【税務調査交渉及び見落としがちな税務判断】国税局所管と税務署所管の違いについて

元国税調査官・税理士の松嶋です。
今回のテーマは「国税局所管と税務署所管の違いについて」です。

同じ税務調査でも、国税局が行う税務調査と税務署が行う税務調査では、対応方法が大きく異なります。

言うまでもなく、国税局の方が厳しい調査になりますが、その理由として以下のようなものが挙げられます。

1 国税局は更正で決着することも辞さないこと
税務署の調査では、更正処分ではなく、修正申告書を提出させて終わらせることが多いですが、国税局の場合は更正処分も辞さないです。
このため、更正できないことを理由とした交渉は、国税局の税務調査では、そこまで効果がありません。

なお、公示制度が存在した時代には、修正申告することで公示されて所得が公開されることを理由に、国税局の所管法人は修正申告せず、すべからく更正で終わることとされていました。
現在は公示もありませんので、国税局でもまずは修正申告、という流れがあるようですが、過去の経緯を踏まえれば、更正処分に抵抗はないはずで、結果として更正を前提とした交渉は現時点でもあまり効果がないと考えられます。

2 国税局は広域の調査も容易にできること
国税局は、税務署の管轄よりもはるかに大きな地域を管轄するため、広域の調査も容易にできます。
とりわけ、近年はグループ会社経営が主流ですが、国税局が調査するとすれば、管轄を超えて調査しやすいため、グループ会社を一斉に、深度ある調査ができます。

3 マンパワーが違うこと
国税局の調査は大きな会社を中心に行っていることもあり、調査に臨場する人数や日数も長いことが通例です。

こういう訳で、自社が税務署と国税局のどちらの管轄になっているのか、予め把握しておくと都合がいいでしょう。
この把握方法は、以下の2つがあります。

(1)プレプリント申告書の部門番号を見る
(2)資本金1億円以上など、この規定の対象になる法人の根拠法を確認する

順に見ていきます。

国税から送られる、プレプリント申告書には、予め部門の番号が付されています。原則としてこの部門が税務調査をすることになりますが、国税局の調査部の調査対象となっている法人は、部門番号に「00」と表記されています。

次に、資本金1億円以上の法人は国税局の調査部が税務調査をする、ということは有名な話です。しかし、正確な国税局の所管は、以下の法令で決まっています。

調査査察部等の所掌事務の範囲を定める省令

~国税庁及び国税局の調査査察部の所掌事務の範囲を定める省令を次のように定める。

1 国税庁の調査査察部並びに国税局の調査査察部、調査部、調査第一部、調査第二部、調査第三部、調査第四部及び査察部並びに沖縄国税事務所の調査課及び査察課の所掌事務の範囲は、内国税の賦課及び徴収並びに外国との租税に関する協定の実施のために行う調査に関する事務のうち、次に掲げるものとし、第一号から第四号まで及び第六号に掲げるものは、調査課~において、第五号及び第七号に掲げるものは、査察課~においてつかさどるものとする。

一 ~資本金額等~が一億円(沖縄国税事務所の管轄区域を納税地とする法人にあっては五千万円とする。以下同じ。)以上である法人~及び外国法人についての法人税及び地方法人税の課税標準の調査並びにこれらの法人についての法人税及び地方法人税に関する検査。
ただし~協同組合等~及び国税庁長官又は国税局長~が特に指定する法人に係るものを除く。

二 資本金額等が一億円以上である法人及び外国法人についての消費税の課税標準の調査並びにこれらの法人についての消費税に関する検査。
ただし、協同組合等及び国税庁長官又は国税局長が特に指定する法人に係るものを除く。

三 ~国等~についての消費税の課税標準の調査並びに国等についての消費税に関する検査

四 前三号に掲げるもののほか、国税庁長官又は国税局長が、特に調査査察部、調査部、調査第一部、調査第二部、調査第三部、調査第四部又は調査課において調査させる必要があると認める課税標準の調査及び検査

五 内国税につき重要な犯則があると認められる納税義務者についての~犯則事件の調査及び処分

六 第一号及び第四号に掲げる法人についての外国との租税に関する協定の実施のために行う調査~

七 外国の犯則事件に関する外国との租税に関する協定の実施のために行う調査のうち重要なもの

ところで、実務で問題になる資料調査課の場合には、以下の取扱いとなっています。
このため、税務署の所管法人と思って安心してはいけませんし、所轄は税務署であって国税局ではないという理由で、抗議することはできないと考えられます。

会社税務釈義 9巻P4807の3の5

各国税局の課税部、課税第一部又は課税第二部の資料調査課(関東信越国税局、東京国税局、名古屋国税局及び大阪国税局にあつては、統括国税実査官)に置かれる国税実査官は、所得税、法人税、相続税等及び消費税等の課税標準の調査並びにこれらの国税に関する検査のうち、調査課所管法人に係るもの以外のもので、その調査及び検査を受ける者の所得の金額、事業の規模又は取得した財産の価額その他の状況に照らし、国税局長が特に必要があると認めた事項に係るものを処理することとされている(財務省組織規則474、480、530)ので、この場合にも、国税局の職員の調査が行われる場合がある。


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