元国税調査官・税理士の松嶋です。
今回のテーマは「直前に印紙を貼付することもリスクがある」です。
印紙税は税理士業務の対象外であることもあって、それほど実務では問題になりません。
しかし、仮に印紙税の単独調査(印紙税のみの調査)が行われれば、推計課税で課税されることもあって、注意が必要です。
ただし、多くの納税者の方もあまり印紙税に慎重ではなく、税務調査の怖さをアピールしても、直前において貼付すれば問題ない、などと考える方もいらっしゃいます。
実際のところ、国税としても調査前に貼っていればほとんど問題にしませんが、直前に貼付すれば過怠税は3倍が原則になることを押さえなければなりません。
~印紙税を納付すべき課税文書の作成者が同項の規定により納付すべき印紙税を当該課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、当該印紙税の納税地の所轄税務署長は、当該課税文書の作成者から、当該納付しなかった印紙税の額とその二倍に相当する金額との合計額に相当する過怠税を徴収する。
「課税文書の作成の時」までに印紙税を納税しなければなりませんので、契約書や領収書の作成段階で貼っていなければ、過怠税は3倍になります。
加えて、通常の税務調査では不納付事実申出書という書類を提出させた上、過怠税を1.1倍に減額するという措置が行われますが、以下を前提とすると直前に貼付した場合はこの措置の対象外になると考えられます。直前に貼付していますから、印紙税を納付していないことを申し出ることができないからです。
~課税文書の作成者から当該課税文書に係る印紙税の納税地の所轄税務署長に対し~当該課税文書について印紙税を納付していない旨の申出があり、かつ、その申出が印紙税についての調査があったことにより当該申出に係る課税文書について~過怠税についての決定があるべきことを予知してされたものでないときは、当該課税文書に係る同項の過怠税の額は、同項の規定にかかわらず、当該納付しなかつた印紙税の額と当該印紙税の額に百分の十の割合を乗じて計算した金額との合計額に相当する金額とする。
となると、実際に実務で適用されるかは別ですが、不納付事実申出書の適用もない、といった話になる可能性もあります。
実際の税務調査では、総勘定元帳で印紙の購入金額を調べますので、直前に購入したような事績はわかりますので注意してください。
仮に、3倍となると遡及期間は5年又は7年になると考えられます。不納付事実申出書の場合は、3年遡及するという事務執行がありますが、その対象にもならない可能性があります。詳細、TKC税務Q&A「 印紙税(第19号文書)の過怠税について」をご参照ください。
なお、印紙税は自動確定方式の租税であることもあり(通法15(3)五)、過怠税について、徴収権の消滅時効は納税義務の成立日から5年とされています。
~国税の徴収権~は、その国税の法定納期限(~過怠税については、その納税義務の成立の日とする。次条第3項において同じ。)から5年間行使しないことによつて、時効により消滅する。
その他、蛇足ですが印紙は消印しないと納付したことになりません。ここも忘れがちなので、注意してください。
税相版 誤りやすい事例集(改訂版)
(印紙税9) 誤りやすい項目 課税文書に貼付した収入印紙の消印
(平成14年6月)東京国税局・税務相談室【情報公開法第9条第1項による開示情報】
概要
【誤った認識】
収入印紙は課税文書に貼付するだけでよい
【正しい答え】
印紙税を納付する目的で課税文書に収入印紙を貼付した場合は、課税文書と収入印紙の彩紋とにかけ消印をする必要がある
【根拠法令等】
印法8(2)、印令5、印基通64、65
【その他(コメント・作成年月)】
消印をしなかった場合印法20(3)により過怠税の対象となる
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