、サッシ取付け工事、金属製カーテンウォール取付け工事、シャッター取付け工事、自動ドアー取付け工事、木製建具取付け工事、ふすま工事 |
水道施設工事 | 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事 | 取水施設工事、浄水施設工事、配水施設工事、下水処理設備工事 |
消防施設工事 | 火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事 | 屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事、水噴霧、泡、不燃性ガス、蒸発性液体又は粉末による消火設備工事、屋外消火栓設置工事、動力消防ポンプ設置工事、火災報知設備工事、漏電火災警報器設置工事、非常警報設備工事、金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋又は排煙設備の設置工事 |
清掃施設工事 | し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事 | ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事 |
解体工事 | 工作物の解体を行う工事 | 工作物解体工事 |
参考:「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)」(国土交通省)
足場工事で建設業許可を取得する要件
足場工事(とび業)で建設業許可を取得するために必要な要件が6つあります。
許可時に要件を満たしていても、経営業務管理責任者・専任技術者が退職などで不在になってしまうと要件欠如で許可が取り消されるため、注意が必要です。
要件を満たす者を事前に選任するなど、事前に対策をとっておきましょう。
経営能力
経営能力の要件として、建設業に関して一定の経験を有する経営業務管理責任者が経営に携わっている必要があり、次のいずれかの経験が必要です。
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験、または管理責任者準ずる地位にある者として経営業務を管理した経験がある
- 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験がある
専任技術者
請負契約の適正な締結、履行を確保するため、とび業に係る建設工事の専門的知識を持つ専任技術者が営業所ごとに常駐する必要があります。
請負形式(元請、下請)、工事代金等により一般建設業、特定建設業と分けられ、それぞれに必要な経験年数等が変わります。
一般建設業のとび業であれば、主に下記のいずれかに該当する専任技術者が必要です。
- 土木工学又は建築学に関する学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者
- とび業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者
- 国家資格者(1級または2級のとび技能士等)
誠実性
請負契約について、不正又は不誠実な行為をする危惧がある個人・法人(役員含む)は、建設業の経営ができません。
そのため、建設業許可を受ける法人(役員含む)・個人は、このような不正又は不誠実な行為をしない誠実性が必要です。
財産的基礎
建設業の許可を受けるためには、工事を請け負うだけの財産的基礎等が要件となります。
一般建設業の財産的基礎等は、次のいずれかに該当する必要があります。
- 自己資本が500万円以上
- 500万円以上の資金調達能力を有する
- 許可申請直前の過去5年間許可を受け、継続して営業した実績を有する
欠格要件に該当しない
主な欠格要件は、次のとおりです。
- 破産者で復権を得ない者
- 建設業の許可を取り消され、取り消しの日から5年を経過しない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 建設業を営むに当たり、適切な認知、判断及び意思疎通ができない
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
適正な社会保険への加入
事業規模、雇用者数に応じた社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)への加入が必要です。
まとめ
法改正で一側足場の使用範囲が明確化された点、解体作業が含まれる場合は解体業でも許可が必要な点は是非再確認してください。
また、請負代金には足場材費用が含まれる、建設業許可に必要な6つの要件も、許可取得を検討するために大切な要素です。
足場工事の建設業許可を取得するかどうかアドバイスが欲しい、建設業許可を取得したい、という方は専門の行政書士に相談しましょう。