【3/20】今日のニュース

01設備投資に係る新たな固定資産税の軽減制度が開始へ 賃上げ表明で軽減率等がアップ

令和5年度税制改正では、「生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置」が創設される(改正地法(案)附則15)。同様の現行制度である「生産性革命の実現に向けた固定資産税の特例措置」が3月いっぱいで終了し、4月から新たな制度が始まる格好だ。

両制度は、事業者が自治体から認定を受けるといった基本的な仕組みは同じだが、新たな制度特有の一定の賃上げ表明の要件等に注目したい。

事業者は計画を作成し市町村から認定

新制度は、国(経済産業大臣)が基本方針を作成し、その方針に基づき市町村が「導入促進基本計画」(基本計画)を策定のうえ、国の同意を受ける。国の同意を受けた市町村の基本計画に基づき、中小企業が「先端設備等導入計画」(導入計画)を作成して市町村から認定を受ける流れだ。

事業者の導入計画に記載された一定の機械及び装置等(設備)が新制度の対象となり、その設備に係る固定資産税を一定期間減額することができる。

計画認定後に取得した設備が対象

国の基本方針に基づき市町村が基本計画を策定し、事業者が導入計画を作成して市町村から認定を受けるという手続きの流れは、現行制度と同様だ。新制度の開始に当たり、国の基本方針や市町村の基本計画の見直しは予定されていないようだが、基本計画には期限がある。現在の基本計画が期限を迎える場合、市町村は新たに基本計画を策定し、同意を受けることになる。

注意したいのが、事業者は市町村から導入計画の認定を受けた後に、導入計画に基づき取得した設備が対象となる点だ。導入計画の認定前に設備を取得した場合は、新制度の適用を受けられないという。

02小規模事業者持続化補助金に「インボイス特例」を追加

2023年度の小規模事業者持続化補助金の申請受付が3月10日からスタートしたが、今回(第12回公募)から「インボイス特例」による補助金の拡充が行われる。

同補助金は、常時使用する従業員数が「商業・サービス業 ( 宿泊業、娯楽業を除く ) 」の場合5人以下、それ以外の業種の場合20人以下である小規模事業者を対象に、これらが作成した持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取組や、これと併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助するもので、「通常枠」と「賃金引上げ枠」、「卒業枠」、「後継者支援枠」、「創業枠」の5つの枠からなる。補助上限額は、通常枠が50万円、その他の4つの枠は200万円とされ、補助率はすべての枠で2/3(ただし、賃金引上げに取り組む事業者のうち、赤字事業者の補助率は3/4)。

補助対象となる主な要件は、「賃金引上枠」は最低賃金を、地域別最低賃金より+30円以上とした事業者、「卒業枠」は小規模事業者として定義する従業員数を超えて、規模を拡大する事業者、「後継者支援枠」はアトツギ甲子園のファイナリスト等となった事業者、「創業枠」は過去3年以内に「特定創業支援事業」による支援を受け、創業した事業者となっている。

対象経費は、①機械装置等費、②広報費、③展示会等出展費、④旅費、⑤開発費、⑥資料購入費、⑦雑役務費、⑧借料、⑨専門家謝金、⑩専門家旅費、⑪設備処分費、⑫委託費、⑬外注費機械装置等費とされており、インボイス制度対応のための取引先の維持・拡大に向けた税理士など専門家への相談費用も対象に含まれる。

今回の公募から見直しが行われ、免税事業者であった事業者が、新たにインボイス発行事業者として登録し、販路開拓に取り組むことを要件とする「インボイス枠」を廃止する一方、上記の4つの枠の事業者で、2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった又は免税事業者であることが見込まれる事業者のうち、適格請求書発行事業者の登録を受けた場合に補助額を一律50万円上乗となる「インボイス特例」の拡充措置が行われ、補助上限額が最高250万円にまで拡充されている。

なお、過去の公募回において、「インボイス枠」で採択され事業を実施した事業者は、「インボイス特例」の対象外となるので注意が必要だ。申請の締切りは、今年6月1日まで。
TabisLand:小規模事業者持続化補助金に「インボイス特例」を追加

03免税事業者である相続人の登録申請失念に注意

インボイス発行事業者の登録は死亡後4か月で失効
税理士等は10月以降の相続に備え制度の再確認を


令和5年10月1日以後にインボイス発行事業者である個人事業者が死亡し、免税事業者である相続人が相続により被相続人の事業を承継した場合、インボイス発行事業者として事業を継続するためには相続開始後4か月以内に登録申請書を提出しなければならない。現状、この取扱いについて税理士等の実務家の間でも認識していないケースが多いという。10月以降に相続が生じた場合の取扱い等を、納税義務の判定も含めて確認する。

納税義務の判定は改正なし

免税事業者である相続人が相続により被相続人の事業を承継した場合における相続人の納税義務の判定は、令和5年10月1日以後も現行と変わらない( 消法10 )。次のとおり、基準期間の課税売上高で判定する(相続人がインボイス発行事業者又は課税事業者を選択しているときは納税義務は免除されない)。

● 相続があった年

相続があった年の基準期間における被相続人の課税売上高が1,000万円を超える場合は、相続があった日の翌日からその年の12月31日までの間の納税義務は免除されない。

● 相続があった年の翌年・翌々年

相続があった年の翌年又は翌々年の基準期間における被相続人の課税売上高と相続人の課税売上高との合計額が1,000万円を超える場合は、相続があった年の翌年又は翌々年の納税義務は免除されない。

最長4か月間は相続人をインボイス発行事業者とみなす。

インボイス発行事業者の登録は事業者単位で行われ、インボイス発行事業者としての地位は相続人に引き継がれないため、インボイス発行事業者である個人事業者が死亡し免税事業者等(登録を受けていない事業者)である相続人が事業を承継する場合、その相続人が登録を受けるまでインボイスの発行ができず事業の継続に支障をきたす恐れがある。そのため、消費税法上で次の規定が設けられている(新消法57の3)。

04年少扶養控除 自民党内で復活論が浮上

岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」を巡って、自民党内で16歳未満の扶養家族がいる場合に所得控除などが適用される「年少扶養控除」の復活を訴える声が浮上している。自民党の調査会が、3月13日にあった「『こども・若者』輝く未来実現会議」で提言した。

年少扶養控除は旧民主党政権で廃止され、代わりに子ども手当が創設された。現行の児童手当は15歳まで子ども1人につき1万~1万5000円が支給されるが、年960万円以上の所得がある世帯では、支給額が一律月額5000円に引き下がるといった所得制限がある。子育て世代からは撤廃を求める声が上がる中、喫緊の課題となっている少子化対策を議論する自民党の会議で、党少子化対策調査会の衛藤晟一会長が年少扶養控除の復活や児童手当の支給対象年齢の引き上げなどを求める提言を示した。

市民団体が子育て世代を対象に今年実施した調査でも、必要な支援策に「年少扶養控除の復活、控除額の引き上げ」が5割を超える結果が出ている。しかし、復活には多額の財源確保が課題となり、ハードルは高い。政府・与党は少子化対策の財源確保策も検討をしているが、2022年末に決まった23年度の税制改正大綱で防衛費増額に伴う増税が決まったばかりで、増税議論には及び腰だ。3月中に少子化対策のたたき台をつくり、4月に発足するこども家庭庁で検討を進めて6月の「骨太の方針」に盛り込む予定で、岸田首相は「しっかりした安定財源を示す」としているが、支援策、財源確保の両面で議論は難航しそうだ。
TabisLand:年少扶養控除 自民党内で復活論が浮上

05精算課税の基礎控除 R5以前の贈与に適用なし

被災土地建物の再計算は過年分の贈与も対象

令和5年度改正では、相続時精算課税について、年110万円の基礎控除の創設と被災した贈与財産の再計算の措置が盛り込まれる予定だ。基礎控除は令和6年1月1日以後の贈与について、再計算の措置は同日以後に災害により被害を受けた場合に適用される。年110万円の基礎控除について、すでに現行の精算課税を適用している者が、令和5年以前に受けた贈与への適用はない。

基礎控除は贈与時期で判定

精算課税に係る主な令和5年度改正案は、次のとおり( №3741 、 3743 等)。

① 基礎控除(年110万円)の創設

② 災害で一定以上の被害を受けた贈与財産(土地・建物)の価額の再計算

上記①の見直しは、令和6年1月1日以後の贈与に係る贈与税又は相続税について適用される(改正法(案)附則19、51)。すでに現行の精算課税を受けている者についても、同日以後の贈与について適用となる。令和5年以前の贈与については適用されない。

改正の前後にわたって同一の特定贈与者から贈与を受けている場合、贈与税の計算だけでなく、その特定贈与者が亡くなった際に、相続財産に加算する贈与財産の価額から基礎控除110万円部分を控除するかどうかについても、贈与時期によって取扱いが異なることになる

再計算は被災時期で判定

現行、相続財産に加算する贈与財産の価額は、贈与時の価額で行うため、贈与後に贈与財産の価値が下落したケースでは、相続時の評価額よりも高い贈与時の価額を加算することになる。
令和5年度改正では、前記②のとおり、精算課税を適用して贈与を受けた土地・建物について、その特定贈与者の相続に係る相続税の申告期限までに災害により一定以上の被害を受けた場合で、贈与税の納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、相続時の加算額の再計算を行う措置が設けられる(措法(案)70の3の3)。