元国税調査官・税理士の松嶋です。
今回のテーマは「中古資産の耐用年数の適用誤りと見積誤り」です。
中古資産の耐用年数は、以下の通り、使用可能期間を見積もる見積法か、その見積りが困難であれば簡便法により計算することができるとされています。
事業の用に供された~減価償却資産~の取得~をしてこれを~事業の用に供した場合における当該資産の耐用年数は~次に掲げる年数によることができる。ただし、~当該資産について支出した~資本的支出~が当該資産の取得価額~の百分の五十に相当する金額を超える場合には、第二号に掲げる年数についてはこの限りでない。
一 当該資産をその用に供した時以後の使用可能期間~の年数
二 次に掲げる資産(~前号の年数を見積もることが困難なものに限る。)の区分に応じそれぞれ次に定める年数(その年数が二年に満たないときは、これを二年とする。)
イ 法定耐用年数~の全部を経過した資産 当該資産の法定耐用年数の百分の二十に相当する年数
ロ 法定耐用年数の一部を経過した資産 当該資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の百分の二十に相当する年数を加算した年数
押さえておきたいのは、見積法にしても簡便法にしても、法定耐用年数によらず、耐用年数とすることが「できる」という規定であることです。
このため、これらを適用しなければ、法定耐用年数で計算することになります。
法事例1412 中古資産の見積耐用年数の選択適用の可否
〔問〕
中古車両を取得し、事業の用に供した最初の事業年度では法定耐用年数6年により償却計算を行った。ところが次年度になって中古資産の耐用年数の見積りで償却することができることを知った。今期から見積耐用年数により償却計算をしても認められるか。
〔答〕
見積耐用年数により償却計算することは認められない。
法人において事業の用に供された法人税法施行令第13条各号(減価償却資産の範囲)に掲げる資産(試掘権以外の鉱業権及び坑道を除く。)を取得して、これを法人の事業の用に供した場合におけるその資産の耐用年数は、その用に供した時以後の使用可能期間の年数によることができる。〔耐用年数省令3(1)一〕
この中古資産についての耐用年数の算定は、その事業の用に供した事業年度においてすることができるのであるから、当該事業年度においてその算定をしなかったときは、その後の事業年度においてはその算定をすることができないことに留意する取扱いになっている。〔耐通1-5-1〕
また、中古資産を取得したのちにおいてその資産について耐用年数の短縮の事由が生じたときは耐用年数の短縮承認の申請をすることができるが、見積耐用年数によっていないことを理由に、耐用年数の短縮承認の申請をすることはできない。〔法令57(1)〕
〔法法31〕
R03-04-01現在
上記にもありますが、簡便法や見積法の算定は、中古資産の事業供用年度で行う必要があります。
このため、例えば消耗品で処理していた中古資産について、資産計上すべきと後日税務調査で指摘されたとしても、その後の処理は法定耐用年数で償却せざるを得ないことになると考えられます。
詳細、下記サイトの「中古資産の耐用年数の見積り時期」をご参照ください。
▶中古資産の耐用年数の見積り時期の相談事例
もちろん、更正の請求も不可能になるはずで、通達においても下記の定めがあります。
中古資産についての省令第3条第1項第1号に規定する方法(以下1―7―2までにおいて「見積法」という。)又は同項第2号に規定する方法(以下1―5―7までにおいて「簡便法」という。)による耐用年数の算定は、その事業の用に供した事業年度においてすることができるのであるから当該事業年度においてその算定をしなかったときは、その後の事業年度においてはその算定をすることができないことに留意する。
(注)法人が,法第72条第1項に規定する期間(当該法人が通算子法人である場合には,同条第5項第1号に規定する期間。以下「中間期間」という。)において取得した中古の減価償却資産につき法定耐用年数を適用した場合であっても、当該中間期間を含む事業年度においては当該資産につき見積法又は簡便法により算定した耐用年数を適用することができることに留意する。
このため、法人成りの際などには、確実に適用しておくよう注意が必要です。
法事例1405 個人事業を法人組織にした場合に引き継いだ減価償却資産の耐用年数
〔問〕
佃煮製造業を営んでいた甲個人が、この度A株式会社を設立し佃煮製造設備の全部を譲渡した。この場合、A法人は、甲個人から取得した設備について、中古資産の見積耐用年数を適用することができるか。
〔答〕
適用することができる。
新設法人が個人から取得した中古資産の耐用年数は、これを法人の事業の用に供した事業年度において、その用に供した時以後の使用可能期間の年数(中古資産の見積耐用年数)の見積りをした場合には、その見積耐用年数によることができる。〔耐用年数省令3(1)〕
また、中古資産の耐用年数の見積りは、次のように取り扱われる。
中古資産についての耐用年数省令第3条第1項第一号に規定する方法「見積法」又は同項第二号に規定する方法「簡便法」による耐用年数の算定は、その事業の用に供した事業年度においてすることができるのであるから、当該事業年度においてその算定をしなかったときは、その後の事業年度においては、その算定をすることができないことに留意する。〔耐通1-5-1〕
本問の機械装置は、総合償却資産(機械及び装置並びに構築物で、当該資産に属する個々の資産の全部につき、その償却の基礎となる価額を個々の資産の全部を総合して定められた耐用年数により償却することとされているものをいう。)であり、法人が工場を一括して取得する場合等別表第一、別表第二、別表第五又は別表第六に掲げる一の「設備の種類」又は「種類」に属する資産の相当部分につき中古資産を一時に取得した場合に限り、総合耐用年数を見積もり、当該中古資産以外の資産と区別して償却することができる。〔耐通1-5-8〕
〔法法31,TAINSコード・法人事例001408参照〕
R03-04-01現在
ところで、これらに関連して、
「過去誤った見積りで見積法を適用した場合、後日正しい見積年数に修正することはできるか?」
このような質問を頂戴しました。
この点、中古資産の耐用年数の適用判定は、中古資産の事業供用年度で行う必要があるとされていますので、そのタイミングで選定した年数が適正な見積りであることを前提に考えざるを得ないと思われます。
仮に、その見積りが正しくないのであれば、見積法の算定を中古資産の事業供用年度で行っていないことになるため、それを是正して正しい見積耐用年数として減価償却の計算をすることはできないと考えられます。
下記でも、誤った見積耐用年数の是正は後日不可能とされています。
《要旨》
請求人は、中古建物に適用すべき耐用年数について、誤って法定耐用年数を適用していた場合、その誤りに気付いた時点において是正できないという解釈は、社会通念等に即さないものであり、また、新築建物の耐用年数を遡って是正する以上、中古建物についても使用可能期間を実態に即して見直した耐用年数を遡って適用すべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、中古建物を取得した事業年度において、法定耐用年数を適用していたものと認められるところ、中古資産についての減価償却資産の耐用年数等に関する省令(耐用年数省令)第3条《中古資産の耐用年数等》第1項第1号及び第2号に掲げる各方法(見積法等)による耐用年数の算定は、当該中古資産を取得してこれを事業の用に供した最初の事業年度に限りすることができ、当該事業年度においてその算定をしなかった場合は、その後の事業年度において算定することができないこととなるのは、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-5-1《中古資産の耐用年数の見積法及び簡便法》の定めのとおりであるから、当該事業年度後の事業年度において、当該中古建物の耐用年数を見積法等を用いて変更することはできない。
以上を踏まえると、中古資産の耐用年数の適用は、事後修正が利かない制度と言えますので、慎重な対応が必要になります。
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