日本企業に海外子会社への融資などを巡る税務リスクが高まっている。国税庁が移転価格税制に関する指針を改定し、適正な融資金利の設定が従来より厳しく求められるようになった。指針改定を受け、傘下企業への融資金利の引き上げに動く企業も出ているが、子会社からの反発や海外税務当局への対応など新たな課題に直面している。
国税庁が改正したのは「移転価格事務運営要領」(事務運営指針)で、移転価格税制に関して国税当局側の運営方針などを示したものだ。6月に同指針の金融取引について「現実に行われる取引に依拠しない指標は、市場金利等には該当しない」などとした規定を追加した。海外子会社側の信用力を適切に評価し、それに見合った金利を設定する必要がある、との主旨だ。
今回の改正は、経済協力開発機構(OECD)が示した指針に合わせたものだ。3月期決算企業の場合、2023年4月から適用される。企業規模や融資金額の規模は問わない。
例えば、市場金利よりも大幅に低い金利で親会社が海外の子会社に融資をしていた場合、親会社
側への税務調査で「子会社からもっと金利を受け取るべきだった」などとして、申告漏れが指摘され、追加の税負担が生じる可能性がある。一方で、日本企業の中にはこれまで海外子会社への融資金利の設定が甘い例もあったとされる。大手会計事務所の税理士は「親会社の調達金利に少し上乗せするだけで、簡易的に決めていた企業も多い」と明かす。算定根拠が弱ければ、税務当局から移転価格税制に基づいた指摘を受ける可能性が高まる。
子会社融資に税務リスク 国税庁が指針改訂「適正金利」重視
2022/12/06