AIに奪われない税理士の仕事

銀座オフィス 税務スタッフ 坪井 伸樹

早速ですが、坪井さんはベンチャーサポート税理士法人でどのような仕事をされていますか?

はい、いわゆる担当業務といって法人顧問先24社を自分が担当して日々お客様とやり取りをしていますが、それとは別に全社的な業務効率化を任されています。

全社的な業務効率化というのは、どういうことですか?

ベンチャーサポート社内の全作業において、今やっている手順が最適かどうか?を常に考える役割です。
業務フローを見直したり、最新のツールを導入することで、現在と同じ業務量を、今よりスピーディーに、より簡単に、より安いコストで実現できないかという情報のアンテナを張っています。

ではその坪井さんに最適な質問だと思うのですが、
AI(人口知能)によって税理士の仕事が無くなってしまう、という意見についてどう思いますか?

10年前から同じことが言われていて、実際、10年前からずっと現在進行形が続いていると思っています。
「仕事が奪われるから困る!」ではなく、AIに奪ってもらえる部分は早く奪ってもらうように動くのが今の自分の役割だと感じています。

税理士業界においては10年前からAIが進歩していないということですか?

いえいえ。確実に進歩はしていて、昔は手作業でやらないといけなかった部分も、今はその多くが自動化され始めています。
ただ、世間の予想よりもそのスピードが遅かったということだと思います。経理とAIはものすごく相性がいいので、2,3年で完全に自動化できて、決算や確定申告までほぼ完璧に出来てしまうと予想されていたんじゃないでしょうか。

なるほど。簡単には自動化できない業務があった、ということなんでしょうか?

そうですね。どうしても現金でのやり取りであったり、発行者ごとに形も大きさも違う領収書やレシートがあるので、人間の手作業がいまだに無くなっていません。
ただ、インターネットバンキングや電子決済サービスがかなり普及してきて、ようやく頑張れば現金を一切使わなくても済むような状況が整ってきたと思います。

そうするとやはり、税理士事務所の業務が奪われるということになりませんか?

今お話ししたのは、現金やレシートの入力作業が自動化されてAIに置き換わるということです。
税理士の仕事でいうと「記帳代行」の部分ですね。毎月の取引を会計ソフトに正しく入力するということがゴールなので、この業務はむしろAIに奪って欲しいと考えている部分です。

なるほど。税理士事務所の業務のなかには、単純作業的な部分と、そうでない部分があるということですね。

はい。税理士は高齢な方も多い業界ですので、この単純作業的な部分すらいまだに効率化できていない事務所もたくさんあります。
効率化に対応できてない税理士事務所は、手書きする書類が多かったり、電子申告に対応していなかったり、エクセル等のデータを紙に印刷してからパソコン入力し直したりするので、若い方なら入社すればすぐに見分けがつくと思います。

昔の税理士に求められていたことと、今求められることは変わってきているということですね。

そうですね。こういった面倒な作業は今後も無くなるわけではないので、手間仕事を安売りする事務所もしばらくは生き残ると思います。

気をつけて欲しいのは、今20代の皆さんには絶対に効率的な仕事を身につけて欲しいということです。非効率な税理士事務所で2年、3年と実務経験を積んでも、自分の価値を高めていくことは難しいです。

身につけておくべき、税理士事務所の効率的な仕事とはどういうものですか?

ネットバンキングなどの数字データは入力作業をせず、会計ソフトにそのまま取り込むことは最低限だと思います。
ベンチャーサポートではそれに加え、作業スタッフを別に雇用して、紙で預かった資料も会計ソフトに取り込めるようにしています。

こうして、できるだけ単純作業に時間を使わず、価値のある仕事に時間を使うことで、お客様から感謝され、スタッフ自身も自分の価値を高めていける経験を積んでもらいたいと思っています。

では、AIに奪われない価値のある税理士の仕事とは何なのでしょうか?

ざっくり言うと「お客様の業績向上に、直接役立つこと」です。
具体的には、事業計画書の作成や、決算予測シミュレーションなどが当てはまります。今後の経営における判断材料を提供して、それをもとに業績向上にむけて一緒に考えることが、AIに奪われない税理士事務所の仕事だと思っています。

事業計画書やシミュレーションも、計算という意味では自動化できるのではないですか?

自動算式などに詳しい経営者であれば不可能ではないかもしれません。ただ、将来の見通しについて税金の影響まで含めて数字に落とし込んだり、いくつものパターンを想定するのは、経営者が自分で時間を使ってやることではないと思います。

また、経営者は意外と相談相手がいないので、壁打ちのようにして人と話すことで、一緒に頭を整理するというのは、よく感謝されることでもあります。
ベンチャーサポートは昔から、経営者に信頼されるコミュニケーションこそが税理士の一番のサービスだと考えてきました。

数字をベースにして、経営者の良き相談相手になるということですね。

まさにそうですね!私たちが偉そうにコンサルティングをすることはなくて、あくまで現状から将来の予測を立てて、経営者が正しい判断を下せるようにお手伝いをするというイメージです。

その相談相手として、最新の税制や助成金、同業他社を含めたリアルな市況感などが頭に入っている私たち専門家はこれ以上ない存在になれると自負しています。

なるほど。ビジネスパートナーとして、お客様の求めに応じて経営のサポートをしていくことが大事なんですね。

はい。もっと言えば税理士は、お客様に求められていないことでも、お客様の有利になることは提案しないといけないという「義務」があるんです。

お客様に求められていなくても、ですか?

はい、専門家として依頼者に有利な税制などの情報提供を怠ってしまうと損害賠償責任を負うことまであります。

これは一見、責任が重くてハードルの高い職業だというマイナスに思えるかもしれませんが、依頼者に対してそこまでの責任を負うからこそ、AIが今より発達した将来においても経営者が税理士を頼る大きな理由になるはずです。

なるほど。税理士はお客様に求められる・頼られる存在だということがよく分かりました。
本日はインタビューありがとうございました。

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