建設業の許認可を新規に取得することになった場合、どのような書類を用意してどのような流れで申請を行えばよいか、不安な担当者も多いのではないでしょうか。
ここでは、建設業の許可を新規に取得する際に必要な書類やその方法について解説します。許認可の取得には事前の準備が不可欠です。この稿を参考にして、しっかりと準備を行いましょう。
1. 自分で申請するか専門家に依頼するか
結論から言うと、建設業の許認可は自分自身で申請可能です。
申請の手引きを見ると、難解な用語が登場したり、長い文章が多くみられますが、丁寧に読み砕きひとつひとつ対応すればそれほど難しいものではありません。
許認可の申請先は、県知事免許の場合は都道府県の都市整備局になります。これは各都道府県により呼び方が異なりますのでご確認ください。
大臣免許を取得する際には地方整備局がその管轄になります。東京であれば関東地方整備局になります。ただし、窓口業務や形式的な審査は都道府県で行い、その後の本審査は地方整備局にて行うとしているところも多いので注意が必要です。
提出先が判明したら、事前の相談に行くことをお勧めいたします。たいていの場合は、担当者が丁寧に相談に乗ってくれると思います。この相談に行くと、許認可の申請の全貌が見えてきますので、まずは事前相談に行くことをおすすめします。
行政書士などの専門家に依頼するかどうかの判断はこの事前相談のあとでよいでしょう。事前相談の結果、これは無理だと感じたときに初めて依頼する形でよいと思います。
参考に行政書士に依頼した場合の相場を記載します。知事免許で10万円、大臣免許で15万円程度の場合が多いようです。
地方に行くと、これよりも高い料金の事務所も散見されます。逆に都心部では競争が激化していますので、これよりも安価な事務所も見つかるかもしれません。
いずれにせよ、建設業の許認可の申請については、最初の資料の収集や申請書の作成、その後の追加資料の依頼や修正依頼への対応等、意外と時間がかかるものです。
建設業許認可取得の担当を設定できる規模の会社であれば問題ありませんが、社長が一人で営業と許認可の取得を行うような小規模の会社の場合には、時間の節約のため専門家に依頼する方法も検討したほうが良いかも知れません。
2. 許可取得の流れ
自分で許可申請を行うこととなった場合にはどのような流れで手続きを行うのでしょうか。
許可の申請を行うにあたってまずは事前相談に行くべきことは解説しました。このあとの流れは下記の通りになります。
許可取得の流れ
1. 事前相談
2. 申請書の作成
3. 申請書の提出
4. 審査・許可決定
5. 通知書の発送
1. 事前相談
まずはじめに事前相談を行うべきです。許認可取得に向けて、どのあたりが自社の課題になるのかが見えてくると思います。
ちなみに、東京都の場合は建設業の許可取得の手引きにおいて、初めて新規申請を行う場合には原則として建設業課内の相談コーナーにて、予備調査をうけることとされています。
この事前相談に行く時にも、できる範囲で書類を作成して持参したほうが良いでしょう。担当の人も、ある程度書類があった方がアドバイス等しやすいと思います。
また、このときには各種証明書類等の準備をする必要はありません。公的な証明書についてはその有効期限を発行から3か月以内のものと定められているからです。
この期間が経過するとせっかく取得した証明書類が無駄になってしまうので、各種証明書類の取得は最後に回すとよいでしょう。
2. 申請書の作成
事前相談をへて、申請することとなった場合には申請書類の作成に入ります。申請書類は30種類から40種類にも及びます。これらをしっかりと確認して、なるべく不備のないものを作成しましょう。
あまりにも不備が多い場合には、申請が取り下げられてしまうこともあるようです。書類の作成方法については、あとで詳細に説明します。
3. 申請書の提出
書類の作成が終わったら、窓口に提出します。書類を提出してから、許可が下りるまでの標準処理期間が定められています。
東京都の知事免許の場合30日程度とされています。大臣免許の場合は、東京都に書類を提出してから東京都の窓口で形式的な審査が行われます。そのあとに、関東地方整備局に書類が回送されます。
この期間も考慮して、標準処理期間は3か月程度となっています。申請書を提出してから実際に許可が下りるまでには期間を要しますので、許可が必要になる期日から逆算して、余裕をもって申請を行えるようにしてください。
上記の標準処理期間は、過不足のない書類が提出された場合の期間になります。不備や修正事項、追加書類が多い場合はこれより長い期間を要しますのでご注意ください。
4. 審査・許可決定
窓口に書類が提出されてから許可が下りるまでには、上記のとおり知事免許で30日、大臣免許で3か月程度の期間がかかります。この期間は、担当課修正や追加書類の提出の依頼が来ることがあるので、気を抜かないようにしましょう。
書類の回送の都合上、大臣免許の方が審査に時間がかかるのは上記に述べた通りです。大臣免許の場合は、気長に待つことも必要そうです。
5. 通知書の発送
都道府県の都市整備課や、地方整備局において審査が完了すると許可決定の通知書が発送されます。これで申請者は許可の決定がなされたことを知ります。
この通知書は、単に審査完了の結果を申請者に知らせる書面です。正式に許可を証明したいときは、許可取得証明書を発行します。したがって、この書類は仮に紛失したとしても再発行をすることができません。
建設業界の実務上、この通知書をもって相手方に提示することが多くあります。許可を確認するだけであれば、わざわざ証明書を取得するまでもなくこの通知書の提示で足りるからです。
ところが、紛失した場合、許可証明書で説明します。この場合は、書類の紛失を疑われてしまうケースもあるようです。
営業上の無用な心配をしないためにも、通知書が届いたら、絶対になくさないように大切に保管しましょう。
3. 書類の作成
自分自身で建設業の許認可申請を行う場合には早速書類の作成を開始します。提出書類には、次の2つの区分があります。膨大な提出書類について次の区分で整理すれば理解が容易かも知れません。
1. 様式に則って作成する書類
2. 公的機関等に発行依頼または自身で取得するもの
3. 確認資料
1に関しては、手引きなどを参照して間違いの内容を記載します。2については期限に注意しながら各役所等で取得するようにします。3については、提出した書類に記載された事実の裏付け資料となります。
状況に応じて出すべき書類が変わったり、出さなくてもよいものもあります。自身の状況に合わせて提出するようにしてください。
たとえば、東京都の知事免許を取得する際には次のものが必要です。ここでは特に間違いやすい内容については説明を付記します。
1. 様式に則って作成するもの
1 建設業許可書(様式第一号)
2 別紙一 役員等の一覧表
3 営業所一覧表 (別紙二(1))
4 専任技術者一覧表(別紙四)
5 工事経歴書(直前1期分)(様式第二号)
業種ごとに作成しなければなりません。また、実績がない場合においても作成します。省略はできません。実績がない場合は、実績なしとして記載してください。経営事項審査をうける予定があるかどうかで、記載内容が異なりますので注意してください。
6 直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第三号)
直前3年分の実績を記入します。都合により決算期を変更している場合には、4期分以上の内容を記載することになります。その他の建設工事の施工金額には、許可を必要としない工事について記入します。軽微な工事の金額を記載します。
7 使用人数 (様式第四号)
8 誓約書 (様式第六号)
9 建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表 (様式第十一号)
従たる営業所を置いた場合や、支配人を置いた場合に限り必要な書類になります。
10 営業所一覧表(別紙二(1)(2))
11 定款
定款が必要になるのは法人の場合のみになります。
12 財務諸表(様式第十五号、十六号、十七号、十七号の二、十七号の三)※新規設立会社の場合は開始貸借対照表
13 財務諸表個人用(様式第十八号、十九号)
14 営業の沿革 (様式二十号)
15 所属建設業者団体(様式第二十号の二)
16 健康保険等の加入状況(様式第二十号の三)
17 主要取引金融機関名(様式第二十号の四)
18 経営業務の管理責任者証明書(様式第七号)
複数の業者の経験を合算して証明を行うときには、証明者ごとに作成が必要です。また、在籍していた会社との疎遠であるなどの理由により、証明印がもらえない場合でも、自己証明で行うこともできます。
19 経営業務の管理責任者の略歴書(別紙)
20 専任技術者証明書(様式第八号)
21 実務経験証明書(様式第九号)
22 指導監督的実務経験証明書(様式第十号)
23 国家資格者等・監理技術者一覧(様式第十一号の二)
24 許可申請者の住所、生年月日等に関する調書(様式第十二号)
25 建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書(様式第十三号)
26株主(出資者)調書(様式第十四号)
2. 公的機関等に発行依頼または自身で取得するもの
1 登記されていないことの証明書(成年被後見人・被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書)
この書類は、法務局にて取得することができます。
2 身分証明書(破産者で復権を得ないもの等に該当しない旨の区市町村長の証明書)
お住まいの市役所や区役所にて取得します。
3 修業(卒業)証明書
4 資格認定証明書写し
5 監理技術者資格者証写し
6 納税証明書(法人税、事業税)
法人税等の国税の証明については、管轄の税務署にて証明書を発行します。納税してからすぐに証明書が必要な場合は、納付書を持参して証明を受けてください。
事業税などの地方税については、市役所の市民税課にて証明を受けます。東京都の場合は、都税事務所にて執務を行っています。
3. 確認資料
1 印鑑証明書
印鑑証明書が必要なのは、自己証明を行う場合だけです。
2 預金残高証明書
純資産が500万円未満の場合は、預金残高証明が確認資料です。
3 経営業務の管理責任者の確認資料
常勤性の確認については、住民票と健康保険証の写しにて行います。過去の経験の確認は、登記簿謄本などで証明します。施行令第3条の使用人については、過去の許可申請書と変更届けの写しにて証明します。
4 専任技術者の確認資料
常勤性の確認については、住民票と健康保険証の写しにて行います。技術者としての要件の確認については、合格証や免許証の原本の提示で行います。
5 営業所の確認資料
6 建設業法施行令第3条に規定する使用人の確認資料
7 営業所の確認資料
8 国家資格者等・監理技術者の確認資料
9 法人番号を証明する資料
この資料は提示のみで足ります。コピーを提出する必要もありません。
10 健康保険・厚生年金・雇用保険の加入を証明する資料
この資料は提示のみで足ります。コピーを提出する必要もありません。
11 役員等氏名一覧表
4. 書類の提出先と必要部数
提出先
たとえば東京で知事免許を取得する際には下記のところへ申請書類一式を提出します。
〒163-8001
東京都新宿区西新宿2-8-1
東京都都市整備局 市街地建築部 建設業課 03-5321-1111
大臣免許を取得する際にも、同様に上記に提出します。提出を受けた東京都は、窓口にて形式面のチェックのみ行い、関東地方整備局へ書類一式を回送します。回送を受けた関東地方整備局にて、審査が行われます。
提出部数
提出書類については、正本が一部、副本が一部の合計二部必要です。ただし、営業上の関係やその他の場面において、建設業許可の申請中である旨を提示する場合があります。
また、社内に正式に手続きの控えを保存しなければならない場合もあります。そのようなときには、正本・副本のほかにもう一部持参すると、窓口にて受付印を押印後その場で一部返却してもらえます。必要な場合は、もう一部持参し受付印を押印してもらいましょう。
いかがでしたでしょうか。建設業の許可を新規に取得する際の流れや、必要書類に等について説明してきました。
一見難しそうに見える許可取得申請も、作成する書類について整理できれば意外と簡単に思えるのではないでしょうか。この稿を参考にして新規取得に向けしっかりと準備をしてください。
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