【10/24】今日のニュース

01ジャニーズ事務所 まだある!事業承継税制の抜け穴

(月刊所長のミカタ 11月号 2023年10月28日発行より)
事業承継税制を利用していた藤島ジュリー景子前社長は会見で、税制適用をやめて税金を納めると発表しています(井ノ原氏代読)。本来納めるべき相続税額は860億円ともいわれていますが、ジュリー景子氏はこの半分を納めれば済むかもしれません。

事業承継税制は、非上場の中小企業で経営者が自社株を後継者に引き継ぐにあたり、相続税や贈与税を最大100%免除するという税制ですが、中小企業の株は市場で売れない割に業績の良い老舗企業などは高額になってしまい、相続税計算においては売れないものが高く評価され、後継者は税負担に苦しむことが多いため、日本の雇用や経済を支える中小企業を守るための税制といえます。

ただ、事業承継税制は適用したあとの継続要件を満たすことが難しく、あまり活用されていません。

事業承継税制の主な継続要件
① 引継後5年間、後継者が代表者である
② 引継後5年間、平均8割の雇用維持
③ 引継後5年間、後継者と同族関係者の議決権割合が5割超を維持
④ 引継後5年間、後継者が筆頭株主
⑤ 後継者の議決権を制限しない

これらの継続要件を満たせない場合、猶予が打ち切られて全額納税が原則ですが、やむを得ない理由(後継者が障害者となる)が発生した場合、納税猶予は継続できます。または事業の継続が困難な事由が発生し、それが原因で自社株の譲渡や合併による消滅、廃業となった場合、その時点での自社株評価額で相続税を再計算し、当初の株価の5割にまで減額できる規定があるのです。

事業の継続が困難な事由とは、自社株引継ぎから5年経過後に、過去3年間のうち2年間赤字、過去3年間のうち2年以上売上減、有利子負債が売上の6か月分以上、類似業種の上場企業の株価が前年の株価を下回るといった事由です。

ジャニー氏の相続税申告期限から5年となるのは再来年の5月ですから、それまでジュリー氏が代表権を持ち続けることで相続税額を大幅に減らすことが可能かもしれないのです。

これは、単にジュリー景子氏が逃げ切りを図っているとだけ見ることではないでしょう。事業承継税制は適用後の要件を満たすことが難しいため適用を躊躇する税理士が多いといわれていますが、適用せずに相続したとしてもジャニーズ事務所はこのような状態に陥っていたわけで、それを考えると税負担を減少させられるのですから、税制適用は一考に値するのではないでしょうか。