元国税調査官・税理士の松嶋です。
今回のテーマは「国外財産の相続税評価額」です。
海外に財産を持っている富裕層も多くいますので、相続税の申告の際、海外財産を評価することも多いと思われます。
海外財産の評価基準は、以下とされています。
国外にある財産の価額についても、この通達に定める評価方法により評価することに留意する。
なお、この通達の定めによって評価することができない財産については、この通達に定める評価方法に準じて、又は売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するものとする。
(注) この通達の定めによって評価することができない財産については、課税上弊害がない限り、その財産の取得価額を基にその財産が所在する地域若しくは国におけるその財産と同一種類の財産の一般的な価格動向に基づき時点修正して求めた価額又は課税時期後にその財産を譲渡した場合における譲渡価額を基に課税時期現在の価額として算出した価額により評価することができる。
通達に定める評価方法により評価するとされており、通達に定める評価方法に「準じて」評価するとされていない点に注意が必要です。
例えば、株価評価において用いられる類似業種比準方式は、国外株式の評価には適用できないとされています。詳細、TKC税務Q&A「内国法人(評価会社)が有している特定外国子会社の株式の価額の評価」をご参照ください。
上記事例にもありますが、日本の制度特有の評価規定は使えないと考えられるため、路線価に相当するような道路の価格を付す国が仮に存在していたとしても、その価格を基に国外財産である土地の評価をすることは認められないと考えられます。
実際のところ、国外の課税庁が評価した価格を基に財産評価することは認められないともされていますので、申告の際は注意が必要です。
質疑応答事例8018 国外財産の評価
国外で相続税に相当する税が課せられた場合
東京国税局課税第一部 資産課税課 資産評価官(平成13年7月19日開催)
「資産税審理事務研修教材」
【情報公開法第9条第1項による開示情報】
概要
10 財産評価審理上の留意事項
9 国外財産の評価 国外で相続税に相当する税が課せられた場合
【照会要旨】
相続財産である土地が所在する国で、相続税に相当する税が課せられた場合に、その税の課税価格の計算の基となった当該土地の価額により当該土地を評価してよいか。
【回答要旨】
当該外国の税の計算の基礎となった土地の価額をもって相法第22条に定める時価(不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額(評基通1(2)))とすることが、全ての場合に相当であるとは言い切れないが、
例えば、その価額が鑑定評価に基づいたものである場合などで、課税時期における時価として合理的に算定された価額であれば、その価額によって評価して差し支えない。
(理由)
国外財産である土地に外国で相続税又は贈与税に相当する税が課されたとしても、その税の計算の基となった価額については、例えば、その価額が租税特別措置法第69条の4のような課税上の特例を適用した後のものである場合も考えられることから、全ての場合に相法22条に定める時価として相当であるとはいえない~
【関係法令通達】
評基通 1(2)、5-2
一方で、固定資産税評価額を基準にする倍率方式のような方式も、家屋の評価について以下とあることから認められないと考えます。
質疑応答事例8266 8 財産評価審理上の留意点
〈16〉 国外財産の評価-家屋の場合
東京国税局課税第一部 資産課税課 資産評価官(平成23年12月作成)
「資産税審理研修資料」
【情報公開法第9条第1項による開示情報】
8 財産評価審理上の留意点
16 国外財産の評価-家屋の場合
■問
国外に所在する家屋は、どのように評価するのでしょうか。
■答
家屋については、原則として、売買実例価額、鑑定評価額等を参酌して評価します。
【関係法令通達】
評基通5-2
なお、取得価額や譲渡価額を基礎とすることもできますが、その場合は時点修正が必要になり、その方法として以下のような公的な資料を基礎とするよう指示されています。
質疑応答事例8265
8 財産評価審理上の留意点
〈15〉 国外財産の評価-土地の場合
東京国税局課税第一部 資産課税課 資産評価官(平成23年12月作成)
「資産税審理研修資料」
【情報公開法第9条第1項による開示情報】
概要
8 財産評価審理上の留意点
15 国外財産の評価-土地の場合
■問
国外に所在する土地は、どのように評価するのでしょうか。
■答
土地については、原則として、売買実例価額、地価公示価格及び鑑定評価額等を参酌して評価します。
(注)
1 課税上弊害がない限り、取得価額又は譲渡価額に、時点修正するための合理的な価額変動率を乗じて評価することができます。
この場合の合理的な価額変動率は、公表されている諸外国における不動産に関する統計指標等を参考に求めることができます。
2 例えば、韓国では「不動産価格公示及び鑑定評価に関する法律」が定められ、標準地公示価格が公示されています。
【関係法令通達】
評基通5-2
いずれにしても、国外財産に関しては、上記を前提とする限り鑑定評価が基礎になると考えられますので注意が必要です。
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