適格請求書(インボイス)発行事業者には、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方(課税事業者に限る)からの求めに応じて適格請求書の交付義務が課されているが、一定の取引では、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難なため、適格請求書の交付義務が免除される。例えば、3万円未満の自動販売機や自動サービス機により行われる商品の販売等がある。
対象となる自動販売機や自動サービス機とは、代金の受領と資産の譲渡等が自動で行われる機械装置であって、その機械装置のみで、代金の受領と資産の譲渡等が完結するものをいう。対象となるものには、自動販売機による飲食料品の販売、コインロッカーやコインランドリー等によるサービス、金融機関のATMによる手数料を対価とする入出金サービスや振込サービスなどがある。
これに対して、対象とならないものとしては、小売店内に設置されたセルフレジを通じた販売のように機械装置により単に精算が行われているだけのもの、コインパーキングや自動券売機のように代金の受領と券類の発行はその機械装置で行われるものの資産の譲渡等は別途行われるようなもの、ネットバンキングのように機械装置で資産の譲渡等が行われないもの、などが該当する。
また、適格請求書の交付義務が免除される取引では、出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限る)がある。対象となる卸売市場は、農林水産大臣の認定を受けた中央卸売市場や都道府県知事の認定を受けた地方卸売市場、これらに準ずる卸売市場として農水大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たす卸売市場のうち農水大臣の確認を受けた卸売市場だ。
農水大臣が財務大臣と協議して定める基準は、(1)生鮮食料品等(卸売市場法に規定する生鮮食料品等をいう)の卸売のために開設されていること、(2)卸売場、自動車駐車場その他の生鮮食料品等の取引及び荷捌きに必要な施設が設けられていること、(3)継続して開場されていること、(4)売買取引の方法その他の市場の業務に関する事項及び当該事項を遵守させるための措置に関する事項を内容とする規程が定められていること、などだ。
なお、インボイス発行事業者が適格請求書の交付義務を免除される取引には、そのほか、3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送、生産者(農協等の組合員)が農協等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)、郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)、などが例示されている。
(タックスコム提供)