元国税調査官・税理士の松嶋です。
税務雑誌等から注目すべき税務記事を紹介します。
税務通信3744より。

過大役員報酬の形式基準ですごい判断がなされた事例が紹介されています。事実関係として、数字は便宜上のようですが、

・ 総会で報酬限度額を年額5千万とする
・ 役員各人の報酬は代表取締役に一任する
・ 代表取締役は自身の報酬を100万/月、もう一人の取締役の報酬を20万/月と設定し、書面化した
・ もう一人の取締役は使用人兼務役員であり、使用人部分の報酬は50万/月
・ もう一人の取締役は使用人兼務役員ではないと国税様は指摘

この場合、使用人兼務役員でない方の50万/月が不算入になるかどうかが問題。取締役の報酬は20万/月と設定しているので、さすがに50万/月は損金不算入としか思えません。

しかしながら、審判所は50万/月も損金になるとしました。理由として、

・ 税法上使用人兼務役員でなくても、事実関係としては使用人の仕事を継続しており、労働保険上も使用人兼務役員
・ 代表取締役が決めた20万/月は限度額ではなく支給額を決めたものに過ぎず、総会で決めた5000万/年の範囲内なので問題なし

こんなことを言っているようです。

代表取締役が決めた金額は限度額と認定されるのが通例ですが、国税様の処分を認めると使用人兼務役員を否認されると使用人分が全部課税されて大変なことになると審判所は考えたのでしょうか。かく言うこの私も、同じ事例に遭遇すれば、確実に形式基準で国税様と同じように課税します。

詳細、もっと検討する必要はありますが、仮に「限度額を決めたのではない。支給額を決めたに過ぎない」といった主張が通るなら、今後の役員報酬の形式基準で負けることは基本的になくなる気がします。