消費税還付申告法人に対する税務調査が大きな成果を上げている。これは、国税庁が先日公表した2021事務年度の法人税等の調査事績により明らかとなったもの。コロナの影響による調査事務量が緩和されたことから、法人税調査件数も約63%増と大幅に増加したなか、消費税還付申告法人への追徴税額が過去最高となった。国税庁のまとめによると、2021事務年度に実施した法人消費税の実地調査は4万件(対前年比62.9%増)行われた。
このうち2万4千件(対前年比50.9%増)から何らかの非違が見つかり、869億円(同19.1%増)を追徴。追徴税額は調査を公表している1991事務年度以降で最高額となった。消費税還付申告法人についてみると、4252件(同38.7%増)に実地調査を実施し、このうち791件の不正を含む2877件(同38.8%増)から非違が見つかった。これによる追徴税額は前年比69.6%増の372億円(うち不正還付は111億円)と大幅に増加した。
以上のように、法人消費税の実地調査は、追徴税額は過去最高となったが、1件当たりの追徴税額では前年比▲26.9%の217万円と減少した。しかし、不正計算があった件数は同41.2%増の8千件、その追徴税額も同74.0%増の309億円、不正1件当たりでは同23.2%増の408万円と大幅に増加した。これは、調査量が回復するなか、高額・悪質な納税者に対してはいつも以上の厳しい調査が行われたともいえる。
消費税不正還付の主な手口は、国内で架空仕入れを計上するとともに、免税となる国外への売上を架空計上し、売上に係る消費税から仕入れに係る消費税を控除するとマイナスになることを利用して還付を受けるもの。国税庁では、法人から税務署に提出された消費税還付申告書について、申告内容に応じて、還付事由の確認のため還付金の支払手続きを保留した上で厳正な審査を行い、行政指導や実地調査を行っていく方針だ。
調査事例では、仕入先と通謀して国内での仕入(課税)を水増し計上するとともに、輸出に関する虚偽の資料を作成して輸出売上(免税)を水増し計上する方法により、多額の消費税還付金を記載した消費税の確定申告書を提出し、不正に消費税の還付を受けようとした法人Aの事例が報告されている。A社に対しては、消費税の不正還付について、重加算税を含む追徴税額約25億円が課されている。
(タックスコム提供)