この記事でわかること
- 建設業許可が必要な29業種
- 指定された7業種
建設会社が一定規模以上の請負工事を受注するには、建設業の許可が必要です。
建設業における工事は29業種に分類されており、該当する業種の建設業許可を取得しなければなりません。
29業種のうち、指定の7業種は高度な施工技術などが要求されるため、国家資格を持つ専任技術者の設置などが必要です。
違反すると行政処分を受けるリスクがあるため、該当する業種については正確に把握しておきましょう。
ここでは建設業許可が必要な業種の工事内容や具体例などをご紹介します。
建設業許可が必要な29業種一覧
それぞれの業種について詳しく見ていきましょう。
1.土木一式工事業
土木一式工事は、総合的な企画・指導・調整のもとに、土木工作物を建設する工事です。
補修や改造、解体工事、土木工事など他の専門的な業種で行う必要のない工事や、総合的に企画や調整が必要な工事も含まれます。
2.建築一式工事業
建築一式工事は、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事です。
一棟の住宅建設等一式工事として請け負う工事や、建築確認を必要とする増改築などが含まれます。
3.大工工事業
大工工事は、木材の加工又は取り付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取り付ける工事です。
例えば大工工事や型枠工事、造作工事などが含まれます。
4.左官工事業
工作物に壁土やモルタル、漆くい、繊維などをこて塗りや吹付けで塗り表面を滑らかに仕上げる工事を左官工事といいます。
- 左官工事
- モルタル工事
- モルタル防水工事
- 吹付け工事
- とぎ出し工事
- 洗い出し工事
なお、防水モルタルを用いた防水工事については、左管工事と防水工事のどちらでも施工が可能です。
5.とび・土工工事業
とび・土工工事業は、下記のように範囲が広く考えられているため注意が必要です。
足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て | ・とび工事 ・ひき工事 |
くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事 | ・くい工事 ・場所打ぐい工事 |
土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事 | ・土工事 ・掘削工事 |
コンクリートにより工作物を築造する工事 | ・コンクリート工事 ・コンクリート打設工事 |
その他基礎的ないしは準備的工事 | ・地すべり防止工事 ・地盤改良工事 |
盛土や切土だけでなく、舗装や上下水道の整備なども総合的に請け負うときは土木工事一式に該当します。
6.石工事業
石工事とは、石材の加工または積方により工作物を築造、あるいは工作物に石材を取り付ける工事です。
石材とは、類似のコンクリートブロックや擬石を含みます。
石工事業に該当する工事は、石積み(張り)工事、コンクリートブロック積み(張り)工事などです。
7.屋根工事業
屋根工事は、瓦やスレート、金属薄板などにより屋根をふく工事です。
屋根ふき工事は、瓦・スレート・金属薄板などの材料の種類によらず、屋根工事業に当たります。
上記の考え方により、板金屋根工事は板金工事ではなく屋根工事に該当します。
8.電気工事業
電気工事とは、発電設備や変電設備、送配電設備、構内電気設備等などを設置する工事です。
この区分に該当する工事は、次の通りです。
- 発電・変電設備工事
- 送配電線工事
- 構内電気設備工事
- 照明設備工事
- 信号設備工事
- ネオン装置工事(避雷針工事)
- 電気防食工事
- コンセント工事
- 計装工事
9.管工事業
管工事業とは、以下のような設備を設置する工事です。
- 冷暖房や空気調和、給排水、衛生等のための設備
- 金属製等の管を使用して水や油、ガス、水蒸気などを送配するための設備
規模の大小を問わず浄化槽により、し尿を処理する施設の建設工事は管工事に該当します。
一方で、下水道により収集された汚水を処理する施設の建設工事は、水道施設工事です。
公共団体が設置する、汲取方式により収集されたし尿を処理する施設の建設工事は清掃施設工事に該当します。
10.タイル・レンガ工事業
タイル・レンガ工事とは、以下のような工事を指します。
- れんが、コンクリートブロック等によって工作物を築造
- 工作物にれんがやコンクリートブロック、タイルなどの取り付け・はり付け
倉庫や工場の屋根に使われるスレートとは、セメントを主成分として薄い板状に加工されたものです。
コンクリートブロックには、プレキャストコンクリートパネルや、オートクレイブ養生をした軽量気泡コンクリートパネルも含まれます。
11.鋼構造物工事業
鋼構造物工事とは、以下のような形鋼や鋼板などの鋼材の加工、または組立てにより工作物を築造する工事です。
- 鉄骨工事
- 橋梁工事
- 石油やガスなどの貯蔵用タンク設置工事
- 屋外広告工事
12.鉄筋工事業
鉄筋とは、建物などの施設の構造をつくるための骨組みです。
鉄筋工事は、棒鋼等の鋼材を加工・接合・組立てをする工事で、鋼構造物工事とは工事内容や対象の構造物などが異なります。
鉄筋の加工や組立て工事、ガス圧接工事だけでなく、施工図や加工帳の作成なども該当します。
13.舗装工事業
道路等の地盤面をアスファルトやコンクリート、砂、砂利、砕石などで舗装する工事を舗装工事と言います。
舗装工事業に該当する工事は、アスファルト舗装工事やコンクリート舗装工事、ブロック舗装工事、路盤築造工事などです。
舗装工事と併せて施工されるガードレール設置工事は、とび・土工・コンクリート工事に該当します。
一方で人工芝張付け工事のうち、地盤面をコンクリート等で舗装した上にはり付ける工事は舗装工事に当たります。
14.しゅんせつ工事業
しゅんせつとは、水底に溜まった土砂や石などを掘り上げ、取り除く土木工事です。
航路の水深が足りないと、船が海底にぶつかってしまう恐れがあります。
船舶が安全に航行できるように、しゅんせつ工事が行われます。
15.板金工事業
板金工事とは、金属薄板を加工して工作物に取り付ける、又は工作物に金属製の付属物を取り付ける工事です。
たとえば、建物の内外装として板金を取り付ける工事などです。
板金加工取付け工事や、建築板金工事が板金工事業に該当します。
16.ガラス工事業
工作物にガラスを加工して取り付ける工事を、ガラス工事といいます。
ガラス工事業の例は、ガラス加工取付け工事やガラスフィルム工事などです。
なお、窓(サッシ)の取付けは建具工事業に該当します。
17.塗装工事業
塗装工事業は、塗料・塗材などを工作物に吹付けや塗り付け、またははり付ける以下のような工事です。
- 塗装工事
- 溶射工事
- 路面標示工事
建物の内外装やさまざまな構造物に塗料を施す工事が該当します。
18.防水工事業
アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事を防水工事と言います。
この防水工事に含まれるのは、住宅やビルなどの建物に施工する場合の工事です。
トンネルなどの土木系の防水工事は、とび・土工・コンクリート工事に該当します。
19.内装仕上工事業
木材や石膏ボードなどを用いて建築物の内装仕上げを行う工事を、内装仕上工事と言います。
木材や石膏ボードの他に内装仕上げ工事に使う建材は、吸音板や壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすまなどです。
家具工事とは、建築物に家具を据付けまたは、家具の材料を現場にて加工もしくは組み立てて据付ける工事です。
防音工事とは、建築物における通常の防音工事であり、ホール等の構造的に音響効果を目的とするような工事は含まれません。
20.機械器具設置工事業
機械器具設置工事は、機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取り付ける工事です。
機械器具設置工事には、広くすべての機械器具類の設置に関する工事が含まれます。
機械器具の種類によっては、電気工事や管工事、電気通信工事、消防施設工事などと重複します。
重複する工事は、原則としてそれぞれの専門に区分します。
いずれにも該当しない機械器具あるいは複合的な機械器具の設置のみ、機械器具設置工事に該当します。
21.熱絶縁工事業
熱絶縁工事は、工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事です。
たとえば、冷暖房設備や冷凍冷蔵設備、燃料工業、化学工業などの設備の熱絶縁工事です。
機械の配管やダクトなどに、断熱材などを備えて熱の拡散を防ぎます。
22.電気通信工事業
電気通信工事は、有線電気通信設備や無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事です。
既に設置された電気通信設備の改修、修繕又は補修は電気通信工事に該当します。なお保守に関する業務は、電気通信工事に該当しません。
23.造園工事業
造園工事は、整地や樹木の植栽、景石のすえ付けなどを行う工事です。
工事は主に以下のような目的で行われます。
- 庭園や公園、緑地等の苑地を築造
- 道路や建築物の屋上等を緑化
- 植生を復元
24.さく井工事業
さく井とは、機械などで穴をあけ、揚水設備の設置などを行う工事です。
さく孔、さく井を行う工事、又は揚水設備設置等を行う工事をさく井工事と言います。
さく井工事業に該当する工事は、以下の通りです。
- さく井工事
- 観測井工事
- 還元井工事
- 温泉掘削工事
- 井戸築造工事
- さく孔工事
- 石油掘削工事
- 天然ガス掘削工事
- 揚水設備工事
25.建具工事業
サッシやシャッターの取付けなど、建具を設置する工事は、建具工事と呼ばれます。
以下のような工事が、建具工事業に該当します。
- 金属製建具取付け工事
- サッシ取付け工事
- 金属製カーテンウォール取付け工事
- シャッター取付け工事
- 自動ドア取付け工事
- 木製建具取付け工事
- ふすま工事
26.水道施設工事業
水道施設工事は、主に次のような工事が該当します。
- 上水道や工業用水道の取水や浄水、配水といった施設を築造する工事
- 公共下水道や流域下水道の処理設備を設置する工事
一方で、家屋などの配管工事や上水道等の配水小管を設置する工事は管工事になります。
農業用水道、かんがい用排水施設などの建設工事は土木一式工事です。
27.消防施設工事業
火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置、または工作物に取り付ける工事を、消防施設工事といいます。
固定された避難階段を設置する工事は、消防施設工事ではなく、建築物の躯体の一部の工事として建築一式工事または鋼構造物工事に該当します。
28.清掃施設工事業
清掃施設工事は、し尿処理施設やごみ処理施設を設置する工事です。
公害防止施設を単体で設置する工事については、清掃施設工事ではなく、それぞれの公害防止施設ごとに区分します。
たとえば、排水処理設備であれば管工事、集塵設備は機械器具設置工事に該当します。
29.解体工事業
新しい建物を建てるためには、土地にある古い建物や工作物を撤去しなければなりません。
解体工事とは、ビルやマンションなどの建築物や工作物を解体する工事です。
他の専門工事の目的物のみを解体する場合、解体工事業にはなりません。
たとえば、街灯のみの撤去工事は電気工事業に該当します。
総合的な企画のもとで一部を解体する工事も、土木工事一式や建築工事一式になります。
建設業許可が必要な業種に関するよくある質問
建設業許可が必要な業種に関するよくある質問は、以下の通りです。
- 建設会社は何の業種ですか?
- 建設業の7業種とは?
それぞれの質問に回答していきます。
建設会社は何の業種ですか?
建設会社は、顧客から事業として請け負う工事の種類によって29業種にわけられます。
軽微な建設工事を除き、建設業許可を取得しなければなりません。
29業種は、請け負う工事の種類によって2業種の一式工事と27業種の専門工事にわかれます。
一式工事は大規模な工事を監督する元請業者、専門工事はそれぞれの専門分野に特化した下請業者が行うケースが多いです。
建設業の7業種とは?
建設業の29業種のうち、以下の7業種は指定建設業とされています。
- 建築工事業
- 土木工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
- 鋼構造物工事業
この7業種は、他の業種より高度な施工技術を要求されるケースや規模の大きな建設を担うケースが多くあります。
これらの業種で特定建設業の許可を取得する場合、特定の国家資格を保有した専任技術者の設置が必要です。
まとめ
建設業の工事は29業種に分類されており、請け負う工事に応じた業種の建設業許可が必要です。
それぞれの事例をご紹介しましたが、工事によってはどの業種に該当するかわからないケースもあるかもしれません。
該当する業種がわからない場合、専門家である行政書士へ相談しましょう。
該当する業種以外の建設業許可を取得して工事をした場合、法令違反となってしまう恐れがあります。
違反すると行政処分を受ける可能性もあるため、事前に確認した上で許可を取得しましょう。