元国税調査官・税理士の松嶋です。
今回のテーマは「借家権の目的となっている建物」です。
相続の開始時など、課税時期において不動産貸付業に供している自用の建物が存する宅地については、貸家建付地として評価することが出来ます。
貸家(94≪借家権の評価≫に定める借家権の目的となっている家屋をいう。以下同じ。)の敷地の用に供されている宅地(以下「貸家建付地」という。)の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する~
ここで押さえておくべき意義として、「借家権の目的となっている」という用語があります。
これは、一般的には「借地借家法の適用のある賃借権」を意味すると言われます。
このため、借地借家法の適用のない賃借は評価減の対象外であり、例えば以下のケースは貸家建付地評価ができません。
詳細、TKC税務Q&A「ウィークリーマンションの敷地と貸家建付地評価」をご参照ください。
ウィークリーマンションはイメージしやすいですが、その他、典型例として、従業員社宅も挙げられます。
質疑応答事例評価0413 (土地等・家屋の評価)
上記以外の土地等・家屋の評価 従業員社宅の敷地の評価
【照会要旨】
借家人が立ち退いた後空き家となっている家屋(独立家屋)の敷地についても、貸家建付地として評価することができますか。
【回答要旨】
貸家建付地の評価をする宅地は、借家権の目的となっている家屋の敷地の用に供されているものに限られます。したがって、以前は貸家であっても空き家となっている家屋の敷地の用に供されている宅地は、自用地価額で評価します。
また、その家屋がもっぱら賃貸用として新築されたものであっても、課税時期において現実に貸し付けられていない家屋の敷地については、自用地としての価額で評価します。
(理由)
家屋の借家人は家屋に対する権利を有するほか、その家屋の敷地についても、家屋の賃借権に基づいて、家屋の利用の範囲内で、ある程度支配権を有していると認められ、逆にその範囲において地主は、利用についての受忍義務を負うこととなっています。
そこで、貸家の敷地である貸家建付地の価額は、その宅地の自用地としての価額から、その価額にその宅地に係る借地権割合とその貸家に係る借家権割合との相乗積を乗じて計算した価額を控除した価額によって評価することとしています。
しかし、たとえその家屋がもっぱら賃貸用として建築されたものであっても、課税時期において現実に貸し付けられていない家屋の敷地については、土地に対する制約がなく、したがって、貸家建付地としての減価を考慮する必要がないことから、自用地としての価額で評価します。
【関係法令通達】
財産評価基本通達26
注記
平成29年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
このため、財産評価に当たっては、借家権の有無を考慮する必要がありますが、借地借家法では、適用のない借家権について、以下としています。
この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。
ここでいう、一時使用については、以下の判例があります。
借家法八条にいわゆる一時使用のための賃貸借といえるためには必ずしもその期間の長短だけを標準として決せられるべきものではなく、賃貸借の目的、動機、その他諸般の事情から、該賃貸借契約を短期間内に限り存続させる趣旨のものであることが、客観的に判断される場合であればよいのであって、その期間が一年未満の場合でなければならないものではない。所論は、これに反する独自の見解を前提とするもので、採るを得ない。
このため、財産評価基本通達などには定めがありませんが、例えば、家の建て替えのために数か月だけ貸すことを専門にしている貸家については、この一時使用に当たり、借家権の控除が認められないと考えられます。
なお、このような取扱いは、借地権についても同様と考えられます。言い換えれば、一時使用に当たるかどうか、検討した上で財産評価基本通達を当てはめる必要があるのです。
詳細、TKC税務Q&A「一時使用のための借地権の評価」をご参照ください。
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