【税務調査交渉及び見落としがちな税務判断】課税売上割合に準ずる割合を適用する場合の留意点

元国税調査官・税理士の松嶋です。
今回のテーマは「課税売上割合に準ずる割合を適用する場合の留意点」です。

個別対応方式により仕入税額控除を計算する場合、税務署長の承認を得ることで課税売上割合に準ずる割合の適用を受けることができます。

消費税法30条(仕入れに係る消費税額の控除)3項

前項第一号に掲げる場合(注:個別対応方式を適用する場合)において~課税売上割合に準ずる割合(当該割合が当該事業者の営む事業の種類の異なるごと又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類の異なるごとに区分して算出したものである場合には、当該区分して算出したそれぞれの割合~)で次に掲げる要件の全てに該当するものがあるときは、当該事業者の~承認を受けた日の属する課税期間以後の課税期間については~当該課税売上割合に代えて、当該割合を用いて計算した金額とする。

ただし、当該割合を用いて計算することをやめようとする旨を記載した届出書を提出した日の属する課税期間以後の課税期間については、この限りでない。

一 当該割合が当該事業者の営む事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものであること。
二 当該割合を用いて~計算することにつき、その納税地を所轄する税務署長の承認を受けたものであること。

個別対応方式を適用する場合の特例ですので、一括比例配分方式を適用する場合には、この課税売上割合に準ずる割合を使うことはできません。

勘違いしてはいけませんが、一括比例配分方式を選択する場合は課税売上割合に準ずる割合を適用できないということであり、課税売上割合に準ずる割合の承認を受けた場合には、個別対応方式しか採用できないということではありません。

困ったことに、国税から個別対応方式を適用することしかできない、といった誤った指導が国税からなされた事例もあるようです。

以下の通り、準ずる割合の承認を受けていても、個別対応方式と一括比例配分方式の有利不利選択ができます。

TAINS 質疑応答事例消費0062

課税売上割合に準ずる割合【課税売上割合に準ずる割合が95%以上の場合の取扱い】
-平成23年6月の消費税法の一部改正関係-
「95%ルール」の適用要件の見直しを踏まえた仕入控除税額の計算方法等に関するQ&A【具体的事例編】
平成24年3月国税庁消費税室【平成24年3月26日国税庁ホームページ掲載】

○課税売上割合に準ずる割合
【課税売上割合に準ずる割合が95%以上の場合の取扱い】

(問5-2)
事業部門ごとに課税売上割合に準ずる割合の承認を受けましたが、当課税期間の仕入控除税額の計算に当たり、課税売上割合に準ずる割合が95%以上の事業部門に係る課税仕入れ等の税額については、全額を控除対象とすることができますか。
なお、当課税期間の課税売上高は4億円、課税売上割合は80%です。

(答)
平成24年4月1日以後に開始する課税期間について、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除対象とすることができるのは、その課税期間における課税売上割合が95%以上であって、かつ、課税売上高が5億円以下の事業者に限られます(法30(2))。

この場合の課税売上割合が95%以上であるかどうかの判定は、承認を受けた課税売上割合に準ずる割合で判定するのではなく、課税売上割合によって判定します(基通11-5-9)。

したがって、質問の場合は課税売上割合が95%未満ですから、仕入控除税額の計算に当たっては、個別対応方式か一括比例配分方式のいずれかの方法で計算する必要があります。

この場合において、個別対応方式により仕入控除税額を計算する場合は、共通対応分について承認を受けた課税売上割合に準ずる割合を適用して計算することとなります。

一方で、個別対応方式を適用する場合には、取りやめの届出を提出しない限り、課税売上割合に準ずる割合が課税売上割合よりも低い場合にも、課税売上割合に準ずる割合で計算しなければならないこととされています。
詳細、TKC税務Q&A「仕入税額控除の計算上の課税売上割合に準ずる割合」をご参照ください。

ところで、近年は95%ルールが厳しくなったこともあり、課税売上割合に準ずる割合を選択する方も増えています。
ただし、この割合は以下の通り課税売上割合よりも合理的な割合である場合に認められますから、この点納税者が主張立証する責任があると考えられます。

平成7年2月16日裁決(F0-5-010)

課税売上割合に準ずる割合は、課税売上割合により計算した仕入控除税額が、その事業者の事業の実態を適正に反映しないものになる等、課税売上割合により仕入控除税額を計算する場合に比して、課税売上割合に準ずる割合により仕入控除税額を計算するほうがより合理的と認められる場合に適用するものであると解されている~

不動産賃貸業及び不動産仲介業を営んでいるが、請求人の平成3年12月期課税期間における非課税売上げである金融部門の受取利息の金額は、課税・非課税売上げの合計額の75パーセントを超えていること、一方、その融資先は20件程度で、かつ、その大部分は取引の長い固定的な顧客であることが認められる。

したがって、「売上全体の70パーセントを占める非課税売上げが変化しても共通用課税仕入れの変化は少なく、売上げを配分基準とすることの説明力は小さい」とする請求人の主張は相当と認められる~


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